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スパイダーコイルの製作について

スパイダーコイルの製作

スパイダーコイルは、筒型のソレノイドコイルとくらべると、いかにも鉱石ラジオ的な雰囲気をもっています。ソレノイド型と比較して、かならずしもすべてのスパイダーコイルがクオリティの面で優れているというわけではありませんが、巻き数が増えるたびに直径も増えてゆく構造なのでインダクタンスの増加率が高く、小型に作ることができます。

現在ではこのスパイダーコイルの巻き枠だけを買い求めることは難しいので、やはり自作をしなければなりませんが、それほど困難なことではありません。しかも、昔よりももっと上等のスパイダーの巻き枠を作ることもできます。

というのは、型抜きによって作られていた昔の巻き枠は薄いものが多く、そのため線と線との距離がとれず、コイルが密着して巻かれてしまうので、発生するコンデンサー成分も多く、かえってコイルのQ(クオリティ)を下げてしまうこともあるからです。これは巻き枠の厚みを増やすことで改良できます。それに、自分で作るから大きさや形、羽の数(奇数であれば可)などを変えて、いろいろと実験ができます。昔のスパイダーの巻き枠は、内径が32~ 35 mmくらいが普通でしたが、もっと大きめの内径から始めれば、全体の巻き数を減らしても最初のタップからインダクタンスを稼げるようになります。

かつて売られていたコイルの巻き枠

かつて売られていたコイルの巻き枠

全体的に透明感のある素材で仕上げた自作ラジオ(検波器はフォックストン型のゲルマニュームダイオード使用)

全体的に透明感のある素材で仕上げた自作ラジオ(検波器はフォックストン型のゲルマニュームダイオード使用)

丸で囲ってある部分が今回作るスパイダーコイルの枠です。

丸で囲ってある部分が今回作るスパイダーコイルの枠です。

スパイダーコイルの巻き枠を作る

スパイダーコイルの羽の数と全体の大きさを決めて製図をします。たとえば内径が35 mm、外径が85 mmで羽の数が15枚の場合、それぞれの円を同心円に作図し、外周の円周を15等分します。

円周を15等分するのは、普通のコンパスでは少々大変なので比例コンパスを使います。

この比例コンパスのラインズの15のところに目盛りを合わせ、X型に開いて、大きく開くほうをその円の半径に合わせると、小さく開くほうがその15等分した円周のひとつの単位を示します。しかしながら特殊なコンパスは持っていないと思いますので、その時は上の画像(かつて売られていたスパイダーコイル枠をプリントしたり、工夫してみてください。)

この比例コンパスのラインズの15のところに目盛りを合わせ、X型に開いて、大きく開くほうをその円の半径に合わせると、小さく開くほうがその15等分した円周のひとつの単位を示します。しかしながらかなり特殊なコンパスのため、お持ちでない場合は上の画像(かつて売られていたスパイダーコイル枠や付録として掲載した下の図をプリントしたりと工夫してみてください。)

スパイダーコイルの巻枠の図(付録)

スパイダーコイルの巻枠の図(付録)

円周のプロットができたら、それをそれぞれの中心点と結んでおきます。

製図ができたら、それを直接貼ったり、カーボン紙をはさんでなぞったり、針で印をつけたりして厚紙に写します。

内側の円との交点を2~ 6mmくらいのポンチで抜いていきます(厚い場合は大きめの穴にする)。何枚か厚紙を貼り合わせた台紙の場合は、表と裏から少しずつポンチを打てばされいにできます。

内側の円との交点を2~ 6mmくらいのポンチで抜いていきます(厚い場合は大きめの穴にする)。何枚か厚紙を貼り合わせた台紙の場合は、表と裏から少しずつポンチを打てばきれいにできます。

外周部をサークルカッターもしくは普通のカッターなどでまるく切り取ります。 中心点から今あけた穴の両端を通り、外側の円へと向かう直線にそってカッターナイフなどで切り取ります。

外周部をサークルカッターもしくは普通のカッターなどでまるく切り取ります。
中心点から今あけた穴の両端を通り、外側の円へと向かう直線にそってカッターナイフなどで切り取ります。

またコイルを巻くときのことを考え、あまり手触りがトグトグしているようなら、巻き枠の角や切り口をサンドペーパーなどでなめらかにするとよいでしょう。

必ずしも必要というわけではありませんが、補強と絶縁性を高めるために全体をラッカーあるいはシェラックニスなどに浸し、よく乾燥させればさらに上等のものとなります。

必ずしも必要というわけではありませんが、補強と絶縁性を高めるために全体をラッカーあるいはシェラックニスなどに浸し、よく乾燥させればさらに上等のものとなります。

スパイダーコイルの巻き方

スパイダーコイルを巻いてゆきます。

今回は二重絹巻き線太さ0.4mmのもの使用

今回は二重絹巻き線太さ0.4mmのもの使用。まき枠もF.R.P.(強化プラスチック)をカットして作っています。

作例では見やすいように透明なF.R.P.(強化プラスチック)の1mm厚で作った巻き枠を使っています。F.RP.やベークライト板などの固いもので巻き枠を作る場合は、穴はドリルであけ、金ノコで切ります。スパイダーの巻き枠にコイルを巻く方向はどちらでもかまいません。ただ、 15本ある羽を2枚おきにとばしながら交互に線を交差するようにして巻いてゆきます。そして15周巻くごとに、タップを10 cmくらいねじって出してそれを4回繰り返します。4本目のタップが出たあとは巻き枠いっぱいまで線を巻きます。

この際、巻く回数はあまり厳密なものではありませんが、途中で何回巻いたのかわからなくなった場合は、どこか羽のところで見えている線の数に4を掛けると全体の巻き数がわかります。

これは巻き上がったスパイダーコイルです。

これは巻き上がったスパイダーコイルです。

上部のほうにタップが出ています。このように1つの羽のところにタップがそろっていると、工作上とでも都合がいいのですが、実はなかなかそうはなってくれません。

ですからこの場合はそれぞれのタップが出ている巻き数は15回日、30回日、46回日、62回日、101回日となっています。

このように大ざっぱでいいのだろうかと疑間が出てきそうですが、 1、2回巻き数が前後することはさほど問題ではないので、あまり巻き数を気にしないで結構です。4回日のタップの後、巻き終わりまでの巻き数も、 75回でも80回でもいいのです。

スパイダーコイルの巻き方

スパイダーコイルの巻き方。羽を二つ飛びに巻いていきます。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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接合型鉱石検波器の製作について

接合型鉱石検波器について

接合型鉱石検波器はぼくが実験した中でもっとも感度のよいものを作ることができました。ただ、工作上は少々難点が多く、たとえば鉱石と鉱石とを接触させ、お互いを破損させることなく安定して状態を維持しつづけるとなると構造のしっかりとしたものを要求されるからです。感度がよいのにもかかわらず、鉱石検波器が単体で市販されていた時代ですら一般的にはあまり普及しなかったのは、このような理由からだと思われます。

昔の鉱石ラジオの接合型検波部分

昔の鉱石ラジオの接合型検波部分

市販されていた接合型鉱石検波器

市販されていた接合型鉱石検波器

接合型鉱石検波器の製作

自作接合型鉱石検波器のホルダーは金属の鋳造で作ってみました。

自作接合型鉱石検波器のホルダーは金属の鋳造で作ってみました。

通常、金属の鋳造は高温を必要とするので一般的ではないのですが、ここでは融点が摂氏75度という低融点の金属を使いました。これは工作材料を売っている店などで大手できます。お湯の中で溶けるわけですから扱いも安全で楽ですが、ただちょっと高価です。

