小林健二の道具(日本)」カテゴリーアーカイブ

木工具-鉋(その2)

東京田端にある中古道具を扱う店で道具を見る小林健二

作品を製作する上でも欠かせない道具たち。小林健二は性分としても道具好きです。

旅行先の蚤の市や国内の骨董市などで入手した道具たちは、大切に仕立てられ実際に使われています。刃が錆びてしまったり、半ば壊れてしまったような中古の鉋たちを、再び使えるようにする作業は、とても充実して気分転換にもなるそうです。

今回も引き続き、小林健二の道具から鉋をご紹介します。

典型的な西洋の鉋で、台は金属製のものです。(小林健二の道具より)

上の鉋から刃を外した画像。刃(カンナミ)の刃角や刃の出具合をネジで調節できるようになっていて、とても合理的な構造です。(小林健二の道具より)

これも古い西洋の鉋ですが、台は木製です。(小林健二の道具より)

上の鉋を分解したところ。これより刃の研ぎや調整などをして、使用できるように仕立てていきます。このような作業はとても充実すると小林健二は話します。(小林健二の道具より)

鉋にも色々な種類があります。一般的には英語でいうとplaner、つまり平面に削る道具ですが、例えばしゃくるように削るための鉋や、色々な断面に削るものなど様々で、断面の名前もついています。

平鉋に関して、日本の鉋の場合は刃の研ぎや出具合、台の調整など注意が必要です。

西洋の鉋はその辺りがネジで調節するなど合理的に出来ていて、国民性がうかがえます。

また古来から使用してきた木の種類によって道具が発展してきた経緯もあるため、民俗学的にも研究していくと面白いです。

色々な日本の鉋(小林健二の道具より)

西洋の鉋(主に断面や溝を削るもの)(小林健二の道具より)

両手で左右の柄を持ち、しゃくるように削っていきます。(小林健二の道具より)

断面を削る特殊な鉋。二丁ザシ(一番左)になっているものもあります。(小林健二の道具より)

上の鉋の裏面。このような断面に削れていきます。固定してある木を定規にして削っていくわけです。ちなみにオスメスのインロー面に削れる面取り鉋です。(小林健二の道具より)

面取り鉋の色々。(小林健二の道具より)

上の鉋の裏面で、刃の形から削れる断面がわかります。一番右の鉋は、小林健二自作の鉋です。(小林健二の道具より)

木工具ー鉋(その1)

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木工具-鉋(その1)

木工具と一口にいっても、切ったり削ったり、また穴をあけたりするといった目的 によって道具を使い分けることで、安全で楽しい工作ができます。

木を加工するうえで重要なのは、切断する鋸(ノコ)、切削の鉋(カンナ)類、そ して鑿(ノミ)や小刀、罫引き(ケヒキ)などもあると作業が楽しくなるでしょう。 もちろん、金槌やドリル、砥石なども大切です。

鉋(カンナ)はご存知のように木材を平らに削るのに使用するものです。ただそれは、正確には平カンナと呼ばれるものです。他にも木の角を丸く、あるいはいろいろな形に 削るものや曲面を削ったりするためのものなど、いろいろな種類があります。

カンナは鉋身(カンナミ)といわれる鉄や鋼でできた刃が木でできた台についている構造になっていて、その刃が一枚のものと二枚のものとがあります。西洋鉋には金属製の台に刃がついているものもあります。

色々な洋鉋、右手前と一番大きいものの下にある鉋は、フランスに旅行した際に蚤の市で購入したものという。左上がコンパスプレーン。(小林健二の道具より)

画像は主に洋鉋で、右上に見えるのはコンパスプレーンです。(小林健二の道具より)

コンパスプレ-ンと言う特殊な鉋。下端を供に外ソリや内ソリ鉋として可変して使用することができる。(小林健二の道具より)

コンパスプレーン。横から見ると仕組みがわかりやすい。台が内側に反っている状態。(小林健二の道具より)

コンパスプレーン。横から見ると、台が外側に反っている状態がわかる。(小林健二の道具より)

小林健二の道具

英国スタンリー製の鉋・No.45。45通りの断面に削ることができるという意味です。(小林健二の道具より)

