小林健二作品」タグアーカイブ

[INNOCENCE]小林健二展覧会

[INNOCENCE] 案内状

[INNOCENCE]2022,10/12-31(火曜休廊)10:00-20:00

山口画廊 千葉市中央区春日2-6-7-102 tel:0432481560

小林健二作品「INNOCENCE]より2022

今回の新作群から発せられる印象は、静かでいながらも力強いエネルギーに満ちている感覚です。それは、アート作品が本来持つべきである「メッセージ」を保有しているからなのかもしれません。決して声高ではないかも知れないけど、静謐な情熱のようなものをどの作品からも感じました。

小林健二の作品は今回も様々な素材+技法が駆使されていて、「この質感はどうやって生まれているの?」と、思わず作家在廊日には聞きたくなってしまいます。そして作品に「文字」とも言えるような文様が添えられている場合は、「どんな意味ですか?」と問いかけてしまいそうです。

例えば案内状の表紙にあたる作品に見える「ONKALO」という文字。その他の作品にも文字らしき不思議な紋様を発見します。

小林健二作品[INNOCENCE]より2022
小林健二作品[INNOCENCE]より2022

小林健二作品[INNOCENCE]より2022
小林健二作品[INNOCENCE]より2022
小林健二作品[INNOCENCE]より2022

詳しくは下記サイトにて!

*近隣の企画画廊くじらのほねにて、小林健二個展同時開催!

https://www.kenji-kobayashi.com/2022chiba-preview.htm

KENJI KOBAYASHI EXHIBITION in okeba

2022,4/2-18(11:00-17:00)

okeba gallery

湘南地区では初めての小林健二展覧会になります。同時に銀河通信社(小林健二監修)の新作・試作アイテムを展示。*今回は2022年までに制作された作品展示になります。

銀河通信社試作アイテムなど

詳しくはpreviewサイトにて

Kenji Kobayashi exhibition [ n w y f ] 2021

Kenji Kobayashi artwork 2021
Kenji Kobayashi artwork2021
Kenji Kobayashi artwork2021
Kenji Kobayashi artwork2021
Kenji Kobayashi artwork2021
Kenji Kobayashi artwork2021

CURATORS CUBE X 小林健二

CC : 今回は全てが新たに取り組んだ作品群であるということで、大変ありがたい機会をいただきます。2020-2021年、作家・鑑賞者共に展覧会などへの関わりが難しい中でしたが、その期間に制作された本作品群について先ずは簡単にお話聞かせてください。

小林:やはりこの様な状況ですから、作品を観てくださる方々に多少でも元気な気持ちを感じていただければと思いましたし、自分でも明るい気持ちで製作できるように努めました。

この様な状況ではなくても大抵引きこもって製作しているのですが、今回は一点一点に実験的な試みもし、手が多く入っていると思います。

ぼくとしては、ある意味で人の世を守ってくれる怪物の様なものを描きたかったのかも知れません。

CC : 守護者或は守護物といった物は自自または自他が支え合うという意味で、2020年以降の不安定な時勢の中で重要度の増したものの一つかもと感じます。そういった守護者の映るそれぞれの作品は各々に様々な技法を含み、ユニークな振動を放っているよう感じます。幾つかの作品における具体的な技法とそれが奏でる影響についてご自身なりの狙いというものがあれば聞かせてください。

小林:大抵はパネルかキャンバスの上に油彩で描いたものですが、部分的にその他の技法も使っています。それぞれの作品にバリエーションを連作して行くことが一般的だと思いますが、今回はなるべく色々な表現の仕方で、観てくださる方々に印刷物のような複写されたものからではなく、実物からではないと感じられない要素があるということに重点をおいて描きました。

CC : 仰るよう1点ずつが独立した波動のようなものを持っていますし、それらが並んだ時にいわゆる連作的な作品群とは異なる響き合い方があり、個性とか協調といった感覚が明るく胸に飛び込んできました。そういった印象の背景と関連するのでしょうか、作品と色彩の関係についても興味があります。これまで多くの国を訪ね或は国内においても多くを歩き、小林さんのスタジオは沢山の色が溢れています。作品における色というものの役割や色を扱う際に意識をしていることがあれば聞かせてください。

小林 : 色彩やマチエール(画肌感)から来るものは、油彩画特有の技法を使って、たとえば削り出し(グラッタージュ)、透明な層を重ねる(グラッシュ)、盛り上げ(インパスト)、拭き取り(エスイヤージュ)こすり出し(スキャンブリング)、流れ込み(オンフリュード)、ヒビ入れ(クラクール)などなど・・・。つまり色はカラーチャートのようなものではなく、その表面効果や透明感なども絡み合っていると思います。

CC :  なるほど。それらの技法とも関わり合う要素としての文字或は文字的なものについてもお話を聞かせてください。これまでも多くの作品に文字または文字のようなものが表れていましたが、この新作群でもそれらが強く印象的な役割を果たしているように感じます。また文字のない作品においても、画面上に刻まれる多くの線がどこか文字のように鑑賞者の身体に飛び込んでくる感覚があります。今作品群に表現されている文字の意味、或は線に込められた思いのようなものがあれば教えてください。