通常、金属の鋳造は高温を必要とするので一般的ではないのですが、ここでは融点が摂氏75度という低融点の金属を使いました。これは工作材料を売っている店などで大手できます。お湯の中で溶けるわけですから扱いも安全で楽ですが、ただちょっと高価です。型はシリコンで作ったほうが精密なものを作れますが、たくさん作るわけではないので、木の板を彫り粗い型として鋳込んだあとにドリルやヤスリで仕上げました。固まると思いのほか硬くて丈夫でした。

ホルダーに固定する鉱石には斑銅鉱を使用して、あらかじめ[さぐり式鉱石検波器の製作について]の木の板の型で作った方法で鉱石をハンダに埋め込んだものを作ります。それを真鍮の丸板にネジ(4mmX15mm)をつけた上にのせ、細いバーナーで軽くあぶってくっつけました。似たようにして、さぐり式では針金の部分に当たるところは紅亜鉛鉱で作ります。

真鍮の丸板にネジ(4mmX15mm)をつけた上に斑銅鉱をハンダの台にセットしたものを乗せている状態

真鍮の丸板にネジ(4mmX15mm)をつけた上に斑銅鉱をハンダの台にセットしたものを乗せている状態

似たようにして、さぐり式では針金の部分に当たるところは紅亜鉛鉱で作ります。細いバーナーで軽くあぶってくっつけている状態。

似たようにして、さぐり式では針金の部分に当たるところは紅亜鉛鉱で作ります。細いバーナーで軽くあぶってくっつけている状態。

接合型鉱石検波器のパーツが揃ったところ

接合型鉱石検波器のパーツが揃ったところ

上のほうのガラス管の切り口が黒いのは、ゴムペーストが塗ってあるためです。ゴムペーストはゴム靴の底を修理するときなどにも使うもので、これを塗ることによって金属とガラスといった硬いものどうしでも安全にキチッと止まります。

使い方は、紅亜鉛鉱のついた棒を少し引いてゆっくりと鉱石どうしを当てて手をはなすと、スプリングの力でその位置に止まります。それを繰り返して感度のよいところを探すわけです。

2つの鉱石のギャップは斑銅鉱の側のネジで調整し、スプリングの強さは2つの鉱石が当たっているときに、その力で欠けたりしない程度の力に調整します。

ここで不思議な鉱石についてお話しします。

英国の1920年代のメーカー製でとても端正に造られています。検波器は接合 型で感度もよいものです。H195xW175× D175(mm)

英国の1920年代のメーカー製でとても端正に造られています。検波器は接合 型で感度もよいものです。H195xW175× D175(mm)

このように立派に見える昔の鉱石ラジオもたいていは中にコイル1つだけということが多く、かえって不思議な感じがすることがあります。

このように立派に見える昔の鉱石ラジオもたいていは中にコイル1つだけということが多く、かえって不思議な感じがすることがあります。

未知の鉱物

昔の鉱石受信機や鉱石検波器用の鉱物を見ていると、方鉛鉱と黄鉄鉱がいちばん多く、紅亜鉛鉱や人エガレナと呼ばれるものもときおり見かけます。しかしどう見ても思い当たる鉱物がないものに出会ったことが2例ほどありました。

ひとつは上の写真の鉱石ラジオの接合型検波器についている鉱物

ひとつは上の写真の鉱石ラジオの接合型検波器についている鉱石

もうひとつはさぐり式検波器用の替え鉱石の中にあったものです

もうひとつはさぐり式検波器用の替え鉱石の中にあったものです

共に人工結晶とは思いにくい天然鉱物の外観を持ちながらも半透明で、電気的にも導通があるのです。いろいろと鉱物関係の知人に相談したりしてみましたが結局分からず、最後にX線分析によって成分検索をしてもらったところ、前者はカドミウムの硫化物、後者は亜鉛の酸化物という結果が出ました。それぞれ1920年代のもので、当時の文献にはどちらも現れていない物質なので興味深く思いました(酸化亜鉛についても当時は天然の紅亜鉛鉱しか使用されていないことになっています)。 とりわけこんなに透過性のある硫化カドミウムの単結晶はおそらく天然ではなく、人工でも現代に至るまであまり報告のないところを見ると、当時から公開理論とは別に開発の現場ではいろいろな試みが行われていたと考えられます。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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さぐり式鉱石検波器の製作について

[さぐり式鉱石検波器について]

鉱石式検波器の中でもっともたくさん作られたタイプで、いろいろな形状のものが出現しました。さぐり式の鉱石検波器には大きく分けて2つのカテゴリーがあります。開放式(オープンタイプ)と呼ばれる鉱石自身が表に出ているものと、鉱石の部分がガラスケース等で覆ったりしてある封管式(クローズドタイプ)です。

開放式はたいていの場合、針を動かせる範囲が大きく、また、鉱石の交換や調整が楽で、実験にとても適している反面、ほこりや水滴などで感度が落ちたり、本体やダイヤルを動かしたりする折に何かが触れると針が動いてしまったりすることがあります。

封管式のものは安定性に優れていて製品としての受信機に向いていますが、工作が少し難しいのと調整や鉱石の交換なども面倒なところがあります。

左が開放式で右が封管式です

左が開放式で右が封管式です

自作のさぐり式検波器3点。左のものは1920年代の型で現在でもレプリカが売られていますが、自分なりにコピーして作ってみました。

自作のさぐり式鉱石検波器3点。左のものは1920年代の型で現在でもレプリカが売られていますが、自分なりにコピーして作ってみました。

写真のうち、右は1920年代のもので、左はそのレプリカとして現在でも売られているものですが、2つを比べるといろいろと時代の流れを感じます(鉱石はどちらも外してあります)。

写真のうち、右は1920年代のもので、左はそのレプリカとして現在でも売られているものですが、2つを比べるといろいろと時代の流れを感じます(鉱石はどちらも外してあります)。

[さぐり式鉱石検波器の製作(封管式)]

最終的に完成した検波器です。

最終的に完成した検波器です。検波器本体は、鉱石自身とキャットウィスカー(猫のひげ)と呼ばれる細い金属針(タングステン使用)の部分です。

まず鉱石を固定するための材料と道具を用意します。

まず鉱石を固定するための材料と道具を用意します。

道具:ガスバーナー(ガスこんろでも可)・ハンダを溶かすための空き缶やアルミ製のプリン型など(写真はセラミック製キャセロール:取っ手のついた蒸発皿)・ピンセット

材料:ハンダ(写真のキャセロールの中は棒ハンダを切ったもの。右下は棒ハンダと糸ハンダ)・写真の鉱石は紅亜鉛鉱、方鉛鉱、黄鉄鉱などが写っていますが、今回は方鉛鉱を使用。

ベニヤの板などにドリルで穴をあけたものを型とします。径10~ 16mmで、深さ6 mm前後、あるいは2段になるように作りたいときは、径16mm、深さ5 mmの穴のなかにさらに径8mm、深さ5mmの穴をあけます。

空き缶などにハンダを入れてペンチでしっかり持ち、こんろで溶かしたあと、先ほど の板の穴に少し盛り上がるくらいにハンダを流し入れます。

空き缶などにハンダを入れてペンチでしっかり持ち、こんろで溶かしたあと、先ほど の板の穴に少し盛り上がるくらいにハンダを流し入れます。

ハンダが冷えないうちにピンセットで鉱石をなるべく中心に押しつけるようにして固まるまで押さえつづけます。

ハンダが冷えないうちにピンセットで鉱石をなるべく中心に押しつけるようにして固まるまで押さえつづけます。

固まったあと、バリなどをサンドペーパーで仕上げます。このとき鉱石があまり大きいと、溶けたハンダと接触させたときにハンダが冷えて急に固まることがあります。 そうなるとハンダと鉱石はくっついてくれません。それが予期される場合は、溶けたハンダの中に鉱石をピンセットなどで持ち1、2秒ほど入れ、あらかじめあたためておきます。

