手道具と電動工具1

趣味の工作をするために専用のスペースを確保するということは、なかなか難しいことでしょう。でも少しづつでも工具を入手し、また使いやすいように工夫するのは楽しいことです。左の写真はボール盤とベルトサンダーです。

趣味の工作をするために専用のスペースを確保するということは、なかなか難しいことでしょう。でも少しづつでも工具を入手し、また使いやすいように工夫するのは楽しいことです。

手道具と電動工具

趣味として工作をするということはとても楽しいことです。日々の日常の中で自分が作りたいと思うことがらについて考えたり、またその内容や目的を深く知ってみようとするうちに、今までの自分には無かったような価値観を理解できるようになったりして、多少でも視界が広がったと感じる時などうれしい気持ちになったりもします。ぼくが工作に熱中しはじめた中学や高校生の頃は、主に手道具ばかりを使用していたので、電動工具についてはあまり興味を感じていませんでした。その後工作を進めていく内に手道具だけでは作ることが出来づらい製作行程に出合ったりする事多くなって、だんだんと電動工具の必要性や必然性を思うようになりました。でも実際に電動工具を使ったりするまでには、いくつかの障壁がりました。一つには騒音です。近所で家が建つ時など大工さんが電動カンナなんかを使っていると、あまりのその音の大きさに恐ろしささえ感じる程だったので、どうも積極的になれないところがあったのです。それともう一つには経済的な面で、まだ学生の感覚では電動ドリルでさえ高価なものだったからです。このような問題の背景には、ぼくが電動工具をそれまであまり使った経験がなかったことが一番大きかったかも知れません。つまりどのような目的にどのような工具が適切か、またそれぞれの工具にはどのような特徴があって、何ができるのかがよくつかめていなかったせいがあります。事実、電動工具は注意を怠ったり使用法が適切でなかったりすると、思わぬ事故になったりします。しかしお店に入って「試しに使わせてください」とはなかなか言えるものではありません。そんな折、中古工具を売っている所があると聞き、早速地図で調べてその町に友人たちと連れ立っていきました。それは東京は北区にある田端新町という場所でした。明治通りを挟んで左右におよそ百余店はあるだろう中古機械、中古工具の店、ぼくは電動工具と言えばトリルやジグソー、糸鋸ミシンくらいしか知らなかったので、見た事も聞いた事もない程の多種多様な工具たちに出合い、気が遠くなるくらいにワクワクしたのを覚えています。そしてまたそれらの各店で、ぼくにとっての問題点が一挙にはらわれていきました。たとえば電気を通じてその作動音を聞かせてもらったり出来るばかりか試し使いも出来、しかも廉価この上なく、何より道具の選び方まで教えてもらえ、一石何鳥と思いたくなるくらいこの魅力的な魔法の町との出合いが、ぼくの生活に多くの影響を与えたことは言うまでもありません。この町へ最初に行った時からもうすぐ30年くらいが経ちますが、今はその頃の活気とはもうすでに異なってしまいました。しかし時々自転車でその町にぼくは行きます。そんな時、新しい代のお店の人から「こいつぁどう使うんですかね?」なんて聞かれたりすると、いつのまにか覚えたことを得意になって話したりしていて、何か不思議な気持ちになったりするものです。電動機械だからといって手道具のようにデリケートな仕事には向いていないと思われる方居らっしゃるかも知れません。でも好みの違いや何かは在ったとしてもそれは使う側の問題で、いかなる工具も其の工具の特性をよく理解し手入れすることを怠ることなく刃物を切らせる用にいつも心掛けていれば、いろいろな事を彼等はぼくたちに教えてくれると思います。みなさんも工作をする上でそれぞれの特性をうまく活かして、各々のホービーライフを楽しんでみてください。

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これは大型の木工旋盤です。旋盤に慣れないで急にこの大きさを使用することは出来づらいですが、今回紹介している小型の木工旋盤も基本的には同じ構造なので、小型が使い慣れれば大型も使えるようになります。この旋盤は長さ1m強のものまで扱う事が出来ます。

