あると便利な自作の治具や工具1

あると便利な自作の治具や工具(その1)

pro-tools-jisaku01治具や補助工具の自作

今まで何回かにわたり工作のためのいろいろな工具について紹介して来ました。それらの数はそれ相当にのぼりましたが、これらがすべて手元にあれば工作を楽しむ上で充分かと言うと、それは難しいかも知れません。逆に言えば実際の工作ではそれぞれの目的によって考えてみれば、それぼと多くの工具を使用することはおそらく無いでしょう。では後何が足りないかと言うと、それは治具や補助具と言われるものたちです。たとえばこれらは同じ長さに木の棒を切るためのしるし付けを楽にする、木切れのようなものであったりします。今回紹介するサラの木ネジを木切れに差しただけのしるし付け用など比較的たわいのないものから、時にはそれなりに工具と呼べるしっかりしたものまで無数にあるのです。それらはたいてい工作者にとっては手早く間に合わせのように作る事ができる反面、かけがえのない一つの大切な工具として高めていける多数の要素を含んでいます。かえして言えば完成度の高いいろいろな工具等も、このような先人たちの試行錯誤の中で反復しながら歩んで来た結果として、この世に残ってきたものとも言えるでしょう。ですから工作者自身の目的に最も効果を上げるためのこれらの治具等は、重要な工具の一つと言っても差し支えないのです。またこれら治具を自作する時、その目的や工作内容を理解していなければ、なかなか役に立つものは作れません。ですから、試作しながら思索することが、逆にそれらを把握しやすくするということもあるのです。ともあれ、治具を作るということ自体が工作なのですから、工作者にとってはこれもまた楽しみの一つになることは間違いないでしょう。では治具とはいったい何でしょう。治具とは本来英語のJIGという言葉の和訳です。本当に名訳だと思います。最近では大きな加工機械の補助用具やルーターなどのテンプレートのようなものを全体的にこのように

呼びますが、もともとはたとえばこんな時に使います。ある不定形Aの品物を万力に加えて固定しようと思います。しかし何せ不定形であるため品物を痛めることなくしっかりと固定するのは難しいとします。そんな時、どのようなものがこの不定形Aと万力との間にあればよいかと考えて作られるのが、スペーサーや補助具としての治具となる訳です。ですからこの治具は、その万力と不定形Bにとっては何の役に立たないこともあります。もう少し簡単な例をあげれば、ある材に126.7mmのしるしを多数付けなければならない時、特別な機具を用いず定規だけで行うとしたら結構大変かも知れません。そんな時正確にそのサイズにマーキングをした金属片などがあれば、作業を楽にしてくれます。まさにそれは一つの治具として、そして工作者の大切な工具として機能すると言うわけです。これらはいかにもアマチュア的と思われがちですが、工作好きの面々にはもちろん、実際のプロたちの現場で大変重要で、おそらく治具を作らず作業する方は一人もいないのではないかと思われます。今回はあくまでも治具の概念を説明するための工作となりますので、ちょっと便利な小物工具という感じのものを選んでみました。さらに皆さんの工夫を加えて使いやすくしてください。最初にご紹介するのは木の小片にサラネジを付けただけのものですが、工作者ならすぐに理解していただけるでしょう。一種の毛引きですが、これらは想像以上に効果を上げてくれます。もちろん作ることの簡便さもありますが、それよりもたとえば木工であれば毛引きによって木の繊維を痛めませんし、金工にもこの毛引きだったら刃が痛んでしまうという心配もない訳です。とにかく最初はその場しのぎの思い付きから作ったものも、使うことが多くなったりしてゆくと、思わずズボンのはじあたりで磨いてさらにしばらく眺めてしまったりというように、多少はずかしながらも愛着が沸いてくるものです。またその後もっと自身の工作技術を使って精度の高いものへと凝っていくことも自由なわけで、治具や工具を作るのが趣味なんていう人が出てきても不思議ではありません。このような言い方は、ダイレクトに自分を正当化しているように見えますが、今回の記事の為に製作したものは結構な数になり、製作途中を撮影のために中断しながらでもほぼ一日で作りました。しかも紙幅のため全部は紹介できなかったので、今回はそのうちの幾つかとなった次第です。まさに治具作りはそのくらい没頭できるということです。工作を楽しむ大事な要素は、自身の目的や作業内容の把握と言えますが、治具を工夫しながら考えて安全にすっきり仕上げていくことができると、さらに充実を感じさせてくれると思いま

す。また今回紹介させてもらう治具は、あくまでも一つの例であって、凡用性をあまり持ってはいないと考えてください。たとえばディプスゲージひとつをとってみても、作例では5mm程の径で150mmくらいの長さのものを作りましたが、目的によっては長さ10mmもあれば充分であったり、1m必要な時もあれば、太さも0.8mmでないとダメだったりすることもあるでしょう。これらはすべて工作するもの各々の必要性によって作られるからです。ですから、厚みの中心を割り出すセンターマーカーゲージも、いかにもあると便利と思われても、目的のサイズや使い勝手を考えると、かえって市販品として製品化しずらいという理由も分ります。

