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創り手を勇気づけてくれる、昔の科学本

創り手を勇気づけてくれる、昔の科学本

ぼくにとって深い思い出があるとすれば、子供の時に自分で買ってた本の中にあるんだろうね。それはきっと「少年ガマジン」や「子供の科学」といった少年雑誌で、今読みかえしても実によく出来ていて、単なる漫画雑誌や少年科学雑誌ではなかったと思う。

単行本ということになると、やっぱり「空気の発見(三宅泰雄著、角川文庫)」だと思う。この本は文庫本にもなっていて今でも手に入る。いろんな意味でぼくはとっても勇気づけられるのさ。独断で言えばね、ぼくはみんなが読んだらすごく喜んぶんじゃないかなって本、まだまだたくさんあるよ。

例えば「理化実験の遊戯」や、それにつながる少年向けの科学や工作の本のことだけど、こういう本には本当にワクワクするんだ。昔はあんなにあったのに、最近はめっきり出版されなくなった気がする。毎日曜日に一話づつ52週にわたって子供に読んで聞かせると、ちょうど一年で読み終える科学の本とか、おもちゃ、怪獣、望遠鏡、カメラ、家具、そしてラジオなんかの工作の本。「透明石鹸の作り方」や「何にでもメッキができる魔法の液体の作り方」というように、不思議な出来事を工作によって体験できたりして、興味と実際がすごく近いところにあると思う。とにかくぼくにとってはこーゆう本、読んでるのって楽しいんだ。

「最も新しい理化実験の遊戯」田村明一著、慶文堂書店プレゼント業書、1円20銭(昭和2年当時)

「最も新しい理化実験の遊戯」田村明一著、慶文堂書店プレゼント業書、1円20銭(昭和2年当時)

そして「原理応用 降神術」。この本はどちらかというと奇妙な本やあぶない本に入るかもしれないけれど、その前書きには、今の言葉で言うと「降神術とは、或る手段を用いて神の霊を招き迎え、死霊を呼び起こし、時において人類以上の優等なる生物(ビーイング)たちと過去や未来について語り合う交通をすることであり、これらは他の学術の及ばない所にある」なんて具合でしょ。そして内容はその或る手段の説明なわけ。ぼくの好きな大部分の本は、随分と古いものが多いんだ。誰かが残そうとしなかったら、震災や戦争の大火をくぐってはこれなかったこんな本に囲まれているとね、何かとっても優しく励まされてる気がするんだよね。(談)

「原理応用 降神術-スピリチュアリズム-」 渋江易軒著、大学館、35銭(大正5年当時)

「原理応用 降神術-スピリチュアリズム-」 渋江易軒著、大学館、35銭(大正5年当時)

「原理応用 降神術-スピリチュアリズム-」の内容

「原理応用 降神術-スピリチュアリズム-」の内容

*1994年のメディア掲載記事より編集して紹介しております。

 

KENJI KOBAYASHI

接合型鉱石検波器の製作について

接合型鉱石検波器について

接合型鉱石検波器はぼくが実験した中でもっとも感度のよいものを作ることができました。ただ、工作上は少々難点が多く、たとえば鉱石と鉱石とを接触させ、お互いを破損させることなく安定して状態を維持しつづけるとなると構造のしっかりとしたものを要求されるからです。感度がよいのにもかかわらず、鉱石検波器が単体で市販されていた時代ですら一般的にはあまり普及しなかったのは、このような理由からだと思われます。

昔の鉱石ラジオの接合型検波部分

昔の鉱石ラジオの接合型検波部分

市販されていた接合型鉱石検波器

市販されていた接合型鉱石検波器

接合型鉱石検波器の製作

自作接合型鉱石検波器のホルダーは金属の鋳造で作ってみました。

自作接合型鉱石検波器のホルダーは金属の鋳造で作ってみました。

通常、金属の鋳造は高温を必要とするので一般的ではないのですが、ここでは融点が摂氏75度という低融点の金属を使いました。これは工作材料を売っている店などで大手できます。お湯の中で溶けるわけですから扱いも安全で楽ですが、ただちょっと高価です。

通常、金属の鋳造は高温を必要とするので一般的ではないのですが、ここでは融点が摂氏75度という低融点の金属を使いました。これは工作材料を売っている店などで大手できます。お湯の中で溶けるわけですから扱いも安全で楽ですが、ただちょっと高価です。型はシリコンで作ったほうが精密なものを作れますが、たくさん作るわけではないので、木の板を彫り粗い型として鋳込んだあとにドリルやヤスリで仕上げました。固まると思いのほか硬くて丈夫でした。

ホルダーに固定する鉱石には斑銅鉱を使用して、あらかじめ[さぐり式鉱石検波器の製作について]の木の板の型で作った方法で鉱石をハンダに埋め込んだものを作ります。それを真鍮の丸板にネジ(4mmX15mm)をつけた上にのせ、細いバーナーで軽くあぶってくっつけました。似たようにして、さぐり式では針金の部分に当たるところは紅亜鉛鉱で作ります。

真鍮の丸板にネジ(4mmX15mm)をつけた上に斑銅鉱をハンダの台にセットしたものを乗せている状態

真鍮の丸板にネジ(4mmX15mm)をつけた上に斑銅鉱をハンダの台にセットしたものを乗せている状態

似たようにして、さぐり式では針金の部分に当たるところは紅亜鉛鉱で作ります。細いバーナーで軽くあぶってくっつけている状態。

似たようにして、さぐり式では針金の部分に当たるところは紅亜鉛鉱で作ります。細いバーナーで軽くあぶってくっつけている状態。

接合型鉱石検波器のパーツが揃ったところ

接合型鉱石検波器のパーツが揃ったところ

上のほうのガラス管の切り口が黒いのは、ゴムペーストが塗ってあるためです。ゴムペーストはゴム靴の底を修理するときなどにも使うもので、これを塗ることによって金属とガラスといった硬いものどうしでも安全にキチッと止まります。

