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[自作鉱石検波器の解説]

鉱石ラジオの部品の中でも、鉱石検波器自体は重要な役割を持っているので、感度を上げるための工夫や機械的安定性も合理的に設計され製作されていたことは言うまでもありません。

そこでぼくは当時(鉱石ラジオが使用されていた大正から昭和の初め頃)もなかったしそれ以降も登場しなかった、言うならこの星で最初と思われる鉱石検波器を発表しようと思います。このように大きく出たところでとりわけ何かが起こるわけではないのですが、いろいろ工作や実験をしている最中に何かを見つけたような気持ちになるとそれほどうれしいものなのです。そんなわけでぼくなりに発見のあった特殊(きっと他にはないという意味で)鉱石検波器を紹介します。

天然系検波器

まずは鉱石の形をそのままに検波器としたものです。ぼくは鉱石の色や形をなるべくそのままに、機能を持たせたいと考えていろいろ実験をしました。実験中はよいのですが、その感度のいい状態を継続して安定させるのはけっこう難しいものでした。

もちろんさぐり式検波器の場合、いかにして針を鉱石の敏感なところにいい接触状態といい圧力をもって安定しつづけるかがいつも問題になります。このようなむき出しの鉱石を使う検波器でいちばん問題となる点は、鉱石自身と導体部分の接点抵抗をいかに小さくし、またそこにコンデンサー成分をなるべく作らないかということです。とりあえずさぐり式の鉱石を固定する方法を用いてハンダで接触面を大きくしようとしても、大きな結品の標本の場合だとどうしても温度の高い状態を長くしないとならないので、その熱が鉱石の感度を下げてしまうらしいのです。

そこでぼくが思いついたのは低融点金属でした。この金属を使うとその熱の問題をクリアできるばかりか作業性も高く、鉱石の表面によくのびてとでもよくくっつき、コンデンサー成分も作りません。なにしろ75℃ 前後で工作できるわけですから、紙などで角型やコーン型にした筒の先を切り、その先をあらかじめあたためた鉱石のうらから当て溶けたものを流し込めばよいのです。

天然系検波器1の検波器はそのようにして作りました。またこの4点のものは結晶の形がおもしろいというだけでなく、本来なら不向きのところがあるのです。たとえば中央上の磁鉄鉱とその下の赤鉄鉱です。磁鉄鉱はもともと検波器の素材のひとつに上げられるものですが、この標本のように天地5 cmくらいのわりに大きなものになるととでも直流抵抗が高くなってしまい、検波どころか電流はほとんど流れてくれません。また赤鉄鉱のほうも同じで、板状結晶のこの標本の場合、埋め込んでしまうわけにもいかないので真鍮の厚い板に低融点金属で接着してあります。

この2つのようなとても高抵抗な鉱石は導体との接着面の面積を大きくしたり、見かけの状態ではわからないように導体の部分が針の接点のところに近くまで寄ることで抵抗を低くして、大きな結晶のままや結晶状態を観察しながら検波することが可能となります。

また左に自然銅、右に入エビスマスの標本を使ったものがありますが、これらは逆にほとんど導体なので検波にはむずかしいタイプですが、このように台に付けておくと、うすい硫酸や修酸、あるいは二酸化セレン(ビスマスの場合)による弱い腐食によって、酸化もしくは亜酸化皮膜ができて、ときとしてうまい整流作用を持つのでそれによって検波をすることもできるのです。

 

天然系検波器 1 中央の磁鉄鉱を使ったもの(H5cm)

天然系検波器 1
中央の磁鉄鉱を使ったもの(H5cm)

天然系検波器2はまるで鉱物標本そのままです。水晶のところどころに黄鉄鉱の小さな結晶が共生しているものですが、全体に目立たないように硝酸銀などでうすくメッキをかけ更に使用する前に伝導性の電解質でうすくしめらせると、本来絶縁体である石英の上にあるのにちゃんとこの黄鉄鉱が検波をしてくれます。

このような検波器はもちろん実用というよりは実験としての楽しみですが、普通の鉱石標本からまるで音が聞こえてくるようでとでも不思議な体験ができると思います。

天然系検波器 2 (W15cm)

天然系検波器 2
(W15cm)

透過性検波器

この美しい鉱物はどれも光を透過します。手前の細長い鉱物は、ポロナイトと呼ばれるポーランドで作られた人工結晶です。またその右上の鉱物は、ジンサイトと名付けられて最近鉱石ショーで時々見かける鉱物です。おそらくこれも人工だと思うのですが、天然鉱石の持つ一種の有機性(変な表現ですが)があってとでも魅力的です。確かにこんな単結品の紅亜鉛鉱が東欧の鉱山から出てきたら大変なことだと思います。

本来、宝石や宝飾品のために作られたと聞いていますが、成分はまさに純度の高い酸化亜鉛です。ですからひょっとしたらと思い、まずはテスターを当てると導通がありました。このように透過性の鉱物に電気が通るというのはわかっていても、ぼくには驚きで、さっそく検波の実験をすると確かに検波できるばかりか、紅亜鉛鉱単体に針を立てるよりもはるかに感度が安定しているのです。

写真左の透明なうすい緑色の鉱物は、同じジンサイトの標本のところにあったものです。ちょっと見るとぶどう石prehniteと見まごうような美しい標本で、これも検波できるのです。確かに紅亜鉛鉱と言われても、その赤みは不純物として入っているマンガンによるものと言われていますから、考えてみれば不思議ではありませんがやはりどきどきしてしまいました。

透過性検波器に使っている鉱物。下のオレンジ色のものは7cm。うわさによればこれらの鉱物は東欧のどこかの金属精錬工場の煙突の中に気相より析出して結晶するもので、人工とも天然とも言いきりがたい状況で生まれてくるそうです。それを1年に1回かき取ってくる業者が宝石の原石として、かつて東西対立があった時代にひそかに西側に放出していたと言われています。

透過性検波器に使っている鉱物。下のオレンジ色のものは7cm。うわさによればこれらの鉱物は東欧のどこかの金属精錬工場の煙突の中に気相より析出して結晶するもので、人工とも天然とも言いきりがたい状況で生まれてくるそうです。それを1年に1回かき取ってくる業者が宝石の原石として、かつて東西対立があった時代にひそかに西側に放出していたと言われています。

細長く結晶した酸化亜鉛の結晶に電気を通して豆電球を光らせているところです。導通状態は非常によく、透きとおっているのにまさに金属と言うことができ、不思議な感じがします。

細長く結晶した酸化亜鉛の結晶に電気を通して豆電球を光らせているところです。導通状態は非常によく、透きとおっているのにまさに金属と言うことができ、不思議な感じがします。

化石式検波器

この写真は貝とアンモナイトの化石です。この二枚貝は左がparaspirifer bownockeriで右がmediospirifer audaculusです。約3億8千万年前の化石で、中央のアンモナイトは約1億8千万年前のものです。まともに考えると気が遠くなるほどの過去の生物ですが、写真はその年月とともに化石となる際、部分的に黄鉄鉱化した標本です。

黄鉄鉱化した化石 中央のアンモナイト H7cm

黄鉄鉱化した化石 中央のアンモナイト H7cm

そして作ってみたのがこの検波器で、化石式検波器fossil detectorとでも呼べるものと思います。実際は黄鉄鉱が検波している訳ですが、数億年もの昔の生物が変化したものから音楽や人の声が聞こえてくると想像してみてください。不思議な心持ちになりませんか?

