[さぐり式鉱石検波器について]
鉱石式検波器の中でもっともたくさん作られたタイプで、いろいろな形状のものが出現しました。さぐり式の鉱石検波器には大きく分けて2つのカテゴリーがあります。開放式(オープンタイプ)と呼ばれる鉱石自身が表に出ているものと、鉱石の部分がガラスケース等で覆ったりしてある封管式(クローズドタイプ)です。
開放式はたいていの場合、針を動かせる範囲が大きく、また、鉱石の交換や調整が楽で、実験にとても適している反面、ほこりや水滴などで感度が落ちたり、本体やダイヤルを動かしたりする折に何かが触れると針が動いてしまったりすることがあります。
封管式のものは安定性に優れていて製品としての受信機に向いていますが、工作が少し難しいのと調整や鉱石の交換なども面倒なところがあります。
[さぐり式鉱石検波器の製作(封管式)]
道具:ガスバーナー(ガスこんろでも可)・ハンダを溶かすための空き缶やアルミ製のプリン型など(写真はセラミック製キャセロール:取っ手のついた蒸発皿)・ピンセット
材料:ハンダ(写真のキャセロールの中は棒ハンダを切ったもの。右下は棒ハンダと糸ハンダ)・写真の鉱石は紅亜鉛鉱、方鉛鉱、黄鉄鉱などが写っていますが、今回は方鉛鉱を使用。
ベニヤの板などにドリルで穴をあけたものを型とします。径10~ 16mmで、深さ6 mm前後、あるいは2段になるように作りたいときは、径16mm、深さ5 mmの穴のなかにさらに径8mm、深さ5mmの穴をあけます。
固まったあと、バリなどをサンドペーパーで仕上げます。このとき鉱石があまり大きいと、溶けたハンダと接触させたときにハンダが冷えて急に固まることがあります。 そうなるとハンダと鉱石はくっついてくれません。それが予期される場合は、溶けたハンダの中に鉱石をピンセットなどで持ち1、2秒ほど入れ、あらかじめあたためておきます。
もうひとつの方法は、金属でカップを作っておいてそこに溶かしたハンダを入れ、同じ要領で鉱石を固定する方法です。作例のガラス管の中の鉱石部分はこの技法で作っています。カップになる部分は15mmの真鍮棒を長さ1cmくらい切り、中心部に12mmのドリルで半分ほどの穴をあけ、そのあと2.5mmのドリルを貫通させて3mmのタップを切ります。そのあとで内側から太さ3mm× 長さ20mmのサラネジで、取り付け用のネジを出しておきました。
作例のように鉄の万力で挟んで固定する場合は、あいだに薄い木や布を挟んでおかないと鉄に熱を奪われてハンダがすぐに冷めてしまうので気をつけましょう。
次にガラスを使ったケースを作ります。
支えのL字金具は下方の真鍮板(幅9mm、厚さ1mm)から作り、ノブはボール盤で木を削って色を塗りました。ネジ類もボール盤で挟み、サンドペーパーでメッキをはがして作りました。
まず、ガラス管(太さ3cmの試験管を長さ約4cmにカットしたもの)を用意します。ガラス管の切り方や加工は、[ガラスの加工]を参照してください。
次にこの管のふたになる部分を作りますが、ここではボール盤を旋盤のように使って作業をします。ボール盤は最近ではD.I.Y.ショップなどで1万円前後で手に入るものもありますので、使い方をマスターしておくといろいろに使えて便利です。本来品物に穴をあけるための機械ですが、その先に取り付けるドリルやビットの種類を変えることで、金属板、本の板、プラスチックなどに穴や彫り込みを作ったり、削ったり磨いたりできます。
作例では布入リベークの5mm厚を使いましたが、木の板でもプラスチックでもいいでしょう。
ホールソーは本来穴をあけるためのものですが、穴をあけることで出るいつもなら捨ててしまう丸い部分を使っているわけです。外径40mmのホールソーは、内径35 mm強です。この丸い板の切り口を、アーバーを使いスムーズに削ります。アーバーとは本来バフリングやワイヤーリングを止めるための金具ですが、この金具に品物をつけることで、ボール盤を旋盤のように使うことができます。もちろん、このような使用法は危険と言われると思いますので、いちばん速度を落として作業しましょう(たいていのボール盤はベルトのかけかえで速度を変えられます)。このあとに片方には6mmの太さの真鍮棒に径3mmのタップを立てたものを差し込み接着して、もう片方には外側から球が自在に動くように10mmのドリルでへこみをさらってあります。
*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。