もうひとつの方法は、金属でカップを作っておいてそこに溶かしたハンダを入れ、同じ要領で鉱石を固定する方法です。作例のガラス管の中の鉱石部分はこの技法で作っています。カップになる部分は15mmの真鍮棒を長さ1cmくらい切り、中心部に12mmのドリルで半分ほどの穴をあけ、そのあと2.5mmのドリルを貫通させて3mmのタップを切ります。そのあとで内側から太さ3mm× 長さ20mmのサラネジで、取り付け用のネジを出しておきました。

そのカップ状の真鍮の内側にペースト(材料店などで売られているハンダ付けをしやすくするもの)を塗ります。

そのカップ状の真鍮の内側にペースト(材料店などで売られているハンダ付けをしやすくするもの)を塗ります。

熱したあと、前で説明したのと同じように中にハンダを盛り上がるくらいに入れます。

バーナーで熱したあと、前で説明したのと同じように中に溶かしたハンダを盛り上がるくらいに入れます。

鉱石をのせ、ハンダが固まるまで軽く押さえ続けます。

鉱石をのせ、ハンダが固まるまで軽く押さえ続けます。

作例のように鉄の万力で挟んで固定する場合は、あいだに薄い木や布を挟んでおかないと鉄に熱を奪われてハンダがすぐに冷めてしまうので気をつけましょう。

次にガラスを使ったケースを作ります。

検波器の完成したパーツです。

検波器の完成したパーツです。

支えのL字金具は下方の真鍮板(幅9mm、厚さ1mm)から作り、ノブはボール盤で木を削って色を塗りました。ネジ類もボール盤で挟み、サンドペーパーでメッキをはがして作りました。

まず、ガラス管(太さ3cmの試験管を長さ約4cmにカットしたもの)を用意します。ガラス管の切り方や加工は、[ガラスの加工]を参照してください。

ボール盤を旋盤のように使って蓋になるパーツを切り出しているところ。

ボール盤を旋盤のように使って蓋になるパーツを切り出しているところ。

次にこの管のふたになる部分を作りますが、ここではボール盤を旋盤のように使って作業をします。ボール盤は最近ではD.I.Y.ショップなどで1万円前後で手に入るものもありますので、使い方をマスターしておくといろいろに使えて便利です。本来品物に穴をあけるための機械ですが、その先に取り付けるドリルやビットの種類を変えることで、金属板、本の板、プラスチックなどに穴や彫り込みを作ったり、削ったり磨いたりできます。

作例では布入リベークの5mm厚を使いましたが、木の板でもプラスチックでもいいでしょう。

30mmのホールソー(ホールソーについては以前投稿した[バリオカップラーの製作を参照]でガラス管を押さえるための円形の溝を2mmほどの深さで掘ります。次に40mmのホールソーで表と裏から穴をあけるようにして削り取ります。

30mmのホールソー(ホールソーについては以前投稿した[バリオカップラーの製作]を参照)でガラス管を押さえるための円形の溝を2mmほどの深さで掘ります。次に40mmのホールソーで表と裏から穴をあけるようにして削り取ります。

ホールソーは本来穴をあけるためのものですが、穴をあけることで出るいつもなら捨ててしまう丸い部分を使っているわけです。外径40mmのホールソーは、内径35 mm強です。この丸い板の切り口を、アーバーを使いスムーズに削ります。アーバーとは本来バフリングやワイヤーリングを止めるための金具ですが、この金具に品物をつけることで、ボール盤を旋盤のように使うことができます。もちろん、このような使用法は危険と言われると思いますので、いちばん速度を落として作業しましょう(たいていのボール盤はベルトのかけかえで速度を変えられます)。

写真では左のものが削る前で、右のものが削ったあとのものです。

写真では左のものが削る前で、右のものが削ったあとのものです。手前に写っている金属製のものがアーバーです。

まずヤスリで削ります。

まずヤスリで削ります。ヤスリは中目のものを使います。ボール盤は上から見ると時計回りに回転し、ヤスリは押す方向に対して目がついていますので、向かって右から静かにあててゆきます。この際、絶対ヤスリの先端で作業をしないように注意してください。先端の角が回転している品物に当たると、手前の方向にヤスリが弾かれたりして危険です。

だいたいの形を整えたあと、サンドペーパーで滑らかにしてゆきます。 100番→ 180番→ 240番→ 400番と順に目の細かいものに変えていき、常にサンドペーの中程で作業します。

だいたいの形を整えたあと、サンドペーパーで滑らかにしてゆきます。
100番→ 180番→ 240番→ 400番と順に目の細かいものに変えていき、常にサンドペーの中程で作業します。

写真はフェルトにポリッシュ剤をつけて磨いているところです。ただし布などで磨く場合が最も危険ですから、布は必ず丸めて耳などが出ないようにして、ボール盤に巻き込まれないように十分注意してください。

フェルトにポリッシュ剤をつけて磨いているところです。ただし布などで磨く場合が最も危険ですから、布は必ず丸めて耳などが出ないようにして、ボール盤に巻き込まれないように十分注意してください。

ふたの部分をガラス管に合わせてみたところです。

ふたの部分をガラス管に合わせてみたところです。

このあとに片方には6mmの太さの真鍮棒に径3mmのタップを立てたものを差し込み接着して、もう片方には外側から球が自在に動くように10mmのドリルでへこみをさらってあります。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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ヴァリオカップラーの製作について

形を見ると、ヴァリオメーターとヴァリオカップラーは全然異なったものに見えますが、回路的にはコイルとコイルを直列に接合するとヴァリオメーターで、並列だとヴァリオカップラーになるのです。ただ使用する部位での効率を考えて、それぞれが作例のような特異な形態になったと思ってください。

このヴァリオカップラーは、コイルとコイルの距離を近づけたり遠ざけたりすることで、それぞれのコイルの誘導作用を調節しています。

丸で囲んであるパーツがヴァリオカップラーです。

丸で囲んであるパーツがヴァリオカップラーです。

まず、ヴァリオカップラー用のコイルの巻き枠を作ります。

ボール盤にホールソー(丸く材をカットするため専用の歯)をつけて、5mm厚の布入リベークライトを丸くカット。これが巻き枠の芯になります。

ボール盤にホールソー(丸く材をカットするための専用の歯)をつけて、5mm厚の布入リベークライトを丸くカット。これが巻き枠の芯になります。

いろいろなホールソー

いろいろなホールソー

丸くカットしたベーク板(コイルの芯)に、3~ 4mmほどの切り込みを入れ、そこに羽を差し込んでいきます。巻き枠は2つあって、一つには7mm(幅)×25 mm(長さ)を15枚、 もう一つには7mm(幅)X30 mm(長さ)をやはり15枚つけます。

巻き枠の羽を取り付ける様子

巻き枠の羽を取り付ける様子

0.4mmの線をスパイダーコイルを巻くのと同じ要領で巻いていきます。ここでは線材は絹巻き線を使用。

0.4mmの線をスパイダーコイルを巻くのと同じ要領で巻いていきます。ここでは線材は絹巻き線を使用。

5mmの羽をつけたほうは70回(作例では外側の色の濃いところには実験を兼ねて20回よけいに巻いてあります)。

30mmの羽をつけたほうは、12回巻き毎に8つのタップを出し、さらに12回巻いて終了してあります(全部で108回巻いてあります)。

できあがったヴァリオカップラー用コイル2つ

できあがったヴァリオカップラー用コイル2つ

タップの出ている大きいほうは巻き始めと巻き終わりをネジで芯のところに固定してあります。小さいほうのコイルは可動部分となるため、中心のネジに沿って動くための金具を取り付けてあります。

