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鉱石ラジオの回路とそのはたらき[コイル後編]

小林健二設計製作「火星人式交信鉱石受信機(固定L型同調)」

これは手前に件んでいる古風な火星人の腕の先にワイヤーを触れるように握手させると、メッセージが聴取できるというものです。それぞれの腕は基本的にコイルのタップで、しかも小さなインダクターによってあらかじめ局を固定してあります。

前出の蝶類標本型と同じで、これらの受信機のアンテナはあらかじめ決まったものを使用します。他のアンテナを使うとCやLの定数が合わなくなって放送が聞こえなくなることがあるからです。空飛ぶ円盤の中と台の中にコイルがあり、この2つのコイルを可動させることでヴァリオカップラーのようにある程度調整できると考えました。もっとも工作上の外観を重視したため、あまり効果は上がりませんでしたが・・・・。火星人の頭の中には固定式で作った感度のよい検波器が入っています。もし作ってみようと思う方がいたら、ダイオードを用いたほうがよい結果が出ると思います。

画像は自作コイルのいろいろ。左上・ソレノイドコイル、中上・スペース巻コイル、右・ビノキュラーコイル、左下・Dコイル、その右・ソレノイドコイルの一種。

画像は左上・芯のついたラジアルバスケットコイル、中上・ウェーヴコイル、右上・クラウンコイル(小林健二設計と製作)、左下・スポークコイル、中下・スパイダーコイル(大正時代のもの)、右下・ナローバスケットコイル。

画像は左上・シェルフィッシュコイル、右上と左下・オルタネートコイル、中下 ソリッドコイル、右下・レイヤー巻コイル。

ヴァリアブルインタクター

コンデンサーに可変型があるように、コイルにも誘導係数を変化させるものがあります。これには下の画像で示したようにいくつかのタイプがあります。

画像はL・Cチューナー(同調器)。
これはコイルとコンデンサーをあらかじめひとつに組み立てて同調器としたものです。同調する周波数によっていくつかのタイプがありました。

画像はヴァリオメーター(カップラー)の一種。

ヴァリオメーター(カップラー)の一種。
画像は初期の木製のもの。

画像はルーズカップラー。中のコイルを出し入れして相互誘導係数を変化させます。

画像はチューニングコイル。左は小林健二自作。中央は初期のもの。右は現在でも米国で売られているもの。

コイルからタップを出してそれを切り換えるしくみのもの、接点をスライドさせることで変化させるもの(スライドチューナーslide tunerと言います)、これらは主に自己インダクタンスを変化させるものです。

これとは別に相互インダクタンスを変化させるものもあります。並列につないだ2つのコイルの距離や向きを変えることでコイルの結合度を変化させるヴァリオカップラー、また形状はヴァリオカップラーと変わりませんがそれぞれのコイルを直列につないで変化の幅を多くとっているヴァリオメーターなどです。

アンテナコイル

これは本来アンテナのようにラジオのセットの外部に出したりもしますが、基本的にはコイルとして同調回路の一部として考えられるものです。ですから、アンテナコイルをラジオに取り付けた場合、ラジオ内部の同調用のコイルははぶかれることが多いわけです。ぼくが自作した鉱石標本式受信機に応用したコイルもその一種です。

「鉱石標本式受信機」小林健二設計製作

これは検波のできる鉱石を探しているときに思いついたもので、鉱石による検波の違いを確かめようと作ってみたものです。この一見すると古めかしい鉱石標本箱の中には、検波のできる鉱石や電気すら通さない鉱石がいろいろ入っていて、それらにタンタルの金属針で触れていきます。LやCはすでに箱の中の見えないところにセットされていて、 JOAKとFENが聞けるように調整されています。コイルは昔式の紙を貼り合わせシェラックニスを塗った巻枠に、昔若草色だった風に2重絹巻き線を染めて作りました。鉱石の入っている標本箱の底全体には、見えないように厚さ0.1mmの錫箔がしわを付けて敷いであります。またコンデンサーはトリマーと呼ばれる半固定のものと固定のコンデンサーを使いました。単純な発想の受信機ですが、検波を初めて体験する人たちにはとても不思議に見えるようで好評です。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

KENJI KOBAYASHI

[TOYAMA ART NOW inner and outer ’99]より

[TOYAMA ART NOW inner and outer ’99]より(富山県立近代美術館発行)

子供の頃読んだ本の中に、片方の目にだけ、ある不思議な薬を塗ると普段なら見えにくいたくさんの宝石が見える、というような内容のものがありました。結局その主人公は、もっとよく見ようとして両目に塗ってしまい、何も見えなくなってしまうのですが、その本の挿絵の一つに片方にだけ薬を塗った人が、地中や空中にいろいろな色で輝く水晶のような美しい鉱物を見てはしゃいでいるのがありました。ぼくはとりわけその絵が好きでした。

ぼくはまた、古代の世界やそんな時代に書かれたかもしれない書物とはいかなるものかと考えたり、ある日机の引き出しを開けるとその中で青い発光体が静かに浮かんでいるといった幻について、想ったりしていることが好きです。

ぼくはそのような隠れたところや見えにくい場所に、何か素敵な宝物があるような気がしてなりません。そして、そんな目に見えない透明な通信でかわせる世界があることを信じているのです。

小林健二

Of the book I read when I was a child, there was one about the story of one person, who, by painting only one of his eyes with some mysterious medicine, was able to see many jewels and gems that could not normally be seen. But in the end when the protagonist painted both of his eyes to try to see more, he ended up not being able to see anything.

I especially liked one illustration on the book: it showed the person with only one of his eyes painted who was ecstatically looking at beautiful gems and stones scattered on the ground and floating in the air glittering like crystals awash in a rainbow of colors.

I also used to think about the ancient world and what kind of books might have been written then, and I liked to fantasize that one day I would open a drawer in my desk and there would be a blue luminescent object quietly lying there.

I have really felt that some beautiful treasures can be found in such hidden and unexpected places. I believe that there is such a world that we can communicate with through some unseen, transparent means.

Kenji Kobayashi

[TOYAMA ART NOW inner and outer ’99]より

 

*以下は実際に展示された作品に加え、上記の小林健二の文章を想起するような彼の作品を何点か選んでみました。

「夜光結晶」 LUCIFERITE
水晶、電子回路、他 
(水晶が光を受けてゆっくりと七色に発光を繰り返す。洞窟の中でのインスタレーションとして制作された。)

 

「FORAMINIFERA CONODONT BOOK OF AZOTH 」
混合技法

「九一式土星望遠鏡」 SATURN TELESCOPE TYPE 91
混合技法
(1991年に構想し19年後に完成した作品。レンズには全体像を表す土星が見え、青く光りながら回転する)

「CRYSTAL OF AZOTH WITH AURA TRIGGER 」
1992-1994

[CRYSTAL OF AZOTH(霊の鉱石)]とは本来セファイドの水の結晶です。その結晶の左側に陽性起電微子を、その右側に陰性消失微子を発生着帯します。アレフ(空あるいは風)、メム(水あるいは海)、シン(火あるいは熱)のそれおぞれ緑、青、赤の色彩成分をアゾト(霊あるいは意識)によって封じられた結晶なのです。この結晶はアルプス地方に産する明るい煙水晶で、その中に極めてわずかに見つけられる古代セファイドの水を含有したものを使用します。その左側に手をかざすと陽性起電微子ーAZOTHIN(アゾシン)の一種によって発光する場ができ、右側においてはその反対の作用が起ります。

(左の柱に手をかざすと水晶内部にゆっくりと光が現れはじめ静かに色彩が変化する。右の柱に手をかざすとまたゆっくりと消える)

crystal-of-azoth from Kenji Channel on Vimeo.

