あると便利な自作の治具や工具2

あると便利な自作の治具や工具(その2)

肩ならしのちょっとした工作。そんな時、治具や自家製工具を作ることはまさにうってつけです。そして自分の本当にやりたい方向と出合う機会にもなるかも知れません。 今回の記事のために作られた様々な治具や自家製工具。

肩ならしのちょっとした工作。そんな時、治具や自家製工具を作ることはまさにうってつけです。そして自分の本当にやりたい方向と出合う機会にもなるかも知れません。 今回の記事のために作られた様々な治具や自家製工具。

海外の豊富なアクセサリーや治具

何かを作って楽しむ趣味について言えば、日本での「ホビー」は一部のマニアと言われる高度な技術を持つ人たちを除くと、まだまだ始まったばかりといっても過言ではないでしょう。ですからホームセンターなどで電動工具を見てもプロ仕様のものが多く、 アマチュアが使いたいものと比べると、大抵は大きくまた力も強く作動音も大きいといったものが多数を占めています。しかも、小さく手ごろなホビー工具があったとしても、一般的にプロ仕様のものよりも生産数が少ないことから割高になるケースが多いようです。そのへんが「工作がとても好きな人」以外の「ちょっと何かを自作してみたいと思う人」を、実際にトライすることから遠ざけている理由の一つかもしれません。

また、ちかごろはコンピューターシステムの普及によって、インターネットを通じて海外の工具や工作材料のサイトにアクセスする方も増えたことと思います。そんな時にそれぞれのホームページを見て少なからず驚くことも多いはずです。なぜならホビー用であっても、たいていそこで紹介されている工具などは、日本では思ってもみなかったような豊富なアクセサリーやアタッチメントを市販品として有しているからです。個人輸入などで手に入れられれば問題ありませんが、いろいろなアクセサリーについては自作することもできるのですから参考になることも多いはずです。

工作をする前のウォーミングアップ

本来専用工具や治具とはそれぞれの目的に対して特化したものであるだけに、特殊なものや他には流用することができないことが多いものです。ですから、汎用な目的をもつ本誌のような書籍で著すのは、ある意味で矛盾する場合もあると思います。でも、工作好きの方なら分野を超えてこの記事がヒントになってもらえたらと思い、前回に続いていくつかの治具や自家製工具について、工作例を紹介したいと思います。

これら簡単な(多少そうではないものもあるかも知れませんが)工作は、まさに競技の前の準備運動のような側面を持っています。仕事でいつも工具を使うわけではない方が、急に電動工具を使用して思いもよらない事故を被ったり、そこまでいかずとも、材を間違えて短かめに切ってしまい、残念な気持になったりということもあるでしょう。またいろいろな工作をする上で、なかなか解決できない事柄によって前に進めずにいる時に、ちょっとした思い付きから作った治具や自家製工具でかえって楽しく作業ができたりすることもあるでしょう。常日頃、時間がありさえすれば様々な工作について考えていることは、まさに趣味としての一番の喜びでもあるです。自家製の工具や治具は一般的に市販されていないとか、自分の求めている用途や目的には多少沿わないとかいった折に作ることが多くあります。ですからここに示すものもまったく同じ例で作りたい思う方は少ないと思われますが、あえて作例としたのは、あくまでも目的に沿って考えればフルオーダーメイドとして自作できるという点です。

また近ごろはコンピューターシステムの普及によって、インターネットを通じて海外の工具や工作材料のサイトにアクセスする方も増えたことでしょう。そんな時にそれぞれのホームページを見て少なからず驚く人も多いはずです。なぜなら、大抵そこで紹介されている工具などは、思ってもみなかった様なアクセサリーやアタッチメントを有しているからです。何かを作って楽しめる趣味について言えば、日本での「ホビー」は一部のマニヤと言われる高度な技術を持つ方々を除くと、まだまだ始まったばかりといっても過言ではないでしょう。ですからホームセンターなどで電動工具を見ても、かえってプロ使用のものが多く、アマチュアが使いたいものと比べると、大体は大きくまた力も強く作動音も大きいといったものが多数をしめています。しかも、小さく手ごろなホビー工具たちは、一般的にプロ使用のものよりも生産数が少ないことからも、割高になるケースが多いようです。その辺が「工作がとても好きな人」以外の「ちょっと何かを自作してみたいと思う人」を、実際にトライすることから遠のかせている理由の一つかも知れません。でもいろいろアクセサリーについては自作することもできるのですから、参考になることも多いはずです。趣味とは土台好きで行うことなのですから、たとえば欲しいものの製作に、購入するよりも資金や時間がかかったとしても、換えがたい充実感が得られたりもします。工作する喜びには努力のあとの達成感も大きな要素の一つかも知れません。また失敗ばかりしながらも工作に熱中していけるような人はそれが特性であって、多分この世に生まれたその人なりの人生を見つけようとしている行為なのでしょう。それこそがある意味で趣味の真中にあるような気がします。