小林:大抵の場合、人にとって絵画はともかく文字に対しては、たとえ読むことができなくても、意味の様なものが何がしか介在していると感じると思います。ですから今回は文字のないもの、読もうと思えば読めるもの、かと言って意味が分かるかといえば不明なもの、記号の様なもので言葉としては理解しにくいもの、それらを含めて作品に付加された要素として感じていただければと思います。

言い換えれば、言葉や描画だけで表現できないものを描きたかったと思ってください。

CC :  2020年から続く世の中のムードについて、或はこれから私たちが心を配るべき振舞いについて、これらの作品群の持つ意義や願いの様なものがあれば聞かせてください。

小林 : 自分を見つめる時間や、この世の色々な側面を考える時間もとても必要なことだと感じますね。

CC :  僕が小林さんの作品に出会ってから20年弱、長い時間があった後の2019年にようやくお会いすることが出来ました。20年前或は作家として活動を始めた40年以上前と現在と、制作にあたってどのような変化があるのか或は無いのか、湧き上がる美しさの源に興味がつきません。そのあたりでお話があれば聞かせてください。

小林 : 話し始めるとキリがないけど・・・(笑)。でもこれだけは言えるかもしれない。ぼく自身子供の頃からあまり変わっていないというところがあって、絵に描くということは、つまり普段目に見えない心の中にある風景を描いているという事かしら。

ぼくには幼い頃から軽い(?)対人障害があって人が多く居る場所が苦手だったんです。そんな時、話とかすると直ぐ支離滅裂になっちゃってね(笑)

若い時は随分良くなっていたけど、歳と共に素に戻ってゆくのかな?・・・ただその代わり心の中に一つのプリズムの様なものが再び戻って来て、突然風景の様なものや音楽の様なものを感じたりしてね。でも脈略がないから人にも話せないし。フムイヌルイの森、フルーツの香りの音楽が空で姿を現したり、雲が蜃気楼のようにレンズになる様、海の上のグニラの柱・・・今回は少しだけ作品に反映されているのかな。

*案内状より

[透質層と透明体]+[XEDIA]+10/5のギャラリートークについて

「透質層と透明体(9/21-10/19)」開催期間中に作家からの話を聞きたいとの要望が増え、急遽10/5にギャラリートークが企画されました。

小林健二個展 [透質層と透明体] Gallery TSUBAKI
小林健二個展 [透質層と透明体] Gallery TSUBAKI
小林健二個展 [透質層と透明体] Gallery TSUBAKI
10/5ギャラリートークの会場 Gallery TSUBAKI

今回も小林健二による不思議な世界が画廊に現れ、素材感を忘れさせてしまう風景が表出されていました。それでもよくよく作品を覗き込んでみると「どうやってこの透明感が表現されているの?」「いろいろな形を持った透明体は何?」「透明と言っても一種類ではないのが不思議」

小林健二作品
小林健二作品[透質層と透明体]部分
小林健二作品[透質層と透明体]部分
小林健二作品[透質層と透明体]部分
小林健二作品[透質層と透明体]部分
小林健二作品[透質層と透明体]部分
小林健二作品[透質層と透明体]部分

私たちの生活の中で透明なものと言ったら「水」を思い浮かぶかもしれません。人によっては「ガラス」や「プラスチック」?でも比べてみるとみんなそれぞれに透明なもの・・・大きな括りの中に存在する透明なものたち。

小林健二作品[透質層と透明体]部分

小林健二が好きなものをあげるときに「水晶」や「クラゲ」と言ったものがしばしば上がります。

そして「透明なものが好き」と話します。まさに好きなものがテーマとなっているこの展覧会だから、作品からはゆったりとした無垢な雰囲気が漂っている、勝手にそう感じていました。

小林健二作品 [遥かな花を眺るままに] 2019
[遥かな花を眺るままに]作品を斜めから見てみると、透明、半透明、そして黒く描かれていたと思っていた部分は表面が削られて現れた下地の色彩、銀色にも見える。
小林健二作品[透質層と透明体]部分
近いところ
遠いところ
とても遠いところまで
全部同じ
(作品の下に描かれている記号のように見える文字?の意味ということです)
作品の凹んで見えている部分は実際に凹んでいて、キャンバスに描かれているこの作品はとっても不思議!
小林健二作品[透質層と透明体]部分
EMPTY
ANNULUS
PARITY
BEGINNING
TIME
MATTER
MAIND
(作品の下に描かれている記号のように見える文字?の意味ということです)


ギャラリートークでは透明な素材を加工するのに使用した小林の手道具などがテーブルに置かれ、多分それは本人が安心材料として持参して来たとも思われます。

綺麗に仕立てられているその道具についての話にたどり着く前に、質疑応答によりあっという間に予定の2時間が過ぎてゆきました。

今回の作品はやっぱり実物を見ることが大事と思えるものばかりでした。印刷物や撮影したものではとても感じ取れない、奥深さがありました。

同時開催された、小林健二個展[XEDIA] GT2
同時開催された、小林健二個展[XEDIA] GT2
同時開催された、小林健二個展[XEDIA] GT2

*会場に貼られたパネルの文章(標本仕様のXEDIA作品に付く小冊子より)