 

KENJI KOBAYASHI

 

鉱物の魅力

「鉱物の結晶は本来この世に全く同じものは二つとないわけですよね。そうした事実をぼくたちは思い起こしてみるといいんじゃないかな。

明礬で作る結晶の実験なんかでも、本を読んでいると枝のような結晶が付いてできたら取るようにと書いてある。それはとりもなおさず、決まった形に育成していくことがいいと言っているようなものだよね。でもそうじゃなくて、それぞれに美しいと感じられる形があるし、天然現象としてその結晶自身が持っている方向のようなものがありんじゃないかと思うんです。

同じ鉱物が二つとないという鉱物の世界のようにね。そしてそれは、まるで人間がそれぞれの個人の魅力を自由な形で表現できる世界というのが理想だと思うようにね。

同じ種類の鉱物を並べても同じようには見えない。しかも一つの鉱物の中に数種類の鉱物がお互いを排除しないで共存しているものもある。鉱物、いや天然かな、そこには無駄や差別という概念がなくて素晴らしい。人間の世界もこんな風に、お互いを認め合えていけたらいいよね。

黄鉄鋼に褐鉄鋼がくっついていたり、透石膏に褐鉄鋼がくっついて、その後に中が溶けて空洞ができ外形だけが残っているものとかも洗う。珍しい標本だけど、これなんかもある意味で遺影の結晶とも言えるよね。

中心が透石膏でそのまわりに褐鉄鋼が仮晶した後、内部の透石膏が溶去して褐鉄鋼の部分だけが残ったもの。
Santa Eulalia,Mexico

示準化石や示相化石のように、化石だと全てではなくともその年代を同定できる場合があるけど、鉱物結晶はできるものに何千年かかったのか何万年なのかなかなか分かりづらい。それらは大抵光も当たらない場所で、ただただ変化し成長し続けていたわけですよね。

ここに海緑石化した貝だけど、どういう条件が揃えば貝のところだけが変化したり置換したりするのか、とても不思議なことだと思う。

腹足網の化石。外殻が海緑石(Glauconite)に置換されている。(記事を複写)
[Turritella terebralis]
Nureci,near Laconic,Central Sardinia,Italy

そんな神秘的なことがぼくたちの前にあらわれてくる。それを思うと、人間の世界から少し離れて自由な気持ちになれるわけです。

子供の頃から人と同じように物事ができなくて寂しくなったり孤独を感じたりしたことがあったけど、いまはそんな自分を変だと感じないでスムシ、心が落ち着いてきたと思う。

日常で大抵の人が感じる軋轢(あつれき )って、基本的には人間関係ってことが多いんないかしら。そんな時、鉱物の世界は一つの架け橋になってくれるような気がしますね。」

柱状の緑泥石を核とした、ザラメ砂糖のような水晶の結晶
Artigas, Uruguay

ー見た目に美しい鉱物ですが、精神性にまで影響があったりするんですね。ところで、人工の鉱物や宝石についてはどう思われますか?

「鉱物と宝石を趣味にする人ではタイプが違う場合があるように感じます。宝石で偽物を摑まされたとか嘆く人がいるけれど、その人がそれがガラス玉出会っても分からないかもしれないでしょ。それなら、あるがままに存在する天然のコランダムのルビーやサファイヤをあえてカットして磨くより、ガラス玉を付けても見た目には問題ないいじゃない(笑)。

硬度に違いがあるくらいで、もし赤くて透き通っているものとしてだけそれを見るのであれば、天然の鉱物である必要はないかも知れないね。

聞いた話ですが、最近の技術はすごくて、天然のエメラルドにはそれぞれに包含物やスがあるけど、人工のものにはそれがなくて均一だから見分けられていたんだそうです。それが今や、いかにして人工のエメラルドに天然に似た包含物やスを入れるかということになってきて、なかなか鑑定する人も大変だと思うけど、それはそれで天然の鉱物が少しでも助かるならいいなと思うんですけど(笑)。」

ー小林さんは色々な表現活動をされていますが、鉱物をテーマにしたものは作られているのですか?

「ぼくは怪物とか模型飛行機や星を見るのが好きだったし、絵の題材として怪物や透明なものや光ったりするものはよく出てきたし、高校の頃には水晶とか描いていたこともあった。

それは作品として仕上げ用というよりも、ただ好きなものを描いていた感じですね。みんなもそうかも知れないけど、今自分のやっている仕事と、そうなりたいと思っていたことが必ずしも一緒でない時期ってあるよね。でも表現方法は色々だけど、子供の頃から好きだったものってそんなに変われるものじゃないと思うんです。」

ー鉱物に対する思いがだんだんと作品と融合してきたわけですね。

「ぼくはこれまで生きた年と同じくらいこれからも生きているとも思えない。そうすると、だんだんと自分の素性に近いところで生きるようになってきたと思うんです。今までは作品を作ることと鉱物を見るということは意識として別のものだったけど、だんだんと近づいてきた部分があるような気がする。だからい色の変わる水晶の作品とか、鉱石ラジオとか人工結晶を作るようになったんです。

日常の中で記憶って時とともに薄らいでいくようなことがあっても、変わらないで蘇ってくるんです。それで、やっと自分のやりたいことが少しみつかてきたというか、昔のぼくと同じように不思議や鉱物が好きで、鉱石ラジオや人工結晶みたいなものまで興味がある人のために、何かできないかというのが今の興味なんです。

「ついにアブナイ博士の仲間入りをしたな!」とか言われたけどね(笑)

kingdom-kristal from Kenji Channel on Vimeo.

*2002年のメディア掲載記事より編集抜粋し、画像や動画は新たに付加しています。

KENJI KOBAYASHI

鉱物との出会い

アメティスト(紫水晶)表層の、まるでシュクル(アメ細工)のように小さな濃い紫やオレンジ色の結晶がついた標本。
Amatitlan,Guerrero,Mexico

ー小林さんの鉱物との出会いというのはいつ頃ですか?

「小学校の低学年の頃に、ちょっとした事件というかある出来事があって、そのことがショックとなってひどい対人恐怖症になってしまったんです。

その頃ぼくは恐竜などが好きで、友だちとよく上野の国立科学博物館に行って担ですよ。今はレイアウトがかなり変わってしまったけれど、その時に鉱物標本室というような展示室があって、随分と印象的なところでした。

傾斜になった古い木でできたガラスケースの中に、整然とたくさんの鉱物標本が並んでいて、子供の頃からクラゲや石英のような透明なものが好きだったので、水晶のような透き通るものにはとりわけ目が行ったし、また藍銅鉱や鶏冠石(けいかんせき)といった色のはっきりとしたものもたくさんあって、とても綺麗でしたね。そんな中で、何回か通ううちに、たまたま学芸員の人が鉱物を色々説明してくれるようになって、鉱物に対する興味が一段と湧いてきたし、だんだんと鉱物を介して人とコミュニカーションを取ることができるようになってきたんです。

実は先ほどの事件というのは、大人の男性から受けたもので、大人の男性に対して恐怖を感じたことに端を発していたんです。その学芸員の人と、ひいてはその鉱物と出会うことがなければ、一体今頃どうなっていたかと思うんです。

今は多少笑いながら話せますが、当時は命を奪われるほどの恐れを抱いたので、それが少しづつほぐされていったのが、本当にありがたいです。」

ドイツ・ボンの博物館は、昔(小林健二が小学ー中学生の時に通っていた頃)の上野にある国立科学博物館の鉱物標本展示室にどこか似ている、と話す。

ー35年以上前の話ですけど、鉱物との出会いは小林さんにとって貴重なものでしたね。ところでミネラル・ショーのようなものはなかったんですか?