化石式検波器 H6cm(ノブを含む)

化石式検波器 H6cm(ノブを含む)

銀成硝子検波器

一種の酸化覆膜にも整流作用を持つnl能性があるとすると、まだまだ感度の善し悪しを考えなければ検波できるものがいろいろとあるのではと思い、ぼくは身近にあるものをかたっばしから実験してみました。錆びた金属、導体性の金属鉱石、 ドアのノブ、ナイフ、はさみ……。いい加減やりつくしたころに見つけてドキドキしたのが、ハーフミラーです。これは金属の蒸着メッキによって作られます。そして実験の末、形にしたのがこの写真の検波器です。ときに銀色にまた半透過性へと移行するその質感は美しく、また不思議な感じを起こさせます。ホルダーは錫と銀とアンチモンによって作りました。

銀成硝子検波器 W11cm(台の長さ)

銀成硝子検波器 W11cm(台の長さ)

極光水晶検波器

そしてこのハーフミラーを使った銀成硝子検波器は、ぼくの作ったもののなかでもっとも美しい極光水晶検波器を作るきっかけとなりました。

この写真はその極光水晶検波器auroracrystal detectorです。このオーロラクリスタルは最近の技術によって装飾用として作られたものです。おそらく二酸化チタンのうすいメッキによるもので、その鍍膜厚を変えることでいろいろなタイプができると思われます。

この人工の加工を受けた鉱石は、それまでぼくにとってとりわけ魅力的なものではありませんでした。しかし、透明でときどき反射する光が淡いピンクやブルーに照り返るこの結晶石によって検波ができたときには本当にうれしく、鉱石受信機によって初めて放送を聞いた昔の工作少年たちに、こんな検波器で作ったラジオを見せることができたらとしばらく感慨に耽ってしまいました。もっとも、少々手を加えないと実用に十分な感度はとれませんが、このくらいは秘密にしておきましょう。

極光水晶検波器 左 H7cm

極光水晶検波器 左 H7cm

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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6/19[小林健二Talk+ミニミニオマケライブ]

小林健二 Talk [工作のヒント]+[不思議な世界]+[結晶育成] 6月19日(日) 14:00-16:00(13:30開場) 会場:メガラニカ(Magallanica)

小林健二 Talk [工作のヒント]+[不思議な世界]+[結晶育成]+ミニミニオマケライブ
6月19日(日) 14:00〜 (13:30開場)
会場:メガラニカ(Magallanica)

昨日で6/19の小林健二トークが終了しました。今回はミニライブのオマケ付きでもあり、小林健二の中学高校時代に作詞作曲された音楽の初披露です。

まずはトーク。工具(日本のノコや ガラス切り工具など)の紹介と実演、電気を使った不思議な作品たちを参加者と楽しみます。

[青色水晶交信機]の中の構造を見せているところ

[青色水晶交信機]の中の構造を見せているところ

人のオーラを感じて水晶の中に光が現れたり消えたりする作品[CRYSTAL OF AZOTH WITH AURA TRIGGER ]の実演

人のオーラを感じて水晶の中に光が現れたり消えたりする作品[CRYSTAL OF AZOTH WITH AURA TRIGGER ]の実演

「CRYSTAL OF AZOTH WITH AURA TRIGGER 」          木、結晶、電子回路など        wood,crystal,electric circuit,others 240x200X150 1992-1994  [CRYSTAL OF AZOTH(霊の鉱石)]とは本来セファイドの水の結晶です。その結晶の左側に陽性起電微子を、その右側に陰性消失微子を発生着帯します。アレフ(空あるいは風)、メム(水あるいは海)、シン(火あるいは熱)のそれおぞれ緑、青、赤の色彩成分をアゾト(霊あるいは意識)によって封じられた結晶なのです。この結晶はアルプス地方に産する明るい煙水晶で、その中に極めてわずかに見つけられる古代セファイドの水を含有したものを使用します。その左側に手をかざすと陽性起電微子ーAZOTHIN(アゾシン)の一種によって発光する場ができ、右側においてはその反対の作用が起ります (左の柱に手をかざすと水晶内部にゆっくりと光が現れはじめ静かに色彩が変化する。右の柱に手をかざすとまたゆっくりと消える)

「CRYSTAL OF AZOTH WITH AURA TRIGGER 」
木、結晶、電子回路など
1992-1994
[CRYSTAL OF AZOTH(霊の鉱石)]とは本来セファイドの水の結晶です。その結晶の左側に陽性起電微子を、その右側に陰性消失微子を発生着帯します。アレフ(空あるいは風)、メム(水あるいは海)、シン(火あるいは熱)のそれおぞれ緑、青、赤の色彩成分をアゾト(霊あるいは意識)によって封じられた結晶なのです。この結晶はアルプス地方に産する明るい煙水晶で、その中に極めてわずかに見つけられる古代セファイドの水を含有したものを使用します。その左側に手をかざすと陽性起電微子ーAZOTHIN(アゾシン)の一種によって発光する場ができ、右側においてはその反対の作用が起ります
(左の柱に手をかざすと水晶内部にゆっくりと光が現れはじめ静かに色彩が変化する。右の柱に手をかざすとまたゆっくりと消える)

小林健二考案による「硝子結晶育成キット(銀河通信社)」の結晶育成実験では、綺麗に仕上がった結晶が溶液から取り出されました。「硝子結晶」の命名についても「硝子」とは?そして「硝子結晶」とは?などなど、様々な質問が参加者から寄せられました。

 

そしてライブへと続きます。

小林健二ミニライブが始まる前に、高校時代に絵を手にって説明している小林健二。

ミニライブが始まる前に、高校時代に描いた絵を手にして説明している小林健二。その絵には魔法の言葉が同時に書かれていて、曲の中でも詞に使われています。

小林健二ライブ風景

小林健二ライブ風景

今回は3曲選ばれ(他にも何曲かあるそうですが、ちゃんと詩や曲がまとまっていないとのことです)ギター演奏により歌われました。

絵も音楽もそして色々な様相を表す作品たち、出力が一つの源であることが実感できるような、まさに小林健二らしい曲ばかりでした。「CDにして欲しい」との声も参加者から出て、次のライブも期待したいですね。

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単一回路鉱石ラジオの製作(筐体+仕上げ編)

小林健二自作単一回路鉱石ラジオ

自作単一回路鉱石ラジオ。 作例のサイズを参考までに示すと、W140×D178(ツマミを含む)× H90(mm)です。

回路図です。

回路図です。

代表的な鉱石式受信機を紹介してみたいと思います。これまでの記事でこの受信機に使用するソレノイドコイルや鉱石検波器については紹介しているので、今回はケースや調整についてです。

ソレノイドコイルの製作

固定式鉱石検波器の製作

コイルのインダクタンスの調整によって同調をとり、感度を計るものです。作例では実際に1920年代に存在していた受信機のコイル部分を復元し、他の部品は今でも電気店などで購入できるもので代用しながら製作してみようと思います。

ケースの製作

ケースはどのような素材によって作られていてもかまわないので、ここではアクリルの板で作ってみます。

ケースについては、あらかじめできているものを使う場合は、最も目的に近い大きさのものを選ぶということになりますが、自分で作る場合はコイルなどの中に入るものの大きさや配置が決まってから、それに合わせて作れるという利点があります。

今回は黄色いアクリル板の5 mm厚のものを使いました。

まず、組み上がったコイルを見ながら、ケースのサイズを考えます。ケースの形は自分なりに考えるのが楽しいと思います。全体の大きさが決まったら、それぞれの板材のサイズを割り出してカットしてゆきます。

2~ 3 mm厚くらいの場合は、Pカッターなどで、きっかくようにして樹脂板に切れ日を入れ、切れ目にそって割るようにして手で切り離します。5mm厚となると少したいへんなので、あらかじめPカッターで筋目を少し入れておいてから、金ノコを使うとまっすぐに早く切ることができます。

2~ 3 mm厚くらいの場合は、Pカッターなどで、きっかくようにして樹脂板に切れ日を入れ、切れ目にそって割るようにして手で切り離します。5mm厚となると少したいへんなので、あらかじめPカッターで筋目を少し入れておいてから、金ノコを使うとまっすぐに早く切ることができます。切り口がぎぎぎぎになるの でサンドペーパーをかけて仕上げることを考えに入れて、サイズ付けのとき、こころもち大きめにマーキングをしておくとよいでしょう。