英国スタンリーのカタログ1929年版より(小林健二の蔵書より)

英国スタンリーのカタログ1929年版より(小林健二の蔵書より)

鉄製の洋鉋の一例。木の板に古典技法によって絵を描くとき、パネルに引っかき傷をつけ、その上にのる下地の定着を良くする特殊なもの(左より2つ目)も含まれている。(小林健二の道具より)

普段木工手道具の中で最も使用しているスタンリーの鉋。No.1の小さなものからNo.7の大きなものまで写っている。(小林健二の道具より)

お気に入りの真鍮製の洋鉋各種。目的によって各々を使い分ける。使い込んだ道具の美しさが輝いている。(小林健二の道具より)

これらは欧米でよく使用される洋鉋。上はNo.4プレーン(Lie-Nielsen)で刃幅は2インチ(約50mm)。小さいものは楽器用のものや細部用で、ソリッドモデルを作るのにはとても約立つ。米国のリー・ニールセン製の鉋はお気に入りの一つです。(小林健二の道具より)

上の画像の中でもっとも小さいもの。刃幅はわずか7mmほどだが、小さなシャクリを付けるときに便利。(小林健二の道具より)

 

*鉋について、何回かに分けてこれまでの記事からの抜粋に新たな画像を加えて紹介しています。今回は洋鉋を主にチョイスしています。

木工具ー鉋(その2)

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アーティストのアトリエと道具

小林健二に道具や材料、技法のことを語らせると、そのまま本が何冊かできてしまうほど。古道具屋や工具店をのぞくのが気分転換にもなるという。

”道具マニア”だが、ただ集めているのとは違い、実践が伴っている。使い込まれた彫刻刀、ノミ、かんな・・・懇意の職人さんから譲り受けたものもあれば、道具屋で発見した江戸のもの、自分で作ったものもある。「『藤白』と書いて”とうしろ”銘を持つ刃物もある。その洒落気が心憎い」と話す。

入り口から奥を臨む。この場所は小林健二が20代に文京区に構えた最初のアトリエとなります。

小林健二最初のアトリエ

旋盤などの機械や、金属加工用の様々な工具が置かれたアトリエにて。小林健二

金属をけずったり磨いたりするグラインダー類。「ぜひ、田端新町へ行って欲しい」と語る小林健二。明治通り沿いに、中古の電動工具を扱う店が並んでいて、いいものが格安で手に入る。新品1台の値段で写真のグラインダーが全部買えるくらいだ。「特にモーターを使った工具はいい。淘汰されている。モーターの周波数とベアリングがなじんできて、新品より音がうるさくない。」という。何台も揃えておくと、いちいち砥石を付け替えなくても済むので便利。

まるで作品のように美しい金工用のゲージ。やはり中古を購入。

絵の道具一式。絵の具を意味なく無駄にしたくないので、パレットはいつも綺麗にしておく主義。描くというより塗るに近い状態になると筆より指が活躍する。先端に曲玉のような石のついたスティックはバニッシャー(テーブルの上)。本来は金箔を磨くものでメノー棒と言われるが、小林健二は主として鉛の艶出しに使用。細いピンはブロックス社製アンバーニス(テーブルの上)。フランドル絵画の堅牢な絵肌を作ったと言われるもの。「真偽はわからないが夢があるから」と手に入れた。

小林健二の道具の引き出しの一部。かんなやノミ

小林健二の道具。彫刻刀の引き出し。

*1991年のメディア掲載記事より抜粋編集し、アトリエ全体の画像以外は記事より複写しております。現在、小林健二のアトリエにある道具の数もかなり増え、美しく手いれされた古今東西の道具たちは、今でも大切に扱われています。

記述にある田端新町に関する記事も下記にリンクしておきます。

ぼくの遊び場

現時点ではかなりお店の数も減っているようですが、興味があれば自転車などでまわってみるのも面白いかもしれません。というのは明治通り沿いに点在しているため、歩くには少々道のりがあるようです。この取材当時は、中古の機械を扱うお店が並んであったそうです。

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[ぼくの遊び場]