「池袋や新宿で年に一回開催されていますね。当時は今のように鉱物をまとめて見る機会はほとんどありませんでした。神保町に高岡商店というのがあって、矢尻とか土偶と一緒に水晶のような鉱物標本がいくつか売られていたぐらいかな。

ぼくが成人した頃には、千駄木の凡地学研究社で鉱物を買うことができるようになりましたね。小さな木の階段をギシギシとスリッパに履き替えて上がっていってね。今となっては懐かしいね。」

ー海外ではバイヤーが集まるミネラル・ショーが行われたでしょうし、ショップもかなりあったんでしょうね。

「海外ではミネラル・ショーは以前から盛んで、特にツーソンやミュンヘン、デンバーなどはとりわけ有名ですね。今でもショップは数多くあります。日本では最初に「東京国際ミネラルフェア」がはじめられた時に、出店していた人たちもその後あんなに続くとは思わなかったんじゃないかな。でも当時に比べたら、鉱物標本を扱う店は増えたと思います。」

ー昔の標本屋さんはどんな感じでしたか?

「ぼくが子どもの頃ってほとんど日本で採れた鉱物ですよね。そうするとどうしても地味なんです(笑)。それに結晶性のものよりは石って感じのものが多かったですね。時々綺麗な鉱物があったけど、いいと思うものは当時のぼくが買えるような値段ではなかった気がする。

そういえばぼくが22-23歳の頃、凡地学研究社に半分に切断されたアンモナイトの一種が置いてあったんです。それは表面が真珠色で断面がよく磨かれていて、隔壁や外殻本体は黄鉄鋼化して金色で、さらにそれをうめる全手の連室はブラック・オパール化しているもので、もうそれは素晴らしかった。とりわけその中心から外側の方へ青色からピンク色へと変移していくところなんて、もうデキスギとしか言いようがなかった。」

ーそれ以降、同じようなものは見たことがないですか?

「ありませんね。その時は本当にこんなものが自然にできるのかと思ったくらいで、人間の技術や造形意識を超えた、天然の神秘な力を感じないわけにはいかなかった。今となって考えてみれば、天然を超える人間の美意識なんていうものを想像する方が、難しいと思うけど(笑)。

あとは無色の水晶に緑簾石(りょくれんせき)がまるで木の枝のように貫いて、その端が花のように咲いて見える大きな標本とか、細かい針状の水晶の群晶の中央に、真っ赤に透き通る菱マンガン鉱の結晶とか、言い出したらキリがないけど、色々な標本屋さんとかミネラル・ショーに行くと、博物館でも見られない標本を見ることができるのは素晴らしいことだと思うんです。」

 

「地球に咲くものたちー小林健二氏の鉱物標本室より」
岩手の石と賢治のミュージアムで開催された、小林健二の鉱物標本の展示風景

「地球に咲くものたちー小林健二氏の鉱物標本室より」

「流星飲料ーDrink Meteor」
石と賢治のミュージアムにある石灰採掘工場跡、そこに期間限定で不思議なお店が現れました。

「流星飲料ーDrink Meteor」
石と賢治のミュージアムにある石灰採掘工場跡。小林健二が作ったレシピによる ドリンクを、彼の土星作品に囲まれて楽しむお店です。とくに光る飲料水「流星飲料」を光るテーブルにて飲む瞬間は、時空を超えて流星が体内を通り過ぎ、気がつくと星々に囲まれているような錯覚を覚えた記憶があります。

小林健二個展「流星飲料」。期間限定で現れた不思議なお店、そこのレジの横には不思議な光源で光る鉱物の数々。

「流星飲料ーDrink Meteor」

石と賢治のミュージアム(石灰の採掘場に宮沢賢治が何度か訪れ、馴染みのある工場跡、そこに併設されて作られたミュージアムです)で開催された展覧会。その洞窟の奥にある小さな池に、小林健二は水晶作品を展示。
現在は地震の影響もあり、この洞窟には立ち入りが禁止されています。

*岩手の一関にある「石と賢治のミュージアム」では、鉱物展示用に設計された什器の中に、数多くの小林健二が選んだ鉱物が展示されています。

*2002年のメディア掲載記事より編集抜粋し、画像は新たに付加しています。

KENJI KOBAYASHI

[鉱石ラジオの時代]+[不思議な鉱石ジンカイト]

[健二式鉱石受信機] 小林氏が作る歴史的には存在しなかった最も原理的な鉱石ラジオ。束ねられた二重絹巻き銅線をコイルとし、白雲母の板に錫箔を貼ったバリコン、そして検波鉱物が共生している水晶などで構成されている。

[健二式鉱石受信機]
小林健二氏が作る歴史的には存在しなかった最も原理的な鉱石ラジオ。束ねられた二重絹巻き銅線をコイルとし、白雲母の板に錫箔を貼ったバリコン、そして検波鉱物が共生している水晶などで構成されている。

[鉱石ラジオの時代]

鉱石ラジオはアンテナとアース、バリコンとイヤフォン、コイルといった、いたってシンプルな材料によって成立する。電池もいらないが、ただ検波可能な方鉛鉱、黄鉄鉱などいくつかの結晶鉱物がなければ聞こえないという、不思議なラジオ。

ー鉱石ラジオは小さいときに作ったりしてたんですか?

「ぼくが小さい頃にはすでに鉱石ラジオのキットなんてなくて、やっぱりゲルマラジオでしたね。それでさえうまく作るとこはできませんでした。歴史的に見てもラジオって無線を傍受したりできるわけだから、戦争時代には抑制されたと聞きます。しかも鉱石ラジオって電源を必要とせずに聞けるわけですから、戦争後にまた鉱石ラジオは売り出されるけど、それらは戦前戦後を通じて固定式という型で、基本的な性格はゲルマラジオをあまり変わらないものと言えるんですね。昭和30年頃からそのゲルマニューム・ラジオにとって代わられるし、テレビ放送まで始まるし、時代は段々とラジオから離れていく。そして小型でアンテナやアースを設置しなくてもよく聞こえる トランジスタ・ラジオも製品化されるわけですしね。」

[PSYRADIOX(遠方放送受信装置)] 1993年以降に登場する作品は、一見アンティークに見えるが、筐体やアンテナ、ツマミなどの各部品、およびコードに至るまで小林健二氏自作による。

[PSYRADIOX(遠方放送受信装置)]
1993年以降に登場する作品は、一見アンティークに見えるが、筐体やアンテナ、ツマミなどの各部品、およびコードに至るまで小林健二氏自作による。

[BLUE QUARTZ COMMUNICATOR(青色水晶交信機)] 内部に閃ウラン鉱(ウラニナイト)が組み込まれており、そこからでる放射線(人体には無害な微量)をガイガーミューラー菅で検知し、それを特殊なフィルターがモールス信号のように変換している。筐体には入りきらないほど大きいはずの水晶がゆっくり回転し、その音とシンクロして白く明滅する作品。

[BLUE QUARTZ COMMUNICATOR(青色水晶交信機)]
内部に閃ウラン鉱(ウラニナイト)が組み込まれており、そこからでる放射線(人体には無害な微量)をガイガーミューラー菅で検知し、それを特殊なフィルターがモールス信号のように変換している。筐体には入りきらないほど大きいはずの水晶がゆっくり回転し、その音とシンクロして白く明滅する作品。

[CRYSTAL TELEVISION(鉱石式遠方受像機)] 中央のウレキサイトの画面に映像が浮かび出る受像機。音声は遠方から聞こえてくる。エジソンが構想していた霊界ラジオならぬ霊界テレビを連想させる作品。

[CRYSTAL TELEVISION(鉱石式遠方受像機)]
中央のウレキサイトの画面に映像が浮かび出る受像機。音声は遠方から聞こえてくる。エジソンが構想していた霊界ラジオならぬ霊界テレビを連想させる作品。

ー短波やハムの世界よりマイナーな訳ですね。

Crystal-Television from Kenji Channel on Vimeo.