使い方は、紅亜鉛鉱のついた棒を少し引いてゆっくりと鉱石どうしを当てて手をはなすと、スプリングの力でその位置に止まります。それを繰り返して感度のよいところを探すわけです。

2つの鉱石のギャップは斑銅鉱の側のネジで調整し、スプリングの強さは2つの鉱石が当たっているときに、その力で欠けたりしない程度の力に調整します。

ここで不思議な鉱石についてお話しします。

英国の1920年代のメーカー製でとても端正に造られています。検波器は接合 型で感度もよいものです。H195xW175× D175(mm)

英国の1920年代のメーカー製でとても端正に造られています。検波器は接合 型で感度もよいものです。H195xW175× D175(mm)

このように立派に見える昔の鉱石ラジオもたいていは中にコイル1つだけということが多く、かえって不思議な感じがすることがあります。

このように立派に見える昔の鉱石ラジオもたいていは中にコイル1つだけということが多く、かえって不思議な感じがすることがあります。

未知の鉱物

昔の鉱石受信機や鉱石検波器用の鉱物を見ていると、方鉛鉱と黄鉄鉱がいちばん多く、紅亜鉛鉱や人エガレナと呼ばれるものもときおり見かけます。しかしどう見ても思い当たる鉱物がないものに出会ったことが2例ほどありました。

ひとつは上の写真の鉱石ラジオの接合型検波器についている鉱物

ひとつは上の写真の鉱石ラジオの接合型検波器についている鉱石

もうひとつはさぐり式検波器用の替え鉱石の中にあったものです

もうひとつはさぐり式検波器用の替え鉱石の中にあったものです

共に人工結晶とは思いにくい天然鉱物の外観を持ちながらも半透明で、電気的にも導通があるのです。いろいろと鉱物関係の知人に相談したりしてみましたが結局分からず、最後にX線分析によって成分検索をしてもらったところ、前者はカドミウムの硫化物、後者は亜鉛の酸化物という結果が出ました。それぞれ1920年代のもので、当時の文献にはどちらも現れていない物質なので興味深く思いました(酸化亜鉛についても当時は天然の紅亜鉛鉱しか使用されていないことになっています)。 とりわけこんなに透過性のある硫化カドミウムの単結晶はおそらく天然ではなく、人工でも現代に至るまであまり報告のないところを見ると、当時から公開理論とは別に開発の現場ではいろいろな試みが行われていたと考えられます。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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ガラスの加工

板ガラスは、ガラス切り専用の工具(ダイアモンドカッター)あるいは高速度鋼(ハイスピードスティール)や超鋼(タングステンカーバイドスティール)等の硬度の高いものを使って、あまり力を入れず同じ力で線を引き一番端のところを軽く折り曲げるようにすると切れ、慣れれば曲線も切れるようになります。

板ガラスを曲線でカットしている様子。フリーハンドでやっているが、直線にカットする場合は、まっすぐな木の棒などを定規にするといい。

板ガラスを曲線でカットしている様子。フリーハンドでやっているが、直線にカットする場合は、まっすぐな木の棒などを定規にするといい。

ガラス管をカットしている様子。

ガラス管をカットしている様子。

ガラスの管は管の一部にヤスリでキズをつけて引っ張るようにするときれいに切れます。しかし馴れないと垂直にピタッとは切れません。そこで写真のようなガラス管切りを使って、ぐるりと円周を回して切り傷をつけ、折ると言うよりは引っ張り曲げるといった具合にするとうまく切れるものです。またとても薄かったり厚かったり太かったりする場合は、モーターツールに写真左端のダイアモンドカッターで水をつけながら切ると、とてもきれいに加工できます。

ガラスに穴を開けている様子。

ガラスに穴を開けている様子。

ガラスに穴をあけるには、ガラス用のドリルであけます。加工するものの穴をあけたい部分に水を絶やさないようにしていちばん低い回転数でゆっくりとあけていきます。写真では加工物全体が小さいので水中に入れて加工をしています。板のような場合は粘土等で穴の周りに土手を作り、中に水を入れて作業します。

穴があいたガラス

穴があいたガラス

ガラス専用のドリルビット各種

ドリルビット各種

上の左からコンクリートドリル(ドリルの先端に超鋼がついていて振動式のドリルエ具で使用します)、木工用フォースナービット(穴をあけた底が平らに上がります)、木工用ドリル、金属用ドリルビット。下の左から、オーガー式木エドリルビット(硬度のある木等に使用します)、ガラス用ドリルビット(先端に板状の超鋼がついています)プラスチック用ドリルビット(送り刃がないので穴があくときに急に材料が持ち上がったりして割れることがありません)、アクリル用ビット(熱によってアクリルを溶かさないように低速で使います)。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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さぐり式鉱石検波器の製作について

[さぐり式鉱石検波器について]

鉱石式検波器の中でもっともたくさん作られたタイプで、いろいろな形状のものが出現しました。さぐり式の鉱石検波器には大きく分けて2つのカテゴリーがあります。開放式(オープンタイプ)と呼ばれる鉱石自身が表に出ているものと、鉱石の部分がガラスケース等で覆ったりしてある封管式(クローズドタイプ)です。

開放式はたいていの場合、針を動かせる範囲が大きく、また、鉱石の交換や調整が楽で、実験にとても適している反面、ほこりや水滴などで感度が落ちたり、本体やダイヤルを動かしたりする折に何かが触れると針が動いてしまったりすることがあります。

封管式のものは安定性に優れていて製品としての受信機に向いていますが、工作が少し難しいのと調整や鉱石の交換なども面倒なところがあります。

左が開放式で右が封管式です

左が開放式で右が封管式です

自作のさぐり式検波器3点。左のものは1920年代の型で現在でもレプリカが売られていますが、自分なりにコピーして作ってみました。

自作のさぐり式鉱石検波器3点。左のものは1920年代の型で現在でもレプリカが売られていますが、自分なりにコピーして作ってみました。

写真のうち、右は1920年代のもので、左はそのレプリカとして現在でも売られているものですが、2つを比べるといろいろと時代の流れを感じます(鉱石はどちらも外してあります)。