サンドペーパーで切り口を仕上げるとき、90度の出ているものにあてながら、平らなところにサンドペーパーを敷いて前後にゆっくり動かして削ると、 きちんと上がります。

サンドペーパーで切り口を仕上げるとき、90度の出ているものにあてながら、平らなところにサンドペーパーを敷いて前後にゆっくり動かして削ると、 きちんと上がります。

箱の板材が切れたら組み立てですが、その際90度が出るように小型のスコヤで計りましょう。

箱の板材が切れたら組み立てですが、その際90度が出るように小型のスコヤで計りましょう。

接着にはアクリル用接着剤として市販されている四塩化エチレンを使います。

この接着剤はアルコールのようにサラサラした揮発性の高い透明な液体で、アクリル材のすき間に流し込むようにして使用します。

この接着剤はアルコールのようにサラサラした揮発性の高い透明な液体で、アクリル材のすき間に流し込むようにして使用します。

 

あらかじめセロテープで軽く仮止めをしてずれないようにしてから作業するとずれなくて安心です。

あらかじめセロテープで軽く仮止めをしてずれないようにしてから作業するとずれなくて安心です。

そのまましばらく置いておけば完了です。このとき仮止めしたテープを伝ってよけいな場所に液が流れてしまわないように注意しましょう。

一面一面ていねいに仮組みをしたあとで組んでゆけば、しっかりとした箱になります。

ケースが組み上がりました。

ケースが組み上がりました。

作例ではこのままだと角が尖って手ざわりがよくないので、サンドペーパーで面をとって丸めておきました。

作例ではこのままだと角が尖って手ざわりがよくないので、サンドペーパーで面をとって丸めておきました。

全体の組み立て

組み上がったケースと内部のコイル、そして検波器を組み立て、配線をします(配線図を参照して下さい)。

ケース全体がつや消しになっているのは、はみ出した接着剤をサンドペーパーで取るときに、ついでに400番のペーパーを全体にかけてつやを落ちつかせたためです。ピカピカに仕上げたいときには、このあと800番、1200番くらいの耐水サンドペーパーを水につけながら全体にかけ、プラスチックポリッシュや金属用のつや出し剤をやわらかな布につけて磨きます。

向かっていちばん右のターミナルは紫色ですが、これは市販の白いものを樹脂染料で染めてみたものです。

向かっていちばん右のターミナルは紫色ですが、これは市販の白いものを樹脂染料で染めてみたものです。

配線図です。

配線図です。

調整と聞き方

組み立てが終了したら、念のため接続に誤りがないかハンダ付けはうまくできているかもう一度確かめます。アンテナ、アース、ヘッドフォンなどをそれぞれのターミナルに接続します。配線がうまくいっていれば、ヘッドフォンをかけた段階で小さくても何かしら放送が聞こえるはずです。

作例で用いたロータリースイッチは1回路12接点のタイプで、カチカチと同してゆくといくらでも回って、とくに止まるところがありません。ですからツマミをつけるときに、いちばん巻き数の少ないタップのところがきている位置にツマミを12時方向(じるしが真上にくる)にしたりして、自分でわかるように取り付けておくとよいでしょう。

調整はまずコイルのヘッドフォンヘとつながるタップのスイッチを、巻き数がいちばん小さなところへ合わせておきます。そして空中線のターミナルにつながるタップのツマミをひとつずつ静かに回して、いちばん大きく聞こえるところに合わせます。そしていちばん大きく聞こえるポイントを見つけたら、今度はアースのターミナルにつながるタップのツマミを回して、さらにいちばんよく聞こえるところを探し、その次に初めにいちばん巻き数を小さくしておいたツマミを動かし、次いでまたもう一巡、全体の作業を繰り返します。

もし全然音が聞こえないようなら、固定式鉱石検波器と金具の接点がしっかりとついているか調べてください。

固定式鉱石検波器がついているフロントパネル。

固定式鉱石検波器がついているフロントパネル。

音が聞こえても小さい場合や、フォックストンの接点もしっかりしているのに聞こえないときは、フォックストンを取り去り、そこにダイオードを入れてみてください(できたら仮にハンダ付けをして)。もしそれで聞こえるようなら、フォクストンの調子が悪いのです。

上記のことをすべてしても音が聞こえなかったりしたら、ハンダ付けか配線の不良がどこかにあると思います。あきらめないでもう一度チェックしてみてください。

なお、この回路ではそれほど多くの局は入らなくて、きっと1つか2つくらいが受信できると思います。 しかし、思いのほか分離がよいと思います。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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6/11[小林健二Talk+WET]

小林健二 Talk [工作のヒント]+[不思議な世界]+[結晶育成] 会場:メガラニカ(Magallanica)

小林健二 Talk [工作のヒント]+[不思議な世界]+[結晶育成]
会場:メガラニカ(Magallanica)

6/11の小林健二トーク+WETは昨日で終了しました。

トークの風景

トークの風景

今回はガラス切りの工具の紹介からはじまり、実際にガラスをカットしてみます。そして小林によってよく仕立てられた鉋やノコギリ、ケヒキなど数点を説明しながらの作業実演です。ガラス切りといってもいろいろな形や種類があるものですね。

その後ドリンクや近所のイタリアレストランに注文したピザなどが届いた後は前回同様に歓談です。WETでは参加者同士の会話も弾み、形式的な取り決めが無い集いですので、各々のペースで残ったり、会場を後にしたりと自由に楽しまれていったのが印象的でした。

 

[夜たちの受信機 晶洞よりの呼びかけ 紅玉庭園 そしてサファイヤの書物] を見せているところ。

小林健二作品[夜たちの受信機 晶洞よりの呼びかけ 紅玉庭園そしてサファイヤの書物]を見せているところ。電気を使った作品の解説になると不思議なものばかりで、自然と身を乗り出していく参加者たち。

[夜たちの受信機 晶洞よりの呼びかけ 紅玉庭園 そしてサファイヤの書物] 「鉱石ラジオ」という言葉のイメージから製作された作品の一つ。音声に同調して部分的に結晶が白く明滅し、レンズに映る鉱物のみがゆっくりと回りながら赤く輝く。

[夜たちの受信機 晶洞よりの呼びかけ 紅玉庭園 そしてサファイヤの書物]
「鉱石ラジオ」という言葉のイメージから製作された作品の一つ。音声に同調して部分的に結晶が白く明滅し、レンズに映る鉱物のみがゆっくりと回りながら赤く輝く。

WET風景

WET風景

次回6/19は最終日です。 WETでは小林健二が中学高校生時代に自作した曲をギター演奏で歌うという、ミニミニオマケライブも追加されました。

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直接結合回路鉱石受信機の製作(筐体+仕上げ編)

以前自作パーツ(クラウンコイル+探り式鉱石検波器+ヴァリコン)でご紹介した記事の筐体(ケース)を作ります。

クラウンコイルの製作

さぐり式鉱石検波器の製作

ヴァリコンの製作

ここではアンティークラジオのような形のものを木工によって作ってみました。まずケースの本体の木取りから始めます。

自作[直接結合回路鉱石受信機] 寸法はW155× D135× H200(mm)です(検波器端子は含まない)。

自作[直接結合回路鉱石受信機]
寸法はW155× D135× H200(mm)です(検波器端子は含まない)。

ケース前面、背面、底面、そして前面と背面をつなぐ木の棒です。板材は12mm厚のラワンベニヤで作り、断面が五角形のような棒は4cm×4cmの角材から作りました。

ケース前面、背面、底面、そして前面と背面をつなぐ木の棒です。板材は12mm厚のラワンベニヤで作り、断面が五角形のような棒は4cm×4cmの角材から作りました。

これらをボンドで接着します。頭の角材には工作途中でかなりの力をかけるので、くぎも打っておきます。

右に見えるのは、次の工程で側に曲げながら貼りつけるベニヤの板です。これは幅を本体の枠に合わせ、長さを多めにしてあります。 十分に水につけたあと、ラップにくるみ電子レンジで温めておくと曲げやすくなりま す。この作例が小さいため曲率が高いので大事をとったのですが、もっと大きなものなら水で湿す必要もないでしょう。

