工具を育てる楽しみ
模型等の工作は、大きく3種くらいに分けることが出来るかも知れません。1つは木工、2つめは金属、そして3つめには紙、石膏、プラスチック、石など、前者以外のものたちです。今回は、金属の加工や工作に関係したものの一部を紹介したいと思います。また、工作する上で自分で工具やそれに当たる役割をするものを作ることも重要で、市販品よりもはるかに使い易く、また効果を上げることがあります。そして何よりその工夫する過程こそが工作の楽しみであることは、誰もが知ることでしょう。これはたくさんある要素の1つではありますが、例えばハンダのような溶かし易い金属を使って簡単な鋳造物を作り、工作に応用してみるのもおもしろく、またいろいろと発想や工夫に役立つと思います。そこでバイスやハンマーの事例を紹介してみます。ぼくはたいていの場合、工具や機械は新品でなければならないもの以外、中古か自作しますが、このバイスやハンマーも中古で購入しました。中にはバイスの口金が無く、またアゴの部分も削れてしまって使いにくくて、ほぼ鉄の値段で手に入れたものもあります。合板等を組み合わせて簡易な型を造りそこにハンダを溶かし入れ、三角ミゾの付いた口金を作りました。このような口金があると、加工しようとする品物にキズを付けず、また丸棒でさえもしっかり加えるので何かと役に立ちます。おそらく想像するよりもしっかりしていて、もっと固くしたければ亜鉛を入れた合金にすればいいでしょう。また、これらの技術を一度知っておくと、口金の形もその都度必要な形状にできますし、また実際の工作のヒントにもなるでしょう。中古 で もうキャップを取り替えなければならない程痛んでしまったプラスチックハンマーなど、ハンバーガ ーよりさらに廉価でした。それでも厚めの木 の板に同径で孔をあけ 、本体にかぶせ て半田を流し込めば 、 半田ハン マーの出来上 がりです 。 孔にテーパーをつけ ればテーパー ヘッドにな りますし、もちろん好きな形状に 仕上げら れ ます。これは鉛ハンマーより固く 真鍮ハンマーよりはソフトで、真鍮板を平ら に打つのにはとても使い易いものです。 これらはほんの一例 にすぎませんが、試し てみる価値はあると思います。このようなこ とが積み重なっていろ んな面から趣味の工作 が深まってゆくことは、同時に工作者の想いも膨らませてく れるのではないでしょうか。
バイス・ハンマー
誰でも知っている万力(ボーレー型)。安売りの店で入手したものだが、口金を作り替え、台ネジ部分を改造した。
このように自在に物をくわえることができる万力は作業時何かと便利。
ボール盤などによく使われるバイス。右上は通常ベタバイスと呼ばれ、口幅が75mm、その下が50mmのヤンキーバイス、左が両締めのバイス。
ハンドバイス(手万力)。目的によっていろいろな形状がある。小さな刃物を挟みこんで研いだり、保持しづらい物を固定して作業するのに使う。
アゴのところが凹凸になったベタバイスとハンダで自作した口金。
このように口金は用途によって作りかえることができる。
片方(右側)はテーパーをつけた。このようにするとマクレが少ない。
木の厚板はハンマーの径と同じ穴を開けて、隙間のないようにしてハンダを流し込む。
カット&パンチ
板金をカットする電動工具。左がニブラー、右上がストレートシャー。右下が小型ニブラー。
糸ノコは弓の部分、ふところの深さや切る刃によって多種ある。ノコ刃の針を調整する方法もいろいろ。
小さなバンドソー。小さな加工であれば、これで充分な工作ができる。
この小型ニブラーはとても軽く、重さは約700g。2mmくらいまでのアルミ板を切り抜くことができる。
ニブラーは手で持って作業することが多いが、写真のようにハンドルを万力に固定して、作業したほうがやりやすいときもある。この大きさのニブラーで2~3mmくらいの鉄板までカットできる。
角穴をあけるハンドパンチ。