写真のうち、右は1920年代のもので、左はそのレプリカとして現在でも売られているものですが、2つを比べるといろいろと時代の流れを感じます(鉱石はどちらも外してあります)。

[さぐり式鉱石検波器の製作(封管式)]

最終的に完成した検波器です。

最終的に完成した検波器です。検波器本体は、鉱石自身とキャットウィスカー(猫のひげ)と呼ばれる細い金属針(タングステン使用)の部分です。

まず鉱石を固定するための材料と道具を用意します。

まず鉱石を固定するための材料と道具を用意します。

道具:ガスバーナー(ガスこんろでも可)・ハンダを溶かすための空き缶やアルミ製のプリン型など(写真はセラミック製キャセロール:取っ手のついた蒸発皿)・ピンセット

材料:ハンダ(写真のキャセロールの中は棒ハンダを切ったもの。右下は棒ハンダと糸ハンダ)・写真の鉱石は紅亜鉛鉱、方鉛鉱、黄鉄鉱などが写っていますが、今回は方鉛鉱を使用。

ベニヤの板などにドリルで穴をあけたものを型とします。径10~ 16mmで、深さ6 mm前後、あるいは2段になるように作りたいときは、径16mm、深さ5 mmの穴のなかにさらに径8mm、深さ5mmの穴をあけます。

空き缶などにハンダを入れてペンチでしっかり持ち、こんろで溶かしたあと、先ほど の板の穴に少し盛り上がるくらいにハンダを流し入れます。

空き缶などにハンダを入れてペンチでしっかり持ち、こんろで溶かしたあと、先ほど の板の穴に少し盛り上がるくらいにハンダを流し入れます。

ハンダが冷えないうちにピンセットで鉱石をなるべく中心に押しつけるようにして固まるまで押さえつづけます。

ハンダが冷えないうちにピンセットで鉱石をなるべく中心に押しつけるようにして固まるまで押さえつづけます。

固まったあと、バリなどをサンドペーパーで仕上げます。このとき鉱石があまり大きいと、溶けたハンダと接触させたときにハンダが冷えて急に固まることがあります。 そうなるとハンダと鉱石はくっついてくれません。それが予期される場合は、溶けたハンダの中に鉱石をピンセットなどで持ち1、2秒ほど入れ、あらかじめあたためておきます。

もうひとつの方法は、金属でカップを作っておいてそこに溶かしたハンダを入れ、同じ要領で鉱石を固定する方法です。作例のガラス管の中の鉱石部分はこの技法で作っています。カップになる部分は15mmの真鍮棒を長さ1cmくらい切り、中心部に12mmのドリルで半分ほどの穴をあけ、そのあと2.5mmのドリルを貫通させて3mmのタップを切ります。そのあとで内側から太さ3mm× 長さ20mmのサラネジで、取り付け用のネジを出しておきました。

そのカップ状の真鍮の内側にペースト(材料店などで売られているハンダ付けをしやすくするもの)を塗ります。

そのカップ状の真鍮の内側にペースト(材料店などで売られているハンダ付けをしやすくするもの)を塗ります。

熱したあと、前で説明したのと同じように中にハンダを盛り上がるくらいに入れます。

バーナーで熱したあと、前で説明したのと同じように中に溶かしたハンダを盛り上がるくらいに入れます。

鉱石をのせ、ハンダが固まるまで軽く押さえ続けます。

鉱石をのせ、ハンダが固まるまで軽く押さえ続けます。

作例のように鉄の万力で挟んで固定する場合は、あいだに薄い木や布を挟んでおかないと鉄に熱を奪われてハンダがすぐに冷めてしまうので気をつけましょう。

次にガラスを使ったケースを作ります。

検波器の完成したパーツです。

検波器の完成したパーツです。

支えのL字金具は下方の真鍮板(幅9mm、厚さ1mm)から作り、ノブはボール盤で木を削って色を塗りました。ネジ類もボール盤で挟み、サンドペーパーでメッキをはがして作りました。

まず、ガラス管(太さ3cmの試験管を長さ約4cmにカットしたもの)を用意します。ガラス管の切り方や加工は、[ガラスの加工]を参照してください。

ボール盤を旋盤のように使って蓋になるパーツを切り出しているところ。

ボール盤を旋盤のように使って蓋になるパーツを切り出しているところ。

次にこの管のふたになる部分を作りますが、ここではボール盤を旋盤のように使って作業をします。ボール盤は最近ではD.I.Y.ショップなどで1万円前後で手に入るものもありますので、使い方をマスターしておくといろいろに使えて便利です。本来品物に穴をあけるための機械ですが、その先に取り付けるドリルやビットの種類を変えることで、金属板、本の板、プラスチックなどに穴や彫り込みを作ったり、削ったり磨いたりできます。

作例では布入リベークの5mm厚を使いましたが、木の板でもプラスチックでもいいでしょう。

30mmのホールソー(ホールソーについては以前投稿した[バリオカップラーの製作を参照]でガラス管を押さえるための円形の溝を2mmほどの深さで掘ります。次に40mmのホールソーで表と裏から穴をあけるようにして削り取ります。

30mmのホールソー(ホールソーについては以前投稿した[バリオカップラーの製作]を参照)でガラス管を押さえるための円形の溝を2mmほどの深さで掘ります。次に40mmのホールソーで表と裏から穴をあけるようにして削り取ります。

ホールソーは本来穴をあけるためのものですが、穴をあけることで出るいつもなら捨ててしまう丸い部分を使っているわけです。外径40mmのホールソーは、内径35 mm強です。この丸い板の切り口を、アーバーを使いスムーズに削ります。アーバーとは本来バフリングやワイヤーリングを止めるための金具ですが、この金具に品物をつけることで、ボール盤を旋盤のように使うことができます。もちろん、このような使用法は危険と言われると思いますので、いちばん速度を落として作業しましょう(たいていのボール盤はベルトのかけかえで速度を変えられます)。