「今となっては短波やハムもかなりマニアックだけどね。今でも続けている人たちはいるわけだけど、さすがに鉱石ラジオを作って聞いている人はあまり知らないね(笑)。」

ーゲルマニューム・ラジオや真空管ラジオの前に、鉱石ラジオしかない時期があったんですか?

「いや、逆に真空管ラジオの方が早いんです。ただ鉱物い検波作用があることが発見されたのは放送局ができる前だから、それが後で鉱石ラジオとして使えることになったわけです。しかもその頃はクリスタル・イヤフォンなんてなくて、それはトランジスタ・ラジオの頃にできたものですから、鉱石ラジオはハイインピーダンス・ヘッドフォンを使って聞かれていました。だから、鉱石ラジオを クリスタル・イヤフォンで聞くというのは、あまり例の多いことではなかったはずです。

[不思議な鉱石ジンカイト]

「最初に作品として鉱石ラジオを作った時には、鉱石ラジオといえば何か透質な結晶でできたラジオというイメーがありました。しかも蛍石や水晶、方解石とか透明な鉱物が好きだったから、実際に電波を受信する、つまり検波に使われる方鉛鉱とかイメージできなかったわけです。水晶や蛍石でどうやってラジオができるんだろうって思ってました。

それで、調べるとだんだんと本当の鉱石ラジオというものが分かってくるわけですけど、最初のイメージが払拭されるわけではないので、透明な鉱物が頭についたラジオを考えたんです。」

鉱石ラジオという言葉のイメージから小林健二氏が製作した[PSYRADIOX]

鉱石ラジオという言葉のイメージから小林健二氏が製作した[PSYRADIOX]

ー水晶や蛍石みたいな透過性のあるものでは実際は検波できないんですか?

「実際どの鉱物が一番感度がいいんだろうって調べてみたんです。だいたい透明な鉱物に電気が通るって想像つかないですよね。基本的に絶縁体では検波はできないわけだし、電気が通るということは自由電子があるということで、大抵の場合金属光沢を持っているものですからね。

ジンカイトは、まだ ソ連がある頃、ポーランドの亜鉛精製工場の煙突に結晶化して付着していたものを一年に一回カキ落とし、西側に流通させたものだと言われています。逸話何ですけどね。ぼくが買ったのは80年だから、当時は謎の鉱物ジンカイトとして買い求めていたんです。

ジンカイトって紅亜鉛鉱(ZINCITE)と同じスペルなんですね。ジンサイト(紅亜鉛鉱)というのは、ニュージヤージーにあるフランクリン鉱山以外にはほとんど産出されない珍しい鉱物で、紅いのはマンガンが含まれているからなんです。

ジンサイト(紅亜鉛鉱)。アメリカのニュージヤージー州にあるフランクリン鉱山以外にはほとんど産出されない珍しい鉱物で、赤色部分。マンガンが含まれているためこの色になる。

ジンサイト(紅亜鉛鉱)。アメリカのニュージヤージー州にあるフランクリン鉱山以外にはほとんど産出されない珍しい鉱物で、赤色部分。マンガンが含まれているためこの色になる。

その紅亜鉛鉱は鉱石ラジオの検波に使える感度のいいものの一つなんですね。それで、ある日『まてよ、ジンサイト(紅亜鉛鉱)とスペルが同じなら、ひょっとして感度が出るんじゃないの!』と思ったわけ。透過性があって全然似てないけど同じZINCITEなら検波できるかもしれないと。ジンカイトは紅亜鉛鉱と同じ酸化亜鉛なんです。で、ちょっと実験してみると、透明なジンカイトでもちゃんと電気を通すことがわかったんです。ジンカイトは通常入手できるものの中では、唯一、透過性があって検波に使える鉱物ですね。」

透過性のある結晶ジンカイトで通電の実験をしてみる。

透過性のある結晶ジンカイトで通電の実験をしてみる。豆電球が光っているということは、電気がこの不思議な結晶鉱物の中を通っている証拠です。

オレンジ色に透き通ったジンカイトと人工ビスマス(蒼鉛)の結晶検波器。とても感度がいい。

オレンジ色に透き通ったジンカイトと人工ビスマス(蒼鉛)の結晶検波器。とても感度がいい。

赤色のジンカイトと方鉛鉱の検波器。やはり感度大。

赤色のジンカイトと方鉛鉱の検波器。やはり感度大。

 

*2002年メディア掲載記事より一部抜粋編集し、画像は上の二点は記事からの複写、そのほかは新たに付加しております。

KENJI KOBAYASHI

 

[鉱石式送信機]と[1930年当時の鉱石検波理論]

鉱石式送信機

鉱石ラジオが全盛だったころ、鉱石ラジオの受話器に話しかけると近所のラジオに混信してその声が聞こえるという報告が当時の雑誌にいくつか紹介されています。これはもしかしたら鉱石式受信機が送信機になったということでしょうか。

ひとつにこの現象はアンテナをコンデンサーを介して電灯線から取っていたために起こったのではないかと説明されていますが、電源もない受信機から送信ができるとはおもしろいことだと思います。ぼく自身も本当にこの不思議な現象を何度か実験で確かめていますが、この事実を安定して作動させることはとても難しいと思います。そこでぼくは鉱石式電波発生器を使って簡単な信号を送る実験をしてみたいと思います。

ジャンク屋で手に入れたちょっと大型のライターなどの発火装置

ジャンク屋で手に入れたちょっと大型のライターなどの発火装置

鉱石式電波発生器とはいったいなにかというと、ライターなどの発火装置のことです。上の画像のものは、おそらくガス給湯器の発火装置なのでしょう。これらはピエゾ圧電素子を利用したものでボタンを押すとレバーとスプリングの機構によって中にある圧電素子をハンマーが強くたたいて、高い電圧が発生する仕組みになっています。この素子から出ている電線の端を導体に近づけると4~ 5 mmのギャップで火花が出ます。人体に触れるとビリッと衝撃を受けます。この線を空中線に接続してボタンを押すと、普通のAM受信機の局間などでパチッパチッという音を受信します。これは一種の火花送電です。

そしてもちろん鉱石ラジオでも受信ができます。

(ここで小林健二が電気工作に熱中するきっかけとなる出来事を、彼の著書「ぼくらの鉱石ラジオ」から拾ってみました。)

ぼくにとって、電子工作につながる道は意外なところから開けました。

10代のころから高じてきた音楽の趣味から、多重録音をしていろいろ曲を作っていたのですが、そんな時にいつもエフェクター(音質などをいろいろと変える機械)がほしくて、でもお金がないので、カタログを見てはあこがれる純情な毎日でありました。20代の初めのそんなある日、ギターやキーボードの雑誌でエフェクターの制作記事を見かけ、ビンボー人の執念とは恐ろしいもの、前後の見境もなく秋葉原に直行し、マッド・エクスペリメントの始まりとあいなったわけです。

当初の製作物のうち、いちおう音の出るものもあったとはいえ、一部は音のかわりに煙を出し、コンデンサーが爆竹のかわりになったりもしました。そしてその他はほとんど、なにより恐ろしい沈黙を守っていたのです。