右に見えるのは、次の工程で側に曲げながら貼りつけるベニヤの板です。これは幅を本体の枠に合わせ、長さを多めにしてあります。十分に水につけたあと、ラップにくるみ電子レンジで温めておくと曲げやすくなります。この作例が小さいため曲率が高いので大事をとったのですが、もっと大きなものなら水で湿す必要もないでしょう。

作例は3mmのブナのベニヤを使いましたが、27mmのラワンベニヤか3mmのシナベニヤあたりが人手しやすいと思います。

本体の片側にボンドを塗って、下部の端をしっかりと合わせ、くぎで軽く仮止めします。そして徐々に上のほうへ向かって押しつけるようにして側板を密着させてゆきます。途中どうしてもすき間があいてしまうなら、そのつどくぎで仮止めをします。仮止めとは、細いくぎを半分くらい打ち込んでおき、ボンドが固まったあとでプライヤーやペンチで抜き取ってしまうやり方です。

写真13ではクリップやクランプで止めてありますが、実際はもっと簡単に、太い輪ゴムやひもでも固定できるでしょう。 このようにして片側を貼りおえたら、完全に乾くのを見計らい、上部に余っている ベニヤを切り取って、はみ出したボンドをきれいに削り取ります。そのあともう片側へ同じことを繰り返します。写真13の左のほうにもう片側に使うベニヤが筒に巻かれ、巻きぐせがつくようにしてあるのが見えます。

写真ではクリップやクランプで止めてありますが、実際はもっと簡単に、太い輪ゴムやひもでも固定できるでしょう。
このようにして片側を貼りおえたら、完全に乾くのを見計らい、上部に余っているベニヤを切り取って、はみ出したボンドをきれいに削り取ります。そのあともう片側へ同じことを繰り返します。写真左のほうにもう片側に使うベニヤが筒に巻かれ、巻きぐせがつくようにしてあるのが見えます。

写真14は両側の板を貼り乾かし、そしてサンドペーパーで仕上げた本体です。右側には本体からトレースしてベニヤを切り取って作りはじめたパネルが見えます。また本体の下のところの出っ張りは、あとでつけるパネルの厚み分の本片が接着されています。パネルがついたとき、同じ高さにするためです。パネルは3mmのベニヤを2枚貼り合わせるので、木片は6mmの厚みにしてあります。

写真は両側の板を貼り乾かし、そしてサンドペーパーで仕上げた本体です。右側には本体からトレースしてベニヤを切り取って作りはじめたパネルが見えます。また本体の下のところの出っ張りは、あとでつけるパネルの厚み分の本片が接着されています。パネルがついたとき、同じ高さにするためです。パネルは3mmのベニヤを2枚貼り合わせるので、木片は6mmの厚みにしてあります。

正面のパネルを作ります(写真15)。パネルのレイアウトをよく確かめて補強と装飾を兼ねてパネルの縁を二重にします。まずパネルと同寸の板をもう一枚切って、縁から一定の幅(作例では12mm)にケヒキなどでしるしをつけて、弓ノコなどで切り抜きます(写真16)。

正面のパネルを作ります。パネルのレイアウトをよく確かめて補強と装飾を兼ねてパネルの縁を二重にします。まずパネルと同寸の板をもう一枚切って、縁から一定の幅(作例では12mm)にケヒキなどでしるしをつけます。

小林健二の技法

ケヒキで印をつけたところを弓ノコなどで切り抜き、パネルには所定の位置に穴をあけます。

彫刻刀の丸刀などで面を取り、貼りつけます。

彫刻刀の丸刀などで面を取り、貼りつけます。

写真18のようにいろいろな断面をすでに削りだして棒状に形成した製品も面縁として売られています。

写真のようにいろいろな断面をすでに削りだして棒状に形成した製品も面縁として売られています。

写真19のようないろいろな面取り飽もまだ大工道具を売っているお店の隅に残っていることもあり、 1つ2つあるとなにかと楽しく工作ができるでしょう。

写真のようないろいろな面取り飽もまだ大工道具を売っているお店の隅に残っていることもあり、 1つ2つあるとなにかと楽しく工作ができるでしょう。

写真20は仕上げ前の本体とパネルです。本体下部の額縁のように面を取った部分は、工作材を彫刻刀で彫ったあと貼りつけたものです。本体にあいた穴の形がちがうのは、 パーツを仮に組んでみたらコイルが人らないので、設計変更をしたためです。

写真20は仕上げ前の本体とパネルです。本体下部の額縁のように面を取った部分は、工作材を彫刻刀で彫ったあと貼りつけたものです。本体にあいた穴の形がちがうのは、パーツを仮に組んでみたらコイルが人らないので、設計変更をしたためです。

写真52は全体のパーツが仕上がったところです。ヴァリコンはパネルにヴァーニャダイヤルであらかじめ取り付けておきます。ディテクターもついてます。背面パネルにはヘッドフォン用のターミナル2個とアンテナ用とアース用にそれぞれひとつずつのターミナルがつけであります。

写真は全体のパーツが仕上がったところです。ヴァリコンはパネルにヴァーニャダイヤルであらかじめ取り付けておきます。ディテクターもついてます。背面パネルにはヘッドフォン用のターミナル2個とアンテナ用とアース用にそれぞれひとつずつのターミナルがつけであります。

回路図と実体配線図を載せておきますので、参考に組み込んでください。

[直接結合回路鉱石受信機]回路図

[直接結合回路鉱石受信機]回路図

[直接結合回路鉱石受信機]実体配線図

[直接結合回路鉱石受信機]実体配線図

調整と聞き方

組み上がったあとの調整は、内部配線の接続を確かめ、アース線やアンテナ、ヘッドフォンの接続を確かめたあと、さぐり式の鉱石検波器の針を鉱石からはずしておいて、そこにダイオードを足を曲げて仮に取り付けておきます。コイルからヘッドフォンにつながるロータリースイッチをいちばん右(巻き数をいちばん小)にして、アースにつながるロータリースイッチは左から3番目くらいにして、ヴァリコンを動かしていちばん音が大きなところに合わせます。そしてそれぞれのロータリースイッチを動かしさらに分離がよく聞こえやすいところを探し、ふたたびヴァリコンを動かします。これを繰り返し、最もいいところを見つけたら、ダイオードを取り去り、さぐり用の針を鉱石にあてながら放送が最もよく聞こえるポイントを見つけます。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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工作世界が教える身近な不思議との交感

「本を読んで心が癒されることがあったとしたら、それはとっても素敵だと思う。ぼく自身リラックスするのには、本はいつだって欠かせない。特に読む本は科学や工作や宇宙の本が好きだ。せわしない社会の中で生きるのは、人間たちが決めたルールであっても、知らず知らず身も心もがんじがらめになってることがあると思う。そんなよどんだ空気の底からサッパリとした気分で深呼吸するのに”星の世界”や”身近な不思議”は、ぼくにとっても大事なんだ。」

「昔は作る人と使う人がとても近いところにいたと思う。自分の感じた身近な不思議が好奇心となって何かを作らせる。そして使う人にもその物を通じてワクワクした心が通い合う。だからごくありふれた日常からも、物や人、作られたものを構成する木や石や金属、ひいては大地や大気に繋がって、いつでも自然と連絡する回路が確かめられるんだ。」

少年向けの工作本や科学雑誌は、今も氏の”癒しのバイブル”であり続ける。昭和初期に発行された、子供向けとは思えぬほど丁寧に取材構成され、詳細かつ美しい図解を多用した名著の数々。氏おすすめの「少年技師の電気学」(科学教材社、山北藤一郎著)、「科学する子供の為の模型航空機の作り方」(立命館、一柳直良著)、「子供の科学」(誠文堂新光社)など、古本屋で一度探してみては。

「少年技師の電気学」(科学教材社、山北藤一郎著)

「少年技師の電気学」(科学教材社、山北藤一郎著)

「科学する子供の為の模型航空機の作り方」(立命館、一柳直良著)