写真では左のものが削る前で、右のものが削ったあとのものです。

写真では左のものが削る前で、右のものが削ったあとのものです。手前に写っている金属製のものがアーバーです。

まずヤスリで削ります。

まずヤスリで削ります。ヤスリは中目のものを使います。ボール盤は上から見ると時計回りに回転し、ヤスリは押す方向に対して目がついていますので、向かって右から静かにあててゆきます。この際、絶対ヤスリの先端で作業をしないように注意してください。先端の角が回転している品物に当たると、手前の方向にヤスリが弾かれたりして危険です。

だいたいの形を整えたあと、サンドペーパーで滑らかにしてゆきます。 100番→ 180番→ 240番→ 400番と順に目の細かいものに変えていき、常にサンドペーの中程で作業します。

だいたいの形を整えたあと、サンドペーパーで滑らかにしてゆきます。
100番→ 180番→ 240番→ 400番と順に目の細かいものに変えていき、常にサンドペーの中程で作業します。

写真はフェルトにポリッシュ剤をつけて磨いているところです。ただし布などで磨く場合が最も危険ですから、布は必ず丸めて耳などが出ないようにして、ボール盤に巻き込まれないように十分注意してください。

フェルトにポリッシュ剤をつけて磨いているところです。ただし布などで磨く場合が最も危険ですから、布は必ず丸めて耳などが出ないようにして、ボール盤に巻き込まれないように十分注意してください。

ふたの部分をガラス管に合わせてみたところです。

ふたの部分をガラス管に合わせてみたところです。

このあとに片方には6mmの太さの真鍮棒に径3mmのタップを立てたものを差し込み接着して、もう片方には外側から球が自在に動くように10mmのドリルでへこみをさらってあります。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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ヴァリオカップラーの製作について

形を見ると、ヴァリオメーターとヴァリオカップラーは全然異なったものに見えますが、回路的にはコイルとコイルを直列に接合するとヴァリオメーターで、並列だとヴァリオカップラーになるのです。ただ使用する部位での効率を考えて、それぞれが作例のような特異な形態になったと思ってください。

このヴァリオカップラーは、コイルとコイルの距離を近づけたり遠ざけたりすることで、それぞれのコイルの誘導作用を調節しています。

丸で囲んであるパーツがヴァリオカップラーです。

丸で囲んであるパーツがヴァリオカップラーです。

まず、ヴァリオカップラー用のコイルの巻き枠を作ります。

ボール盤にホールソー(丸く材をカットするため専用の歯)をつけて、5mm厚の布入リベークライトを丸くカット。これが巻き枠の芯になります。

ボール盤にホールソー(丸く材をカットするための専用の歯)をつけて、5mm厚の布入リベークライトを丸くカット。これが巻き枠の芯になります。

いろいろなホールソー

いろいろなホールソー

丸くカットしたベーク板(コイルの芯)に、3~ 4mmほどの切り込みを入れ、そこに羽を差し込んでいきます。巻き枠は2つあって、一つには7mm(幅)×25 mm(長さ)を15枚、 もう一つには7mm(幅)X30 mm(長さ)をやはり15枚つけます。

巻き枠の羽を取り付ける様子

巻き枠の羽を取り付ける様子

0.4mmの線をスパイダーコイルを巻くのと同じ要領で巻いていきます。ここでは線材は絹巻き線を使用。

0.4mmの線をスパイダーコイルを巻くのと同じ要領で巻いていきます。ここでは線材は絹巻き線を使用。

5mmの羽をつけたほうは70回(作例では外側の色の濃いところには実験を兼ねて20回よけいに巻いてあります)。

30mmの羽をつけたほうは、12回巻き毎に8つのタップを出し、さらに12回巻いて終了してあります(全部で108回巻いてあります)。

できあがったヴァリオカップラー用コイル2つ

できあがったヴァリオカップラー用コイル2つ

タップの出ている大きいほうは巻き始めと巻き終わりをネジで芯のところに固定してあります。小さいほうのコイルは可動部分となるため、中心のネジに沿って動くための金具を取り付けてあります。

中心のネジはピッチが大きいので自作します。通常6mmのネジはピッチが1mmですから、 1回転で進むのはlmmで5cm動かすのに50回転しなければなりません。

これではたいへんなので、2回転で7cm動かすようにしようと、6cmの真鍮棒に糸を巻いてピッチをまず見てみました。

6cmの真鍮棒に糸を巻いてピッチをまず見ているところ。

6cmの真鍮棒に糸を巻いてピッチをまず見ているところ。

3.5cm毎にしるしをつけたところにいつも頭が出るようにして、 2~ 3回巻いてテープで固定して180度反対にも同じように巻きます。これはダブルスパイラルにすることで安定して回転させることができると思ったからです。

糸に沿ってマジックなどでしるしをつけて、そこに銅あるいは真鍮の0.8~1mmくらいの単線を巻いて、端と端をクリップで止めてハンダ付けをします。このとき、実際に使うより、2~ 3割長めに作っておくとよいでしょう。

ハンダ付けでできた凹凸をモーターツールで整えているところです。

ハンダ付けでできた凹凸をモーターツールで整えているところです。

いろいろなピッチを作って実験をしたときの写真で、1cmピッチになっていて最終的に使った3.5cmピッチよりずっと細かくなっています。

製作途中のヴァリオカップラーのメカ部分

製作途中のヴァリオカップラーのメカ部分

メカニックは今まで作ったことがなかったので、少々苦労しましたが、上の写真は製作途中のヴァリオカップラーのメカ部分です。2本の鉄製の棒でフレームとして中央に3.5cmピッチの6mmのネジ、前後はエボナイト板で作った丸板にカップリング用の口金をつけ、可動板には、ネジのスパイラルの部分が通るへこみを大きめにあけた左右にヤスリで削ってあります。

ヴァリオカップラーの部分品です

ヴァリオカップラーの部分品です

右の丸いエボナイト板にはラジオの本体パネルに取り付けるための3つのスペーサーがつけてあります。可動コイルからの配線はいつも動くので安定性を得るために、 2本ある鉄の棒にコイルのそれぞれの端を曲げたタマゴラグでちょうどモーターのブラシのようにして、信号を伝えるようにしてあります。