2~3mm厚のアルミ板でも四角の穴あけができる。その穴を組み合わせることで、いろいろなサイズの角穴をあけることができる。
ストレートシャーは直線切りに適している。この大きさで1.6mmの鉄板まで切ることができる。
ファイル&ニブラー
左の上下は金属カンナ、他はヤスリ。木の柄を付けない時は左から二番目のようにエンドを丸くしておくと使いやすい。
キサゲとスクレーパー(左の中ほど2本はバニッシャー)。金属のマクレを取ったり、平面を出したりするのに使い、バニッシャーは磨きに使う。下から4本までは自作。
布のサンドペーパーが約6mm幅でリング状になっている。尖ったところや丸いところがあり、グルグルと新しいサンドペーパーの部分を使用する。粒度は80,120,160,240,320,400,600が揃っている。
Flex-l-Fileという商品名。 サンドペーパーを弓状に張ったもの。丸い部分や細かなところに便利。粒度は150,280,320,600がある。
ハンドニブラー。左のタイプは手で握り、右上の刃で金属板をカットしていく。
このタイプはアルミなら2mm、真鍮なら1.5mm、鉄板なら1.2mmくらいまでカットできる。切り刃の幅はおよそ2.5mm。
中央がハイトゲージ、右が尺立ホルダーに立てた30cmの物差し、左はサーフェイスゲージ、手前は自在ゲージ。
各種ノギス。下からそれぞれ最大7cm、10cm、30cm、60cm。
ノギスには左のように深さを測るもの、ダイヤルのついたもの、アゴが長くできるものなどがある。
自作したトースカンや小さなハイトゲージ。このような物を作るのも金属加工の練習になる。
マイクロメーター。上のものはホルダースタンドに取り付けてあり、下のものはデジタルの直読式。
ユニバーサル・ベベル・プロトラクター。自在に角度を測ったり、ケガいたりするのに使う。
ねじ切り
ダイスでネジを切っているところ。
このようにダイスホルダーの軸が貫通していて、ボール盤や旋盤に付けて長いネジを作ることができるものもある。
安定してネジを切るにはハンドドリルを使うこともできる。
タップやダイスは金属工作には欠かせない工具の一つ。いろいろな径やピッチのものがあるので、なるべく使う本人が使いやすく整理しておく方が良い。
レース&ドリル
20年ほど使っている愛用の小型旋盤。エムコのユニマット3で、心間はおよそ170mm弱。
ピンバイス各種。スプリングや螺旋状の溝によって先に取り付けた細いドリルなどを回転させる仕組みのものもある。下から3番目はマイクロホルダー。
旋盤のバイトたち。ヘールバイトや他、5本は自作。ハイス鋼などでできていてる完成バイトは削って作ることしかできないが、一番下の鋼棒からだと簡単な鍛造で、焼き入れに注意すれば非鉄用のバイトが自作できる。
簡易型折り曲げ器。専門的なものまでも各種市販されている。
細いパイプの切断はツブレや変形が起きやすく意外と難しいもの。小型のレジノイドタイプのカッターや小さなパイプカッターが有効。
ウエルディング
ハンダゴテ。板金用となると下の小さな30Wくらいから上の300Wくらいまである。電動模型用には先を直角に曲げたものがよく使われる。
ハンダ付けより高温でのロウ付けにはトーチを使う。ブタンガスのものから、エアーや酸素を併用したものまで各種ある。
抵抗式ハンダ付け器。上にあるフットスイッチを踏むとピンセット状のハンドピースに挟まれた部分のみに大電流が流れて発熱、その部分だけが高温になりハンダ付けができる。
作業をしているところ。先端部分に挟まれたところのみが発熱するので、そばのハンダを溶かすことが少ない。
ガスバーナー。マイクロトーチやハンダごてを使用する前にロウ付けするものの全体を多少暖めておくと、ハンダがうまく流れて、楽に作業できる。
旧式のハンダ吸い取り器。漏れ電流 に弱いICがたくさん並ぶ基盤には向かないが、工作用にはかえって使い易い場合もなる。
小林健二(写真+文)2003年