中心のネジはピッチが大きいので自作します。通常6mmのネジはピッチが1mmですから、 1回転で進むのはlmmで5cm動かすのに50回転しなければなりません。

これではたいへんなので、2回転で7cm動かすようにしようと、6cmの真鍮棒に糸を巻いてピッチをまず見てみました。

6cmの真鍮棒に糸を巻いてピッチをまず見ているところ。

6cmの真鍮棒に糸を巻いてピッチをまず見ているところ。

3.5cm毎にしるしをつけたところにいつも頭が出るようにして、 2~ 3回巻いてテープで固定して180度反対にも同じように巻きます。これはダブルスパイラルにすることで安定して回転させることができると思ったからです。

糸に沿ってマジックなどでしるしをつけて、そこに銅あるいは真鍮の0.8~1mmくらいの単線を巻いて、端と端をクリップで止めてハンダ付けをします。このとき、実際に使うより、2~ 3割長めに作っておくとよいでしょう。

ハンダ付けでできた凹凸をモーターツールで整えているところです。

ハンダ付けでできた凹凸をモーターツールで整えているところです。

いろいろなピッチを作って実験をしたときの写真で、1cmピッチになっていて最終的に使った3.5cmピッチよりずっと細かくなっています。

製作途中のヴァリオカップラーのメカ部分

製作途中のヴァリオカップラーのメカ部分

メカニックは今まで作ったことがなかったので、少々苦労しましたが、上の写真は製作途中のヴァリオカップラーのメカ部分です。2本の鉄製の棒でフレームとして中央に3.5cmピッチの6mmのネジ、前後はエボナイト板で作った丸板にカップリング用の口金をつけ、可動板には、ネジのスパイラルの部分が通るへこみを大きめにあけた左右にヤスリで削ってあります。

ヴァリオカップラーの部分品です

ヴァリオカップラーの部分品です

右の丸いエボナイト板にはラジオの本体パネルに取り付けるための3つのスペーサーがつけてあります。可動コイルからの配線はいつも動くので安定性を得るために、 2本ある鉄の棒にコイルのそれぞれの端を曲げたタマゴラグでちょうどモーターのブラシのようにして、信号を伝えるようにしてあります。

ヴァリオカップラーはパネル面のツマミを回すと写真のようにコイルが前後します。

ヴァリオカップラーはパネル面のツマミを回すと写真のようにコイルが前後します。

ヴァリコカップラーのコイルの作動の様子

ヴァリコカップラーのコイルの作動の様子

実際にラジオのパネル面に取り付ける直前に、もう一度ばらしてタップのところから引出し線を長めにハンダ付けして、エンパイヤチューブ(写真上部)を配線時にかぶせて行います。

実際にラジオのパネル面に取り付ける直前に、もう一度ばらしてタップのところから引出し線を長めにハンダ付けして、エンパイヤチューブ(写真上部)を配線時にかぶせて行います。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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ヴァリオメーターの製作について

小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ」で作例として紹介された鉱石ラジオ [誘導結合回路鉱石受信機]

小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ」で作例として紹介された鉱石ラジオ [誘導結合回路鉱石受信機]。ヴァリオメーターが組み込まれている。

ヴァリオメーターとは、コイルの中にもう一つコイルが入っていて、その2つが直列に接続され、外のコイルの中で内のコイルが回転することで全体のインダクタンスを変化させるしくみのものです。

画像の丸で囲んであるパーツがヴァリオメーターです。

画像の丸で囲んであるパーツがヴァリオメーターです。

ヴァリオメーターの部分品です。

ヴァリオメーターの部分品です。

大きなコイルの筒は直径7cm、長さ5cmで、中心を貫くように8mmの穴があいています。ここにはカップリング用の口金になる筒状のネジ(左下の2組のもの)がはまって内径6mmの径になります。0.6mm径のエナメル線(作例は二重絹巻き線)を20回巻いてあります。まんなかのところに穴があいているわけですから、そこを避けるように左右に10回ずつ巻いであります。内側に入る小さなコイルの筒は、紙を巻いて作り、補強のためにシェラックニスを塗ってあります。

サイズは直径が5cmで長さが4cm、このサイズより少しでも大きいと中で回ることができません。0.4mmの導線を全部で26回、左右13回ずつ巻いであります。

写真下部中ほどのベークライトの棒はシャフトの絶縁用で、6mm径で3 cmの長さ、そのとなりの金属棒2本はカップリング用のシャフト、いちばん右の金具は圧着端子の8 mm径のものを途中で切って、タマゴラグとハンダ付けをして作った外側のコイルの口金にはめて、端子として使用するものです。

二重絹巻き線(銅線をシルクで絶縁してある線材)現在ではかなり希少。

二重絹巻き線(銅線をシルクで絶縁してある線材)現在ではかなり希少。

工作上、気をつかう第一の点は、筒の中心に穴をあけることですが、V字のブロック とかV字型に木を切ったものの上などに安定させて穴をあけるといいでしょう。

工作上、気をつかう第一の点は、筒の中心に穴をあけることですが、V字のブロック
とかV字型に木を切ったものの上などに安定させて穴をあけるといいでしょう。

ヴァリオメーターの作動

ヴァリオメーターの作動

ヴァリオメーターの作動

ヴァリオメーターの作動

このコイルは写真のように作動します。中を貫いている棒は、中ほどをベークライトで絶縁してあり、両端の導体の部分に内側のコイルの両端が接続されていて、それがそのまま外側のコイルの口金に接触しているのです。

第二に気をつかう点は、いかにしてコイルの回転のストッパーを作るかということですが、まずシャフトに小さなネジを、大きなコイルの外側に接するように、シャフトの前のほうと後ろのほうに垂直に取り付け、前後のガタツキを止めて、後ろのほうの口金に2本小ネジをつけ、 180度で回転するようにストッパーとします。

作例では1.4mm径のネジをそれぞれタップを立てて取り付けています。タップの下穴は1mmです。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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樹脂の加工

樹脂を型に流し込んでものを作る方法を覚えておくと、工作の幅がぐんと広がっていきます。ツマミなどのちょっとしたアクセントになる部分を作ったり、時には小さなラジオの筐体(きょうたい:ケースのこと)を作ることもできます。

型取りした色々なツマミ

型取りした色々なツマミ

ラジオの筐体(ケース)

ラジオの筐体(ケース)

注型する樹脂には幾つかの種類があります。代表的なものをいくつかあげておきます。

1 不飽和ポリエステル:俗にFRP(Fiber Reinforced Plastics 繊維強化プラスチック)に使われるものの仲間で、透明性が高くきれいな材料です。しかし扱いがうまくないと、いつまでもベタベタしたり、早く固まりすぎて反応が激しいと発熱して割れてしまったりします。また、体積の縮みが少しあり、少々脆い場合も生産会社によってあるようです。使用法はそれぞれの説明書に従ってください。

2,エポキシ樹脂:透明性も高く、縮みもほとんどありませんが、タイプによっては硬化時間が長くまた少々高価です。

3,ポリウレタン樹脂:硬化時間が早く扱いも楽で、ポリエステルのような強い臭いもあまりなく、比較的安価です。ただ、透明性はありません。しかし、最近は透明性の高い注型用のウレタン系樹脂もあります。作例ではポリウレタン樹脂を使用しています。これは同量の2液混合型であらかじめ必要な量をはかっておいて使います。