今回はサンドペーパーのホルダーやハンマーなどを作ってみましたが、わざわざ何で百円ショップでも売っていそうなものをと思う方もいるかも知れませんが、一度試してみてください。結構楽しいものです。

またぼくは自分の髪を乾かすのにドライヤーを使ったことはほとんどないのですが、絵具を乾かしたり工作する時々に結構役立ちます。以前から持っていたこの古いドライヤーは、もともと台が付いていて、立てて使えるようになっていたものですが、ぼくが入手した時はすでになくなっていました。ですので「ちょっと作ってみよう」と思ったのが今回の記事に至った理由でもあり、どうせ作るのなら角度も変えられた方がいいと考えたわけです。この一連の工作は思いの他いろいろな要素が含まれていて、木工加工、金属加工、そして塗装(今回は写真での紹介は省きました)などです。しかしながらこれが当り前の工作する姿で、様々な行程入ってくることがまた楽しみを増やすことだといっていいでしょう。それぞれに学ぶことが多く、それが何よりも工作好きをさらに深い世界へと誘ってゆくことでしょう。

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おなじみの小さなサーキュラソーテーブル。ホームセンターでもよく見かけるタイプ。

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この日本製の電動工具のためにアメリカで市販されているが日本では販売されていないアクセサリーの一部。とても目の細かく薄いハイスブレードやレジノイド製のものなど、多種あります。またリップフェンスに付けられるアタッチメントはとてもしっかりとしている。そして透明アクリル製のブレードプレートなど。写真には写っていませんが、他に切断幅を容易に決めることができるリッピングゲージやクロスカット用のスライディングプレートなどもあります。

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小さなテーパージグ。左側の小さな出っ張りに材をひっかけ、右側をリップフェンスにくっつけて押して、自在にテーパーを切ることができるもの。自作するのも容易にできるので参考にしてください。また小さくてもキックバックは危険なため、それをふせぐ水平方向と垂直方向用のフェザーボード。とても小さくかわいいが正確に作られていて充分実用的である。小さな万力は リップフェンスに取り付ける時のもの。

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この可動フェンスは少し説明しずらいですが、指で持っている部分をスライドさせるととても正確に少しづつ切断を可変できる仕組みになっています。しっかりとした銅製で、0~最大4ミリくらいまで驚く程微調整ができます。

ソルダーハンマー+マレット

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ハンダを使ってハンマー等を作ってみます。一番上のものが長さ18センチくらい。その下は樫で頭を作ってあり、その下2点がやはりハンダ製で、長い方が27.5センチです。ハンダで頭を作るというととてもやわらかく思うかも知れませんが、市販の鉛ハンマーよりは固めになり、ハードな使い方でなければ一生ものとして充分たえる仕上がりとなります。

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まず柄になる部分を用意する。作例では旋盤を使用しているが、木工ヤスリの荒いもので深めにキザミをつけてもいいでしょう。早い話が頭の部分の抜け止めです。

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柄の太さは自分の好みによって考える。ここでは15ミリくらいの棒から作りました。あまり太くしない方が小さなハンマー(作例のものはマレットと呼ばれるタイプ)は力の加減がしやすいように思います。

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ハンダを流し込む型となるものを木に穴をあけて作る。作例では20ミリで穴を深さ35ミリ程あけ、片方を30ミリくらいまで広げたテーパー状の形にしてみました。この場合使っているのは木工用の鬼目ヤスリ。