ヴァリオカップラーはパネル面のツマミを回すと写真のようにコイルが前後します。

ヴァリオカップラーはパネル面のツマミを回すと写真のようにコイルが前後します。

ヴァリコカップラーのコイルの作動の様子

ヴァリコカップラーのコイルの作動の様子

実際にラジオのパネル面に取り付ける直前に、もう一度ばらしてタップのところから引出し線を長めにハンダ付けして、エンパイヤチューブ(写真上部)を配線時にかぶせて行います。

実際にラジオのパネル面に取り付ける直前に、もう一度ばらしてタップのところから引出し線を長めにハンダ付けして、エンパイヤチューブ(写真上部)を配線時にかぶせて行います。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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ヴァリオメーターの製作について

小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ」で作例として紹介された鉱石ラジオ [誘導結合回路鉱石受信機]

小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ」で作例として紹介された鉱石ラジオ [誘導結合回路鉱石受信機]。ヴァリオメーターが組み込まれている。

ヴァリオメーターとは、コイルの中にもう一つコイルが入っていて、その2つが直列に接続され、外のコイルの中で内のコイルが回転することで全体のインダクタンスを変化させるしくみのものです。

画像の丸で囲んであるパーツがヴァリオメーターです。

画像の丸で囲んであるパーツがヴァリオメーターです。

ヴァリオメーターの部分品です。

ヴァリオメーターの部分品です。

大きなコイルの筒は直径7cm、長さ5cmで、中心を貫くように8mmの穴があいています。ここにはカップリング用の口金になる筒状のネジ(左下の2組のもの)がはまって内径6mmの径になります。0.6mm径のエナメル線(作例は二重絹巻き線)を20回巻いてあります。まんなかのところに穴があいているわけですから、そこを避けるように左右に10回ずつ巻いであります。内側に入る小さなコイルの筒は、紙を巻いて作り、補強のためにシェラックニスを塗ってあります。

サイズは直径が5cmで長さが4cm、このサイズより少しでも大きいと中で回ることができません。0.4mmの導線を全部で26回、左右13回ずつ巻いであります。

写真下部中ほどのベークライトの棒はシャフトの絶縁用で、6mm径で3 cmの長さ、そのとなりの金属棒2本はカップリング用のシャフト、いちばん右の金具は圧着端子の8 mm径のものを途中で切って、タマゴラグとハンダ付けをして作った外側のコイルの口金にはめて、端子として使用するものです。

二重絹巻き線(銅線をシルクで絶縁してある線材)現在ではかなり希少。

二重絹巻き線(銅線をシルクで絶縁してある線材)現在ではかなり希少。

工作上、気をつかう第一の点は、筒の中心に穴をあけることですが、V字のブロック とかV字型に木を切ったものの上などに安定させて穴をあけるといいでしょう。

工作上、気をつかう第一の点は、筒の中心に穴をあけることですが、V字のブロック
とかV字型に木を切ったものの上などに安定させて穴をあけるといいでしょう。

ヴァリオメーターの作動

ヴァリオメーターの作動

ヴァリオメーターの作動

ヴァリオメーターの作動

このコイルは写真のように作動します。中を貫いている棒は、中ほどをベークライトで絶縁してあり、両端の導体の部分に内側のコイルの両端が接続されていて、それがそのまま外側のコイルの口金に接触しているのです。

第二に気をつかう点は、いかにしてコイルの回転のストッパーを作るかということですが、まずシャフトに小さなネジを、大きなコイルの外側に接するように、シャフトの前のほうと後ろのほうに垂直に取り付け、前後のガタツキを止めて、後ろのほうの口金に2本小ネジをつけ、 180度で回転するようにストッパーとします。

作例では1.4mm径のネジをそれぞれタップを立てて取り付けています。タップの下穴は1mmです。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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小林健二の造形世界ー素材・道具・技法をめぐって

ーイメージとして求めるものによって、 結果もプロセスも全部が変わる。

(小林のアトリエで 小林自身が工夫して作ったり、中古て買い集めたおびただしい道具を見たり、道具にまつわる話を聞くのは興味が尽きないものがある。)

木工旋盤や中型のベルトサンダーが見える。

木工旋盤や中型のベルトサンダーが見える。1992年頃の小林のアトリエ(一角)。

道具や工具というのは色々ある 。それぞれの適材・適所・適性で使ってやれば、とにかく色々なこ とをしてくれる。何をしてくれるかといえば、やっぱりその人のイメージをより具体化し、現実化することによって 頭の芯にしかなかった何かわけの分からないものを自分にも、自分以外の人にも見せることができる言葉に置き換える翻訳機械である、そういう感じがしてますね。

パレットや絵の具を練るためのガラスの棒(モレット)や大理石の板(スラブ)、あるいは特殊な画溶液など。

パレットや絵の具を練るためのガラスの棒(モレット)や大理石の板(スラブ)、あるいは特殊な画溶液など。

めのう棒のいろいろ。油絵やテンペラでツヤを出したいところや、金や銀や錫、鉛などの箔をみがいたりするのに使う。

めのう棒のいろいろ。油絵やテンペラでツヤを出したいところや、金や銀や錫、鉛などの箔をみがいたりするのに使う。

ただ 道具についていえば、ここに世界中から百人の人を呼んで、例えば30センチ角の同じ木を与え、3センチ角の深さ10センチの穴をあけるのに自分の好きな道具を選んでやりなさいと言った時 みんな同じものを選ぶわけじゃないよね。

生活のスピードや手の大きさ、経験や老若男女でもちがってくると思う。色んな要素があるから、逆に道具の方がそれに合わせようとして増えていくわけでしょう。そうすると極端なことをいえば、人の数だけ道具があるって考えてまちがいないんですよ。もっと話を進めれば、素材と道具と技法、この三つは本当に深く結びついている。例えばここに一つの石を切ることを考えたら、それをとにかく速く切断したいか、ゆっくり自分の思った形にしたいか、それだけで道具も技法も変わってくる。