たとえば樹脂でツマミを作るとします。それにはまず原型を作ります。

写真では小さなホビー用の旋盤を使っていますが、もちろんボール盤で作業できます。旋盤で作業できる場合はバイト(チゼル)という工具で削りますが、写真で見るように刃物を安定して使うための台(レスト)の部分がボール盤にはないので、木工のヤスリで作業をしたほうが安全です。

写真では小さなホビー用の旋盤を使っていますが、もちろんボール盤で作業できます。旋盤で作業できる場合はバイト(チゼル)という工具で削りますが、写真で見るように刃物を安定して使うための台(レスト)の部分がボール盤にはないので、木工のヤスリで作業をしたほうが安全です。

また原型は粘土で作ったり、 ビンのキャップを利用したり、市販のツマミを利用してもよいでしょう。

型取りにはシリコンゴムを使います。たいていは主剤と硬化促進剤(キャタリスト)の組で売られています。型取りをしたい原型を効率よく並べ、まわりに壁を作ります。あるいは写真左のようにプラスチックのカップ(たとえばペットボトルを切ったもの)等、身近なものを利用することも出来ます。あらかじめ原型に離型剤を塗っておくとよいでしょう。

型取りしたいツマミなどを並べ、写真のように木の端材などを利用して土手を作ります。

型取りしたいツマミなどを並べ、写真のように木の端材などを利用して壁を作ったり、あるいは調度いい大きさのカップなどを利用。

型取り用のシリコンゴムはたいてい粘度のある白っぱい液体です。細く糸のように原型にかけてゆくと気泡が入らずうまくできます。

型取り用のシリコンゴムはたいてい粘度のある白っぱい液体です。細く糸のように原型にかけてゆくと気泡が入らずうまくできます。

一昼夜あるいは早いもので数時間後にシリコンが固まったら原型からはずし、離型剤を塗っておきます。シリコンは柔らかいので簡単に成形物を型からはずすことができます。

それぞれの樹脂の使用法に従い、型に注ぎ入れます(写真6)。ただ、ポリウレタン樹脂は、気温や室温が高いと2液混合後1~ 2分で硬化する場合があるので注意をしましょう。

それぞれの樹脂の使用法に従い、型に注ぎ入れます。ただ、ポリウレタン樹脂は、気温や室温が高いと2液混合後1~ 2分で硬化する場合があるので注意をしましょう。

樹脂が完全に硬化したところを見計らって、シリコンの型から成形物を注意して取り出します。

樹脂が完全に硬化したところを見計らって、シリコンの型から成形物を注意して取り出します。

成形物のバリを削り、裏が平らでなければ平らな板の上に敷いたサンドペーパーで削り整えた後、中心を求めます。その際センターゲージがあると便利です。

写真のようなセンターダージ、あるいはセンターヘッドと呼ばれるものを使うととでも楽に作業ができます。写真上部のもののは自作したものですが、これは直角なL字型の真ん中45度のところに直尺がついたもので、常にこれに当てた円の中心を通る線が引けるというものです。ですからセンターダージを当ててツマミを少しずつ回転させてしるしをつけ、交点を求めれば中心点が出ます。

写真のようなセンターゲージ、あるいはセンターヘッドと呼ばれるものを使うととでも楽に作業ができます。写真上部は自作したものですが、これは直角なL字型の真ん中45度のところに直尺がついたもので、常にこれに当てた円の中心を通る線が引けるというものです。ですからセンターゲージを当ててツマミを少しずつ回転させてしるしをつけ、交点を求めれば中心点が出ます。

中心を求めた成形物に穴をあけ、この場合外径10mm、内径6mmのスペーサーを入れ、スペーサーの出っ張った部分を金ノコで切った後、瞬間接着剤でつけであります。

中心を求めた成形物に穴をあけ、この場合外径10mm、内径6mmのスペーサーを入れ、スペーサーの出っ張った部分を金ノコで切った後、瞬間接着剤でつけであります。

成形物の横から垂直に中のスペーサーの中心へ向けて、2.5mmで穴をあけているところ。

成形物の横から垂直に中のスペーサーの中心へ向けて、2.5mmで穴をあけているところ。

3mmのタップを立て、そしてスペーサーのところまでの樹脂のところを3.5mm位で穴をもう一度あけて、3mmの頭なしのネジを入れればできあがりです。

目盛りをもっと際立たせたければ、原型であらかじめ掘っておいたところに明るい(ときには暗い)色をへこんだ部分にゴムベラ等で埋めるとよいでしょう。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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ヴァリコンの製作について

戦前から1960年代くらいまでの少年向けのラジオエ作の本や雑誌を見ていると、 ときどき誰がこんな高度なものを作るのだろうと思うような記事に出くわすことがあります。しかし、そんな中にもヴァリコン、ヘッドフォン、クリスタルイヤフォンの製作記事は発見できませんし、往々にしてそれらは個人では製作不可能なものとして紹介されています。

おそらくその時代にヴァリコンの製作をいちばんむずかしくしていたのは、アルミ板が高価で入手できなかったことでしょう。

これはぼくが作ってみたヴァリコンですが、実際に作ってみると、一般の工作術から考えた場合、決してむずかしいものではありません。

(写真の左(A)と右(B)は実際に鉱石ラジオに組み込みました。中央は1910年ころのヴァリコンを写真で見て作ってみたもの。ともに容量直線型です。

写真の左(A)と右(B)は実際に鉱石ラジオに組み込みました。中央は1910年ころのヴァリコンを写真で見て作ってみたもの。ともに容量直線型です。

写真はヴァリコンBのできあがったパーツです。前面と背面の黒い板は粘土で原型を作り、ツマミを作った要領で製作しました。「樹脂の加工」参照

写真はヴァリコンBのできあがったパーツです。前面と背面の黒い板は粘土で原型を作り、ツマミを作った要領で製作しました。このブログの「樹脂の加工」ページを参照。このタイプのヴァリコンにはストッパーがなく、くるくるといくらでも回ります。

写真はヴァリコンAで、Bのものよりちょっと精密に作ってあり、こちらはス トッパーがついています。

写真はヴァリコンAで、Bのものよりちょっと精密に作ってあり、こちらはストッパーがついています。

写真はAヴァリコンを分解したところです。ローター(回転するところ)が前面のパネルと導通しているので、パネルとステーター(羽の動かないところ)とを絶縁するために、黒いエボナイトの板があいだに入っています。

写真はヴァリコンAを分解したところです。ローター(回転するところ)が前面のパネルと導通しているので、パネルとステーター(羽の動かないところ)とを絶縁するために、黒いエボナイトの板があいだに入っています。

アルミ板は厚いものでも糸ノコで切ることができます。切る面に対して直角を維持してゆっくりと作業し、切りづらかったり、引っ掛かる感じがあれば、油を少し差すとよいでしょう。作例ではどちらのヴァリコンも、ローター、ステーターとも、羽のところは0.8mmのアルミ板を重ねて切り、ヴァリコンAの前背面のパネルは3mm厚のアルミ板を使いました。ローターやステーターの羽の切り抜きをするとき、まず重ねて切るわけですが、ぼくがいろいろ試したなかでは、それらの板をペーパーセメントで仮に貼りつけると安定した作業ができます。