XEDIA

ケノーランドは絶対年代として、新太古代に存在していた超大陸である。

その後大陸の移動の分裂接合によって形成と破壊を繰り返しながらも、一部は近現代に至ってもなお盾状地(じゅんじょうち)として残っていた。この台地が最初に人間の歴史に記されたのは1612年にオランダの五人の登山家たちによるものだった。その台地の四面がほぼ垂直に切り立っているために当時は山頂部の状況は観測できなかったが、1860年代に地上より測量されおよそ標高3500m、四辺がそれぞれほぼ7kmである事が確認された。1930年代の偵察機及び空中写真術の発達により粗方の地図の作製を開始したものの、作業はその上底部が一年の9割近くを濃霧が立ち込めている事に依って難航し期間を要した。但し一部に800m位の滑走路として使用出来そうな平坦な場所が見つかった。当初それは光を強く反射する事から不安定な氷原とも考えられたが観測の末に着陸可能な場所として判断される。その後世界情勢の不安などの諸事情により1950年代初頭まで研究は中止されていた。1955年フランス及び英国によって結成された第一次調査隊によって辛くも着陸に成功したものの表面の薄雪により機体が安定せず、当日中に下山を余儀なくされた。その際その高地の滑走路を「奇妙な場所」としてパイロットたちはXedia(キセディア)と呼ぶようになった。1957年の第二次調査隊はそれまでの情報を精査していた為、登頂着陸に成功し38時間に及ぶ調査を終えて無事に帰還した。永い間その聳え立つ架空台地は外界との遮断によって、独自特別な生態系を持っていることが報告された。1960年代、各国の調査隊は発達した航空機、高山装備によって続々と新たな種の動植物及び鉱物を発見し、それらは一部の機関の耳目を集めたが資源確保、生態系保全の観点より1965年3月4日より公開を前提として、国連主導のもとWWF(世界自然保護基金)なども参加して本格的な調査研究が始められる。それにより1967年5月までに動植物等およそ6300、鉱物70余の新種が報告された。

しかし世界を最も驚愕させたのは人類、もしくはその亜種によって製作されたと思われる土器様の発掘物の発見であった。その発掘場所は暫時滑走路として使用していたキセディア地区であった。

発見のきっかけは着陸後の機体を整備点検していたパイロットが、航空機のタイヤの轍の下に氷のような透明な部分を見つけ、その下に何かが埋まっている事を知らせた事から始まった。

キセディアは直ちに規制され、急遽IARF(国際考古学研究機関)よりスウェーデン隊、日本隊が派遣された。これら出土品には特徴があり第一には、大きさが約10mmくらいから60mmくらいに収まり、分布状況が1.25mの正方面に意図的に配置されていること。そして第二には放射性核種、蓄積線量を検出できず、さらに熱残留磁気、地心双極子にも応答せず、これらの製作年代はまったく測定できないということだ。また、これらの発掘状況の全体像が把握しづらかったことは、この脆弱な人工的製作物は約20cm石英状硬透質の珪酸層に堅く包まれている状態にあったため、目視できても対象物を破損せずに回収することが技術的に障壁となり、一般には全ての状況は開示はしないまま次第に研究者の極度の体調不良、遅疑逡巡、意欲減退、各國の成果より資金不足及び世界情勢が再び混乱した事といった理由から1972年までに各国によって報道管制なども敷かれ、半ば強制的に再び「前世紀の闇中」にまで押し込められ忘れ去られていったのである。

(以上は大略で他は専門的な分野での仔細な報告となっているが判りづらい故に省略。)

共に付されている当時の報道の断片などを見ると、今にして思えば、この終焉には謎や疑問が多く残った。そもそも世界的な規模によって始められた研究計画がこの様に人心から消え去るものであろうか。そして特殊な考古学的発見に要因すると見られる一連の出来事が、他の貴重な諸々の研究までも中止に追い込んだという事なのか?確かに考古学隊のみ幻覚を伴う意識障害が重症化したと言う事柄は、その標本に直接触れた者だけの事であり、標本に付着した有毒物質や未知の原虫、細菌の感染も疑われていたからなのか。すべての研究に携わった者たちの沈黙に加えて、大国の政治的関与も囁かれる中でもあったと云う事だ。

ノートの断片よりー

ーかつてここに居たものたち・・・

硝子の大地に幻影を封じて

自らは何の心残りのないかのように

跡形もなく消え失せてしまった。

かつて 人格を持つ唯一の神などを求めず

岩や山、木や森、海洋を崇敬していたのだ。

大宇宙と意識を共有し

流れの中に記憶の種子を残していった・・・

宇宙には目的がある。

人間には計り知れない目的だが

それは穏やかな川の流れのようなものだ

それらは身を浸したとき、争いも競うことも不要になって

それほど多くを持たないまでも 

正当に命をまっとうできると伝えている。

小林健二


小林健二個展[透質層と透明体]preview

小林健二個展「透質層と透明体」

2019年9月21日~10月12日(日・祝休廊) 11:00-18:30

104-0031東京都中央区京橋3-3-10第一下村ビル1F tel:0332817808/ fax:0332817848

info@gallery-tsubaki.net

Gallery TSUBAKI

小林健二作品[Tremadictonreticulatum]
2019 mixed media
夕暮れが降りてくる。黄昏の帳(とばり)が一面に広がる遠い日々の数多(あまた)の思い出がどれも皆 煌煌(キラキラ)と蘇る。(小林健二作品に書かれた文章)

