自作単一回路鉱石ラジオ。 作例のサイズを参考までに示すと、W140×D178(ツマミを含む)× H90(mm)です。
回路図です。
代表的な鉱石式受信機を紹介してみたいと思います。これまでの記事でこの受信機に使用するソレノイドコイルや鉱石検波器については紹介しているので、今回はケースや調整についてです。
ソレノイドコイルの製作
固定式鉱石検波器の製作
コイルのインダクタンスの調整によって同調をとり、感度を計るものです。作例では実際に1920年代に存在していた受信機のコイル部分を復元し、他の部品は今でも電気店などで購入できるもので代用しながら製作してみようと思います。
ケースの製作
ケースはどのような素材によって作られていてもかまわないので、ここではアクリルの板で作ってみます。
ケースについては、あらかじめできているものを使う場合は、最も目的に近い大きさのものを選ぶということになりますが、自分で作る場合はコイルなどの中に入るものの大きさや配置が決まってから、それに合わせて作れるという利点があります。
今回は黄色いアクリル板の5 mm厚のものを使いました。
まず、組み上がったコイルを見ながら、ケースのサイズを考えます。ケースの形は自分なりに考えるのが楽しいと思います。全体の大きさが決まったら、それぞれの板材のサイズを割り出してカットしてゆきます。
2~ 3 mm厚くらいの場合は、Pカッターなどで、きっかくようにして樹脂板に切れ日を入れ、切れ目にそって割るようにして手で切り離します。5mm厚となると少したいへんなので、あらかじめPカッターで筋目を少し入れておいてから、金ノコを使うとまっすぐに早く切ることができます。切り口がぎぎぎぎになるの でサンドペーパーをかけて仕上げることを考えに入れて、サイズ付けのとき、こころもち大きめにマーキングをしておくとよいでしょう。
サンドペーパーで切り口を仕上げるとき、90度の出ているものにあてながら、平らなところにサンドペーパーを敷いて前後にゆっくり動かして削ると、 きちんと上がります。
箱の板材が切れたら組み立てですが、その際90度が出るように小型のスコヤで計りましょう。
接着にはアクリル用接着剤として市販されている四塩化エチレンを使います。
この接着剤はアルコールのようにサラサラした揮発性の高い透明な液体で、アクリル材のすき間に流し込むようにして使用します。
あらかじめセロテープで軽く仮止めをしてずれないようにしてから作業するとずれなくて安心です。
そのまましばらく置いておけば完了です。このとき仮止めしたテープを伝ってよけいな場所に液が流れてしまわないように注意しましょう。
一面一面ていねいに仮組みをしたあとで組んでゆけば、しっかりとした箱になります。
ケースが組み上がりました。
作例ではこのままだと角が尖って手ざわりがよくないので、サンドペーパーで面をとって丸めておきました。
全体の組み立て
組み上がったケースと内部のコイル、そして検波器を組み立て、配線をします(配線図を参照して下さい)。
ケース全体がつや消しになっているのは、はみ出した接着剤をサンドペーパーで取るときに、ついでに400番のペーパーを全体にかけてつやを落ちつかせたためです。ピカピカに仕上げたいときには、このあと800番、1200番くらいの耐水サンドペーパーを水につけながら全体にかけ、プラスチックポリッシュや金属用のつや出し剤をやわらかな布につけて磨きます。
向かっていちばん右のターミナルは紫色ですが、これは市販の白いものを樹脂染料で染めてみたものです。
配線図です。
調整と聞き方
組み立てが終了したら、念のため接続に誤りがないかハンダ付けはうまくできているかもう一度確かめます。アンテナ、アース、ヘッドフォンなどをそれぞれのターミナルに接続します。配線がうまくいっていれば、ヘッドフォンをかけた段階で小さくても何かしら放送が聞こえるはずです。
作例で用いたロータリースイッチは1回路12接点のタイプで、カチカチと同してゆくといくらでも回って、とくに止まるところがありません。ですからツマミをつけるときに、いちばん巻き数の少ないタップのところがきている位置にツマミを12時方向(じるしが真上にくる)にしたりして、自分でわかるように取り付けておくとよいでしょう。
調整はまずコイルのヘッドフォンヘとつながるタップのスイッチを、巻き数がいちばん小さなところへ合わせておきます。そして空中線のターミナルにつながるタップのツマミをひとつずつ静かに回して、いちばん大きく聞こえるところに合わせます。そしていちばん大きく聞こえるポイントを見つけたら、今度はアースのターミナルにつながるタップのツマミを回して、さらにいちばんよく聞こえるところを探し、その次に初めにいちばん巻き数を小さくしておいたツマミを動かし、次いでまたもう一巡、全体の作業を繰り返します。
もし全然音が聞こえないようなら、固定式鉱石検波器と金具の接点がしっかりとついているか調べてください。
固定式鉱石検波器がついているフロントパネル。
音が聞こえても小さい場合や、フォックストンの接点もしっかりしているのに聞こえないときは、フォックストンを取り去り、そこにダイオードを入れてみてください(できたら仮にハンダ付けをして)。もしそれで聞こえるようなら、フォクストンの調子が悪いのです。
上記のことをすべてしても音が聞こえなかったりしたら、ハンダ付けか配線の不良がどこかにあると思います。あきらめないでもう一度チェックしてみてください。
なお、この回路ではそれほど多くの局は入らなくて、きっと1つか2つくらいが受信できると思います。 しかし、思いのほか分離がよいと思います。
*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。
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