ヴァリコンBが、ローター部13枚、ステーター部14枚で、Aのほうがローター部12枚、ステーター部13枚です。

それぞれの羽を十分に取ることができるくらいの大きさにアルミ板を切り、貼り合わせたあと、糸ノコでカットする前にまず穴のほうを先にあけます。

それぞれの羽を十分に取ることができるくらいの大きさにアルミ板を切り、貼り合わせたあと、糸ノコでカットする前にまず穴のほうを先にあけます。このときのコツはゆっくりとあけること。もし早くあけようとして強くドリルを当てると、それぞれの薄板からバリが出て、それが板と板のあいだを押し広げ、ちょうど水にぬれた辞書のようにふくらんでしまい、その後の作業をむずかしくさせてしまうからです。ゆっくりあけたつもりでも、少しはふくらむでしょう。そうしたら万力などでふたたび押さえて、ピッタリとつけておいてください。

そのあと糸ノコで外形を切り取ります。

そのあと糸ノコで外形を切り取ります。

その後万力に挟んでヤスリで仕上げます。

その後万力に挟んでヤスリで仕上げます。

仕上がったものをペーパーセメントの溶剤を入れたビンの中につけて、 1枚1枚に 羽をはがします。

仕上がったものをペーパーセメントの溶剤を入れたビンの中につけて、 1枚1枚に羽をはがします。

仕上がった羽の部分(ヴァリコンAのローターとステーターの羽)です。

仕上がった羽の部分(ヴァリコンAのローターとステーターの羽)です。

このようにていねいに作ったつもりでも、組み上げてみると出っ張ったリヘこんだりしています。キチッとそろった仕上がりにしたければ、組み上げたあとで、木片を当てたサンドペーパーで仕上げます。

小林健二の技法

ヴァリコンの組み上げ方は、ローターやステーターの羽と羽のあいだに2mmのスペーサーあるいはカラーと呼ばれるものを入れ、ステーターの部分は中に通した6mmのネジに前後からナットで締めつけ、ローターのほうは前と後ろのパネルで3mmの全ネジで締めつけて固定します。ローターとステーターはちょうど互い違いに入れ子状に組み合わせておかなければなりませんので、お互いの羽が触れあわないように、あいだを調整してから固定すればできあがりです。

ヴァリコンの組み上げ方は、ローターやステーターの羽と羽のあいだに2mmのスペーサーあるいはカラーと呼ばれるものを入れ、ステーターの部分は中に通した6mmのネジに前後からナットで締めつけ、ローターのほうは前と後ろのパネルで3mmの全ネジで締めつけて固定します。ローターとステーターはちょうど互い違いに入れ子状に組み合わせておかなければなりませんので、お互いの羽が触れあわないように、あいだを調整してから固定すればできあがりです。

ステーターとローターがショート(接触)していると、どんなにほかをいじっても音は絶対に聞こえませんから注意しましょう。

アルミはちょっと加工がしづらいと思う人は、厚紙の両面にアルミ箔を貼ったものでも、まったく同じに機能します。

アルミはちょっと加工がしづらいと思う人は、厚紙の両面にアルミ箔を貼ったものでも、まったく同じに機能します。(写真の左上の少し色が違うものは錫箔をはったもので、あまり一般的ではありませんが錫箔でもOKです。)

まず厚紙を1枚1枚カッターやはさみで切って、スプレー糊でアルミ箔を貼ればよいのです。このとき、裏と表の箔は必ずショートするように注意してください。穴は箔を貼る前にポンチであけておきましょう。貼りあがったあと、コップや瓶をローラーのように転がしてぴったりと貼るのもコツの一つです。

写真はヴァーニャルダイヤルで、左が300度用、右が180度用でヴァイリコンは180度回転角が最大なので、このタイプを使います。

写真はヴァーニャルダイヤルで、左が300度用、右が180度用でヴァリコンは180度回転角が最大なので、このタイプを使います。

ヴァーニヤルダイヤルは、よく測定器や通信機にわれるダイヤルで、内部のギアの関係で細かい調整をするのに適したものです。ダイヤルのツマミを4回転させると軸が180° 回転するしくみになっています。ヴァリコンBにはストッパーはなくいくらでも回転しますが、このヴァーニャダイヤルをつければ、最小と最大の位置にくるとそれ以上いくら回しても軸に回転がかからないしくみになっているので、ストッパーをつけたのと同じ効果があって便利です。

自作ヴァリコンに「樹脂の加工」で作例として作ったツマミを取り付けたもの。

自作ヴァリコンに「樹脂の加工」で作例として作ったツマミを取り付けたもの。

「樹脂の加工」

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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鉱石ラジオの検波に使える鉱物のいろいろ

鉱石検波器を作る上で重要な素材はもちろん鉱石です。ぼくも子どものころから好きで、鉱物を展示する博物館等に興味がありました。とりわけ当時の上野科学博物館にあった鉱物標本室はすばらしく、友達と2人で小学校を休んで一日中そこにいたこともありました。そして中学のころから神保町や千駄木にあった鉱物標本屋にときどき行くようになりました。きれいなものが好きだったぼくは透き通ったり色がついたりしたものに惹かれて、岩石標本やあまり見栄えのしない鉱物標本には特別関心を持っていなかったと思います。

もっとも最近のミネラルショーや鉱石市に並ぶようなすばらしい標本は当時はそれほど一般的ではなく、もっと学校教材的と言うか、いかにも鉱物標本という感じのものが多かったと思います。ときどき心を奪われるようなものに出くわしても、学生のぼくには気の遠くなるほど高価なものに感じられました。今から考えるとそれほどでもない標本でもけっこう高かったように記憶しています。

ぼくにとって鉱物がもう少し身近に勉強の対象としても近づいてきたのは二十歳のころ、古典絵画に興味を持ちはじめ、絵画材料としての顔料の研究から天然顔料鉱物を調べたり集めたりしたときのことでした。その後友人の紹介で、藍銅鉱(アズライト)の粉体を顔料にするため精製したり、水簸等をして岩群青を作る仕事をしたこともありました。顔料鉱石といえば、ラピスラジュリ(青金石)にリアルガー(鶏冠石)、オーピメント(石黄)、シナバー(辰砂)と挙げていけばきりがありませんが、みんな絵の具の原料にもなる鉱物なので色がきれいなことは言うまでもありません。

そんなぼくが10年くらい前から鉱石ラジオに興味を持ちはじめると、今までとはちがった見え方が加わってきたのです。今まであまり興味のなかった元素鉱物や硫化・酸化鉱物の中でも地味に見える鉱物たちです。自分の身の回りで何も変わっていなくても、自分の興味や見方が変わることでまた新しい世界を見る思いがしたのです。

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

方鉛鉱 (高さ13 .5cm)

[方鉛鉱 GALENA ガレナ PbS]

鉱石ラジオ用検波鉱石の代表といえば、やはり方鉛鉱でしょう。単体で使用する場合(さぐり式など)、他の鉱石に比べ感度もよく、また比較的入手しやすいという側面からも教材用のキットや製品の検波器にかつてさかんに用いられました。

方鉛鉱は鉛の硫化鉱物で手に持つと重さを感じます。比重は7.5前後で(ちなみに鉄の比重は7.5です)まさに鉛色をしています。表面は酸化や風化でツヤのないものもあれば、キラキラと強い金属光沢をもったものまでいろいろとあります。

戦後の鉱石ラジオ制作記事等で、鉱石のピカピカした新鮮な割断面が感度がよいと書いてあったりしますが、ぼくの経験では必ずしもそうとは言えないと思います。ですから表面の具合で感度を判断しないようにして、とりあえずいろいろな箇所を試してみることをすすめます。