詳しい情報

透明なものを取り分け好む小林健二。

彼が子供の頃、家の前から都電で行ける上野の国立科学博物館は大好きな遊び場の一つでした。

子供にとっては一本で行けるこの交通手段はありがたいもので、学校を休んでは頻繁に出かけた様です。中でも当時の鉱物標本室は面白かったとの事で、水晶や方解石など、特に透明感のあるものに惹かれています。

彼の作品群に共通するイメージを見つける事ができ、それは電気仕掛けの作品や科学的テーマを主題とするものもありますが、彼から生まれる作品においては、透明を感じる透質層が施されている特徴がある様に思います。あくまでも素材が「透明なもの」という意味ではなく、印象としての透明感です。

描かれているものは怪物であったり、腔腸類を思わせる形態や、山や岩という天然だったり・・・

様々であるにも関わらず、不思議とその向こう側に存在する透明な世界を思わせるのです。

心象風景とでもいうのでしょうか、そんなところも彼の作品の魅力です。

展覧会ごとにテーマを立てる小林健二ですが、今回は「透質層と透明体」という、彼が好んで触れてきた世界観が単刀直入に表現されています。

そしてギャラリー椿に隣接するスペースGT2では「XEDIA(キセディア)」という神秘的な場所がテーマになっていて、標本箱仕様の作品が多数展示される予定です。


小林健二個展「XEDIA」*同時開催9/21-10/12(日・祝休廊)11:00-18:30

104-0031東京都中央区京橋3-3-10第一下村ビル1F GT2


XEDIA(キセディア)と呼ばれる奇妙な場所からの発掘品

XEDIA(キセディア)と呼ばれる奇妙な場所からの発掘品
XEDIA(キセディア)と呼ばれる奇妙な場所からの発掘品

*以下小冊子「XEDIA」より抜粋

ーXEDIA

ケノーランドは絶対年代として、新太古代に存在していた超大陸である。

 その後大陸の移動の分裂接合によって形成と破壊を繰り返しながらも、一部は近現代に至ってもなお盾状地(じゅんじょうち)として残っていた。この台地が最初に人間の歴史に記されたのは1612年にオランダの五人の登山家たちによるものだった。その台地の四面がほぼ垂直に切り立っているために当時は山頂部の状況は観測できなかったが、1860年代に地上より測量されおよそ標高3500m、四辺がそれぞれほぼ7kmである事が確認された。

(中略)

1955年フランス及び英国によって結成された第一次調査隊によって辛くも着陸に成功したものの表面の薄雪により機体が安定せず、当日中に下山を余儀なくされた。その際その高地の滑走路を「奇妙な場所」としてパイロットたちはXedia(キセディア)と呼ぶようになった。

(中略)

これら出土品には特徴があり第一には、大きさが約10mmくらいから60mmくらいに収まり、分布状況が1.25mの正方面に意図的に配置されていること。そして第二には放射性核種、蓄積線量を検出できず、さらに熱残留磁気、地心双極子にも応答せず、これらの製作年代はまったく測定できないということだ。また、これらの発掘状況の全体像が把握しづらかったことは、この脆弱な人工的製作物は約20cm石英状硬透質の珪酸層に堅く包まれている状態にあったため、目視できても対象物を破損せずに回収することが技術的に障壁となり、一般には全ての状況は開示はしないまま次第に研究者の極度の体調不良、遅疑逡巡、意欲減退、一部には重厚の精神障害を発症とも?関係国の成果よりも資金不足及び世界情勢が再び混乱した事といった理由から1972年までに各国によって報道管制なども敷かれ、半ば強制的に再び「前世紀の闇中」にまで押し込められ忘れ去られていったのである。

(後略)

*標本箱仕立ての作品にはそれぞれの作品表紙がついた小冊子がついています。(展示即売)

精霊の家

STELLA IN THE ROOM

夜はぼくたちにいつも語りかけている

気圏の層に窓が開いて

遥かな宇宙の記憶の断片が 静かな雪のように降ってくるんだ

それは見ようとしたり 聴こうとしたりしなければ

なかなか感じることのない 小さな小さな声なんだ

でも

何かを探して夜空を見上げると

ひとりぼっちには

惜しみなくいくらでも 夢を降らしてくれるんだ

いろいろな色の様々な姿をしたキャンディーのような 素敵な味覚のお噺で

その心がいつの間にか温かく すっかり安心できるまで・・・

一度も会ったこともなかった 顔も知らない同士でも

知らない星の思い出が いっしょに懐かしくなったりするのは

きっとそんなわけなんだ

・・・・・・

ぼくは静かに外に出て、見上げる銀河に思ってみる。

かつてある巨きな人が深い眠りに入って星になった時、

それは一体どんな日だろうと・・・

そして今、その星のみる夢は、この上なく素敵なものであってほしいと。

その青く光る星の住人の一人として、故郷地球を思って見た。

小林健二

*文:[星のいる室内STELLA IN THE ROOM]より

[妖精の家]小林健二作品
通電すると室内から階段を昇ったり降りたりする音や、口笛やハミングが小さく聞こえ、またあたりが暗くなると点灯したり消灯したりする。

[妖精の家]部分
小林健二

 