「科学する子供の為の模型航空機の作り方」(立命館、一柳直良著)

*1994年のメディア掲載記事を編集しております。

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クラウンコイルの製作について

クラウンコイルの製作

このコイルはぼくが設計したもので、形が王冠のようなのでクラウンコイルと名づけました。Q(効果が高い時など「Q(キュー)がいい」といいます)もとてもよいので、ぜひ試してみてください。

作例のコイルのリングはたまたまホビー材料屋で見つけたもので、サイズは外径9cm、内径6.5cm、厚さ12mmでした。適当なものが入手できないときは、糸ノコで切るか、写真のように自在キリという道具で裏と表から木の板にかけて作ることもできます。

ボール盤に自在キリを取り付けて円形に木をカットしている様子。

ボール盤に自在キリを取り付けて円形に木をカットしている様子。

ニスを塗った木の輪に、 7mmくらいの深さの切り込みを19本入れます。切り込みの深さを一定にするためには、金ノコの背にあたる部分の両側にプラスチック片などを瞬間接着剤でとめて、ストッパーとしておくと仕事がやりやすいでしょう。

ニスを塗った木の輪に、 7mmくらいの深さの切り込みを19本入れます。切り込みの深さを一定にするためには、金ノコの背にあたる部分の両側にプラスチック片などを瞬間接着剤でとめて、ストッパーとしておくと仕事がやりやすいでしょう。

厚さ1mmのプラスチック板(作例では布入ベーク)を35mm×12mmの大きさに切ったものを19枚作って、 リングの切り込みに垂直に差し込んでゆきます。金ノコの 切り込みの幅が1mm弱なので、強く押し入れるとちょうどとまるはずですが、もし きつすぎるなら、同じプラスチック板の余りなどを差し込んで4、5回こするとサイズがよくなります。

厚さ1mmのプラスチック板(作例では布入ベーク)を35mm×12mmの大きさに切ったものを19枚作って、 リングの切り込みに垂直に差し込んでゆきます。金ノコの切り込みの幅が1mm弱なので、強く押し入れるとちょうどとまるはずですが、もしきつすぎるなら、同じプラスチック板の余りなどを差し込んで4、5回こするとサイズがよくなります。

それぞれの羽がしっかりとリングに埋め込まれたら、垂直に入っていることを確かめて、瞬間接着剤で固定します。

それぞれの羽がしっかりとリングに埋め込まれたら、垂直に入っていることを確かめて、瞬間接着剤で固定します。そして導線の巻き初めをビスなどで固定して、スパイダーコイルと同じように羽2つずつジグザグに編むようにして巻いてゆきます。

スパイダーコイルの製作

そして巻き初めの反対側のほうに、2列タップを出す位置を決めます。そして向かって左側に巻き初めから1周して最初にその位置がきたときから12回ごとにマジックなどでしるしをつけ、それを6回おこないます。

右側のほうは、前回ご紹介したソレノイドコイルのときのように、最初が18回目で、以降12回ずつ巻いて5回しるしをつけます。そして補強も兼ねてさらに12回ほど巻いて、巻き終わりの端を巻き初めのとなりあたりにネジで固定して巻き上がりとします。

ソレノイドコイルの製作

巻き上がったコイルのタップを出すために、羽と羽のあいだのしるしをつけた場所 に、マイカの1cm幅に切った小板を差し入れます。 ドライバーのマイナスなどであらかじめじるしのついたところの縁を持ち上げておくとょいでしょう。

巻き上がったコイルのタップを出すために、羽と羽のあいだのしるしをつけた場所に、マイカの1cm幅に切った小板を差し入れます。 ドライバーのマイナスなどであらかじめじるしのついたところの縁を持ち上げておくとょいでしょう。

コイルを本体に取り付けるための金具を作ります。幅1cm、厚さ1mmくらいの真鍮板を曲げて、コイルの木枠にネジで3カ所に取り付け、金具のそれぞれの端は90度に曲げ、径3mmのタップを立てておきます。

コイルを本体に取り付けるための金具を作ります。幅1cm、厚さ1mmくらいの真鍮板を曲げて、コイルの木枠にネジで3カ所に取り付け、金具のそれぞれの端は90度に曲げ、径3mmのタップを立てておきます。

「コイルのタップ」と同じタップという言葉なのでわかりにくいかもしれませんが、「タップを立てる」というのはタッピングツールで雌ネジを作ることを言います。

*方法は下記に紹介しておりますので、参考にしてみてください。

マイカ板の上のタップの部分に前ハンダをしておきます。

マイカ板の上のタップの部分に前ハンダをしておきます。

1回路6接点のロータリースイッチにヨリ線とエンパイヤーチューブで配線をするのですが、作例の場合はケースが小さく、手やハンダごての入るスペースがないために、ダミーケースを作ってあらかじめ配線を仕上げておきました。

1回路6接点のロータリースイッチにヨリ線とエンパイヤーチューブで配線をするのですが、作例の場合はケースが小さく、手やハンダごての入るスペースがないために、ダミーケースを作ってあらかじめ配線を仕上げておきました。

ダミーケースとはこの場合、コイルのタップからの引き出し線をいちばんいい長さでロータリースイッチに配線するために、余った板などでそのコイルとスインチの距離をシュミレートしたものを作っておいて、それに部品を仮に取り付け配線を先に済ませてしまうことで作業を楽にしようとするものです。

このようにしてあらかじめスイッチまでの配線が終了したコイルです。

このようにしてあらかじめスイッチまでの配線が終了したコイルです。

タップで雌ねじを作る

タップによって雌ねじを作ることができれば、金属と金属、あるいはいろいろな材料を接合するのにとても便利です。アルミとアルミのようにハンダ付けが難しい素材や、プラスチック、木でもある程度硬度があれば、たいていの場合ビスやボルトで接合ができます。タップで作業することを「タップを立てる」と言います。またこのようにしておくと、接着剤による接合と違って再び取り外しがきくので、工作の幅を広げることができます。

写真1は手前に並んでいるのがタップのカッターで、左から1、14、17、2、2 3、2 6、3、4、5、6、8、10、16 mmです。後ろにあるのがタップのホルダーあるいはハンドルと呼ばれるもので、タップの大きさに見合ったものを使います。通常よく使うサイズは2.6~6 mmまでの間で、とりわけ3mmはよく使います。

写真は手前に並んでいるのがタップのカッターで、左から1、14、17、2、2 3、2 6、3、4、5、6、8、10、16 mmです。後ろにあるのがタップのホルダーあるいはハンドルと呼ばれるもので、タップの大きさに見合ったものを使います。通常よく使うサイズは2.6~6 mmまでの間で、とりわけ3mmはよく使います。

作業はまず雌ねじを作りたい場所にそのねじの直径に0.8をかけた大きさの下穴をドリルであけます。たとえば3mmのタップの場合、あらかじめ3X0.8=2.4mm(あるいは2.5mm)の大きさの下穴をポンチ等でマーキングしてあけます。それからタップをできるだけ垂直になるようにして、ゆっくりと時計画りに回していきます。

タップの作業。

タップの作業。

金属や固い材の場合、3回まわしたら2回戻すというようにして少しずつあけていき、ひっかかるようなら油をさしながら作業します。3mm以下のタップは折れやすく、もし折れてしまうと厄介なので注意が必要です。細いねじの場合は、材のほうを回すほうがタップが折れにくい場合もあります。

写真はタップを横から見たものです。ねじを切り終わったら逆さに回してタップをはずし、切りくずを取って終了です。

写真はタップを横から見たものです。ねじを切り終わったら逆さに回してタップをはずし、切りくずを取って終了です。

ダイスで雄ねじを作る

ダイスで雄ねじを作ることはタップを使う頻度より少ないかもしれませんが、前回紹介したヴァリオカップラーの工作のようにダイスを使えると便利な時があります。もちろんダイスにも小さいものから大きいものまでサイズがいろいろあります。

