小林健二作品」カテゴリーアーカイブ

小林健二個展[透質層と透明体]preview

小林健二個展「透質層と透明体」

2019年9月21日~10月12日(日・祝休廊) 11:00-18:30

104-0031東京都中央区京橋3-3-10第一下村ビル1F tel:0332817808/ fax:0332817848

info@gallery-tsubaki.net

Gallery TSUBAKI

小林健二作品[Tremadictonreticulatum]
2019 mixed media
夕暮れが降りてくる。黄昏の帳(とばり)が一面に広がる遠い日々の数多(あまた)の思い出がどれも皆 煌煌(キラキラ)と蘇る。(小林健二作品に書かれた文章)

詳しい情報

透明なものを取り分け好む小林健二。

彼が子供の頃、家の前から都電で行ける上野の国立科学博物館は大好きな遊び場の一つでした。

子供にとっては一本で行けるこの交通手段はありがたいもので、学校を休んでは頻繁に出かけた様です。中でも当時の鉱物標本室は面白かったとの事で、水晶や方解石など、特に透明感のあるものに惹かれています。

彼の作品群に共通するイメージを見つける事ができ、それは電気仕掛けの作品や科学的テーマを主題とするものもありますが、彼から生まれる作品においては、透明を感じる透質層が施されている特徴がある様に思います。あくまでも素材が「透明なもの」という意味ではなく、印象としての透明感です。

描かれているものは怪物であったり、腔腸類を思わせる形態や、山や岩という天然だったり・・・

様々であるにも関わらず、不思議とその向こう側に存在する透明な世界を思わせるのです。

心象風景とでもいうのでしょうか、そんなところも彼の作品の魅力です。

展覧会ごとにテーマを立てる小林健二ですが、今回は「透質層と透明体」という、彼が好んで触れてきた世界観が単刀直入に表現されています。

そしてギャラリー椿に隣接するスペースGT2では「XEDIA(キセディア)」という神秘的な場所がテーマになっていて、標本箱仕様の作品が多数展示される予定です。


小林健二個展「XEDIA」*同時開催9/21-10/12(日・祝休廊)11:00-18:30

104-0031東京都中央区京橋3-3-10第一下村ビル1F GT2


XEDIA(キセディア)と呼ばれる奇妙な場所からの発掘品

XEDIA(キセディア)と呼ばれる奇妙な場所からの発掘品
XEDIA(キセディア)と呼ばれる奇妙な場所からの発掘品

*以下小冊子「XEDIA」より抜粋

ーXEDIA

ケノーランドは絶対年代として、新太古代に存在していた超大陸である。

 その後大陸の移動の分裂接合によって形成と破壊を繰り返しながらも、一部は近現代に至ってもなお盾状地(じゅんじょうち)として残っていた。この台地が最初に人間の歴史に記されたのは1612年にオランダの五人の登山家たちによるものだった。その台地の四面がほぼ垂直に切り立っているために当時は山頂部の状況は観測できなかったが、1860年代に地上より測量されおよそ標高3500m、四辺がそれぞれほぼ7kmである事が確認された。

(中略)

1955年フランス及び英国によって結成された第一次調査隊によって辛くも着陸に成功したものの表面の薄雪により機体が安定せず、当日中に下山を余儀なくされた。その際その高地の滑走路を「奇妙な場所」としてパイロットたちはXedia(キセディア)と呼ぶようになった。

(中略)

これら出土品には特徴があり第一には、大きさが約10mmくらいから60mmくらいに収まり、分布状況が1.25mの正方面に意図的に配置されていること。そして第二には放射性核種、蓄積線量を検出できず、さらに熱残留磁気、地心双極子にも応答せず、これらの製作年代はまったく測定できないということだ。また、これらの発掘状況の全体像が把握しづらかったことは、この脆弱な人工的製作物は約20cm石英状硬透質の珪酸層に堅く包まれている状態にあったため、目視できても対象物を破損せずに回収することが技術的に障壁となり、一般には全ての状況は開示はしないまま次第に研究者の極度の体調不良、遅疑逡巡、意欲減退、一部には重厚の精神障害を発症とも?関係国の成果よりも資金不足及び世界情勢が再び混乱した事といった理由から1972年までに各国によって報道管制なども敷かれ、半ば強制的に再び「前世紀の闇中」にまで押し込められ忘れ去られていったのである。