東京田端新町の中古道具店

東京田端新町の中古道具店

ぼくの遊び場

ぼくは自転車で散歩するのが好きだ。狭々とひしめいている横丁や路地の多いこの町で、その奥にある秘密や夢を散策するのにもってこいだからだ。うろつくところといえば、とかく情報誌や何々ブームにおよそもてはやされてきた街とは対象的な、一見一般的?ではない東京の深いところにある、少なくともぼくにとっては非常に魅力的な町や店なのだ。遠くから友達が来たり、東京案内することあらば、まずそれらの方面へと繰り出すわけだが、思ったよりはるかにマニアックなところばかりでも、それぞれにみんな楽しんでくれるのは、それこそ、この街ならではの風景でもあるからだろう。これを読んでくれている人にも地図など入れて説明したいところだけど、いわば秘密の聖域、探し当てる喜びを分かち合うことにしよう。神田の古本屋街辺りから、その王国への入り口は開けていて、およそ東京中に広がっている。蝶番屋、家具や引き戸の把手ばかりを扱う店、1000種は超えると思われる彫刻刀の店、砥石屋、金槌屋、提灯屋、扇屋、和紙屋・・・鋲螺屋(びょうら)はさまざまななネジを小さな引き出しに整然と並べている。いろいろな油や蝋だけを扱う店、鉱石屋、蝶や化石などの標本屋、電気のパーツやジャンクの店、プラモ屋に理化学器具や壜屋に教材屋、すべてを書き出すことは不可能な、この怪しげな僕の遊び場は、繁華で賑やかな大通りの裏通りや、古いビルの地下などで、時にあっけらかんと、時に曇ったガラス戸の中に、隠れるように息づいている。この街のイメージは、ここで生まれ育ったぼくにとっては、いつも何かごちゃごちゃした奥の方に何かまだ潜んでいる、そんな奥深さを感じさせ続けている。自転車で行ける僕のドリームランドだ。

そんな中でも田端新町の中古機械工具を扱う町は、全体が数十年くらい昔に迷い込んだのではと思ってしまうほど独特な景観を備えている。明治通りを中心にその裏のそのまた裏にまで続き、思わず「えっ?」と立ち止まってしまうことが多々ある。

東京田端新町界隈の中古道具店

ある店では何十トンを越えると思われる大きな、何に使われるかも分からない錆びた鉄のかたまり状?の機械を商い、またある店では、そこ自体がうず高く積まれたスパナ、ペンチ、などの工具の重さで完全にかしいでしまっていたりする。何がここまで詰め込ませたのかとおばさんに聞いてみれば「あたしたちがいなければ、みんなゴミになっちゃうでしょ」と明るく笑う。確かに、それらは新品など一つとて無い、行き場を失った工具ばかりだ。でもその造りの良さや、使っていた人々の気立てを思わせるほどよく使い込まれた逸品が多いことに驚かされる。値段と言えば、安物の新品の5分の1から10分の1。表向きや見せかけの生き方で疲れ切った人たちの裏で、油やほこりにまみれていても、なんと彼らは生き生きとしていることか。こんな事ばかり言っていると、ただの懐古趣味と言われそうだけど、流行という似通った価値観の中で、情報に振り回され、一辺とおりの退屈な話しかできないような人や町より、「つつましさ」「生きがい」「充実」などの言葉と正面切って向かい合えるパワーを持っているのは確かだ。この「ていねいな東京」を知った人なら、東京が庶民によって支えられてきた歴史を持った一地方都市であり、またここを故郷としている人々がいることを理解してもらえる事だろう。

東京田端新町にある中古道具店

東京田端新町にある中古道具店

東京田端新町の大工道具店

東京田端新町の大工道具店

こんな町々の20年後を想う時、何か取り返しのつかないものを失っているという気持ちになってしまう。だからこそ、この街に巡り合えて、その偽りの無い心意気や純情と同じ時代を生きられている事が、ぼくにとっての自慢と誇りなのだ。彼らとの話の途中、グッとくる感じになる事がある。「おばさんのとこいつ休み?」「そうねえ、生きているうちはいつだってあいてるよ。」まさにこの街はいつもぼくを受け入れてくれているのだ。

東京田端新町の中古道具店で道具を見る小林健二

東京田端新町の中古道具店で道具を見る小林健二

文:小林健二(1992)

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