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また頭と柄との間を厚紙によって塞ぐ。もちろんハンダが流れ出さないためで、この場合は写真のように柄の左右からはめ込む式がいいでしょう。

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すでに作った型や柄を組み合わせてハンダを流し込む準備をする。作例では土台にしっかりとした紙筒を使い、センタクバサミで止めました。只ハンダは思いのほか熱くまた重いというのを忘れず型を作りましょう。

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錫60パーセント前後のものなら190℃くらいで溶かせます。その時ゆっくりと落ち着いて流し込むこと。もし失敗したと感じたら、あわてず作業を中断して冷えてからもう一度溶かしてやり直せばいいでしょう。

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ハンダが充分に冷えた後、型からはずす。もしはずしにくいならノミで木を割って取り出します。

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型からはずしたところ。このままでも使用できますが、ハンダのバリはヤスリ等で形を整えたり、また鉄のハンマーで軽く全体的に周囲を叩くと表面の強度が高くなります。

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このような小さなマレットは頭の部分を持って作業します。小さいといってもそれなりの比重があるので使いなれてくると小さい彫りものには欠かせなくなるでしょう。

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また型を木板によって作ることもできます。作例は三角の形をした特殊なハンマーでグラスハンマーと呼ばれるもの。型をしっかりと固定してハンダを流し込みます。また木の柄にはネジを貫通させて頭が外れないように工夫してあります。

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型から外したところ。一応出来上がりということですがこのままではとても重くなってしまいます。只どのくらいの重さになるかが分らない場合もあり、このことも考慮して型を作ってみました。

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さらに今使用した型を切りつめて小さなものを作ってみました。大小あるといろいろと重宝するからです

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後からこのようにハンダは金ノコで楽にカットできるということです。厳密にこんな形に最初から型をつくるより、外で調整した方が作りやすい面もあると思います。

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これらはヤスリで形を整えるが、目を詰まらせてしまいがちです。そのような時はチョークをあらかじめヤスリにこすっておいくといいでしょう。また、写真のような削り台を作っておくと何かと役に立ちます。

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グラスハンマーを使用しているところ。額縁や窓枠、あるいはガラスの入る扉などにガラスを針やその他の打ち込んで止める金具などで止める時に使用します。ガラスの面をスライドさせて軽く打ってゆく時、鉄製のものだとガラスにキズが付くことがありますが、ハンダなので比較的心配がいりません。独特な三角の形はもちろん打ち易い為です。

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またもっと軽いものが欲しい時には、小さな木製のマレットを作るのもまた自分用特別仕様となっていいものです。

アブラシブテープホルダー+ワイヤーブラシ

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この紐状あるいはテ-プ状のヤスリについては以前にもこの連載で紹介したことがあります。写真左から太さ0.76ミリ丸180番、太さ1.4ミリ丸120番、幅2.38ミリテープ150番、幅4.76ミリテープ150番といったものです。これらは用途によってとても有効で、製品としては0.31ミリから6.35ミリのものまで市販されています。

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しかし旋盤などの電動工具といっしょに使用する時、巻き込まれて事故を起こすケースもあるので、写真のようなホルダーを目的に合わせて自作するといいでしょう。

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細かくくびれたところなどについてもこのホルダーがあると安全に楽しく作業できます。作例では3X6ミリの平棒スチールを使い、刃寸100X50ミリくらいのもので作りました。

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止め具部分の仕口。ブラインドリベットで一方を固定し、他辺をネジでヒモヤスリを挟んで止め、細いものは穴を通してひっぱりながら固定した後にカットします。

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作例では幾つか作ってみましたが、いざ必要を感じてから初めて簡単に作ることができ、まさにウォーミングアップにはもってこいの実用品です。

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やはり以前に紹介したベルト状のサンドペーパー。この式のものはたいてい1インチ(2.5ミリ)幅なのでそのくらいの木切れと自分で工夫できる止め部分の金具によって、いくらでも自在にホルダーを作ることができます。

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例では金属を削って金具を作ったりしていますが、本来木辺でも充分です。また丸棒の止め具も締める程に引き込まれるのでキッチリと張ることができます。

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また単に切り込み部分で最初にベルトをはめて、終りの部分をクサビで止める方法は手ごろです。左のようにしっかりとテンションを与えたい場合は、このような式も有効です。