(後略)

*標本箱仕立ての作品にはそれぞれの作品表紙がついた小冊子がついています。(展示即売)

小林健二個展[結晶標本-Crystal Specimen]review

2019,4/26-5/7東京中野Galleryリトルハイで開催された小林健二個展[結晶標本-Crystal Specimen]の会場風景です。結晶作品は展示即売だったので、画像は初日オープン前に撮影したものです。

小林健二個展「結晶標本」(手前に見える黄色い結晶5点はUVライトで発光する結晶です)

手持ち式ライトを使用して、結晶に自由に光を当て透明感を楽しんだり、UVライトで蛍光する結晶は、手持ちUVライトで光らせたりして、子供から大人まで楽しめる雰囲気の会場です。

小林健二個展「結晶標本」開放的なギャラリーの入り口から見た風景。奥には新作の土星作品が見える。

新作の土星作品を鑑賞するときは会場のライトを一旦消して暗くし、土星が青く光りながら浮き上がって回転している様を楽しんだりと、お客様と作品との接点が近い展示内容でした。

小林健二個展「結晶標本」
小林健二個展「結晶標本」(何年も繰り返された実験から生まれた結晶の数々。とりわけ透明なものが好きと話す小林健二の世界が息づいています。)

小林健二個展「結晶標本」
小林健二個展「結晶標本」(上の段に見えるのが不思議結晶。光に透かすと、想像を掻き立てられる模様が浮き上がる。「窓の向こうの世界が見えるよう」「海面に浮かぶクジラ」「猫の陰影」などなど・・・見る人の心象風景が面白い。)
小林健二個展「結晶標本」4/27作家来訪の時の模様。

4/27の土曜日の夕刻より小林健二在廊と告知したことにより、作家に会いにきた方々で溢れました。GW期間中での展覧会。移動の多いこの時期に会期中多くの人で賑わったと伺っています。

同時期に同ビル(中野ブロードウェイ)の書店タコシェのコーナーで「銀河通信」展も開催され、4階のギャラリー・リトルハイと3階のタコシェと行き来して、それそれの小林健二の世界を楽しめました。

精霊の家

STELLA IN THE ROOM

夜はぼくたちにいつも語りかけている

気圏の層に窓が開いて

遥かな宇宙の記憶の断片が 静かな雪のように降ってくるんだ

それは見ようとしたり 聴こうとしたりしなければ

なかなか感じることのない 小さな小さな声なんだ

でも

何かを探して夜空を見上げると

ひとりぼっちには

惜しみなくいくらでも 夢を降らしてくれるんだ

いろいろな色の様々な姿をしたキャンディーのような 素敵な味覚のお噺で

その心がいつの間にか温かく すっかり安心できるまで・・・

一度も会ったこともなかった 顔も知らない同士でも

知らない星の思い出が いっしょに懐かしくなったりするのは

きっとそんなわけなんだ

・・・・・・

ぼくは静かに外に出て、見上げる銀河に思ってみる。

かつてある巨きな人が深い眠りに入って星になった時、

それは一体どんな日だろうと・・・

そして今、その星のみる夢は、この上なく素敵なものであってほしいと。

その青く光る星の住人の一人として、故郷地球を思って見た。

小林健二

*文:[星のいる室内STELLA IN THE ROOM]より

[妖精の家]小林健二作品
通電すると室内から階段を昇ったり降りたりする音や、口笛やハミングが小さく聞こえ、またあたりが暗くなると点灯したり消灯したりする。

[妖精の家]部分
小林健二

 

 

小林健二個展[ー朝の硝子ーMorgonglaz]review

小林健二個展[ー朝の硝子ーMorgonglaz] 2018年3月28日(水)~4月16日(月) YAMAGUCHI Gallery

春の要素が風に運ばれ、良い香りがしはじめる。すると ついさっきまで置いてあった壜や皿やコップなどの虚ろな隙間に朝のひかりが充蓄されて硝子のような姿を顕してゆく。

小林健二

小林健二作品[ー朝の硝子ーMorgonglaz]
2018 mixed media

小林健二作品[ー朝の硝子ーMorgonglaz]2018
*部分

案内状の作品は、中央に独特な半透明の形と爽やかで淡い色彩が散りばめられていて、明るく清々しい印象です。案内状に使用された画像では、斜光によって真ん中のフォルムが浮き上がって見えています。