ですからまさに自作する意味があるとも言えるし、堂々と公然とそれぞれの工夫を加えた治具作りに没頭していただきたいと思います。

EZ LINE MARKER+SANDPAPER SIZING TOOL

どなたの工作室にもあるありふれたサラネジと木片等です。これらで手はじめに簡易な ラインマーカーを作ってみましょう。

どなたの工作室にもあるありふれたサラネジと木片等です。これらで手はじめに簡易な ラインマーカーを作ってみましょう。

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作ると言っても出来上がりの写真を示すことしかできない程ですが、いざと言う時に即実用となります。

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どこにでもあるコンパネの切れ端とネジとワッシャー、そしてもう切れが悪くなった金ノコの刃などです。これでサンドペーパーカッターを作ります。この工作は基本的に金ノコの刃をベニヤの切り口に当たるところにネジでしっかりと止めれば出来上がりということです。

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この赤や緑の線はサンドペーパーを切る時の見やす線です。たとえば赤は サンドペーパーを横方向に1/2,1/3,1/4…. と切るためで、緑は縦方向に同じことを示しています。

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サンドペーパーをサンダーのために1/3と1/6にカットする時にとてもきれいにできて便利です。切り口はサンドペーパーのザラザラ面を上にして、線に合わせてしっかりと押さえ、ただもう一方の手を下方に引けばよいだけです。

LINE MARKER

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少し凝ったラインマーカーを作ってみましょう。本当にそこら辺にある材料ですが、15mm厚くらいの木に テンプレートで楕円を書いたものに15mm,8mmの真鍮棒と5mmの金ネジ、平頭ネジ、ワッシャー等です。

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バンドソーで木の外形を切っていますが、この辺は使いやすいようにその都度考えてみます。

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切り口をベルトサンダーで滑らかにしているところです。すでに真鍮には15mmの穴が貫通しないようにあけてあります。

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木に入れ子式にしっかりと可動棒を固定するための金具を作るため、15mmの棒に8mmの穴を旋盤であけているところです。もちろん穴さえあければよいのですが、動かないようにささえてドリルであけても構わないのです。

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ここまでの材が出来上がりました。穴の径は入れ込む金属より多少小さい方がよいですが、接着剤を使用しても構いません。

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マーカーの刃に当たる部分はワッシャーで作ります。8mmの棒のはじに タップを立てて行うとよいでしょう。 ワッシャーはガタがこない程度に閉め、使用する時は回るようにしておきましょう。

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先端部分の拡大写真ですが、ワッシャーの部分はあまり出すぎないような、なるべく可動棒より少し大きめというくらいが使いやすいでしょう。

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可動棒をしっかりと固定するために止めネジを使ってと思い中央の真鍮部分までタップを立てようとしたのですが、タップの長さが足りないことに気付きました。

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行き当たりばったりの仕事ではこのようなことに出くわすことがあります。そこでネジの頭を軽く沈める程度に上部に少し大きめの座グリを入れます。

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ネジは15mmの同じ真鍮の棒と全ネジによって作ります。調度ぴったりのかざり段ネジはあまりないからです。只、5mm厚ほどに切った15mm丸棒と全ネジをくっつけるのに少しタップを立てておきたいのですが深い穴が開けられないので、そんな時は頭のトンガリを削っておくとよいでしょう。

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タップが切ってあってもこのネジが機械的に受ける力に耐えるようにするのにロウ付けが必要ですが、この場合は ハンダロウで充分です。

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きれいに仕上げるのにはネジをつぶさないように配慮してボール盤に取り付け、サンドペーパーで仕上げるとよいでしょう。

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ネジが出来ました。時間があればもっと丁寧に仕上げたいところです。

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一応全体のパーツができて組み立てることとなります。

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ワッシャーがコロコロと転がってマーキングされます。このラインマーカーはまさにケヒキと同じように使用できますが、木の繊維をケヒキのように切断しないで軽く押し付けてあとを付けるだけで、その後多少湿り気を与えてあげれば加工後線はすっかり消えてくれます。工作物にそんな跡を残したくないとお考えの方には一つあると便利でしょう。

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DEPTH GAUGE

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15mmのアルミ角材を弓ノコで切っているところです。ゆっくりやれば結構きれいにカットできます。

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上から弓ノコ(カットする材が厚いのでなるべく荒い刃を使います)、普通の糸ノコの刃、ヤスリ二種、加工途中のアルミ材、止めネジ、6mmの鉄棒。

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だいたいの形にヤスリ等で成形した部材

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必要な長さにカットし切り口を整えた丸棒とその棒が入り固定するためのネジ穴を開けた部材。そしてネジが主な部品です。