すなわち、イメージとして求めるものによって、結果もプロセスも全部が変わる。だから素材・道具・技法というものを短絡的に目的というか、イメージも考えずに並べれば、この素材を切る時はこの道具でこんな方法でってことが言えても実際の場では必ずしもそれで説明したことにはなりえないことがあるわけですね。なぜなら、実際作る上で一番大きいのは、ものを作る間でも実は学習しつつあるということなんです。もし機械製品を作る会社で、製品も数量も何もかも決まった行為の中て成り立つなら、それでいいんですけど 、ぼくは今 あくまで個人的なレベルてものを作る人聞のことを頭において話してますから、それは決定事項にはならない.。

いろいろな筆。サイズ、材質がまちまちである。

いろいろな筆。サイズ、材質がまちまちである。

これも例の一つですけど、自分はザラザラした表面のものを最終的に作りたかったとしますね。それで何か工具を使って作ったんですけど、その工具で切削したら、きれいな切削面ができた。そして、その切削面が きれいだというそのこと で、これまた二つに道が分かれるわけです。

「ああ こんなにきれいに切れる 、こんなにきれいな切削面がすごくいいんだな」って思って、それで新しい発見をしたこともあるでしょ う。でも 逆にその発見に流されてしまって、最終的に自分の思っていたイメージよりも、切削面がきれいだったが故に全部をツルツルにしてしまって、作ったものが自分の最初のイメージと全然かけ離れたものになるってこともあるわけですね。ただ それがかえっていいこともありますけど、途中で学習したことは学習したこととして一つ抑えといて、最終的に自分の作るものは、最初に作りたかったものに導いていくってことも あるわけですよ。だから 道具に使われてしまうってことも、どちらがいい悪いの問題じゃなくて、そういう要素がものを作っていくと多分に出てくるでしょう。それを自分の中でうまく振り分りて、自分が最初にやりたかったことをそれなりに見ていく。ただ 最初にやりたかったこと以上に意にそうものであれば、そっちを選択すればいいわけだけど、結局  ぼくみたいな有機的な作品を作る人聞は、機械の作る機械的な肌に最初一瞬ひかれることもあるわけですね。でも、それに行ってしまって、最終的にできあがったものが自分の作りたかったものと全然ちがってしまえば、イメー ジの意味がなくなってしまうわけですね。だから、途中なら途中で、切削面がピシっとしたいと思うときは、この機械はいいんだなって分かるわけだから、後々のためには大事なわけですよ。

石や木や金属などのサンディング(磨き、削り)などに使われる工具。このほかに切断や穴あけなどの工具もある。

石や木や金属などのサンディング(磨き、削り)などに使われる工具。このほかに切断や穴あけなどの工具もある。

いろいろな電動工具。騒音を嫌う小林は、ほとんどが特殊なモーターやシステムによって、とても静かにドライブできる電動工具を取り揃えている。

いろいろな電動工具。騒音を嫌う小林は、ほとんどが特殊なモーターやシステムによって、とても静かにドライブできる電動工具を取り揃えている。

それと道具を選ぶ場合など、最初からあまり切れないノコギリで、コリゴリやって苦痛を感じた人と、気持ちよく切れた人とでは、その後に与える影響はずいぶんちがう。確かに道具の問題だけではないけど、決して小さくないことだと思う。いいノコギリは無頓着に使えば、折れもするし歯もこぼれる。大事にしないとならないけど 安くはないという理由だけじゃなく、少しずつわいて来る愛着は素敵なものです。あくまでもぼくの考えですが、最初からいい道具を買って、それをずっと大切に長く使おうってことの方が無駄がなく、またその道具に対する接し方なんかも変わってくる。ケースにもよるけどね。だからその場合はいい道具とは何かを知らなければいけない。そのためには、それを知ろうとする行為もまた出てくるわけですよ。それだから、ぼくみたいに大ざっぱで掃除もしない人間がね、カンナ研いだり、刃物調整したりとか、工具の手入れをほんとにやりますよ。メンテしてやるのは、そりゃ一生懸命働いてくれたから、ホコリとってあげたりね。だから、ぼくの使ってる道具は みんなきれいだと思う 。使いこまれていくからね。手入れはほんとに好きだよね。

(ものを作る行為 が、 個人のレベ ルで問題にされるかぎり、道具も当然個別化される。自分の目的に合わせて、その都度、その局面での道具が具体的に必要とされるということだ。それは、作る喜びと苦しみの中で出会える道具とのかかわり方と言えるかもしれない 。小林の道具論からは、精神と物質をとり結ぶ 道具に注がれた愛情あふれる連帯感が伝わってくる。)

( )内は質問者であり、インタビューをまとめた十川氏のコメント

*1992年メディア記事より抜粋(画像は掲載された写真の中より一部を紹介しています)

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樹脂の加工

樹脂を型に流し込んでものを作る方法を覚えておくと、工作の幅がぐんと広がっていきます。ツマミなどのちょっとしたアクセントになる部分を作ったり、時には小さなラジオの筐体(きょうたい:ケースのこと)を作ることもできます。

型取りした色々なツマミ

型取りした色々なツマミ

ラジオの筐体(ケース)

ラジオの筐体(ケース)

注型する樹脂には幾つかの種類があります。代表的なものをいくつかあげておきます。

1 不飽和ポリエステル:俗にFRP(Fiber Reinforced Plastics 繊維強化プラスチック)に使われるものの仲間で、透明性が高くきれいな材料です。しかし扱いがうまくないと、いつまでもベタベタしたり、早く固まりすぎて反応が激しいと発熱して割れてしまったりします。また、体積の縮みが少しあり、少々脆い場合も生産会社によってあるようです。使用法はそれぞれの説明書に従ってください。

2,エポキシ樹脂:透明性も高く、縮みもほとんどありませんが、タイプによっては硬化時間が長くまた少々高価です。

3,ポリウレタン樹脂:硬化時間が早く扱いも楽で、ポリエステルのような強い臭いもあまりなく、比較的安価です。ただ、透明性はありません。しかし、最近は透明性の高い注型用のウレタン系樹脂もあります。作例ではポリウレタン樹脂を使用しています。これは同量の2液混合型であらかじめ必要な量をはかっておいて使います。