小林健二作品[ー朝の硝子ーMorgonglaz]2018
mixed media

自作キャンバスに描かれた壜や不思議なものたち。この透明な層と淡い色彩による作品は、健二が20代頃に描いていた油絵を思い起こさせます。

4月7日(土)午後5時より「小林健二を囲んで(予約不要・無料)」というDMの案内。取り巻くように椅子が用意され、ミニトークになっていきました。

小林健二ミニトークの様子(2018,4/7)

小林健二ミニトークの様子(2018,4/7)

約3時間に及ぶミニトークの内容から、いくつか抜粋要約してまとめてみています。

*小林はK、参加者の質問はQとします。

まずはギャラリーオーナーである山口さんからの質問から始まりました。

Q:展覧会タイトル[ー朝の硝子ーMorgonglaz]について、作品の中にガラスのような透明な層がありますが、関係性はあるのですか?

K:作品に使用した技法の中にステレオクロームがあります。それは水ガラス(ケイ酸アルカリの濃い水溶液で、濃度の種類が何タイプかある)によって透明な層を形成します。透質なものが好きで、以前から作品に使用したこともありました。

今回の個展に向けて最初に手がけた新作が、このページに載っている壜などを描いた作品。今思うと「画家」を生業とする前の頃を思い出すような気持ちから始めたもので、それによって今回の一連の作品が生まれていった感じです。

北欧の言語には接続詞に当たるものがなく、[朝の硝子]を欧文表記した場合は普通「の」にあたる言語が必要になるけど、一言の[Morgonglaz]にしてみたもので、造語です。

余談だけど、硝子って液体なんですね。含有物によって若干緑がかったものが一般的で硬質なイメージ、それが液体だなんて不思議です。

Q:土星作品も展示されていました。まさに宙に浮いているように青く光りながら回っているのですが、まるで目の前に浮いていて触れられそうな感触に驚きました。小林さんが「土星」にこだわる理由は何かあるのですか?

K:中学生の頃、友人の家に遊びに行った時に初めて望遠鏡で土星を見る機会がありました。その時の感動は言葉にできない。「本当に輪がある!」って、意味もわからず涙が出てきたのを覚えていて、きっとその経験が忘れられずに今に至っているんだろうと思います。

それと輪があった方が、回っている時にダイナミックだよね(笑)。

 

今回はお客様と作家との距離が近く、歓談しながら充実した時間が過ぎていきました。まだまだたくさんの話が飛び交いましたが、編集能力の限界から、ここで一旦終了します。

文:ipsylon.jp

 

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小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]review

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]2017,9/9-30 ギャラリー椿(東京京橋)
案内状の作品とその作品に添えられた文

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]会場風景

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]会場風景

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]会場風景

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]会場風景

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]会場風景

小林健二(ギャラリー椿にて)

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]会期中にトークショーが行われた。

9月16日(土)17:00より

テーマは「こころの中の風景」

前回でも少し紹介したが、今回はもう少し詳しく書き起こしてみました。ギャラリー椿のオーナーである椿原さん司会のもと進められたトークショー。以下敬称は略します。

ギャラリー椿はメインルームとGT2の2会場で構成されている。GT2ではギャラリー椿での小林健二最初の個展の案内状に使用した作品を展示。右側にその時の案内状も飾られていた。

椿原:健二くんの最初の個展は彼が26才の時で、その時は自漉紙の作品。今回GT2にその時の作品を1点展示しています。前回の展覧会からも9年ぶり。今回の個展タイトル[IYNKUIDU TFTWONS」とは?