方鉛鉱は産出するとき、閃亜鉛鉱や黄銅鉱、黄鉄鉱等と共生しているものもあり、ちょっともろい印象の鉱石です。この方鉛鉱はハンマー等で軽くたたいても細かく割ることができ、完全な壁開(方向性のある割れ方をすること)力Sあるので小さく割ってもさいころのようにきれいに割れます。ただしこの性質のせいで、鉱石をそのまま検波器のホルダーにネジ等で押し付けて固定しようとするとその圧力で割れてしまうこともあります。その場合ハンダで台座を作る方法が有効となります。学術的には等軸品系といわれる結晶系の鉱物で、見かけがいかにも四角っぱいものもあれば、あられみたいなタイプのものもあります。また方鉛鉱を検波に使用する際、感度に少々差が生じるのは、本来鉛と硫黄の成分が中心の鉱物ですが、中に銀が含まれることがあるので、銀の含有率が高い方が感度も高くなるのではとぼくは思い、これは人工検波用鉱石を作るときに確かめることカミできました。

産地は岐阜県の神岡や秋田県の太良、愛知県の市ノ川の各鉱山は有名で、秋田、北海道、新潟、埼玉でも産出され、海外では米国のオクラホマ、カンザス、 ミズーリの各州、メキシコ、ペルー、ルーマニアとあるそうです。なお、車骨鉱と呼ばれる遠目で見ると方鉛鉱に似た比較的高価な鉱石がありますが、これは検波には向きません。他に、輝安鉱も見るとこれはと思いますが、やはり検波はできません。

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

方鉛鉱 (左はあられ状のもの幅12 cm、右のものはバラ輝石との共生標本)

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

方鉛鉱はハンマーで叩くと四角く割れます。

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

1920年代から米国で売られていたさぐり式検波器用鉱石の缶入りのもの3種、中には鉱石と共に小さなピンセットが入っているものもあります。これらはたいてい方鉛鉱です。

[黄鉄鉱 pyrite パイライト FeS2]

この鉱石には人工的とも見えるほど完全な立方体の結晶もあり、初めて見るとちょっと驚く人もあると思います。感度は方鉛鉱とくらべて遜色ありませんが、さぐり式の検波器として感度のよい場所を探しているときに、いかにも平らで均一に見える黄鉄鉱の結晶面に感度のいいところとそうでないところがあるのは何か不思議な感じがします。

結晶系は方鉛鉱と同じ等軸晶系ですが、先程のサイコロみたいな形のものもありながら、5角形の12面体のもの、正8面体の結晶でとでも細いものまで、見た目の形はいろいろあります。ただ、色はだいたい真鍮色をしているのでよくわかります。硬度は方鉛鉱が2~ 3で黄鉄鉱が6~ 6.5くらいですから硬く、そして方鉛鉱ほどはもろくないのでとでも扱いやすい鉱石です。

国内の産地は岩手県仙人鉱山、愛知県津具鉱山、秋田県小坂鉱山や、埼玉、大分、宮崎、栃木の各県にも産地があるようです。海外では米国のユタ、イリノイの各州スペイン、ペルー、イタリアなどです。

黄鉄鉱は石英、黄銅鉱、方解石、閃亜鉛鉱などと共生したものも多く、標本として美しいものもたくさんあります。パイライトという言葉のpyrは“火”という意味のギリシア語で、石をたたくと火打ち石のように火が出るところからきた名前だと言われています。実際暗いところでハンマーで端を欠くようにすると赤い火花が出るのが見えます。また、昔ゴールドラッシュで人がカリフォノンニアやアラスカの金鉱山に殺到したとき、この黄鉄鉱を金と間違えてとんだ日にあった人たちも多かったらしく、この鉱物を“愚か者の金”とも呼んだそうです。確かにぼくも小学校のころ、金の鉱物だと思っていました。

また黄鉄鉱は化石中に部分的に変成することがあります。19201940年代の鉱石ラジオの鉱石を見てみると、黄鉄鉱は海外で思ったより多く使われているようですまたハンダで台になる部分を作るときも比較的熱安定しているのか、ちょっと熱くしすぎたと思っても方鉛鉱ほど感度が特別落ちることはないようです。

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

黄鉄鉱(幅 12 cm)

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

黄鉄鉱にはいろいろな形状のものがあります。

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

黄鉄鉱の標本には小さな結晶の部分だけを集めたものも販売されています。検波器を作るのには便利でまた安価です。

[紅亜鉛鉱 zincite ジンサイト Zn(Mn)o]

鉱石ラジオが民生としてだけでなく軍事としても考えられていた時代、この紅亜鉛鉱という鉱物はおそらくとでも重要と考えられていたと思われます。それは付録に掲げる鉱石の感度表や当時の記事からよくわかります。しかしながらこの鉱物は日本ではまったく産出しません。世界でもただ1カ所だけに存在するといってもいいような鉱物なのです。その場所は米国ニュージャージー州にあるスターリングヒルとフランクリンという2つの隣接する鉱山です。

写真の大きな標本は白いところがサセックス石、赤いところが紅亜鉛鉱、黒いところはフランクリン鉄鉱と呼ばれるものです。このフランクリン鉄鉱の部分も、感度はあまりよくありませんが、検波することができます。この紅亜鉛鉱を洋書の鉱物標本の写真集で透過性のあるオレンジ色の粒状のものを見たことがあったので、いろいろと探してみたのですが、いまだ巡り合ったことはありません。紅亜鉛鉱はその名の示すように赤色系の鉱物です。本来の成分はZnoで、これは酸化亜鉛そのもので、ちょうど絵の具のジンクホワイト(亜鉛華)と同じで粉体にすれば真っ自なものです。ですからこの鉱物はその不純物(マンガン)によって赤色の特徴を持っているということができるのかもしれません。紅亜鉛鉱は六方晶系の結晶系で硬度は4、比重は5.4~ 5.7です。

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

紅亜鉛鉱 (高さ12 cm)

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

赤みのあるところが紅亜鉛鉱で、拡大してみると少し透明感があるようです。

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

自作鉱石検波器のところでも今後紹介予定ですが、半人工半天然と思える酸化亜鉛の結晶。透過性であることがよくわかると思います。

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

いろいろな検波器用の鉱石、パッケージがそれぞれ面白くかわいい。大体3 cm以内のものです。上段の左と右は自作のものです。

これまであげた方鉛鉱、黄鉄鉱、紅亜鉛鉱が、鉱石検波器の三大鉱石といえると思います。以下はそれほどの成果は期待できなくとも検波ができる鉱物をいくつか紹介してみたいと思います。

[斑銅鉱 bornite ボーナイト Cu5FeS4]

斑(まだら)と言われるように、その表面は酸化していて、緑、青、紫、赤、黄等のメタリックな色が細かくあるいは一面に斑模様になっている感じで、全体には石っぽさを感じる鉱物です。銅をたくさん含んでいるためか、割ってみると少し赤っぽい鉛銀色というような色味で時間や日数が経つにつれだんだんと割る前の色へと変化していきます。感度は割ってすぐより酸化して落ち着いた方がいいようにぼくは感じました。硬度は3ですがしっかりした感じで、比重は49~ 5.1、労開は特別にないようです。結品系は昔の本だと等軸晶系と書いてありますが、最近の本だと斜方晶系となっています。この後で紹介する黄銅鉱に酸処理をして、いかにも美しい斑銅鉱(ボーナイト)として売っている外国製のものもあるようです。ただ色味は本物の斑鋼鉱の方が色が落ち着いたいい感じで、感度もすぐれています。