秋葉原へのお百度参りは回を重ね、みんなから定期が必要とまで言われながらも、機械の作製は遅々として進まず、いつのまにか「電気いじりは日常」というアリ地獄ならぬ電気地獄にひきずりこまれてしまいました。友人を巻き込み、私財をなげうってのこの壮大な試行錯誤の日々は、またたく間に生活をおびやかしていきました。

そんな時、たまたま友人といっしょにDNR(ダイナミックノイズリダクション)を作っていると、ノイズを取るどころかほとんどハム(雑音の一種)発生器となった基盤の上で、ぼくらのシグナルトレイサー(回路の信号をチェックする機械)はなんと、ふいに飛び込んできたラジオ放送をキャッチしていました。

しかも、装置の電源を切った後でさえ、その放送はとぎれることがなく、音楽や会話を聞かせつづけたのです。一人になったアトリエで、ぼくはその省エネルギー的遊びをつづけました。こんなにラジオをまじめに聞いたことがはたしてあったでしょうか。イヤホーンから聞こえてくる小さな声の放送に、はじめてセンチメンタルで美しい、そして空が急に広くなりそよ風の吹いてくるような、あの電波少年たちの想いを受け取ったのだという確信をぼくは抱きはじめたのです。

小林健二が20代のはじめ頃に作った音楽のエフェクターの一つ。

小林健二が20代のはじめ頃の自作機材。

original-effector from Kenji Channel on Vimeo.

1930年当時の鉱石検波理論

・熱電流説―一検波器の回路の中に高周波電流が流れるたびに、細い金属と小さな鉱石との接点において局部的に熱が発生することによる、というものです。この抵抗熱と熱電流によって接点の温度が変化し、それによっておこる抵抗の増減が高周波交番電流に作用し、電流がピークを迎えたとき、発電量と抵抗値が増えることによって、タイミングが合った部分の交流分の片方が流れにくくなり、整流されるというものです。

・表面酸化説一一上記のものとだいたい同じようなものですが、やはり高周波電流によって温められた接点の金属がそのつど酸化することで、金属どうしの接点抵抗が変化し、整流されるというものです。

・熱起電力発生説ーー図のように2種の金属、たとえば鉄と銅をねじりあわせたものに、ヘッドフォンをあてて金属のねじったところをろうそくなどの火であぶると、ガリガリッと音が聞こえてきます。これは2種の金属に熱を与えたことで、電子がはじき出され、電流をおこしてヘッドフォンで聞こえたのです。これと同じように、高周波電流によって温められた2種の金属の熱起電力によって、音として検出できる低周波電流に変化するというものです。

熱による起電力の発生

熱による起電力の発生

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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KENJI KOBAYASHI

 

鉱石と光

鉱石と光

鉱石検波器には検波できること以外にも、いくつかの面白い性質があります。そのひとつは光による起電効果です。これは簡単に言えば、鉱石検波器に光を当てるだけで、電池のように電圧が発生するというものです。

このことは実験によって容易に確かめられます。鉱石検波器の鉱石につながる端子と金属の線につながる端子にテスターのリードポイントを当てて、直流電圧(D.C.V.)の一番低いレンジに合わせます。そして鉱石検波器に光を当てたり遮ったりしてみるとメーターが触れるのが確認できます。

ゲルマニュームダオードで実験

ゲルマニュームダオードで実験

ゲルマニュームダイオードで実験の様子。テスターのデジタル数字の変化。

ゲルマニュームダイオードで実験の様子。テスターのデジタル数字の変化。

もうひとつの方法は、検波器のさっきと同じところにクリスタルイヤフォンかハイインピーダンスのヘッドフォンを当てておいて、鉱石の真上あたりで影をせわしなく動かしてみます。カリッと音がするでしょう。この方法であまりうまく聞こえない場合、もう少し手間はかかりますが電圧の発生をもっとはっきりした音として確認する方法があります。たとえばプロペラをつけた小さなモーターやちょっと太めの輸ゴムなどを用意します。そしてプロペラを回したり、ピンと張ったゴムを弦のように指ではじいたりして、規則的に早く動く影を作り鉱石の上のところに落ちるようにします。するとブーンとかポンポンとか音が聞こえると思います。影の動くスピードが周波数を決めるようにして交番電流を作り、それが受話器で音に変わって聞こえるのです。

これはまた、ゲルマニウムダイオードでも確かめることができます。昔風のガラスの部分の大きなダイオードほど効果は大きいですが、テスターの感度が高く、光が強ければ現在のものでも反応が出ると思います。ただなるべく熱は伝えないように朝の日光などで実験するとよいでしょう。

また鉱石によってトランジスターのような鉱石増幅器を作ることも、実験上なら不可能ではないと思います。これは鉱石に2本の針を紙1枚のスペースをあけて立てて実験します。詳細は長くなるので省きますが、これによって安定した作動をする鉱石増幅器ができたとしたら、オールクリスタルスーパーラジオでスピーカーが鳴るような受信機ができるかもしれません。

電子工作であると便利なテスターなど。

L・Cメーター

実際工作をしていく上で、部分品まで自作する場合、コンデンサーの容量やコイルのインダクタンスを計算式によって割り出してゆくのはかなりめんどうなことですし、またあまり高い精度は望めません。そんな時にL・Cメーターといわれる一種のテスターがあると面倒な計算から解放されますし、部分品をつくっている途中でも容量やインダクタンスを実測したりできるので、安心して工作に熱中できます。一見できそこないに見えるコンデンサーでも、テスターにデジタルで数字が表示されると妙にりっぱに見えるものです。それに工作者の不安を取り除き、カット&トライ(切ったり貼ったりして調整しながら作ること)を助けてくれます。ですから計算式によってコンデンサーやコイルのだいたいの大きさや作り方をイメージしておき、実作に入ってからはL・Cメーターによってそれぞれの定数まで追い込んでいけるようにすれば、 一段と工作も深まっていくと思います。

L・Cメーターはあまり使わない場合には高価なものと感じられることもあるかもしれませんが、電子工作をする上では、通常のテスターとともにとでも役に立つものです。

左はL・C・Rメーターで、コイルのインダクタンス、コンデンサーのキャパスタンスを直読で計れ、またRのレンジではインピーダンスを計れます。右はDMTデジタルマルチテスターと呼ばれ、直流抵抗、直流の電流と電圧、交流の電流と電圧などが計れるのでこれもまた便利です。

左はL・C・Rメーターで、コイルのインダクタンス、コンデンサーのキャパスタンスを直読で計れ、またRのレンジではインピーダンスを計れます。右はDMTデジタルマルチテスターと呼ばれ、直流抵抗、直流の電流と電圧、交流の電流と電圧などが計れるのでこれもまた便利です。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

[鉱石式送信機]と[1930年当時の鉱石検波理論](関連記事)

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自作のヴァリアブルコンデンサー

ヴァリコンは簡単な構造のものでもちゃんと機能します。

左から、ガラスに錫箔を貼ったもの、真鍮板を自在に開き具合を調節できる板の内側に取り付けたもの、太さのちがう試験管のそれぞれの外側に錫箔を貼ったものです。

自作のヴァリアブルコンデンサー。左から、ガラスに錫箔を貼ったもの、真鍮板を自在に開き具合を調節できる板の内側に取り付けたもの、太さのちがう試験管のそれぞれの外側に錫箔を貼ったものです。