そして今回展示されている作品は不思議な形をしているものが多い。

小林:ぼくの作品を見て「これなんですか?」とか「何を見て描いたんですか?」と聞かれることがある。具体的なものを見て絵を描くってこともあった。

18才の時に家を出て自活を始めるんだけど、会社に勤める能力もなかったし、ぼくはこういう風に生きていくことしかできなかった。

子供の頃から絵を描くことは好きだった。さらに不眠症だった。それは今でもそう。人が寝入っている夜に自分は眠れずに悶々としていることもある。夜に寝れてないから次の日は疲れていて、ベットに横になると知らずウトッとしたりする。その半ば夢と半ば現実の間の時に、現れる風景がある。それはえてして同じ街だったりするけど、いつもは右に行くところを今度は左に曲がってみようとか思っていると、初めての風景に出会ったりする。ベットの横にはノートがあって、そんな風景をなんとか思い出しながらエスキース帳に書き留めている。

それを絵に描いてるからこんな風な絵になる。だからぼくには説明はできないものばかり。実は自分がその夢の風景にもう一度出会いたいと思っているから作品にするのかも知れないね。

小林健二作品「still」2011

今回展示した「still」はメソポタミアのジグラッドから風景を思い起こしている。この作品を描くきっかけになったのが、東日本大震災。ぼくのいた東京小石川もすごく揺れて、思わず外に飛び出したら、向かいの高層マンションが捻るようにギュッギュッと揺れていた。そしてあの津波の映像。ぼくはどうしていいかわからず、何か自分に出来ることはないか、と非力を感じる日々を送っていて・・・そしてどうしょうもない気持ちになってあの作品を描いた。

今回の案内状の作品は似たような風景だけど、あの風景は夢で出会ったもの。不思議な荒野で遺跡のようなところに夢の中で辿り着く。そこで目にしたものが一連の今回の作品群になっています。

その荒野に僧侶のような人々が後ろ向きに座っていて、知らない言語で何か呪文のようものを唱えている。それが「イィヰンクイドゥ トゥフトゥウヲンズ」ぼくなりにスペルにすると「IYNKUIDU TFTWONS」。でもその時はこんな文字で示されている。

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より
右下に不思議な文字のようなものが見える。

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より

椿原:今回の個展テーマについては分かったけど、これまでの展覧会タイトルも造語だったりするの?例えば作品集のタイトルも「AION」だったり「ILEM」だったり・・・

小林:全てが造語って訳じゃないです。例えば「AION」はグノーシスの言葉で「私たちはどこから来てどこへ行くのか?」という文章が知られているよね。

「この世ってなんだろう?」ってことを考えていたいし、それがぼくのライフワークなんです。二度と悲惨な戦争なんて起きないようにと願っていながらも、世界のどこかで戦争は絶えない。クロマニオン人から現代人にいたり、 ラスコーやアルタミアの壁画があって、日本なら縄文時代があり弥生、飛鳥・・・歴史ってなんだろう?ってこととかも。

 

椿原:作品の中にはローマ字表記で読もうとすると読めるものもあります。今回の案内状の裏面に書かれた文を読んで「健二くんは詩人だなぁ」と思った。作品中の文章にも共通するけど、作品全体に詩心を感じて、見ていると安らいだ気持ちになる。

健二くんの作品にはあたたかくて柔らかくて、染み入るようなものを感じる。それが魅力のように思う。自分も海外に行って海外の作家の作品を見る機会が増えて思うのは、作品に社会性やメッセージがあること。健二くんが15歳の時に描いた作品(「AION」の冒頭に掲載されているもの)は醤油で色付けされた画用紙に怪物のようなものが描かれた絵。そこに添えられた文章に、その海外の作家と共通するメッセージ性を感じる。

そして健二くんの作品にはいろんな素材や技法が使われている。

「彼は一番強い生物。何故ならものを悩んだり、企んだりする脳を持っていないから。彼は一番強い生物。何故なら光の力をそのまま自分の血や肉に変えているから。彼は一番弱い生物。思いっきり愛することのできる重いハートを、4本の足で支えなければならないから。」
小林健二(15歳の時に描いた絵)

小林:例えばヒエログリフは読めないから意味がない訳じゃないと信じたいし、詩っていうものが形になって絵のようになったり立体的な作品になったり、音楽になったり・・・

ぼくの場合、自分のパレットの上に色のある絵の具ではなくて、いろんな物質が乗っているって感じ。イメージしているものにできるだけ近づけたいという思いから、その都度素材や技法を選んで行って、音楽も同じで、作ったものを今回も会場に流している。

