形を見ると、ヴァリオメーターとヴァリオカップラーは全然異なったものに見えますが、回路的にはコイルとコイルを直列に接合するとヴァリオメーターで、並列だとヴァリオカップラーになるのです。ただ使用する部位での効率を考えて、それぞれが作例のような特異な形態になったと思ってください。
このヴァリオカップラーは、コイルとコイルの距離を近づけたり遠ざけたりすることで、それぞれのコイルの誘導作用を調節しています。
まず、ヴァリオカップラー用のコイルの巻き枠を作ります。
丸くカットしたベーク板(コイルの芯)に、3~ 4mmほどの切り込みを入れ、そこに羽を差し込んでいきます。巻き枠は2つあって、一つには7mm(幅)×25 mm(長さ)を15枚、 もう一つには7mm(幅)X30 mm(長さ)をやはり15枚つけます。
5mmの羽をつけたほうは70回(作例では外側の色の濃いところには実験を兼ねて20回よけいに巻いてあります)。
30mmの羽をつけたほうは、12回巻き毎に8つのタップを出し、さらに12回巻いて終了してあります(全部で108回巻いてあります)。
タップの出ている大きいほうは巻き始めと巻き終わりをネジで芯のところに固定してあります。小さいほうのコイルは可動部分となるため、中心のネジに沿って動くための金具を取り付けてあります。
中心のネジはピッチが大きいので自作します。通常6mmのネジはピッチが1mmですから、 1回転で進むのはlmmで5cm動かすのに50回転しなければなりません。
これではたいへんなので、2回転で7cm動かすようにしようと、6cmの真鍮棒に糸を巻いてピッチをまず見てみました。
3.5cm毎にしるしをつけたところにいつも頭が出るようにして、 2~ 3回巻いてテープで固定して180度反対にも同じように巻きます。これはダブルスパイラルにすることで安定して回転させることができると思ったからです。
糸に沿ってマジックなどでしるしをつけて、そこに銅あるいは真鍮の0.8~1mmくらいの単線を巻いて、端と端をクリップで止めてハンダ付けをします。このとき、実際に使うより、2~ 3割長めに作っておくとよいでしょう。
いろいろなピッチを作って実験をしたときの写真で、1cmピッチになっていて最終的に使った3.5cmピッチよりずっと細かくなっています。
メカニックは今まで作ったことがなかったので、少々苦労しましたが、上の写真は製作途中のヴァリオカップラーのメカ部分です。2本の鉄製の棒でフレームとして中央に3.5cmピッチの6mmのネジ、前後はエボナイト板で作った丸板にカップリング用の口金をつけ、可動板には、ネジのスパイラルの部分が通るへこみを大きめにあけた左右にヤスリで削ってあります。
右の丸いエボナイト板にはラジオの本体パネルに取り付けるための3つのスペーサーがつけてあります。可動コイルからの配線はいつも動くので安定性を得るために、 2本ある鉄の棒にコイルのそれぞれの端を曲げたタマゴラグでちょうどモーターのブラシのようにして、信号を伝えるようにしてあります。
*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。