ぼくの作ったヴァリアブルマイカコンデンサーです。

ぼくの作ったヴァリアブルマイカコンデンサーですが、このようにするとマイカ本来の性能はあまり期待できません。とくにスライドさせる時にマイカ同士がこすれるため、ひっかかってはがれないようにニスなどで固めておく必要があります。ニスは高周波ニスが最高ですが、ニトロセルロース系のラッカーなどで十分です。なるべく顔料などの人らない透明なものがよいでしょう。特にこのコンデンサーについては性能よりもきれいなものにしてみたかったので、ぼくはマイカを使いました。内部の導体は錫の箔を使いました。これもライデン瓶などに使われたように昔からの材料で、本来なら別に導体ならば何でもいいわけです。ただアルミ箔とくらべても革のようにしなやかで、アルミでは不可能なハンダ付けができるという利点があります。そしてなにより錫箔の落ち着いた銀色が気に入っているのです。

こういったいろいろな鉱石やニッケルやタングステンなどの金属を探しに鉱物専門店や特殊金属の店を巡るのも日常とはちょっと違って、未知の空間と出会うようで素敵です。こんなところにも工作をするよろこびがあるのかもしれません。

ここで絶縁材料について触れておきます。

普通の工作全般で使われる材料以外で、電気に関する特別なものとしては、絶縁材料が挙げられます。本来鉱石ラジオの製作だけを考えると、電庄も電流も大きくないので、厳密な指定はありません。ただ、日頃あまり手にしない材料ですが、どういうわけか美しいものが多いので、いろいろ試してみるのもおもしろいでしょう。

代表的な3種について説明します。

ベークライト、エボナイト等の棒材です。

ベークライト、エボナイト等の棒材です。

ベークライト、エボナイト等の板材。

ベークライト、エボナイト等の板材。

ベークライト(bakeute)一一板状のものは0.5mm~ 3cm厚くらいが普通で、大きさもいろいろすでにカットしたものを売っています。筒状(パイプ)や丸棒も直径2mm~10 cmくらいまであります。色は少々透過性のある黄・黄褐色・茶・こげ茶とあり、成形から時間が経つほど色は濃くなります。またこれら生地色以外にも製品として、ターミナルの頭やツマミなどには色の付いたものもあります。また布入リベークといって、なかに繊維を入れて普通のベークライト板より強度を高めたものもあります。数はあまり多くありませんが、黒ベーク板という黒色のものもあります。ベークライトは本来商品名で、材質としてはフェノール樹脂と呼ばれ、石炭酸とホルムアルデヒドにアルカリを触媒として熱を加えて作ったものです。

エボナイト(ebonite)一一前に述べたベークライトと混同している人もあるようですが、この2つはまったく違うものです。エボナイトは一種の硬質ゴムで、生ゴムに加硫といって硫黄を加えて作ります。色は黒色しかなく、その黒檀ebonyのような色から名前がついたと言われています。ただ経年するとエボ焼けといって、独特の緑がかった褐色になることがあります。形状は板、丸棒とありますが、ベーク板ほどはサイズに幅はありません。

自雲母の薄板(w15 cm)です。

自雲母の薄板(w15 cm)です。

マイカ(雲母mica)一一空気をはじめとして絶縁物はたくさんありますし、技術的に簡単と言うなら紙やセロファンもいいと思いますが、なかでもマイカは工作上美しいし、性能上も他を圧しているようにぼくは思います。

雲母は天然鉱物で鉱物学上これに属するものには本雲母群、脆雲母群等があって、実用に供されるのは本雲母群のものです。このなかには大きくわけて7種類があります。

白雲母muscovite、曹達雲母paragonite、鱗雲母lepidolite、鉄雲母lepidomelane、チンワルド雲母zinnawaldite、黒雲母biotite、金雲母phlogopiteで、日本画などで雲母末のことをきらと言うように、まさにキラキラしていてぼくの好きな鉱石の一つです。雲母はインド、北アメリカ、カナダ、ブラジル、南米、アフリカ、ロシア、メキシコ等が有名ですが世界各地で産出します。日本ではあまりとれないのでもっぱら輸入にたよっています。白雲母は別名カリ雲母といって無色透明のものですが、黄や緑や赤の色を帯びることがあります。そのうちの赤色のマイカはルビー雲母rubymicaとも呼ばれ、 とても美しいものです。比重は276~4.0くらい、硬度は28~ 3.2です。

金雲母はマグネシア雲母、琥珀雲母amber micaとも呼ばれ、比重は275~ 2.90、硬度は25~27、少々ブラウン色に透きとおり、やはりとでもきれいです。

雲母を工作に使用する際には、むやみやたらとはがさないで、最初に半分にしてそれぞれをまた半分にするというように順にはがしてゆくと厚さをそろえやすく、好みの大きさに切る時は写真などを切断する小さな押し切りでよく切れます。厚いうちに切断しようとすると失敗することが多いので、使用する厚さになった後でカットするようにした方がよいでしょう。なお工作の際、マイカの表面に汗や油をつけないように気をつけましょう。

このほか、ガラスエポキシ、ポリカーボネイトなどがあります。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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[自作鉱石検波器の解説]

鉱石ラジオの部品の中でも、鉱石検波器自体は重要な役割を持っているので、感度を上げるための工夫や機械的安定性も合理的に設計され製作されていたことは言うまでもありません。

そこでぼくは当時(鉱石ラジオが使用されていた大正から昭和の初め頃)もなかったしそれ以降も登場しなかった、言うならこの星で最初と思われる鉱石検波器を発表しようと思います。このように大きく出たところでとりわけ何かが起こるわけではないのですが、いろいろ工作や実験をしている最中に何かを見つけたような気持ちになるとそれほどうれしいものなのです。そんなわけでぼくなりに発見のあった特殊(きっと他にはないという意味で)鉱石検波器を紹介します。

天然系検波器

まずは鉱石の形をそのままに検波器としたものです。ぼくは鉱石の色や形をなるべくそのままに、機能を持たせたいと考えていろいろ実験をしました。実験中はよいのですが、その感度のいい状態を継続して安定させるのはけっこう難しいものでした。

もちろんさぐり式検波器の場合、いかにして針を鉱石の敏感なところにいい接触状態といい圧力をもって安定しつづけるかがいつも問題になります。このようなむき出しの鉱石を使う検波器でいちばん問題となる点は、鉱石自身と導体部分の接点抵抗をいかに小さくし、またそこにコンデンサー成分をなるべく作らないかということです。とりあえずさぐり式の鉱石を固定する方法を用いてハンダで接触面を大きくしようとしても、大きな結品の標本の場合だとどうしても温度の高い状態を長くしないとならないので、その熱が鉱石の感度を下げてしまうらしいのです。

そこでぼくが思いついたのは低融点金属でした。この金属を使うとその熱の問題をクリアできるばかりか作業性も高く、鉱石の表面によくのびてとでもよくくっつき、コンデンサー成分も作りません。なにしろ75℃ 前後で工作できるわけですから、紙などで角型やコーン型にした筒の先を切り、その先をあらかじめあたためた鉱石のうらから当て溶けたものを流し込めばよいのです。

天然系検波器1の検波器はそのようにして作りました。またこの4点のものは結晶の形がおもしろいというだけでなく、本来なら不向きのところがあるのです。たとえば中央上の磁鉄鉱とその下の赤鉄鉱です。磁鉄鉱はもともと検波器の素材のひとつに上げられるものですが、この標本のように天地5 cmくらいのわりに大きなものになるととでも直流抵抗が高くなってしまい、検波どころか電流はほとんど流れてくれません。また赤鉄鉱のほうも同じで、板状結晶のこの標本の場合、埋め込んでしまうわけにもいかないので真鍮の厚い板に低融点金属で接着してあります。