小林健二作品「IYNKUIDU TFTWONS]より

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]の部分。光をあてると淡いピンクに。

椿原:これはなんだろう?禅問答じゃないけど、それを問いかけながら健二くんの作品と対峙する、そんな場が展覧会なんだね。

いつもは健二くんは体があまり丈夫じゃないから、作品搬入が終わるとぶったおれていて、入院したりすることもある。いつも「これが最後かもしれない」っていう気持ちで製作しているんだよね。でも今回は意外に元気なんで安心した(笑)。

小林:一応1週間後にトークがあることが決まっていたから、気をつけていた(笑)。それに一年前に個展が決まっていたから、一年かけて取り組んだのもある。でも作品製作が作業にならないように、ぼくの中ではテーマ作りに苦しい時期もあった。

 

*この後、作品をゆっくりと観れる時間が設けられました。展覧会の動画は下記をご覧ください。

KENJI KOBAYASHI

2017,9/16小林健二トーク(review)

2017,9/16の小林健二トークの受付開始頃。個展[IYNKUIDU TFTWONS]の会期中に行われた(9/9-9/30ギャラリー椿にて)

9/16(土)17:00よりスタート。始まる前の様子です。

9/16、小林健二トークの始まる前。多くの方で広いギャラリーが埋め尽くされ、遠方からも多数来場されました。

 

今回の案内状作品の前の小林健二、ギャラリー椿のオーナー椿原さん司会のもと進行されます。

小林健二イブニングトーク:2017,9/16(土)17:00より(京橋のギャラリー椿にて)

テーマ:こころの中の風景

小林健二の作品に郷愁を覚えるという感想を度々聞くことがあります。

例えば夢の中で散策している景色、そこはこれまで行ったことのない風景だったりしたことはありませんか?

不思議です。

多分それぞれの人の心の中には、きっとそんな場所があるかもしれません。時にそこは落ちつける処だったり、ワクワクと冒険するような箇所であったり・・・

今回は明らかに「風景」と言えるような作品が数点ありました。

小林健二個展の案内状の作品。積乱雲の立ち上る青空を背景に、岩の上に白い四角い物体。不思議な風景です。

[still]
この作品は2011年、東北の大震災の時に描かれました。作品に添えられ文章は、祈りにも似た願いのようなものが感じられます。

[still]

今回メイン会場に展示された作品はほとんどが新作で構成されていますが、この[still]はあまり公表されたことがない理由もあり、メインルームに展示されています。作品に添えられた文章は上のリンクでご覧頂けます。

今回のタイトル[IYNKUIDU TFTWONS]はどんな意味ですか?という質問に答える小林健二

個展ごとにテーマを付けることが多い小林健二。

やはり最初の質問は展覧会タイトル[IYNKUIDU TFTWONS(イィヰンクイドゥ トゥフトゥウヲンズ)]はどんな意味?

*敬称は略します

椿原:今回の展覧会のタイトル[IYNKUIDU TFTWONS]はどんな意味ですか?発音がわからなくて案内状の裏面を見て読み方を知りました。

小林:浅い眠りの中、僧侶のように見える何人かが(夢では背中を向けているからどんな人かはわからないけど)お経のような呪文のようなものを唱えている。それは「イィヰンクイドゥ トゥフトゥウヲンズ」スペルにしてみると[IYNKUIDU TFTWONS]。でも夢の中では下の作品の右下にある文字のようなものがその意味らしい。

夢って覚めてみると説明が難しかったりする。ぼくの作品も言葉に置き換えられない部分が絵となっている。だから今回の展覧会タイトルの発端は、そんな夢から覚めた時に夢うつつ状態で書き留めているノートの束から見つけたものです。

もちろん作品のためのエスキースはある。でも製作している状態って媒体として自分の体があるに過ぎなくて・・・だから言葉にしようとすると、どれもピタっとしてこないけど、本人だから近いところで説明はできるかな・・・でもはっきり言って難しいよね(笑)

 

リンゴを落とすと落ちる・・なぜ?

重力があるから・・それは何?