また斑鋼鉱や次の黄銅鉱は、接合式の検波器を作る場合、紅亜鉛鉱と組み合わせると方鉛鉱を単体でさぐり式として用いるよりも、はるかに感度を期待できます。

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

斑銅鉱 (高さ10cm 暗い色のところが斑銅鉱です。)

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

暗い色のところが斑銅鉱です。

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斑銅鉱の部分

[黄銅鉱 chalcopyrite チャルコパイライト CuFeS2]

黄銅鉱はちょっと黄鉄鉱に似ていそうですが色がもっと濃い感じで、黄銅鉱が磨いたばかりの真鍮とするとそれからちょっと時間が経って黄色が強まったものという感じです。ぼくには黄鉄鉱よりもよっぽどこっちの黄銅鉱の方が金と間違えやすいのではと思えるときがあります。硬度は3~ 4、比重は4~ 43で、黄鉄鉱はカチッとした感じなのに対し、黄銅鉱はソフトな感じを与えるといった印象です。また黄鋼鉱にはところどころ自然に青や紫に色づいているところがあります。

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

黄銅鉱 (高さ18 cm、金色の部分が黄銅鉱)

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

上段の2点は黄銅鉱に薬品で色をつけ斑銅鉱として販売されているものです。下右は黄銅鉱、下左は斑銅鉱です。

[輝水鉛鉱 molybdenite モリブデナイト MoS2]

工作機械のビット等で「モリブデンヴァナジューム鋼を使用Jとか、自転車のパイプに「クロモリ」クロームモリブデン鋼を使用といった表示で見ることのある、鋼の性質を増強するのに使われるモリブデンの鉱石です。ぼくはモリブデンとは硬い金属だと思っていたので、初めて輝水鉛鉱の金属質のところをさわったときその柔らかさに驚きました。見た感じはピカピカしていかにも金属なのに爪などで同じところをひっかいていると、まるで強い圧力で間めてある紙のように少しずつほぐれてくるような感じです。確かに鉱物の本で調べてみると硬度は1~ 1.5ととでも柔らかいのです。かといってもろいわけではなく粘りを感じるようで、この鉱物から鉛がとれると聞いたとしたら、よっぽどそれらしいと言った感じです。検波器に使うとき思ったより感度がよく、だいたいどの部分でも感度に良否なくて使いやすそうなのですが、なんといっても柔らかいことを頭に入れないと機械的には安定を取ることができません。色はいかにも鉛色でそれこそ紙に鉛筆みたいに線が引けます。比重は4.6~ 5.1、結晶系は大方208 晶系で板状になったりしているところははがれたり曲げることができたりします。

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

上左 磁硫鉄鉱、上中 輝水鉛鉱、上右 硫砒鉄鉱、下左・閃亜鉛鉱(中央に方解石が付いています)、下右 硫砒銅鉱。

ここから先はあまリー般的ではないけれど、日頃使って確かに検波ができる鉱物をぼくの標本箱から選んでみました。これらの鉱物はときどきとでも感度のいい標本の部分に出会うことがありますが、検波器の機能を満たすのには不十分なことが多く、標本としても高価なものもあるので写真と簡単なデータだけにとどめておきます。

[磁硫鉄鉱 pyrrhotite パイロタイト Fel-xS(x=0~ 0.r)]

硬度は3.5~ 4.5、比重4.5~ 4.6、単斜晶系で錆びていなければ赤みのあるブロンズ色で磁石につき、またわずかな磁力を持っています。

[硫砒鉄鉱 arsenopyrite アーセノパイライト FeAsS]

硬度は5.5~ 6、比重6~ 62、単斜晶系でピカピカの銀色のものからちょっと黄鉄鉱がくすんだような感じのものまであって、小さな結晶のところだけでも入手できます。写真は愛知県の振草鉱山のものです。

[閃亜鉛鉱 sphalerite サファルライト ZuS]

酸化によってツヤの失われた部分がわずかに電導性が出て検波できることがあります。

[硫砒銅鉱 enargite エナジット Cu3AsS4]

硬度は3、比重4.4~4.5、斜方晶系で柱状に結晶をしていて、紫色っぽいようなところがある(この部分はコベリンかも)黒光りする感じの鉱物で写真のものはちょっと黄鉄鉱がついています。感度良好でいい標本を手に入れたら端の方の柱を1本ポキッと折って紅亜鉛鉱と組み合わせると、単体の方鉛鉱より感度のよいときがあります。

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左 赤銅鉱(8cm)、右 銅藍(コベリン)、下・アルゴドン石

[赤銅鉱 cuprite カプライト Cu2S]

もろいところがありますが、かえってそのあたりが感度がいいようです。

[銅藍(コベリン) covellite コベライト CuS

メタリックなブルーの色をした鉱物です。

[アルゴドン石 algodnme アルゴドナイト CuBAs]

これは逆に酸化によって抵抗値が高くなったところで検波ができます。

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左と上は錫石、右は石墨(グラファイト6 cm)、中央・ゲルマナイト。

[錫石 cassiterite カシィテライト Sno2]

硬度は6~ 7、比重6~ 7、黒くてピカピカした鉱物で、硬質で重みを感じます。

[石墨 graphite グラファイト C]

鉛筆の芯で検波ができる理由が分かります。

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上左 モースン鉱、上右・濃紅銀鉱(2.5cm)、下左・フランケ鉱、下右自然砒。

[モースン鉱 mawsonite モーソナイト Cu8Fe2SnS3]

ほとんど斑銅鉱と同じ感じです。

[濃紅銀鉱 pyrargyrite パィラルジライト Ag3SbS3]

直流抵抗がとでも高く、ぜったいに無理だと思っていましたが、かすかに検波できるところがありました。

[フランケ鉱 franckeite フランケイト Pb5Sn3Sb2S14]

ちょっとコークスのような感じで、かすかに検波ができます。

[自然砒 arsenic アーセニック As]

丸くて小さい塊はそのまま検波器に使用できます。

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

本文に説明してありませんがその他の検波に使えた鉱物です。上左 磁鉄鉱
(Magnetite FeFe204)、上右・白鉄鉱(Marcaste FeS・)、下左・隕鉄(これで
検波器を作ると隕鉄検波器?)、下右硫砒鉄鉱(この鉱物も標本を売っているところで、黄鉄鉱と同じように小さな結晶部分だけのものが入手できます)。

小林健二[ぼくらの鉱石ラジオ]

これは電気石のいろいろです。検波用の鉱物ではなく、受話回路のクリスタル
イヤフォンのところで説明した圧電効果をもっている天然の結晶です。

他にも検波のできる鉱石はまだいくつかありますが、あまりに高抵抗(濃紅銀鉱)だったり、あるいはその逆ではとんど導体(自然銀)だったり、また聞き慣れないもの(フランケ鉱、モースン鉱等)だったりします。とにかくたくさんある鉱石の中でもまったく電気伝導性のないものを別として、いろいろと研究するのは楽しいことです。ぼくがテスターを標本に当てさせてもらえないかとお願いした鉱物標本店では、興味を持って協力してくれました。もちろんテスターを当てるのは標本には絶対に傷を付けないという最低限のマナーを守った上でのことです。

鉱物の魅力は多様で標本を扱うお店にも多種の目的の人々が訪れます。検波用鉱石を探していく人はきっとほとんどいないと思いますが、検波の話が鉱石と巡り合う楽しさやかかわり合うきっかけになったりすればと思います。また鉱物だけでなくドアのノブや錆びた釘など検波器として試せるものもあると思いますので、ぜひいろいろ見つけてみて下さい。

小林健二

*小林健二著書「ぼくらの鉱石ラジオ」から、一部編集して紹介しております。

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