この2つのようなとても高抵抗な鉱石は導体との接着面の面積を大きくしたり、見かけの状態ではわからないように導体の部分が針の接点のところに近くまで寄ることで抵抗を低くして、大きな結晶のままや結晶状態を観察しながら検波することが可能となります。

また左に自然銅、右に入エビスマスの標本を使ったものがありますが、これらは逆にほとんど導体なので検波にはむずかしいタイプですが、このように台に付けておくと、うすい硫酸や修酸、あるいは二酸化セレン(ビスマスの場合)による弱い腐食によって、酸化もしくは亜酸化皮膜ができて、ときとしてうまい整流作用を持つのでそれによって検波をすることもできるのです。

 

天然系検波器 1 中央の磁鉄鉱を使ったもの(H5cm)

天然系検波器 1
中央の磁鉄鉱を使ったもの(H5cm)

天然系検波器2はまるで鉱物標本そのままです。水晶のところどころに黄鉄鉱の小さな結晶が共生しているものですが、全体に目立たないように硝酸銀などでうすくメッキをかけ更に使用する前に伝導性の電解質でうすくしめらせると、本来絶縁体である石英の上にあるのにちゃんとこの黄鉄鉱が検波をしてくれます。

このような検波器はもちろん実用というよりは実験としての楽しみですが、普通の鉱石標本からまるで音が聞こえてくるようでとでも不思議な体験ができると思います。

天然系検波器 2 (W15cm)

天然系検波器 2
(W15cm)

透過性検波器

この美しい鉱物はどれも光を透過します。手前の細長い鉱物は、ポロナイトと呼ばれるポーランドで作られた人工結晶です。またその右上の鉱物は、ジンサイトと名付けられて最近鉱石ショーで時々見かける鉱物です。おそらくこれも人工だと思うのですが、天然鉱石の持つ一種の有機性(変な表現ですが)があってとでも魅力的です。確かにこんな単結品の紅亜鉛鉱が東欧の鉱山から出てきたら大変なことだと思います。

本来、宝石や宝飾品のために作られたと聞いていますが、成分はまさに純度の高い酸化亜鉛です。ですからひょっとしたらと思い、まずはテスターを当てると導通がありました。このように透過性の鉱物に電気が通るというのはわかっていても、ぼくには驚きで、さっそく検波の実験をすると確かに検波できるばかりか、紅亜鉛鉱単体に針を立てるよりもはるかに感度が安定しているのです。

写真左の透明なうすい緑色の鉱物は、同じジンサイトの標本のところにあったものです。ちょっと見るとぶどう石prehniteと見まごうような美しい標本で、これも検波できるのです。確かに紅亜鉛鉱と言われても、その赤みは不純物として入っているマンガンによるものと言われていますから、考えてみれば不思議ではありませんがやはりどきどきしてしまいました。

透過性検波器に使っている鉱物。下のオレンジ色のものは7cm。うわさによればこれらの鉱物は東欧のどこかの金属精錬工場の煙突の中に気相より析出して結晶するもので、人工とも天然とも言いきりがたい状況で生まれてくるそうです。それを1年に1回かき取ってくる業者が宝石の原石として、かつて東西対立があった時代にひそかに西側に放出していたと言われています。

透過性検波器に使っている鉱物。下のオレンジ色のものは7cm。うわさによればこれらの鉱物は東欧のどこかの金属精錬工場の煙突の中に気相より析出して結晶するもので、人工とも天然とも言いきりがたい状況で生まれてくるそうです。それを1年に1回かき取ってくる業者が宝石の原石として、かつて東西対立があった時代にひそかに西側に放出していたと言われています。

細長く結晶した酸化亜鉛の結晶に電気を通して豆電球を光らせているところです。導通状態は非常によく、透きとおっているのにまさに金属と言うことができ、不思議な感じがします。

細長く結晶した酸化亜鉛の結晶に電気を通して豆電球を光らせているところです。導通状態は非常によく、透きとおっているのにまさに金属と言うことができ、不思議な感じがします。

化石式検波器

この写真は員とアンモナイトの化石です。この二枚員は左がparaspirifer bownockeriで右がmediospirifer audaculusです。約3億8千万年前の化石で、中央のアンモナイトは約1億8千万年前のものです。まともに考えると気が遠くなるほどの過去の生物ですが、写真はその年月とともに化石となる際、部分的に黄鉄鉱化した標本です。

黄鉄鉱化した化石 中央のアンモナイト H7cm

黄鉄鉱化した化石 中央のアンモナイト H7cm

そして作ってみたのがこの検波器で、化石式検波器fossil detectorとでも呼べるものと思います。実際は黄鉄鉱が検波している訳ですが、数億年もの昔の生物が変化したものから音楽や人の声が聞こえてくると想像してみてドさい。不思議な心持ちになりませんか?

化石式検波器 H6cm(ノブを含む)

化石式検波器 H6cm(ノブを含む)

銀成硝子検波器

一種の酸化覆膜にも整流作用を持つnl能性があるとすると、まだまだ感度の善し悪しを考えなければ検波できるものがいろいろとあるのではと思い、ぼくは身近にあるものをかたっばしから実験してみました。錆びた金属、導体性の金属鉱石、 ドアのノブ、ナイフ、はさみ……。いい加減やりつくしたころに見つけてドキドキしたのが、ハーフミラーです。これは金属の蒸着メッキによって作られます。そして実験の末、形にしたのがこの写真の検波器です。ときに銀色にまた半透過性へと移行するその質感は美しく、また不思議な感じを起こさせます。ホルダーは錫と銀とアンチモンによって作りました。

銀成硝子検波器 W11cm(台の長さ)

銀成硝子検波器 W11cm(台の長さ)

極光水晶検波器

そしてこのハーフミラーを使った銀成硝子検波器は、ぼくの作ったもののなかでもっとも美しい極光水晶検波器を作るきっかけとなりました。

この写真はその極光水晶検波器auroracrystal detectorです。このオーロラクリスタルは最近の技術によって装飾用として作られたものです。おそらく二酸化チタンのうすいメッキによるもので、その鍍膜厚を変えることでいろいろなタイプができると思われます。

この人工の加工を受けた鉱石は、それまでぼくにとってとりわけ魅力的なものではありませんでした。しかし、透明でときどき反射する光が淡いピンクやブルーに照り返るこの結晶石によって検波ができたときには本当にうれしく、鉱石受信機によって初めて放送を聞いた昔の工作少年たちに、こんな検波器で作ったラジオを見せることができたらとしばらく感慨に耽ってしまいました。もっとも、少々手を加えないと実用に十分な感度はとれませんが、このくらいは秘密にしておきましょう。

極光水晶検波器 左 H7cm

極光水晶検波器 左 H7cm

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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[自作鉱石式受信機の解説]2

前回ご紹介した「[自作鉱石式受信機の解説]1」の続きです。

 

火星人式交信鉱石受信機(固定L型同調)

これは手前に件んでいる古風な火星人の腕の先にワイヤーを触れるように握手させると、メッセージが聴取できるというものです。それぞれの腕は基本的にコイルのタップで、しかも小さなインダクターによってあらかじめ局を固定してあります。

前出の蝶類標本型と同じで、これらの受信機のアンテナはあらかじめ決まったものを使用します。他のアンテナを使うとCやLの定数が合わなくなって放送が聞こえなくなることがあるからです。空飛ぶ円盤の中と台の中にコイルがあり、この2つのコイルを可動させることでヴァリオカップラーのようにある程度調整できると考えました。もっとも工作上の外観を重視したため、あまり効果は上がりませんでしたが・・・・。火星人の頭の中には固定式で作った感度のよい検波器が入っています。もし作ってみようと思う方がいたら、ダイオードを用いたほうがよい結果が出ると思います。