謎だらけ・・やっぱり説明するのが難しいことって確実にあるよね。

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より
不思議な文字が作品中に書かれている。これまでローマ字表記だったりして、ゆっくりと読めば解読できていた作品もあるが、これらの新作の文字らしきものは、現存する言語でもないようだ。

椿原:作品に詩のような文章が書かれていたりするものもあるけど、総じて健二くんの作品には「詩」を感じる。展覧会の会場でも流しているけど、健二くんの作った音楽を聞きながら作品を見ていると安らいだ気持ちになる。作品に「詩」を感じるってことはとても大切なことだとぼくは考えている。

小林:色々な素材、時には文章が作品に書かれている。ぼくにとって全て絵の具のようなもの。音楽も含めイメージを具現化する中で、色を選ぶようにそれぞれの表現方法で形が形成されていく、っていうと自然かな。


小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より
MAGIMOTERASS
彗星の光の尾の成分から生まれた
植物でさえ
浅い眠りの中で生成されてゆく
結晶を知っている
泪もろい渡り鳥の羽に
しずくのようにふりかかる
水蒸気のように
(作品中に書かれている文)

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より
樹木のように耳を澄ませる
九月の隕石が遠ざかる
(作品に文字が書かれている部分。不思議な記号も描かれている)

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より
双極性の欲望と理解
遠方まで届く虹の春の夕暮れ
秋の日
(作品に文字が書かれてい部分)

*一時間に及ぶトーク、今回ご紹介できたのは一部なので、いずれ動画などでアップしていきたいと思います。展覧会の会期は9/30までありますので、機会がありましたらご来場ください。

詳細

トークの後ギャラリーを閉める時間を延長して、観客が作品を見れる時間が設けられました。

KENJI KOBAYASHI

 

 

 

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小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]

2017,9/9(土)ー9/30(土)日曜祭日休廊 11:00-18:30

初日9/9 17:00より小林健二在廊予定・9/16小林健二イブニングトーク:こころの中の風景(ギャラリーまで要予約・参加費500円(1ドリンク付))

ギャラリー椿(104-0031東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F Phone : 03-3281-7808)

http://www.gallery-tsubaki.net/2017/Kenji_Kobayashi/info.htm

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]の案内状です。

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]の案内状の裏面。

東京京橋にあるギャラリー椿では9年ぶりの小林健二新作展覧会となります。

前回は2008年の[MUTANT]です。

 

型を作るために、バンドソーで木取りしている様子。(小林健二の製作風景)

型に金網をのせ、中央を押して出っ張りを作っている様子。(小林健二の製作風景)

プラスチックのハンマーでゆっくりと型に押し込んでいる様子。(小林健二の製作風景)

金属製のローラーで金網を成形している様子。(小林健二の製作風景)

コーナーはその場で自作した治具で、金網を叩き込んでいく。(小林健二の製作風景)

特殊なハンマーでコーナーをさらに内側から成形している様子。(小林健二の製作風景)

長さ2mを超える作品のパーツが揃っている。それぞれの技法で仕上がっていった3つの不思議な形状。あくまでも製作途中ですが、すでに小林健二独自の世界が現れている。(小林健二の製作風景)

これまで小林健二に愛情を持って仕立てられ、出番を待つ道具たちの助けを借り、彼の心の中にあるイメージが具現化されてゆく。

この後作品がどのような仕上がりになっていくのか、是非会場で対峙して見てください。今週の土曜の9月9日から開催されます。

http://www.kenji-kobayashi.com/2017kk-expreview.html

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[星のいる室内]より

[T君の望遠鏡]

中学生になって、ぼくが同級生に誘われて再び渋谷の五島プラネタリウムに行き始めた頃、二つ年上のT君は、6cmの屈折望遠鏡を持っていた。彼は野球少年で、しかも星座少年だった。

T君の自慢の望遠鏡は、いつもピカピカでカッコよかった。

ある日「ちょっと覗かしてよ」と言って、みんなが順番に見せてもらった時、プラネタリウムが嘘っぽく見えるのは、星がありすぎるからだと思っていたけど、その小さな覗き窓に想像を何倍も超える星々の存在に声を失ってしまった。

「すごい」とか「星がたくさんある」とか言うと、一緒に涙も出そうだったからだ。

その後ぼくは、ぼくの中学のサッカー部創設メンバーに加わり、朝から夜までサッカーに明け暮れた。ペレやジョージベストやベッケンバウワーが、ぼくにプラネタリウムやT君の望遠鏡のことを、忘れさせていた。