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据え置き型のベルトサンダーでは最も小型なタイプ(右)。ベルトサイズは1インチX30インチ(約25,4mmX762mm)。それよりもう一段大きめのサイズでポピュラーなサイズのもの(左)。ベルトサイズは100mmX915mm。共に100V用です。

 

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小型の木工旋盤。アメリカのドレメル社製です。随分と以前に購入したものなのですが、今でも現役です。最近はいろいろと小型木工旋盤も発売されていますから入手しやすいでしょう。

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小品用のターニングツールです。金工用のバイトに当たるものでチゼルとも言います。

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ターニングツールの先は一見彫刻刀のようにも見えますが、本格的な旋盤用の工具と全く同じ形状です。

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小さな旋盤と言っても機械ですから作業台に作業中動かないように固定します。この場合は板に足のはまる穴を開けて動かないようにしてあります。

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作業を安全にそして確かに仕上げるのには機械の手入れと刃物の研ぎは欠かすことができません。ターニングツールはオイルストーンで丁寧に刃が丸刃にならないように注意します。

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上記の旋盤キットに付いていたプラスチック製のセンターゲージですが、自作も出来ます。このように丸棒や角棒の中心を求めてからセットします。

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工具や材料、また工作内容について配慮した上で、周囲を整頓して作業に入ります。

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木づち等でドライバーヘッドのかかりを刻印してからセットするとよいでしょう。

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写真右側のテイルストックに固定した後、工作しようとする材を手で回してみてツールレストに当たらないようにしてからレストを固定します。

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たとえばヤスリ等のハンドルを作ってみる場合、全体のサイズをまずスケッチしてから始めるといいでしょう。

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レストと被工作材との間はなるべく狭くしてターニングツールをしっかりと持ち、少しづつ調子を見ながら削っていきます。

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被工作材をナナメに削る場合、少し削る毎にレストもその形になるべく添わせるようにしましょう。

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木工用のヤスリ等も使用できます。只あくまでも強く押しつけず、削れる量のままに作業します。

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サンドペーパーの幅を細く切って軽く当てるようにして表面を滑らかにできます。サンドペーパーが巻き込まれないように注意します。

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また鋼でできたみがき棒(バニッシャー)を軽く当てて磨くこともできます。

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ペースト状のワックス等は指に付けて塗ってゆきます。布などにつけると慣れないと巻き込まれてかえって危険です。

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少しづつ広げてゆきますが、多く塗りすぎると飛散することがあります。

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また固形のワックスもいろいろあり、色付け等もできます。慣れてくると熱で溶けるシェラック棒なども使用できます。

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撮影の為に簡易に作りましたが、目的の工具を入れる穴を開けてからセットすれば、充分に柄として使用できます。もちろん溝を刻んだり自分専用の特殊な形状のものも作る事ができます。

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同じ型や大きさのものを数多く作るには鋼板を必要な形にグラインダー等で形成した後、焼き入れして使用します。写真は以前ドールズハウスの手摺を作った時のものを使っているところです。この場合最終的に抵抗が高くなるので、終盤になるほど力を抜いて作業します。

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中型のボール盤です(チャックは13mm)。先に話した田端で購入しました。もう20年以上使っていますが、故障したことはありません。今ではホームセンターでも扱っていて入手しやすい中型機械の1つです。

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チャックしめを磁石で付けるようにしています。チャックしめを無くしたりしないようにとチェーンで吊るしていた友人が、ちょっとしたはずみでチェーンが絡んで大変な事故になったことがありました。また昔のボール盤には手元を照らすライトが付いているものもあります。

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ボール盤は穴をあけるものですが、その他にもいろいろと使用できる機械です。たとえばワイヤーブラシでサビを取るのもしっかり両手が使えて便利です。

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ワイヤーブラシといっても多種多様にあるので目的に応じて使い分けるとよいでしょう。

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ドラム式のサンドペーパーや木工用やプラスチック用のおろし金状のものもあります。

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このようなものは曲線で切った側の面をなだらかにしたりする時に有効です。

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またローターリープレーナーというものは板などの厚み出しの時使用します。

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ローターリープレーナーの裏側には3個のハイスビットが付いていて、低速で使用します。