たとえば樹脂でツマミを作るとします。それにはまず原型を作ります。

写真では小さなホビー用の旋盤を使っていますが、もちろんボール盤で作業できます。旋盤で作業できる場合はバイト(チゼル)という工具で削りますが、写真で見るように刃物を安定して使うための台(レスト)の部分がボール盤にはないので、木工のヤスリで作業をしたほうが安全です。

写真では小さなホビー用の旋盤を使っていますが、もちろんボール盤で作業できます。旋盤で作業できる場合はバイト(チゼル)という工具で削りますが、写真で見るように刃物を安定して使うための台(レスト)の部分がボール盤にはないので、木工のヤスリで作業をしたほうが安全です。

また原型は粘土で作ったり、 ビンのキャップを利用したり、市販のツマミを利用してもよいでしょう。

型取りにはシリコンゴムを使います。たいていは主剤と硬化促進剤(キャタリスト)の組で売られています。型取りをしたい原型を効率よく並べ、まわりに壁を作ります。あるいは写真左のようにプラスチックのカップ(たとえばペットボトルを切ったもの)等、身近なものを利用することも出来ます。あらかじめ原型に離型剤を塗っておくとよいでしょう。

型取りしたいツマミなどを並べ、写真のように木の端材などを利用して土手を作ります。

型取りしたいツマミなどを並べ、写真のように木の端材などを利用して壁を作ったり、あるいは調度いい大きさのカップなどを利用。

型取り用のシリコンゴムはたいてい粘度のある白っぱい液体です。細く糸のように原型にかけてゆくと気泡が入らずうまくできます。

型取り用のシリコンゴムはたいてい粘度のある白っぱい液体です。細く糸のように原型にかけてゆくと気泡が入らずうまくできます。

一昼夜あるいは早いもので数時間後にシリコンが固まったら原型からはずし、離型剤を塗っておきます。シリコンは柔らかいので簡単に成形物を型からはずすことができます。

それぞれの樹脂の使用法に従い、型に注ぎ入れます(写真6)。ただ、ポリウレタン樹脂は、気温や室温が高いと2液混合後1~ 2分で硬化する場合があるので注意をしましょう。

それぞれの樹脂の使用法に従い、型に注ぎ入れます。ただ、ポリウレタン樹脂は、気温や室温が高いと2液混合後1~ 2分で硬化する場合があるので注意をしましょう。

樹脂が完全に硬化したところを見計らって、シリコンの型から成形物を注意して取り出します。

樹脂が完全に硬化したところを見計らって、シリコンの型から成形物を注意して取り出します。

成形物のバリを削り、裏が平らでなければ平らな板の上に敷いたサンドペーパーで削り整えた後、中心を求めます。その際センターゲージがあると便利です。

写真のようなセンターダージ、あるいはセンターヘッドと呼ばれるものを使うととでも楽に作業ができます。写真上部のもののは自作したものですが、これは直角なL字型の真ん中45度のところに直尺がついたもので、常にこれに当てた円の中心を通る線が引けるというものです。ですからセンターダージを当ててツマミを少しずつ回転させてしるしをつけ、交点を求めれば中心点が出ます。

写真のようなセンターゲージ、あるいはセンターヘッドと呼ばれるものを使うととでも楽に作業ができます。写真上部は自作したものですが、これは直角なL字型の真ん中45度のところに直尺がついたもので、常にこれに当てた円の中心を通る線が引けるというものです。ですからセンターゲージを当ててツマミを少しずつ回転させてしるしをつけ、交点を求めれば中心点が出ます。

中心を求めた成形物に穴をあけ、この場合外径10mm、内径6mmのスペーサーを入れ、スペーサーの出っ張った部分を金ノコで切った後、瞬間接着剤でつけであります。

中心を求めた成形物に穴をあけ、この場合外径10mm、内径6mmのスペーサーを入れ、スペーサーの出っ張った部分を金ノコで切った後、瞬間接着剤でつけであります。

成形物の横から垂直に中のスペーサーの中心へ向けて、2.5mmで穴をあけているところ。

成形物の横から垂直に中のスペーサーの中心へ向けて、2.5mmで穴をあけているところ。

3mmのタップを立て、そしてスペーサーのところまでの樹脂のところを3.5mm位で穴をもう一度あけて、3mmの頭なしのネジを入れればできあがりです。

目盛りをもっと際立たせたければ、原型であらかじめ掘っておいたところに明るい(ときには暗い)色をへこんだ部分にゴムベラ等で埋めるとよいでしょう。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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ヴァリコンの製作について

戦前から1960年代くらいまでの少年向けのラジオエ作の本や雑誌を見ていると、 ときどき誰がこんな高度なものを作るのだろうと思うような記事に出くわすことがあります。しかし、そんな中にもヴァリコン、ヘッドフォン、クリスタルイヤフォンの製作記事は発見できませんし、往々にしてそれらは個人では製作不可能なものとして紹介されています。

おそらくその時代にヴァリコンの製作をいちばんむずかしくしていたのは、アルミ板が高価で入手できなかったことでしょう。

これはぼくが作ってみたヴァリコンですが、実際に作ってみると、一般の工作術から考えた場合、決してむずかしいものではありません。

(写真の左(A)と右(B)は実際に鉱石ラジオに組み込みました。中央は1910年ころのヴァリコンを写真で見て作ってみたもの。ともに容量直線型です。

写真の左(A)と右(B)は実際に鉱石ラジオに組み込みました。中央は1910年ころのヴァリコンを写真で見て作ってみたもの。ともに容量直線型です。

写真はヴァリコンBのできあがったパーツです。前面と背面の黒い板は粘土で原型を作り、ツマミを作った要領で製作しました。「樹脂の加工」参照

写真はヴァリコンBのできあがったパーツです。前面と背面の黒い板は粘土で原型を作り、ツマミを作った要領で製作しました。このブログの「樹脂の加工」ページを参照。このタイプのヴァリコンにはストッパーがなく、くるくるといくらでも回ります。