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弓状の部分があるものの作例。工作は至って簡単です。コンパスやナベの蓋などを利用して、あるいは自分の求める曲率のものをうつし、カットして止め具の位置を決めてもよいです。

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ベルトを画鋲で止めてもいいですが使用するとすぐに弛んでしまいます。そこでテーパーのついた木辺でとめています。

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写真のものはサンドペーパーの有効な使用面の長さは47センチ程あります。凸でも凹でも好きな形状のものを作ってみでください。

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またこのようなアルミパイプとスチール線を束ねて作ったワイヤーを使ってワイヤーブラシを作ることもできます。好きな長さにカットしたワイヤーをアルミパイプに入れて口金を押しつぶして固定します。固定が完了した後でぼぐしてみてもいいし、またぐらつくようなら瞬間接着剤で補強するとしっかりします。

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使い終った歯ブラシもその毛足をとても短く刈り込んだだけで多用途のツールへと変化します。只一見ハサミなどで短く毛を切りそろえられそうですが、案外簡単にはいかないので、一旦瞬間接着剤などで木辺や板に固定してからカッターで切ればいいでしょう。もし毛細管現象でブラシが固まってしまっても、ハクリ剤でもとにもどります。

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前頁のハンダの工作や簡単な旋盤技術でビット等を整理したりする台を作ることも楽しいです。このような場合、木製のものにも裏側にくぼみを作ってハンダを流し込んでおくと、重さが出て使い易くなります。

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もちろん四角い木や金属、あるいはアクリル樹脂によって作ることも有効です。右の作例は先端工具の取り付け方がネジになっていたり、ピンジャック式になっていたりするのを活用して固定できるようにしたものです。

ドライヤースタンド

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ドライヤーと台となる丸板。丸板はそのまま只の丸でもいいし、あるいはハンダも使って製作してみてもいいですが、今回はオリジナルの台に少し似せて製作してみました。

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このように15ミリくらいの比較的薄い板をさらに削るためには、裏に他の木を付けておいた方が安全です。

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金具を木の台となる部分に取り付けるために埋没式の雌ネジに合うようにダイスで8ミリの真鍮棒でネジを切っているところ。

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一見ダイスやタップは簡単に見えますが、まっすぐ使うには多少の経験が必要。一回し一回し丁寧に、加工する品物とハンドルがしっかり直角になっているか確かめながら作業することが大切です。左はうまく出来ているが右はナナメに切り込んでしまっているのが分ります。

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この写真は製作中の棒状の蝶番。曲げた板を棒のところにハンダ付けをするのにもあらかじめ中心にそれぞれタップを立てておいて、ある程度締め付けてからハンダ付けします。

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余分なところは後から切断して形を整えます。写真では中心の3ミリの全ネジを糸ノコで切り取っているところ。

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棒状の蝶番が出来上がったところ。

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このような埋没式の雌ネジを木部に叩き込むにしても、もしボール盤があればチャックにボルト等を取り付けてゆっくりと(もちろん電源は入れない)押し込むと安全に正確に作業できます。

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塗装して出来上がった台。金具を取り付けてみたところ。

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しっかりと角度を可変して作業することができた完成写真です。

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作った台にあえてファイバー製の道光を使っているところを写り込ませていますが、このようなフニャフニャのファイバーの先端を保持するものも自家製です。

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たとえばこれは何?という感じですが、このようなものは仕事場に溢れています。左のもののハンドルはまだ旋盤を持っていなかった頃作ったので、木工ヤスリで削ったりしたものです。

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何に使用するかと言えば木や金属の板などの表面にテクスチャーを付けるために使用しています。

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またこれらは自分のミニ旋盤のチャックをバーチカルに取り付けてタップなどを垂直に立てるための治具です。

pro-tool118例えばカンナの台などを自作する時、割り台で製作するとどうしてもコッパが出てしまいます。それをハンドルに使って作った木のマレットです。また古い木のクランプを模して作ったものです。

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ドリルのケースなども自作するのも楽しいことです。そして保管にも一役買うでしょう。いろいろまわりを見回すと工作の楽しみがたくさんあることに気付くっことでしょう。

小林健二(写真+文)2005年

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