ヴァリオカップラーの製作

ダイスの使い方は、もし真鍮で3mmのねじを作る場合なら、その3mm径の棒を万力などでくわえて固定し、棒にそってダイスを回します。

ダイスの使い方は、もし真鍮で3mmのねじを作る場合なら、その3mm径の棒を万力などでくわえて固定し、棒にそってダイスを回します。

所定の位置まで来たら反対に回してダイスをはずします。このようにダイスで作業することを「ダイスを通す」言います。

ダイスで長いねじを作るのは少々むずかしいのですが、ピッチをそろえてきれいに作りたい時はボール盤に棒をくわえて手でダイスを持って作業するとうまくいきます。

ぼくは所定の位置までダイスがとおったら、ぱっと両手を同時にはなしてボール盤のスイッチを切るという感じで作業をしているので、人が見たらとてもあぶなく見えると思います。

所定の位置は加工する品物にあらかじめマジックで印を付けておくと品物が回転してもわかります。

所定の位置は加工する品物にあらかじめマジックで印を付けておくと品物が回転してもわかります。

またダイスを通すほどでもない場合や、とても長いねじが必要な時は全ねじ棒といって全体がすでにねじになっているものがあります。

通常金属材料店で手に入るのは、径が2、2.6、3、4、5、6、8、10、12 mmですが、これでたいてい間に合うと思います。

通常金属材料店で手に入るのは、径が2、2.6、3、4、5、6、8、10、12 mmですが、これでたいてい間に合うと思います。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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固定式鉱石検波器の製作について

固定式鉱石検波器は鉱石ラジオが最盛期を迎えた時代にもっとも普及しました。

上左から国産のフォクストン(古河電気工業)と呼ばれたものです。その右が米国ERLA製、その下の大きめのものはカーボランダムディテクターと呼ばれ、本来は0.lVくらいのバイアスをかけて使用します。3段目左は自作品、右は現在入手できるレプリカ品、4段日はともに自作品です。 自分なりにラベルを工夫したりすると楽しいと思います。

上左から国産のフォクストン(古河電気工業)と呼ばれたものです。その右が米国ERLA製、その下の大きめのものはカーボランダムディテクターと呼ばれ、本来は0.lVくらいのバイアスをかけて使用します。3段目左は自作品、右は現在入手できるレプリカ品、4段目はともに自作品です。
自分なりにラベルを工夫したりすると楽しいと思います。

ERLA製の固定検波器と自作の検波器を分解したもの。ERLA製のものは黄鉄鉱と燐青銅の0.6mmくらいの針の先をとがらせたもので作ってあり、自作のものは0.5mmタングステンで作ったスプリングと硫砒鉄鉱を使って作りました。このような構造だとねじを回し封じながら接点を取るので感度のいい場所でなかなかうまく止まってくれず大変ですが、いったん感度のいい点で止まると、タングステンのバネの利きがよくて少し落としたくらいでは位置がずれたりしません。

ERLA製の固定検波器と自作の検波器を分解したもの。ERLA製のものは黄鉄鉱と燐青銅の0.6mmくらいの針の先をとがらせたもので作ってあり、自作のものは0.5mmタングステンで作ったスプリングと硫砒鉄鉱を使って作りました。このような構造だとねじを回し封じながら接点を取るので感度のいい場所でなかなかうまく止まってくれず大変ですが、いったん感度のいい点で止まると、タングステンのバネの利きがよくて少し落としたくらいでは位置がずれたりしません。

昔のパッケージ入りの固定検波器など。

昔のパッケージ入りの固定検波器など。

フォックストン型鉱石検波器を作る前に、手慣らしとしてダイオードを使用したタイプを作ってみます。

ダイオードによる固定式検波器の製作

材料:プラスチックパイプ1本(太さ10mm長さ3-4cm)・ホック(スナップボタン)用オス金具2個・ゲルマニュームダイオード1本・金具用真鍮板1.5mm厚3cmくらい1枚と1mm厚8mmX7cmくらい1枚

 

まず、ホックのオスの裏側のへこんだところにハンダを溶かしながら埋め込んでおきます。このとき木の台などに穴をあけて、出っ張ったところを入れて安定して作業できるようにするとよいでしょう。

まず、ホックのオスの裏側のへこんだところにハンダを溶かしながら埋め込んでおきます。このとき木の台などに穴をあけて、出っ張ったところを入れて安定して作業できるようにするとよいでしょう。

このホックにダイオードの線が通る08~1mmくらいの穴を、ハンドドリルなどを使って貫通させておきます。

このホックにダイオードの線が通る0.8~1mmくらいの穴を、ハンドドリルなどを使って貫通させておきます。

アクリルなどのパイプ(作例では見やすいように透明)で、太さ10mm、長さ35mmくらいのものを用意します。中にダイオードを入れ両端から先ほどのホックをダイオードに通してホックとパイプとを瞬間接着剤でとめておきます。

アクリルなどのパイプ(作例では見やすいように透明)で、太さ10mm、長さ35mmくらいのものを用意します。中にダイオードを入れ両端から先ほどのホックをダイオードに通してホックとパイプとを瞬間接着剤でとめておきます。

ダイオードが真ん中にくるように調節して、両端のホックとダイオードとの線とをハンダ付けして余分な線は切ってしまいます。これでフォックストン型の検波器がで きます。

ダイオードが真ん中にくるように調節して、両端のホックとダイオードとの線とをハンダ付けして余分な線は切ってしまいます。これでフォックストン型の検波器がで
きます。

次にこのフォックストンをパネルにつける金具を作ってみましょう。

ここでは止める板はガラスエポキシ製の物を使用してますが、素材は自分の好みで決めてください。

ここでは止める板はガラスエポキシ製の物を使用してますが、素材は自分の好みで決めてください。

見るからに簡単な金具なのですが、今はもちろん市販されていません。この金具はバネのように弾力をもたせ、フォクストンの着脱をするために0.5mmの薄い真鍮板で作ります。そしてホックの出っ張りを入れて固定するため4mmの穴をあけるのですが、工作にはこんな簡単そうなところに思わぬ危険が隠れています。

ここに5mm厚と0.5mm厚の金属板があったとします。この板に直径4皿mの穴をあけようとしたとき、どちらのほうがあけやすいでしょう。ちょっと考えると薄いほうと思いがちですが、実はそうではありません。厚いほうは時間をかければハンドドリルでもいつかはあきます。しかし薄い金属板だと、ドリルが貫通しようとした瞬間、ドリルが材料に食い込み上部のほうへ急に持ちあげられたりして材料が変形したり、ひどい場合はドリルにからまって回転してしまい、材料を押さえていた手に思わぬケガをする危険があります。電動工具を用いて起こる事故の大半は、その危険な状態をイメージできないところから起きるのです。ですからここでは事故の少ない安全な方法を例として示してみたいと思います。

まず大きな板をしっかりと支えて先に穴をあけ、そのあとで必要なサイズにカット します。

まず大きな板をしっかりと支えて先に穴をあけ、そのあとで必要なサイズにカットします。

この場合は押し切りカッターを使っていますが、金切りばさみか、しっかりしたはさみで切ることができます。

この場合は押し切りカッターを使っていますが、金切りばさみか、しっかりしたはさみで切ることができます。

その後ペンチ等で途中を90°度に曲げてL字の形にしておきます。

その後ペンチ等で途中を90°度に曲げてL字の形にしておきます。

固定式鉱石検波器の製作

鉱石ラジオの要とも言うべき鉱石検波器を製作します。ここでは固定式のものを作ります。上記でダイオード使用の検波器を作ったのとほぼ同じ方法です。

材料:方鉛鉱の小さく割ったかたまり3~5 mmくらいのもの 1個・ホックのオス型のもの 2個・プラスチックの筒 外径10mm×35mmくらいのもの 1本・スプリング 筒の内径より少し細めのあまり強くないもの 1本(ここでは作ってみます)・取り付け金具 アルミのL字形押出材の15mmX15 mm 厚さ3mm長さ12mm

