Silver Point」タグアーカイブ

シルバーポイントや金属の粉による彩色

「シルバーポイント」とは数世紀前まで鉛筆の代わりによく用いられていたものです。銀は大気中の硫化物によって黒変します。とはいっても、鉛筆のように真っ黒ではなく柔らかい調子になります。ぼくは、その柔らかい感じが好きなので、シルバーポイントを使うことが多くあります。

この作品の、一見グレーの絵の具に見える箇所は、シルバーポイント(銀筆)という古典的な技法によって描かれていたり、ある種の錫、アンチモンの金属の粉によってなされています。

また右の立体的なところは樹脂ロウによって形成されていますが、ロウといっても蜜蝋のように68度くらいの温度になると指紋がつくようなものではありません。

「銀色の大気-ATMOSPHERE IN SILVER 」板に紙、銀筆、亜鉛末、油彩、樹脂ロウ(paper,silver point, zinc powder,oil,wax resin on board ) 600X900X30mm 1999

小林健二作品「銀色の大気-ATMOSPHERE IN SILVER 」板に紙、銀筆、亜鉛末、油彩、樹脂ロウ(paper,silver point, zinc powder,oil,wax resin on board ) 600X900X30mm 1999  作品描かれている文章 [その大きな場所は巨大な銀色の大気に包まれている。ぼくはかつて見た夢の中の風景に再び出会っていると感じている。まるでペパーミントのような眠りへとつづく香りが辺りを支配している、と感じているとどこからか”おまえたちは本当の意味などまだ知らないではないか?”とたずねられた気がした。その問いのようなものを感じながら心の中では、右の方に見える高い塔のようなものがまるでゆらゆらとして上に登ったらきっと、とても恐いだろうなどと思っていた。 土曜日 6月7日(’86)]

古いペンの軸や、木の棒に銀の線や棒を付けたものです。

古いペンの軸や、木の棒に銀の線や棒を付けたものです。 (写真は自作のもの。数種類ある中の二つ)。 上のものは線径約2mm下は約4mmくらいです。

(写真は自作のもの。数種類ある中の二つ)。
上のものは線径約2mm下は約4mmくらいです。

ペン軸にねじ込み式の雌ネジをはめこみ、銀線にはダイスで雄ネジをきってあります。
こんなように作らなくても、上のもののように穴を木にあけて差し込むだけでも同じです。

ペン軸にねじ込み式の雌ネジをはめこみ、銀線にはダイスで雄ネジをきってあります。 こんなように作らなくても、上のもののように穴を木にあけて差し込むだけでも同じです。

シルバーポイントには下地が必要です。
その為には普通(古典的には)ニカワで練った、亜鉛華、ジンクホワイトが使われていました。多少ザラザラとした感じでなければ、すべってしまうからです。ザラザラといってもツルツルのコンクリートぐらいです。

絵画用ゼラチンの場合は 水:ニカワ/3~4:1
ウサギニカワは 水:ニカワ/4~5:1
の割合でニカワを水で膨潤させ、湯せんで溶かした後、粉を練り、それを板などにヘラで塗り付け、乾いたら240番~320番ぐらいのサンドペーパーをかけます。

シルバーポイントには下地が必要です。 その為には普通(古典的には)ニカワで練った、亜鉛華、ジンクホワイトが使われていました。多少ザラザラとした感じでなければ、すべってしまうからです。ザラザラといってもツルツルのコンクリートぐらいです。 (画像は硫酸バリウム/ジンクホワイト/炭酸マグネシウム やはりジンクホワイトが一番具合がいい)

画像は左から硫酸バリウム/ジンクホワイト/炭酸マグネシウム やはりジンクホワイトが一番具合がいい

 

左画像/絵画用ゼラチン 右画像/ウサギニカワ 絵画用ゼラチンの場合は 水:ニカワ/3~4:1 ウサギニカワは 水:ニカワ/4~5:1 の割合でニカワを水で膨潤させ、湯せんで溶かした後、粉を練り、それを板などにヘラで塗り付け、乾いたら240番~320番ぐらいのサンドペーパーをかけます。

左画像/絵画用ゼラチン 右画像/ウサギニカワ

これはシルバーポイントのパテを板に塗り付けるヘラで、温めて使います。 下が6cmぐらいの幅で、上のヘラは修正や小さな部分的に使うものです。

これはシルバーポイントのパテを板に塗り付けるヘラで、温めて使います。
下が6cmぐらいの幅で、上のヘラは修正や小さな部分的に使うものです。

鉛筆ほど黒くはっきりしませんが、ハンダのように銀以外の金属が使われることもあります。その場合下地には、亜鉛華、ジンクホワイトなどの代わりに、ロッテストーンやパミス(軽石を粉砕した磨き粉の一種)でもちょうどよいでしょう。

ただし、その場合は水:ニカワ/5~6:1の割合の絵画用ゼラチンなどで粉を練って、ハケで冷めないうちに薄くさっと板にぬって使いましょう。(紙でも使えます)

ロッテストーンやパミス(軽石を粉砕した磨き粉の一種)

ロッテストーンやパミス(軽石を粉砕した磨き粉の一種)

またシルバーポイントは、油彩絵の具とはすべってしまうため、共存できないので、「デトランプ」や「テンペラ」などの技法と用います。

なので、金属のパウダーは絵画用ゼラチンで練って使っています。ニカワでは縁などに色がついてしまうことがあるからです。

金属の粉については、TIN POWDER (錫粉)、STAINLESS STEEL POWDER(鋼粉)、ANTIMON POWDER(アンチモン粉)。他にも、銀、銅、鉄、アルミ、ジュラルミン、真鍮、鉛、亜鉛、ブロンズ、アルマイト(赤、ピンク、黄、緑、青)といろいろあります。似たものとしては、金属粉でではないが、カーボン、アランダム、コランダム、カーボランダム、および一部の顔料、、、、、などを使っています。

左がTIN POWDER (錫粉)、中央STAINLESS STEEL POWDER(鋼粉)、右ANTIMON POWDER(アンチモン粉)

左がTIN POWDER (錫粉)、中央STAINLESS STEEL POWDER(鋼粉)、右ANTIMON POWDER(アンチモン粉)

文:小林健二

HOME

KENJI KOBAYASHI