 

サイラヂヲを製作するにあたって

ーサイラヂヲを製作するにあたってー

ある日の小林健二のアトリエ(1993年頃)

ある日の小林健二のアトリエ(1993年頃)*まるで町工場の様な雰囲気

ある日の小林健二のアトリエ(1993年頃)*窓際におかれた絵画材料など

 

 

ある日の健二のアトリエ(1993年頃)*棚の樹脂や顔料、溶剤など

 

小林健二へのインタビュー

ムーンライトプロジェクト(以下M):小林さんは今回の展覧会で各ギャラリー共通の展示作品を製作されていますが、このようなことは今までありませんでしたよね。

小林健二(以下K):ええ、ありませんでした。その理由としてぼくがマルチプルな作品をあまり作らなかったということと、このラヂヲのようなものは作る難易度が高いということがあります。

M:でも、サイラヂヲ等をこれまでに製作してこられていますね。

小林健二作品「サイラヂヲ」
1985-6年にかけて製作された作品。頭部の透明部分がラジオ放送を受信すると、その音声に同調して明滅し、七色に色彩を変化させるもの。

K:同じものを複数作るというと一見楽なように思われるかも知れませんが、ぼくの性格をさておいても、外注などできるものならともかく、要素が多すぎてそれは不可能。だからと言って全部自分で作るとなると、その作業量というのは、二つ作れば二倍になり三つ作れば三倍になる、ということは往々にしてあリます。そして今回のように中の回路まで旧式なものを作ろうとすると、それなりの苦労があるわけです。

M:それはどのようなことでしょうか?

K:まずパーツが手に入らないものがある。例えば普通に回路を組み立てる上においても、ラヂヲのチューニングに使うところのパーツである「バリコン」一つとってもみてもそうだし、あるいはコイルひとつにしても入手できないものがある。まして、実際には売っていない部分、例えばラッパの部分とかツマミであるとかは、作らなければならなかった。このラヂヲに関しては、ただでさえ大きいものにはしたくなかったし、それでもなおかつ机の上に乗る大きさのラヂヲの中に、現実感のない空虚な空間を作ろうと思えば、部分的には非常に難易度が高くなってしまう。それなら小さくて効率のいい部品を使えばいいが、そうすると音がクリアに聞こえすぎて、旧いラヂヲの感じが出ないといった理由から、どうしても旧式の回路を使いたい。

ということでますます困難な作業となる。しかもそれらのパーツは入手が困難になっていて、特殊な短波器も同調コイルも、ものによれば作らざるおえなかった。

この様な部品は現在生産は中止されている。エレクトロニクスの世界の躍進は目覚ましいが、その影では過去の中に流されて姿を消し、廃棄されてゆくものたちも多い。もしその様なものを使用してラヂヲを製作しようとすると、マニアックなパーツの入手ルートも必要になってくる。
*小林健二作品の素材

もちろんこの様な部品は正規には現存しない。イメージに中心をおくために、必要とすれば全てパーツにいたるまで自作しなければならない。内に秘めたイメージを物質化する中で、いろいろな葛藤も起こることは想像に値する。
*小林健二作品の素材

この様な部品を作ることは、単にマニアックな思いつきや技術的な精度だけではおそらく具現化することは難しいだろう。何より、夢の様に思えるほどの果てに浮かぶイメージの世界を、こちら側の国に引き寄せたいとの強い想いが必要になるだろう。
*小林健二作品の素材

M:つまりラヂヲの外見のみではなく、中のメカニズムな部分まで全て小林さんが手作りをされているということですね。今までアンティークのパーツなどを利用されているのかと思ってました。

K:このようなものを仮に一点だけ作るのだったらそれも可能かも知れませんが、複数で作るとなるとまず不可能でしょう。今回は思ったより古い回路などが市場から姿を消してしまっていることにぼく自身驚きました。その結果、手作業の部分が膨大に増えてしまったわけ。

小林健二作品「サイラヂヲ「透質結晶受信機」部分

小林健二作品「サイラヂヲ:透質結晶受信機」
透明結晶が青く光りながら回転し、同時にラジオも受信する。

小林健二作品「サイラヂヲ:遠方放送受信機」
スピーカーからラジオ放送が聞こえ、不思議なオブジェが青く光りながら回転する

小林健二作品「サイラヂヲ」
ラジオの受信状態によって頭部の透明部が色を変化させながら明滅する。

ーインタビューを終えてー

絵画のように、イメージを比較的ダイレクトに形にするものと比べれば、この「サイラヂヲ」のような精度の高い、しかも不自然に見えないものを作ろうとすれば、その難易度たるや尋常のものではないだろう。電気的な知識や技術を製作者が持ち合わせていなければ、形にできない。つまりイメージを物質化することができないのは当然なことであり、それを持ち合わせた小林の存在は驚きに値する。