火星人式交信鉱石受信機W150×D150×H120(mm)

火星人式交信鉱石受信機
W150×D150×H120(mm)

火星人の手(足?)にワイヤーを接触(握手?)させているところです。

火星人の手(足?)にワイヤーを接触(握手?)させているところです。

超小型実験室型鉱石受信機

これは、鉱石ラジオを設計したり実験したりするために必要なだいたいの部品や材料が組み込まれた、持ち運びできる小さな実験室といったふうのものです。上部のガラスケースはステンドグラスの技法で作り、全体は木で作ってあります。この本の板は近所の印刷屋さんの前に積んである、紙を運ぶためのパレットと呼ばれるものをわけでもらいました。プレーナーのかかっていないザラザラの本の板が妙に懐かしい感じで好きなので、見かけよりずいぶんと手をかけで作ったものです。

中には3種類の太さの導線、7種類のコイル、5種のゲルマニウムダイオード、3種のヴァリコン、 10種のコンデンサーとインダクター、 7種20個の鉱石、タンタル、ニッタル、タングステンのワイヤー、雲母板、錫およびアルミ箔、鉱石を手入れするためのアルコール、各種ネジ金具、金属素材、ナイフ、 ドライバー、小型のニッパー、回路図を書き込んだ小さなノート、クリスタルイヤフォン、ツマミ、LC周波数割り出し表、鉛筆、消しゴムなどが入っています。

中心にあるメインコイルは引き出し式になっていて、その奥には秘密データが入っています。窓はプレパラート用の薄いガラスで作り、ノブは昔からある自分の机のものを使いました。底の部分にはコイルアンテナが埋め込んであり、ローディングコイルを用いた引き出し式のアンテナも備えであります。

全体の色は自作したテンペラ絵具で、牛乳から作ったガゼインと孔雀石を粉にしたマウンテングリーンでできています。ぼく以外の人にはあまり意味のない工作に思えますが、ぼくのお気に入りの一つです。ひまがあると少しずつ手を入れたり、また取り外したりして楽しんでいます。

超小型実験室型鉱石受信機 W195XD202×H98(mm)

超小型実験室型鉱石受信機
W195XD202×H98(mm)

フロントパネルをはずし中に入っている品々を出したようす。

フロントパネルをはずし中に入っている品々を出したようす。

緑色のコイルのLにある小さな引き出しの中には検波用鉱石が入っています。

緑色のコイルのLにある小さな引き出しの中には検波用鉱石が入っています。

盆栽式鉱石受信機

このような小さな盆栽は小品盆栽と呼ばれ、「石抱き」の形に作ったものを植え替えのとき石をうまくはずし、その部分に比較的水に強い黄鉄鉱などをうまく抱かせれば検波器として作っていけるでしょう。もちろん何年もかけてはじめから根を石にまわしてつくってもいいと思います。この場合、全体が金属質の鉱石というよりは、方解石や水晶などに共生しているようなものにした方がいいでしょう。

作例は香丁木と呼ばれる木ですが、ちょうどうす紫の花が咲き始めています。鉱石は魚眼石と水品に黄鉄鉱が共生しているものを使い、錫で裏打ちしてありますまた作例のように「根上がり」の状態に仕込んでおいて、中の鉱石を随時交換するという方法もあります。コイルはバンク巻きに作ってあり、鉢の下部に作ってあります。なにぶんにも盆栽は生きているので、木を痛めないように心がけています。

盆栽式鉱石受信機 W80×D80×H150(mm)

盆栽式鉱石受信機
W80×D80×H150(mm)

小鳥ラヂオ

15年くらい前、駒込は富士神社の縁日で邯鄲(かんたん)という小さな虫を買いました。コオロギの仲間ですが、淡い若草色の体と半透明なうすい羽をもったちいさくて細い弱々しい生き物でした。美しくリューリューと鳴くその声は今でも忘れられません。しかしその名の響きとは裏腹に飼うことはむずかしく、寿命だったのかぼくが悪かったのかわかりませんが、ひと月もするといけなくなりました。そのとき前年にもぼくがひやかしていたのを覚えていた夜店のおじさんが、古い虫かごをわけてくれてそれがずっと残っていたので、それを使ってこの小鳥ラジオを作ったわけです。

小鳥のくちばしは銀でできていて、水飲み用の錫製のカップには銅藍(コベリン)が入っています。下の方に絹巻き線でコイルが巻いであり、かごを吊るための線が空中線とアースになっています。小鳥の色はうぐいす色より少し明るい邯鄲の色にしてあります。感度はあまりよくありませんが、思い出のこもった受信機です。

小鳥ラヂオ W72×D60×H65(mm)

小鳥ラヂオ
W72×D60×H65(mm)

燐寸箱型鉱石受信器

これは古いマッチの箱を利用して作りました。ミュー同調式でぼくのパジャマのボタンがツマミになっています。中身はふだんは中にイヤフォンが入っています。

カプセルゲルマラデオ

これはグルマニウムダイオードを使い、ケースにカプセルを利用したものです。カプセルの外形は太さ8 mm長さ15 mmで、コイルのかわりにマイクロインダクターとセラミックコンデンサーを使っています。

鉛筆型鉱石受信機

これは1935年のアメリカの製作記事から作ってみたものです。ぼくなりに改良を加え、確かに聞こえるようにコイルのスライド部分を作りました。鉱石には方鉛鉱を使い、針には0.5mmのタングステンを使いました。とでも感度がよく気に入っています。

上から燐寸箱型鉱石受信機W56XD38×H18(mm) カプセルグルマラデオ(カプセルは大さ8 mm長さ10 mm) 鉛筆型鉱石受信機W146×D12×H12(mm)

上から燐寸箱型鉱石受信機W56XD38×H18(mm)
カプセルグルマラデオ(カプセルは大さ8 mm長さ10 mm)
鉛筆型鉱石受信機W146×D12×H12(mm)

コメットゲルマラデオ

これはツマミを動かすと中の彗星が動く小さな受信機です。もしあわただしくゲルマラジオの時代が過ぎ去っていかなければ、ブリキのおもちゃの一つとしてこのようなロボット風のラジオも作られたのではないかと思い、作ってみました。

COMET GERMA Radio W82X D70×H132(mm)(端子、ツマミを合み、アンテナは含まず)

COMET GERMA Radio
W82X D70×H132(mm)(端子、ツマミを合み、アンテナは含まず)

このように鉱石式受信機はいろいろなものを作ることができます。工作は技術と発想の工夫だと思います。どのみち現代においてはあまり実用的でも合理的でもないわけですから、逆に気楽にあそべるのではないでしょうか。

内外の古い鉱石ラジオの製作記事や資料を見ていると、思わず吹き出したり戸惑ったりすることがあります。たとえばネクタイラジオ、メガネラジオ、シルクハットにステッキラジオ、パイプラジオと身につけること力゛できるものなどもその一つです。たいてい紳士が身に付けて紹介されているのですが、どう考えても不格好でもし町でこんな紳士にばったり出会ったりしたら、ほとんどの人は足がすくむことでしょう。

小林健二「ぼくらの鉱石ラジオ」

このほか、クッション、コーヒーカップ、時計、本にノート、椅子や家具、上げて行くときりがありません。しかしそれらは、事物が産業革命以降、合理化の道を進んで行くのに対し、あくまでもキッチュを使いジョークを交えて対抗していたと思われます。そこがおそらく懐古的な意味もふくめてぼくが鉱石ラジオに惹かれる理由の一つかもしれません。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

[自作鉱石式受信機の解説]1

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