そして、T君の卒業したその次の年の夏。しばらくぶりに仲間とT君の家に行くと、そこは空き家になっていて、家の中は空っぽだった。彼には昔からお父さんがいなくて、新聞配達をしていたが、赤坂の方で働いていたお母さんに大変なことが起こって、そして急に引っ越したのだと隣のおばさんから聞かされた。

ぼくらは何も喋らないまま、夕暮れの彼の家の中にいて、あの立派だった望遠鏡のことをしばらくの間、想っていた。

[流星群と変光星]

夜、久しぶりに外へ出て

空を見上げていると

東の方角にペルセウスの流星群

何かが始まる未知の気配を

全ては開かぬしばし間に

再び心も風景の静寂に一致してゆくまで

いつのまにかに飛び出していた

夢の翼は輝星の表を追い走けてゆく

おおくま座 ウルサマヨール

位置11007626α(アルファ)ドウベを超え

やがて(イプシロン)アリオス位置12518562を捕える

北極星が変光をして

ウルサミノールが輝くときに

基準都市の上を

重星の命が通り過ぎてゆくのだ

ぼくは星表番号とその星の名を探し出し

君のなまえを書き添える

古代の時間が訪れて

ジュラ紀の空を思い出す。

小林健二

*作品集「星のいる室内(1993年発行:ガレリ・ヴォワイアン)」より抜粋し、画像は新たに付加しています。ヴォワイアンで開催された小林健二個展に合わせて出版された本で、内容はギャラリーオーナーの文章と展示作品、小林健二の文章などで構成されています。

小林健二作品集「星のいる室内-STELLA IN THE ROOM」発行:ガレリ・ヴォワイアン

小林健二作品集「星のいる室内-STELLA IN THE ROOM」(クロスを使用したケースと上製本により仕上げられた美しい本です)

小林健二作品集「星のいる室内-STELLA IN THE ROOM」(クロス製本のケースと本、顔料箔押しのされた表面に小林健二作品のシールが貼られている。装丁:小林健二)

小林健二は天文的なテーマの作品を多く制作していて、その中から何点か紹介してみます。

中でも「土星」をモチーフにしているものが多くありますが、他の記事でも紹介しているため省いています。画像は小林健二作品「土星装置」の一部です。

小林健二作品「月の人ーMOON WILL」

「星座遠方-STELLA DISTANCE」の作品タイトルで小林健二は何点か連作を描いています。

小林健二作品「星座遠方」

小林健二作品「星座遠方」

小林健二作品「星座遠方」

小林健二作品「星座遠方」

小林健二作品「星座遠方」

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小林健二の製作現場からVol.1

2017年9月9日~30日(日曜・祭日は休廊)ギャラリー椿(東京・京橋)にて小林健二個展が開かれる。

新作を製作している様子を少し紹介。(今後個展開催まで、何回かに分けてアップ予定です)

ここでも、使いやすいように整備されている様々な道具や工具が活躍しています。

小林健二の道具(US Micro-Mark社のミニパワーツール)右から、ディスクサンダー、スウォードソー、クロスソー(ジグソー)、ドリル、プレーン(電動鉋)、ベルトサンダー

小林健二の道具(US Micro mark社のミニパワーツール)ディスクサンダーを作品製作に使用しているところ

小林健二の道具(US Micro mark社のミニパワーツール)
クロスソー(ジグソー)をテーブルに固定して、ミシンのように使用している

小林健二の道具、彫刻刀など

小林健二の道具。木を削るにも、目的によって道具を使い分ける。

小林健二の木工道具

小林健二の道具。ソリ鉋など、右上はコンパスプレーン。

小林健二の道具。小林にとって西洋鉋は木材の加工に欠かせない道具の一つ。画像はスタンレー社のもの。

小林健二の道具。西洋ノミの一つ。

小林健二の道具。木の端を西洋ノミで斜めに削った後、日本のきわ鉋で整える。

小林健二の道具。カンナ屑が詰まりやすいため、台をその場でなおす。

小林健二の道具。台を直した鉋はスムーズにカンナ屑が出て、快適に使用できる。

小林健二の道具。同じ西洋ノミだが、使用方法は自在。

小林健二の製作現場。透明な素材を好んで使用する小林、多分その支持体を製作している模様。

小林健二の製作現場。透明な素材を支持するための木を加工し、サイズを合わせる。これも作品の一部になると思われる。

*2017,7/15、小林健二の仕事場にて

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少年少女だった頃

「水晶と6cmの土星」

ぼくは仕事上、絵や立体作品などを製作しているのですが、筺の中に青く光る土星が回っていたり、色々な鉱物の結晶のような作品も作っています。

そしてこれらはぼくが子供の頃に受けた出来事と大きく関係しているところがあるのです。

 