しかし、このような困難を乗り越えても作者が物質化したいと思い、また、作り出そうとした作品世界を垣間見るのも一興ではないだろうか。

はるかなイメージの世界より、作者がこの「サイラヂヲ」に続く一連の作品をその希有な能力で現実世界のものとして三次元かしてくれたとき、そこには、実際にサイキッシュな空間が出現しいるのかも知れない。この形骸化されたものを媒体として、作品に相対した瞬間、観るものたちの心に、同じ世界が現実のものとして拡がることもあるだろう。アート作品とは、形象の向こうにつながる世界を観ようとそこに近づき、何かを知ろうとする人たちの心の窓を開き、人々の心に眠る感性の可能性を喚起させるものではないだろうか。

文+インタビュー:ムーンライト・プロジェクト

(図録[Catena Aureus]より、編集抜粋しており、画像は図録掲載以外のものも使用しております)

小林健二展覧会図録1993年[Catena Aureus]のページ

小林健二展覧会図録「美術と博物展」福井県立美術館発行
*その後サイラジオのシリーズはこの展覧会でも展示されています。

KENJI KOBAYASHI

 

小林健二個展[ー朝の硝子ーMorgonglaz]review

小林健二個展[ー朝の硝子ーMorgonglaz] 2018年3月28日(水)~4月16日(月) YAMAGUCHI Gallery

春の要素が風に運ばれ、良い香りがしはじめる。すると ついさっきまで置いてあった壜や皿やコップなどの虚ろな隙間に朝のひかりが充蓄されて硝子のような姿を顕してゆく。

小林健二

小林健二作品[ー朝の硝子ーMorgonglaz]
2018 mixed media

小林健二作品[ー朝の硝子ーMorgonglaz]2018
*部分

案内状の作品は、中央に独特な半透明の形と爽やかで淡い色彩が散りばめられていて、明るく清々しい印象です。案内状に使用された画像では、斜光によって真ん中のフォルムが浮き上がって見えています。

小林健二作品[ー朝の硝子ーMorgonglaz]2018
mixed media

自作キャンバスに描かれた壜や不思議なものたち。この透明な層と淡い色彩による作品は、健二が20代頃に描いていた油絵を思い起こさせます。

4月7日(土)午後5時より「小林健二を囲んで(予約不要・無料)」というDMの案内。取り巻くように椅子が用意され、ミニトークになっていきました。

小林健二ミニトークの様子(2018,4/7)

小林健二ミニトークの様子(2018,4/7)

約3時間に及ぶミニトークの内容から、いくつか抜粋要約してまとめてみています。

*小林はK、参加者の質問はQとします。

まずはギャラリーオーナーである山口さんからの質問から始まりました。

Q:展覧会タイトル[ー朝の硝子ーMorgonglaz]について、作品の中にガラスのような透明な層がありますが、関係性はあるのですか?

K:作品に使用した技法の中にステレオクロームがあります。それは水ガラス(ケイ酸アルカリの濃い水溶液で、濃度の種類が何タイプかある)によって透明な層を形成します。透質なものが好きで、以前から作品に使用したこともありました。

今回の個展に向けて最初に手がけた新作が、このページに載っている壜などを描いた作品。今思うと「画家」を生業とする前の頃を思い出すような気持ちから始めたもので、それによって今回の一連の作品が生まれていった感じです。

北欧の言語には接続詞に当たるものがなく、[朝の硝子]を欧文表記した場合は普通「の」にあたる言語が必要になるけど、一言の[Morgonglaz]にしてみたもので、造語です。

余談だけど、硝子って液体なんですね。含有物によって若干緑がかったものが一般的で硬質なイメージ、それが液体だなんて不思議です。

Q:土星作品も展示されていました。まさに宙に浮いているように青く光りながら回っているのですが、まるで目の前に浮いていて触れられそうな感触に驚きました。小林さんが「土星」にこだわる理由は何かあるのですか?

K:中学生の頃、友人の家に遊びに行った時に初めて望遠鏡で土星を見る機会がありました。その時の感動は言葉にできない。「本当に輪がある!」って、意味もわからず涙が出てきたのを覚えていて、きっとその経験が忘れられずに今に至っているんだろうと思います。

それと輪があった方が、回っている時にダイナミックだよね(笑)。

 

今回はお客様と作家との距離が近く、歓談しながら充実した時間が過ぎていきました。まだまだたくさんの話が飛び交いましたが、編集能力の限界から、ここで一旦終了します。

文:ipsylon.jp

 

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小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]review

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]2017,9/9-30 ギャラリー椿(東京京橋)
案内状の作品とその作品に添えられた文

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]会場風景

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]会場風景

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]会場風景

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]会場風景

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]会場風景

小林健二(ギャラリー椿にて)

小林健二個展[IYNKUIDU TFTWONS]会期中にトークショーが行われた。

9月16日(土)17:00より

テーマは「こころの中の風景」

前回でも少し紹介したが、今回はもう少し詳しく書き起こしてみました。ギャラリー椿のオーナーである椿原さん司会のもと進められたトークショー。以下敬称は略します。

ギャラリー椿はメインルームとGT2の2会場で構成されている。GT2ではギャラリー椿での小林健二最初の個展の案内状に使用した作品を展示。右側にその時の案内状も飾られていた。

椿原:健二くんの最初の個展は彼が26才の時で、その時は自漉紙の作品。今回GT2にその時の作品を1点展示しています。前回の展覧会からも9年ぶり。今回の個展タイトル[IYNKUIDU TFTWONS」とは?