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組み上がった深さゲージ。これで同じ深さの穴を開ける時のゲージにしたり、定規が入らない穴の深さをとって、その後で定規で計ったりといろいろ使用できます。

THICKNESS CENTER FINDER

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この厚み出しセンターゲージの材料は今回20mmの真鍮角材、6mm真鍮棒、そして破損したシャンクが3mmの超硬のドリルビットです。これは0.5mmのドリルのはずだったのですが、ちょっと落としただけなのにただの3mmの棒となってしまったものです。結構高価だったので捨てるに捨てれずいましたが、今回は復活しました。こんなところも治具ならではです。

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先程のラインマーカーを早速使い、角材にしるし付けです。意外に使いやすく便利です。

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部品が一応そろいました。止めネジ(ホーローネジ)にぴったりなのがないので全ネジより作りました。

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ピンを本体に入れる時のコツはハンマーで叩き込んだりしないで、万力などの中心に挟んでゆっくりと締め付け入れてゆくと曲がらず正確にセットできます。

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出来上がりの全体です。25と刻印してあるのはそのくらいの厚みまで使用できるという目安です。センターのピンは本来何でもよく、この場合は超硬であったため青砥のグラインダーで尖らせてあります。ピンの出し具合は少なければ少ない程きれいにしるし付けが出来ます。

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この治具は2本のピンに加えることが出来る厚みの板にナナメにしてピンを常に側面を滑らせれば、いつも板厚の中心にマーキングができるというわけです。もちろん木でも作れますし、小型のものなら3mm厚でもその中心に線を正確にしるせます。

SELF CETERING PUNCH

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この治具はポンチが横から見やすいように面を落として作るとよい結果が期待できます。そんな時コロの穴径が入るドリルで穴を開けた後、ボール盤で45度の面トリビット等を利用するときれいな仕事ができます。

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必要な部分を木取りしてカットします。

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出来上がりの状態ですが、76とはこの場合のくわえ込み幅を表わしています。

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あらかじめスコヤ等でポンチを打つ場所にしるしを付けておきさえすれば、その中心に簡単にポンチを打つことができます。ポンチはローレット加工のシャンクのものが使いよく、そのザラザラで落ちることなく、また可動でもあるのでポンチはいつも半固定となり使いやすくなります。

BOARD-CENTER MARKER

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先程の厚みセンターマーカーをもっと長いものとすれば板の中心線を引くことができるわけで、作る理屈は同じで、中心のマーカーといつも同じ距離にピボットがあればよいわけです。

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写真では分りやすいように鉛筆を結構出してありますが、鉛筆の出方は少ない方がガタがこないで使いやすいでしょう。また鉛筆を抜き差し変えれば、別のサイズにも対応するというわけです。

CHISEL PLANE

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チゼルプレーンは直訳するとノミカンナということになります。写真は木の板を旋盤にかけてハンドルの部分を作っているところです。別にハンドルを後から付けても同じですが、旋盤があったので使ってみたというわけです。

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このように偏心した材を削る時は注意が必要です。この作例はあくまでも作り方の一例にすぎず、多少凝って作ってみたい時の参考というふうに思ってください。

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一応削り上がった本体、洋カンナのたまたまあったブレード、止め木となる部分やネジ、糸カズガイなどです。思い付いた時にノートに書いたスケッチの上に乗ってます。

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ブレードを挟んで固定するために、ぐらつかないように糸カスガイを打ちこんであります。46とは刃の幅です。

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出来上がりの写真です。個人的好みからちょっと古そうな感じに仕上げてあります。そして作ってみたら木の止め板が多少ぐらつくのでネジを足してあります。

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あり合わせの材で作ったため、ハンドルの部分に木の節がきてしまいました。この辺も自作の愛嬌ということで返って愛着となるかも知れません。

pro-tools048チゼルプレーンを使っているところです。このような工具は使い慣れると結構便利で突き止まりまで刃がいくので、カンナでは削れない箇所も刃が届きます。

HANDLED TOOLS

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木の板を少し加工し、ハンドルとしてそこにサンドペーパー、皮、砥石、セッケン等々を付けただけでちょっとした工具に早変わりします。

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使いやすいサイズを決め片側を弓ノコなどでカットし、その切り取ったもので反対側にしるしを付ければ簡単に左右対象のハンドルを作れます。

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それぞれを相応の接着剤でくっつけるだけで完成です。セッケンはその削り粉を少しの水で練ってパテを作り、それを接着剤とします。

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これらは以前に作ったものですが、皮などには青棒や赤棒を塗布して金属などを磨くのに使い、変形の面のものは彫刻刀などの研ぎの仕上げに使っています。

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セッケンのものは?と思われる方も多いかも知れませんが、ぼく自身絵を描くのが一番の仕事ですので、油絵具の付いた筆を洗うのに実はとても役立ちます。まだ十代の頃に最初に作った治具の一つとして紹介させてもらいました。

小林健二(写真+文)2005年