まずはダイオードで作った時のように、穴のあいた板の上などにホックを出っ張っ たほうを下にして安定させます。そしてハンダをハンダごてで溶かして入れます。次 に溶けてたまったハングの中にハンダごてを入れてハンダを液体にしておきながら、 ピンセットで鉱石をハンダの上に置き、少し押さえます。

まずはダイオードで作った時のように、穴のあいた板の上などにホックを出っ張ったほうを下にして安定させます。そしてハンダをハンダごてで溶かして入れます。次に溶けてたまったハングの中にハンダごてを入れてハンダを液体にしておきながら、ピンセットで鉱石をハンダの上に置き、少し押さえます。

1~ 2秒して鉱石も温まったら、ハンダごでをそこからはずし、ハンダが固まり鉱 石が安定するまでそのままピンセットで押さえておきます。

1~ 2秒して鉱石も温まったら、ハンダごでをそこからはずし、ハンダが固まり鉱石が安定するまでそのままピンセットで押さえておきます。

ハンダが冷えて固まれば作業は終了です。しかし、すぐに鉱石がはずれてしまうようなら、もう一度作業を繰り返してください。ただ、あまり鉱石を熱しすぎてしまうと、感度が落ちることがありますから注意してください。

鉱石は方鉛鉱のほか、黄鉄鉱や紅亜鉛鉱なども使用できます。いろいろな種類の鉱 石で作ったり、同じものでも複数作っておくとよいと思います。上は自作ケースにセットした検波器に使用する鉱石各種と下はやはり自作ケースにセットした台座付き検波器用鉱石各種。

鉱石は方鉛鉱のほか、黄鉄鉱や紅亜鉛鉱なども使用できます。いろいろな種類の鉱石で作ったり、同じものでも複数作っておくとよいと思います。上は自作ケースにセットした検波器に使用する鉱石各種と下はやはり自作ケースにセットした台座付き検波器用鉱石各種。

次にスプリングですが、内径より少し細めの市販のものを使います。材質はステンレスの線の細いものがいいでしょう。内径にくらべてあまり細いスプリングを使うと、スプリングの先が鉱石にうまく当たってくれないばかりか、中で曲がってしまって安定しません。作例では筒の内径が8mmで、市販のスプリングでぴったりのものがなかったので、作ることにしました。スプリングの材料は作例のようにタングステン線の0.2 mmくらいが理想ですが、入手がむずかしいのでステンレス線、あるいはニクロム線の細いもの(0.5 mmくらいまで)を使います。

スプリングを作るときは、この場合太さ6mmのネジにピッチに合わせて巻いてゆくと簡単にできます。

スプリングを作るときは、この場合太さ6mmのネジのピッチに合わせて巻いてゆくと簡単にできます。この写真では木の棒を使用。

内径より2まわりくらい小さいネジをゲージにします。手をはなすと少し広がりますので、あとは引っ張ったり押したりねじったりして大きさを合わせます。鉱石に当たるほうの端は、中心に尖った線の先がくるようにします。

鉱石のついたホックをパイプと瞬間接着剤で固定したあと、スプリングを入れ、蓋を開めるようにしてもう一方をホックで押さえ、セロテープで仮止めし、これまでにもしも自作したラジオがあれば、それで感度を確かめます。よい感度のときがくるまでスプリングの入れ方をいろいろと変え、よい感度が得られたときそのまま動かさずに接着剤で仮止めの部分を固定します。

鉱石のついたホックをパイプと瞬間接着剤で固定したあと、スプリングを入れ、蓋を開めるようにしてもう一方をホックで押さえ、セロテープで仮止めし、これまでにもしも自作したラジオがあれば、それで感度を確かめます。よい感度のときがくるまでスプリングの入れ方をいろいろと変え、よい感度が得られたときそのまま動かさずに接着剤で仮止めの部分を固定します。

ぼくらの鉱石ラジオ・小林健二

 

この検波器の取り付け金具は、アルミ製のL字棒を金ノコで切ってやすりで整えたあと、ドリルで本体につくほうに3mm、検波器のつくほうに4mmの穴をあけて作りました。

この検波器の取り付け金具は、アルミ製のL字棒を金ノコで切ってやすりで整えたあと、ドリルで本体につくほうに3mm、検波器のつくほうに4mmの穴をあけて作りました。

このようにして作った固定式鉱石検波器は、強く落としたりするとスプリングの位置が変わって感度を失うこともあります。そのようなことも考えて、昔は筒の中ほどに前もって2mmくらいの穴をあけておき、そこから針によって中のスプリングを動かして、感度のよい点に再び安定させたようです。

またいくつか作っておいて、いろいろ付け替えをして感度の違いを楽しんでみてください。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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ソレノイドコイルの製作について

ソレノイドコイルとは、筒状の芯の上に導線を巻いた最もポピュラーなコイルのことです。

今回の材料です。

・コイルのボビン(直径7 cm 長さ10~12 cm) 1本(作例ではベークライトの筒ですが、このサイズに近い紙筒でも可)

・エナメル線(太さ0.6mm)30mほど(作例では緑色に染めた二重絹巻き線を使用)

・絶縁板としてマイカ(雲母)もしくはベークライトの薄い板(作例ではベークライトの厚さ0. 5mmを6mm X85mmに切ったものを用いました。竹串でもよいのですが、ある程度ハンダの熱に耐えるものが望ましいのです)。

・ロータリースイッチ 3個(1回線12接点タイプ)

ベークライトの筒(直径7cm長さ10-12cm),二重絹巻き線(太さ0.6mm長さ30m),ベークライトの細長い板(厚さ0.5mm,6x85mm),ロータリースイッチ3個(1回線12接点タイプ)

ベークライトの筒(直径7cm長さ10-12cm),二重絹巻き線(太さ0.6mm長さ30m),ベークライトの細長い板(厚さ0.5mm,6x85mm),ロータリースイッチ3個(1回線12接点タイプ)

まずコイルの巻き初めのところに線が通るほどの穴を2つあけ、線を巻きはじめます。このコイルのタップは線をボビンに巻きながら8回巻いてタップの場所にくるたびに絶縁板をスライドさせて押し入れてゆくようにして進めてゆきます。

線を8回筒に巻くごとに絶縁板を差し込んでまたぎ、とこれを繰り返します。

線を8回筒に巻くごとに絶縁板を差し込んでまたぎ、とこれを繰り返します。

タップが出るところは左右にあります。巻き初めから8回目、16回目、24回目というように8回ピッチでタップ位置がくるところと、最初のタップが12回目にきて、それから8回ピッチでタップがくるところです。それぞれのタップは12カ所出て巻き終わりとなり、そのあとに線はつづいて1回巻く毎にタップが12カ所出る部分がきで、全巻き数は8X12+12=108回となります。言葉や図で説明するとちょっと面倒のようですが、製作はそれほど大変ではありません。

これがコイルの巻き上がりです。

これがコイルの巻き上がりです。

タップの部分に写真では白い布が挟んであるのは、タップを出すところの目印にするためです。

それぞれのタップが出るところの被覆をはがし、写真の左上のタップ引出し部分のようにあらかじめ前ハンダをして、配線をするためのワイヤーをハンダ付けします。

それぞれのタップが出るところの被覆をはがし、写真の左上のタップ引出し部分のようにあらかじめ前ハンダをして、配線をするためのワイヤーをハンダ付けします。そしてコイルのタップの部分に配線用の線をハンダ付けしたところです。

コイルの線の初めと終わりの白い帯のようなラインは、タップを出すために下にくぐらせた絶縁板の端を押さえるためにタコ糸を巻いたもので、コイル全体の機械的安定性を高めるために昔の手巻きコイルにはときどき用いられていた方法です。

エナメル線でも二重絹巻き線でも単線ですので、あまり曲げたり伸ばしたり動かしたりしていると、途中で折れるように切れてしまったり、ハンダ付けしたところに力が加わってとれてしまったりするので、気をつけなければなりません。また1回毎の部分のハンダ付けをする際、先の尖ったナイフなどでこすってエナメルをはがし、位置をずらしながらハンダ付けをするとよいでしょう。