そして今回展示されている作品は不思議な形をしているものが多い。

小林:ぼくの作品を見て「これなんですか?」とか「何を見て描いたんですか?」と聞かれることがある。具体的なものを見て絵を描くってこともあった。

18才の時に家を出て自活を始めるんだけど、会社に勤める能力もなかったし、ぼくはこういう風に生きていくことしかできなかった。

子供の頃から絵を描くことは好きだった。さらに不眠症だった。それは今でもそう。人が寝入っている夜に自分は眠れずに悶々としていることもある。夜に寝れてないから次の日は疲れていて、ベットに横になると知らずウトッとしたりする。その半ば夢と半ば現実の間の時に、現れる風景がある。それはえてして同じ街だったりするけど、いつもは右に行くところを今度は左に曲がってみようとか思っていると、初めての風景に出会ったりする。ベットの横にはノートがあって、そんな風景をなんとか思い出しながらエスキース帳に書き留めている。

それを絵に描いてるからこんな風な絵になる。だからぼくには説明はできないものばかり。実は自分がその夢の風景にもう一度出会いたいと思っているから作品にするのかも知れないね。

小林健二作品「still」2011

今回展示した「still」はメソポタミアのジグラッドから風景を思い起こしている。この作品を描くきっかけになったのが、東日本大震災。ぼくのいた東京小石川もすごく揺れて、思わず外に飛び出したら、向かいの高層マンションが捻るようにギュッギュッと揺れていた。そしてあの津波の映像。ぼくはどうしていいかわからず、何か自分に出来ることはないか、と非力を感じる日々を送っていて・・・そしてどうしょうもない気持ちになってあの作品を描いた。

今回の案内状の作品は似たような風景だけど、あの風景は夢で出会ったもの。不思議な荒野で遺跡のようなところに夢の中で辿り着く。そこで目にしたものが一連の今回の作品群になっています。

その荒野に僧侶のような人々が後ろ向きに座っていて、知らない言語で何か呪文のようものを唱えている。それが「イィヰンクイドゥ トゥフトゥウヲンズ」ぼくなりにスペルにすると「IYNKUIDU TFTWONS」。でもその時はこんな文字で示されている。

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より
右下に不思議な文字のようなものが見える。

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より

椿原:今回の個展テーマについては分かったけど、これまでの展覧会タイトルも造語だったりするの?例えば作品集のタイトルも「AION」だったり「ILEM」だったり・・・

小林:全てが造語って訳じゃないです。例えば「AION」はグノーシスの言葉で「私たちはどこから来てどこへ行くのか?」という文章が知られているよね。

「この世ってなんだろう?」ってことを考えていたいし、それがぼくのライフワークなんです。二度と悲惨な戦争なんて起きないようにと願っていながらも、世界のどこかで戦争は絶えない。クロマニオン人から現代人にいたり、 ラスコーやアルタミアの壁画があって、日本なら縄文時代があり弥生、飛鳥・・・歴史ってなんだろう?ってこととかも。

 

椿原:作品の中にはローマ字表記で読もうとすると読めるものもあります。今回の案内状の裏面に書かれた文を読んで「健二くんは詩人だなぁ」と思った。作品中の文章にも共通するけど、作品全体に詩心を感じて、見ていると安らいだ気持ちになる。

健二くんの作品にはあたたかくて柔らかくて、染み入るようなものを感じる。それが魅力のように思う。自分も海外に行って海外の作家の作品を見る機会が増えて思うのは、作品に社会性やメッセージがあること。健二くんが15歳の時に描いた作品(「AION」の冒頭に掲載されているもの)は醤油で色付けされた画用紙に怪物のようなものが描かれた絵。そこに添えられた文章に、その海外の作家と共通するメッセージ性を感じる。

そして健二くんの作品にはいろんな素材や技法が使われている。

「彼は一番強い生物。何故ならものを悩んだり、企んだりする脳を持っていないから。彼は一番強い生物。何故なら光の力をそのまま自分の血や肉に変えているから。彼は一番弱い生物。思いっきり愛することのできる重いハートを、4本の足で支えなければならないから。」
小林健二(15歳の時に描いた絵)

小林:例えばヒエログリフは読めないから意味がない訳じゃないと信じたいし、詩っていうものが形になって絵のようになったり立体的な作品になったり、音楽になったり・・・

ぼくの場合、自分のパレットの上に色のある絵の具ではなくて、いろんな物質が乗っているって感じ。イメージしているものにできるだけ近づけたいという思いから、その都度素材や技法を選んで行って、音楽も同じで、作ったものを今回も会場に流している。

小林健二作品「IYNKUIDU TFTWONS]より

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]の部分。光をあてると淡いピンクに。

椿原:これはなんだろう?禅問答じゃないけど、それを問いかけながら健二くんの作品と対峙する、そんな場が展覧会なんだね。

いつもは健二くんは体があまり丈夫じゃないから、作品搬入が終わるとぶったおれていて、入院したりすることもある。いつも「これが最後かもしれない」っていう気持ちで製作しているんだよね。でも今回は意外に元気なんで安心した(笑)。