やがてしばらくしてぼくは失語症のような状態になり、いつもオドオドとして、さらに家から外へも出れなくなってしまいました。ただぼくには二つ年下のとても親しい友人がいたことが唯一の救いで、彼とだけはいつも一緒におりました。よく二人で上野の科学博物館に恐竜や化石を見に行くのが好きで、そんな時は都電に乗って自分からも外に出たいと思っていたのです。

そんなある日、ぼくと彼とに当時は鉱物の標本のとても充実していたその博物館の広い一室で、優しく声をかけてくれた人がいました。大人の人全般に恐れを抱いていたぼくも、丁寧な鉱物への説明や美しい結晶を直に手に取らせてもらいながら、何回となくその人の処へ通ううちに、だんだんと鉱物の世界に引き込まれて行きながら、少しづつ心を開いていったように思います。

数年の後には、対人赤面症ではありましたが、随分と人と会話できるようになっていました。

もしあの頃、あの学芸員のような方が声をかけてくれなかったらと、今でも感謝を込めて思い出すことがあります。

やがて中学になり、いつも一緒にいた友人の彼は、彼のお父さんが広島で被爆していたため二次被爆から白血病隣、12歳という若さでこの世を去りました。

それはまた再び暗闇の中へとぼくを突き落としたのです。ただその頃はサッカーにも夢中になっていた時期でもあり、表向きはせいぜい無口でおとなしく目立たない中学生に見えていたと思います。

しかしながら心の中では今となってはうまく説明できないほどのイライラやジレンマを持っていました。歌を作って一人で歌ったり、絵を描いたりすることと、体を動かすサッカーでどうにか生きていたという感じを思い出します。

そんな時、ある年長の先輩がぼくに望遠鏡を覗かせてくれました。それは6cmの赤道儀付き屈折式の決して高価なものではありませんが、彼は器用に捉えてもすぐに逃げ去ってしまう一つの星を見せてくれたのです。それは土星でした。「本当に輪があるんだ」と言おうとしたのですが、どうしたわけかとめどもなく涙が出て、最後は言葉になりませんでした。

その時、本でしか見たことのない天体の世界と本当にこのあえかな望遠鏡でつながっていると思い、さらにすでに他界した友人もそこにいるような気がしたからかもしれません。そして何か勇気のようなものが見えない世界から励ましてくれているように感じたのです。

あれから30年が経ちましたが、あれらの鉱物がその友人と水晶のように結晶し、またあの青い輪のある星で待っているような幻が、今のぼくの宝物であるのです。

小林健二

[サイスコープ-PSYSCOPE]
小林健二作品

[MIDNIGHT RADIO]
電波を受信するとレンズの奥に潜む結晶が光りながら音声に合わせ明滅する。
小林健二作品

[Noctural Saturiun-土星夜]
作品左下の自作結晶が様々な色彩に光り、宇宙からの電磁波を受信するとノイズに似た音声が発せられ、自作レンズの奥に巨大な土星が青く輝きながら浮いて回転する。小林健二作品

[SATURN GEAR-土星装置]
窓から見える土星がゆっくりと青く光りながら回転する。
小林健二作品

[SATURN TELESCOPE TYPE88-八八式土星望遠鏡]
1988年に構想し、16年後に完成した作品。長く伸びたラッパ状の先にあるレンズに全体像を表す土星が見え、青く光りながら回転する。
小林健二作品

[SATURN TELESCOPE TYPE91-九一式土星望遠鏡]
1991年に構想し、19年後に完成した作品。レンズには全体像を表す土星が見え、青く光りながら回転する。
小林健二作品

*2000年のメディア掲載記事より抜粋編集し、画像は新たに付加しています。

KENJI KOBAYASHI

 

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