写真はヴァリコンAで、Bのものよりちょっと精密に作ってあり、こちらはス トッパーがついています。

写真はヴァリコンAで、Bのものよりちょっと精密に作ってあり、こちらはストッパーがついています。

写真はAヴァリコンを分解したところです。ローター(回転するところ)が前面のパネルと導通しているので、パネルとステーター(羽の動かないところ)とを絶縁するために、黒いエボナイトの板があいだに入っています。

写真はヴァリコンAを分解したところです。ローター(回転するところ)が前面のパネルと導通しているので、パネルとステーター(羽の動かないところ)とを絶縁するために、黒いエボナイトの板があいだに入っています。

アルミ板は厚いものでも糸ノコで切ることができます。切る面に対して直角を維持してゆっくりと作業し、切りづらかったり、引っ掛かる感じがあれば、油を少し差すとよいでしょう。作例ではどちらのヴァリコンも、ローター、ステーターとも、羽のところは0.8mmのアルミ板を重ねて切り、ヴァリコンAの前背面のパネルは3mm厚のアルミ板を使いました。ローターやステーターの羽の切り抜きをするとき、まず重ねて切るわけですが、ぼくがいろいろ試したなかでは、それらの板をペーパーセメントで仮に貼りつけると安定した作業ができます。

ヴァリコンBが、ローター部13枚、ステーター部14枚で、Aのほうがローター部12枚、ステーター部13枚です。

それぞれの羽を十分に取ることができるくらいの大きさにアルミ板を切り、貼り合わせたあと、糸ノコでカットする前にまず穴のほうを先にあけます。

それぞれの羽を十分に取ることができるくらいの大きさにアルミ板を切り、貼り合わせたあと、糸ノコでカットする前にまず穴のほうを先にあけます。このときのコツはゆっくりとあけること。もし早くあけようとして強くドリルを当てると、それぞれの薄板からバリが出て、それが板と板のあいだを押し広げ、ちょうど水にぬれた辞書のようにふくらんでしまい、その後の作業をむずかしくさせてしまうからです。ゆっくりあけたつもりでも、少しはふくらむでしょう。そうしたら万力などでふたたび押さえて、ピッタリとつけておいてください。

そのあと糸ノコで外形を切り取ります。

そのあと糸ノコで外形を切り取ります。

その後万力に挟んでヤスリで仕上げます。

その後万力に挟んでヤスリで仕上げます。

仕上がったものをペーパーセメントの溶剤を入れたビンの中につけて、 1枚1枚に 羽をはがします。

仕上がったものをペーパーセメントの溶剤を入れたビンの中につけて、 1枚1枚に羽をはがします。

仕上がった羽の部分(ヴァリコンAのローターとステーターの羽)です。

仕上がった羽の部分(ヴァリコンAのローターとステーターの羽)です。

このようにていねいに作ったつもりでも、組み上げてみると出っ張ったリヘこんだりしています。キチッとそろった仕上がりにしたければ、組み上げたあとで、木片を当てたサンドペーパーで仕上げます。

小林健二の技法

ヴァリコンの組み上げ方は、ローターやステーターの羽と羽のあいだに2mmのスペーサーあるいはカラーと呼ばれるものを入れ、ステーターの部分は中に通した6mmのネジに前後からナットで締めつけ、ローターのほうは前と後ろのパネルで3mmの全ネジで締めつけて固定します。ローターとステーターはちょうど互い違いに入れ子状に組み合わせておかなければなりませんので、お互いの羽が触れあわないように、あいだを調整してから固定すればできあがりです。

ヴァリコンの組み上げ方は、ローターやステーターの羽と羽のあいだに2mmのスペーサーあるいはカラーと呼ばれるものを入れ、ステーターの部分は中に通した6mmのネジに前後からナットで締めつけ、ローターのほうは前と後ろのパネルで3mmの全ネジで締めつけて固定します。ローターとステーターはちょうど互い違いに入れ子状に組み合わせておかなければなりませんので、お互いの羽が触れあわないように、あいだを調整してから固定すればできあがりです。

ステーターとローターがショート(接触)していると、どんなにほかをいじっても音は絶対に聞こえませんから注意しましょう。

アルミはちょっと加工がしづらいと思う人は、厚紙の両面にアルミ箔を貼ったものでも、まったく同じに機能します。

アルミはちょっと加工がしづらいと思う人は、厚紙の両面にアルミ箔を貼ったものでも、まったく同じに機能します。(写真の左上の少し色が違うものは錫箔をはったもので、あまり一般的ではありませんが錫箔でもOKです。)

まず厚紙を1枚1枚カッターやはさみで切って、スプレー糊でアルミ箔を貼ればよいのです。このとき、裏と表の箔は必ずショートするように注意してください。穴は箔を貼る前にポンチであけておきましょう。貼りあがったあと、コップや瓶をローラーのように転がしてぴったりと貼るのもコツの一つです。

写真はヴァーニャルダイヤルで、左が300度用、右が180度用でヴァイリコンは180度回転角が最大なので、このタイプを使います。

写真はヴァーニャルダイヤルで、左が300度用、右が180度用でヴァリコンは180度回転角が最大なので、このタイプを使います。

ヴァーニヤルダイヤルは、よく測定器や通信機にわれるダイヤルで、内部のギアの関係で細かい調整をするのに適したものです。ダイヤルのツマミを4回転させると軸が180° 回転するしくみになっています。ヴァリコンBにはストッパーはなくいくらでも回転しますが、このヴァーニャダイヤルをつければ、最小と最大の位置にくるとそれ以上いくら回しても軸に回転がかからないしくみになっているので、ストッパーをつけたのと同じ効果があって便利です。

自作ヴァリコンに「樹脂の加工」で作例として作ったツマミを取り付けたもの。

自作ヴァリコンに「樹脂の加工」で作例として作ったツマミを取り付けたもの。

「樹脂の加工」

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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