ロータリースイッチを内部パネルに取りつけ、4mm× 30mmのスペーサーを2本つないで60mmの長さとして使います。

ロータリースイッチを内部パネルに取りつけ、4mm× 30mmのスペーサーを2本つないで60mmの長さとして使います。

ロータリースイッチは写真で見るようにいろいろな形状があって使用する目的によって使い分けるとよいでしょう。

ロータリースイッチは写真で見るようにいろいろな形状があって使用する目的によって使い分けるとよいでしょう。

4mm× 60mmのスペーサーがあればそのほうがよく、また工作上配線のしやすい距離を得るためのものですので、細かい作業が得意な人は20mmくらいの狭いスペースでも配線ができると思います。スペースはたくさんあればあるほど工作は楽になりますが、その分こわれやすくなるかもしれません。

ロータリースイッチヘの配線手順

ロータリースイッチヘの配線手順

ロータリースイッチヘの配線は、まず余裕をもたせてコイノレにハンダ付けしてある線(10cmほど)をロータリースイッチの所定の位置まで指で持って合わせ、余分な部分を5mmほど残して長めに切り、先端の被覆をはがします。ピンセットなどで線をロータリースイッチのハンダ付けをする端子のところに運び、端子の穴に線を引っかけ、曲げて安定させてからハンダ付けをします。

このあと配線が正しいかどうか、ちゃんとハンダ付けができているかどうかを確かめて、コイル部分は完成です。

このあと配線が正しいかどうか、ちゃんとハンダ付けができているかどうかを確かめて、コイル部分は完成です。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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スパイダーコイルの製作について

スパイダーコイルの製作

スパイダーコイルは、筒型のソレノイドコイルとくらべると、いかにも鉱石ラジオ的な雰囲気をもっています。ソレノイド型と比較して、かならずしもすべてのスパイダーコイルがクオリティの面で優れているというわけではありませんが、巻き数が増えるたびに直径も増えてゆく構造なのでインダクタンスの増加率が高く、小型に作ることができます。

現在ではこのスパイダーコイルの巻き枠だけを買い求めることは難しいので、やはり自作をしなければなりませんが、それほど困難なことではありません。しかも、昔よりももっと上等のスパイダーの巻き枠を作ることもできます。

というのは、型抜きによって作られていた昔の巻き枠は薄いものが多く、そのため線と線との距離がとれず、コイルが密着して巻かれてしまうので、発生するコンデンサー成分も多く、かえってコイルのQ(クオリティ)を下げてしまうこともあるからです。これは巻き枠の厚みを増やすことで改良できます。それに、自分で作るから大きさや形、羽の数(奇数であれば可)などを変えて、いろいろと実験ができます。昔のスパイダーの巻き枠は、内径が32~ 35 mmくらいが普通でしたが、もっと大きめの内径から始めれば、全体の巻き数を減らしても最初のタップからインダクタンスを稼げるようになります。

かつて売られていたコイルの巻き枠

かつて売られていたコイルの巻き枠

全体的に透明感のある素材で仕上げた自作ラジオ(検波器はフォックストン型のゲルマニュームダイオード使用)

全体的に透明感のある素材で仕上げた自作ラジオ(検波器はフォックストン型のゲルマニュームダイオード使用)

丸で囲ってある部分が今回作るスパイダーコイルの枠です。

丸で囲ってある部分が今回作るスパイダーコイルの枠です。

スパイダーコイルの巻き枠を作る

スパイダーコイルの羽の数と全体の大きさを決めて製図をします。たとえば内径が35 mm、外径が85 mmで羽の数が15枚の場合、それぞれの円を同心円に作図し、外周の円周を15等分します。

円周を15等分するのは、普通のコンパスでは少々大変なので比例コンパスを使います。

この比例コンパスのラインズの15のところに目盛りを合わせ、X型に開いて、大きく開くほうをその円の半径に合わせると、小さく開くほうがその15等分した円周のひとつの単位を示します。しかしながら特殊なコンパスは持っていないと思いますので、その時は上の画像(かつて売られていたスパイダーコイル枠をプリントしたり、工夫してみてください。)

この比例コンパスのラインズの15のところに目盛りを合わせ、X型に開いて、大きく開くほうをその円の半径に合わせると、小さく開くほうがその15等分した円周のひとつの単位を示します。しかしながらかなり特殊なコンパスのため、お持ちでない場合は上の画像(かつて売られていたスパイダーコイル枠や付録として掲載した下の図をプリントしたりと工夫してみてください。)

スパイダーコイルの巻枠の図(付録)

スパイダーコイルの巻枠の図(付録)

円周のプロットができたら、それをそれぞれの中心点と結んでおきます。

製図ができたら、それを直接貼ったり、カーボン紙をはさんでなぞったり、針で印をつけたりして厚紙に写します。

内側の円との交点を2~ 6mmくらいのポンチで抜いていきます(厚い場合は大きめの穴にする)。何枚か厚紙を貼り合わせた台紙の場合は、表と裏から少しずつポンチを打てばされいにできます。

内側の円との交点を2~ 6mmくらいのポンチで抜いていきます(厚い場合は大きめの穴にする)。何枚か厚紙を貼り合わせた台紙の場合は、表と裏から少しずつポンチを打てばきれいにできます。

外周部をサークルカッターもしくは普通のカッターなどでまるく切り取ります。 中心点から今あけた穴の両端を通り、外側の円へと向かう直線にそってカッターナイフなどで切り取ります。

外周部をサークルカッターもしくは普通のカッターなどでまるく切り取ります。
中心点から今あけた穴の両端を通り、外側の円へと向かう直線にそってカッターナイフなどで切り取ります。

またコイルを巻くときのことを考え、あまり手触りがトグトグしているようなら、巻き枠の角や切り口をサンドペーパーなどでなめらかにするとよいでしょう。

必ずしも必要というわけではありませんが、補強と絶縁性を高めるために全体をラッカーあるいはシェラックニスなどに浸し、よく乾燥させればさらに上等のものとなります。

必ずしも必要というわけではありませんが、補強と絶縁性を高めるために全体をラッカーあるいはシェラックニスなどに浸し、よく乾燥させればさらに上等のものとなります。

スパイダーコイルの巻き方

スパイダーコイルを巻いてゆきます。

今回は二重絹巻き線太さ0.4mmのもの使用

今回は二重絹巻き線太さ0.4mmのもの使用。まき枠もF.R.P.(強化プラスチック)をカットして作っています。

作例では見やすいように透明なF.R.P.(強化プラスチック)の1mm厚で作った巻き枠を使っています。F.RP.やベークライト板などの固いもので巻き枠を作る場合は、穴はドリルであけ、金ノコで切ります。スパイダーの巻き枠にコイルを巻く方向はどちらでもかまいません。ただ、 15本ある羽を2枚おきにとばしながら交互に線を交差するようにして巻いてゆきます。そして15周巻くごとに、タップを10 cmくらいねじって出してそれを4回繰り返します。4本目のタップが出たあとは巻き枠いっぱいまで線を巻きます。

この際、巻く回数はあまり厳密なものではありませんが、途中で何回巻いたのかわからなくなった場合は、どこか羽のところで見えている線の数に4を掛けると全体の巻き数がわかります。

これは巻き上がったスパイダーコイルです。

これは巻き上がったスパイダーコイルです。

上部のほうにタップが出ています。このように1つの羽のところにタップがそろっていると、工作上とでも都合がいいのですが、実はなかなかそうはなってくれません。

ですからこの場合はそれぞれのタップが出ている巻き数は15回日、30回日、46回日、62回日、101回日となっています。

このように大ざっぱでいいのだろうかと疑間が出てきそうですが、 1、2回巻き数が前後することはさほど問題ではないので、あまり巻き数を気にしないで結構です。4回日のタップの後、巻き終わりまでの巻き数も、 75回でも80回でもいいのです。

スパイダーコイルの巻き方

スパイダーコイルの巻き方。羽を二つ飛びに巻いていきます。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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