小林:一応1週間後にトークがあることが決まっていたから、気をつけていた(笑)。それに一年前に個展が決まっていたから、一年かけて取り組んだのもある。でも作品製作が作業にならないように、ぼくの中ではテーマ作りに苦しい時期もあった。

 

*この後、作品をゆっくりと観れる時間が設けられました。展覧会の動画は下記をご覧ください。

KENJI KOBAYASHI

2017,9/16小林健二トーク(review)

2017,9/16の小林健二トークの受付開始頃。個展[IYNKUIDU TFTWONS]の会期中に行われた(9/9-9/30ギャラリー椿にて)

9/16(土)17:00よりスタート。始まる前の様子です。

9/16、小林健二トークの始まる前。多くの方で広いギャラリーが埋め尽くされ、遠方からも多数来場されました。

 

今回の案内状作品の前の小林健二、ギャラリー椿のオーナー椿原さん司会のもと進行されます。

小林健二イブニングトーク:2017,9/16(土)17:00より(京橋のギャラリー椿にて)

テーマ:こころの中の風景

小林健二の作品に郷愁を覚えるという感想を度々聞くことがあります。

例えば夢の中で散策している景色、そこはこれまで行ったことのない風景だったりしたことはありませんか?

不思議です。

多分それぞれの人の心の中には、きっとそんな場所があるかもしれません。時にそこは落ちつける処だったり、ワクワクと冒険するような箇所であったり・・・

今回は明らかに「風景」と言えるような作品が数点ありました。

小林健二個展の案内状の作品。積乱雲の立ち上る青空を背景に、岩の上に白い四角い物体。不思議な風景です。

[still]
この作品は2011年、東北の大震災の時に描かれました。作品に添えられ文章は、祈りにも似た願いのようなものが感じられます。

[still]

今回メイン会場に展示された作品はほとんどが新作で構成されていますが、この[still]はあまり公表されたことがない理由もあり、メインルームに展示されています。作品に添えられた文章は上のリンクでご覧頂けます。

今回のタイトル[IYNKUIDU TFTWONS]はどんな意味ですか?という質問に答える小林健二

個展ごとにテーマを付けることが多い小林健二。

やはり最初の質問は展覧会タイトル[IYNKUIDU TFTWONS(イィヰンクイドゥ トゥフトゥウヲンズ)]はどんな意味?

*敬称は略します

椿原:今回の展覧会のタイトル[IYNKUIDU TFTWONS]はどんな意味ですか?発音がわからなくて案内状の裏面を見て読み方を知りました。

小林:浅い眠りの中、僧侶のように見える何人かが(夢では背中を向けているからどんな人かはわからないけど)お経のような呪文のようなものを唱えている。それは「イィヰンクイドゥ トゥフトゥウヲンズ」スペルにしてみると[IYNKUIDU TFTWONS]。でも夢の中では下の作品の右下にある文字のようなものがその意味らしい。

夢って覚めてみると説明が難しかったりする。ぼくの作品も言葉に置き換えられない部分が絵となっている。だから今回の展覧会タイトルの発端は、そんな夢から覚めた時に夢うつつ状態で書き留めているノートの束から見つけたものです。

もちろん作品のためのエスキースはある。でも製作している状態って媒体として自分の体があるに過ぎなくて・・・だから言葉にしようとすると、どれもピタっとしてこないけど、本人だから近いところで説明はできるかな・・・でもはっきり言って難しいよね(笑)

 

リンゴを落とすと落ちる・・なぜ?

重力があるから・・それは何?

謎だらけ・・やっぱり説明するのが難しいことって確実にあるよね。

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より
不思議な文字が作品中に書かれている。これまでローマ字表記だったりして、ゆっくりと読めば解読できていた作品もあるが、これらの新作の文字らしきものは、現存する言語でもないようだ。

椿原:作品に詩のような文章が書かれていたりするものもあるけど、総じて健二くんの作品には「詩」を感じる。展覧会の会場でも流しているけど、健二くんの作った音楽を聞きながら作品を見ていると安らいだ気持ちになる。作品に「詩」を感じるってことはとても大切なことだとぼくは考えている。

小林:色々な素材、時には文章が作品に書かれている。ぼくにとって全て絵の具のようなもの。音楽も含めイメージを具現化する中で、色を選ぶようにそれぞれの表現方法で形が形成されていく、っていうと自然かな。


小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より
MAGIMOTERASS
彗星の光の尾の成分から生まれた
植物でさえ
浅い眠りの中で生成されてゆく
結晶を知っている
泪もろい渡り鳥の羽に
しずくのようにふりかかる
水蒸気のように
(作品中に書かれている文)

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より
樹木のように耳を澄ませる
九月の隕石が遠ざかる
(作品に文字が書かれている部分。不思議な記号も描かれている)

小林健二作品[IYNKUIDU TFTWONS]より
双極性の欲望と理解
遠方まで届く虹の春の夕暮れ
秋の日
(作品に文字が書かれてい部分)

*一時間に及ぶトーク、今回ご紹介できたのは一部なので、いずれ動画などでアップしていきたいと思います。展覧会の会期は9/30までありますので、機会がありましたらご来場ください。

詳細

トークの後ギャラリーを閉める時間を延長して、観客が作品を見れる時間が設けられました。

KENJI KOBAYASHI

 

 

 

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