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また写真のような皮製の丸板状のものもあり、その側面が平らや稜状になっていたりします。これらは青棒(酸化クロム)や研摩剤を付けて刃物の磨きにも使えます。

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ハンドドリルでは難しくてもボール盤ならフォスナービットで10cmくらいの大穴でも平らできれいな穴を安全にあけることができます。

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通常のドリルビットも0,2mm~13mmくらいまで0,1mmピッチで、また13~23mmくらいまで1mmピッチ(13mmシャンクの場合)で市販され必要なものを少しづつそろえるといいでしょう。他にインチタイプ等があります。手前のはドリル台です。

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金属等の大穴はホールソーを使用します。

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研摩を目的とした多数の先端工具。スポンジ状、サンドペーパーを回転羽状にしたものなど幅、径、硬さ、粒度等多種目的に応じて使いわけます。

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一般的なドリルビットにも各種材料や目的によって使いわけが必要です。左上から右下へとガラス用、アクリル用、テーパー孔用、118゜cカウンターシンク、プラスチック用、下部がきれていますが座ぐり式ビット2種、木工用、板ギリ、金属薄物用、金属用。

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特に大きな穴をあけるタイプの工具。

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穴の径を自在に変えらることができる大穴木工用ビット。

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中型ボール盤では1mm以下の穴や電子基板のガラスエポキシ系の板にはうまく穴があきません。その時には高速の小径用ドリルを使用します。

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中型のバンドソーです。サイズはそのブレードの長さで大抵大きさで把握します。このタイプはブレードの長さが1785mmのものです。木工用にも金工用にもあるいはゴム用にもブレードを変えることで対応できます。サークルカット用の治具が付いています。

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中は3つのホイールによってベルトを回転させ、そのうち1つがプーリーのベルトによってモーターから駆動する力を伝達させる仕組みになっています。

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時間さえかければ相当厚い木も経木のように薄く切ることもできます。ジグソーや糸鋸と比べると一方向に動くブレードで切断する為、切り口がキレイなのが特徴です。

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これはとても小型のバンドソーでブレード周は680mmです。精密な作業に適してます。

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サイズはブレード周1220mmですが、これはダイアモンドブレードを使用して3cmくらいの厚さのガラスや大理石を簡単に切断できます。

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本来ベルトの後ろにあるプレーンプレートをはずしてしまうと、彎曲した面の研摩や磨きに重宝します。

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これはドレメル社の小さなベルトサンダーです。ベルトには中位のテンションローラーがベルトに適度な張りを持たせています。

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またこのような小型のベルトサンダーには、別売りでフェルトベルト等が用意されている場合が多く、ポリッシュをする時に役に立ちます。

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かつてジャンクで入手した立って作業する台付タイプのもので200V3相型のベルトサンダー。音も静かでとても強力なのですがこの機械に合うベルトがなく、研摩材屋さんに特注しました。ベルトサイズは156mmX1227mm。

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ベルトサンダーは平面に木材を削ったりする時に比較的正確にそして迅速に作業できます。たとえばもう使いすぎて下端(したば)が変形してしまった鉋の台も御覧のとおり平面を容易に得ることができます。もちろんこれはあくまでもベルトサンダーの一例であって、鉋の下端の調整はもっと慎重にしなくてはなりません。

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ベルトサンダーの表面は使用前、あるいは使用後に専用のラバーを使って目づまりを取り、クリーニングをするとサンドペーパーの寿命が数倍から数十倍と長もちします。

これより以下のベルトサンダーは代表的なサイズのもので、大抵手持ちで作業する式のものです。このサンダーのベルトサイズは100mmX610mmです。力が強いので荒目の粒度で使っています。

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このサンダーはスピードを調節でき、また精密研摩用の治具が取り付けられるようになっていますので、細目の磨き等に便利です。ベルトサイズ76mmX533mmです。

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これは ディスクサンダーにベルトサンダーアタッチメントを付けて使用できる タイプです。ベルトサイズは15mmX550mmです。

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比較的部分の研摩に有効でベルトサイズは30nnX533mmです。

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細部の研摩に有効な小型のもので、ベルトサイズは10mmX330mmです。

小林健二(写真+文)2004年

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