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自作のヴァリアブルコンデンサー

ヴァリコンは簡単な構造のものでもちゃんと機能します。

左から、ガラスに錫箔を貼ったもの、真鍮板を自在に開き具合を調節できる板の内側に取り付けたもの、太さのちがう試験管のそれぞれの外側に錫箔を貼ったものです。

自作のヴァリアブルコンデンサー。左から、ガラスに錫箔を貼ったもの、真鍮板を自在に開き具合を調節できる板の内側に取り付けたもの、太さのちがう試験管のそれぞれの外側に錫箔を貼ったものです。

ぼくの作ったヴァリアブルマイカコンデンサーです。

ぼくの作ったヴァリアブルマイカコンデンサーですが、このようにするとマイカ本来の性能はあまり期待できません。とくにスライドさせる時にマイカ同士がこすれるため、ひっかかってはがれないようにニスなどで固めておく必要があります。ニスは高周波ニスが最高ですが、ニトロセルロース系のラッカーなどで十分です。なるべく顔料などの人らない透明なものがよいでしょう。特にこのコンデンサーについては性能よりもきれいなものにしてみたかったので、ぼくはマイカを使いました。内部の導体は錫の箔を使いました。これもライデン瓶などに使われたように昔からの材料で、本来なら別に導体ならば何でもいいわけです。ただアルミ箔とくらべても革のようにしなやかで、アルミでは不可能なハンダ付けができるという利点があります。そしてなにより錫箔の落ち着いた銀色が気に入っているのです。

こういったいろいろな鉱石やニッケルやタングステンなどの金属を探しに鉱物専門店や特殊金属の店を巡るのも日常とはちょっと違って、未知の空間と出会うようで素敵です。こんなところにも工作をするよろこびがあるのかもしれません。

ここで絶縁材料について触れておきます。

普通の工作全般で使われる材料以外で、電気に関する特別なものとしては、絶縁材料が挙げられます。本来鉱石ラジオの製作だけを考えると、電庄も電流も大きくないので、厳密な指定はありません。ただ、日頃あまり手にしない材料ですが、どういうわけか美しいものが多いので、いろいろ試してみるのもおもしろいでしょう。

代表的な3種について説明します。

ベークライト、エボナイト等の棒材です。

ベークライト、エボナイト等の棒材です。

ベークライト、エボナイト等の板材。

ベークライト、エボナイト等の板材。

ベークライト(bakeute)一一板状のものは0.5mm~ 3cm厚くらいが普通で、大きさもいろいろすでにカットしたものを売っています。筒状(パイプ)や丸棒も直径2mm~10 cmくらいまであります。色は少々透過性のある黄・黄褐色・茶・こげ茶とあり、成形から時間が経つほど色は濃くなります。またこれら生地色以外にも製品として、ターミナルの頭やツマミなどには色の付いたものもあります。また布入リベークといって、なかに繊維を入れて普通のベークライト板より強度を高めたものもあります。数はあまり多くありませんが、黒ベーク板という黒色のものもあります。ベークライトは本来商品名で、材質としてはフェノール樹脂と呼ばれ、石炭酸とホルムアルデヒドにアルカリを触媒として熱を加えて作ったものです。

エボナイト(ebonite)一一前に述べたベークライトと混同している人もあるようですが、この2つはまったく違うものです。エボナイトは一種の硬質ゴムで、生ゴムに加硫といって硫黄を加えて作ります。色は黒色しかなく、その黒檀ebonyのような色から名前がついたと言われています。ただ経年するとエボ焼けといって、独特の緑がかった褐色になることがあります。形状は板、丸棒とありますが、ベーク板ほどはサイズに幅はありません。

自雲母の薄板(w15 cm)です。

自雲母の薄板(w15 cm)です。

マイカ(雲母mica)一一空気をはじめとして絶縁物はたくさんありますし、技術的に簡単と言うなら紙やセロファンもいいと思いますが、なかでもマイカは工作上美しいし、性能上も他を圧しているようにぼくは思います。

雲母は天然鉱物で鉱物学上これに属するものには本雲母群、脆雲母群等があって、実用に供されるのは本雲母群のものです。このなかには大きくわけて7種類があります。

白雲母muscovite、曹達雲母paragonite、鱗雲母lepidolite、鉄雲母lepidomelane、チンワルド雲母zinnawaldite、黒雲母biotite、金雲母phlogopiteで、日本画などで雲母末のことをきらと言うように、まさにキラキラしていてぼくの好きな鉱石の一つです。雲母はインド、北アメリカ、カナダ、ブラジル、南米、アフリカ、ロシア、メキシコ等が有名ですが世界各地で産出します。日本ではあまりとれないのでもっぱら輸入にたよっています。白雲母は別名カリ雲母といって無色透明のものですが、黄や緑や赤の色を帯びることがあります。そのうちの赤色のマイカはルビー雲母rubymicaとも呼ばれ、 とても美しいものです。比重は276~4.0くらい、硬度は28~ 3.2です。

金雲母はマグネシア雲母、琥珀雲母amber micaとも呼ばれ、比重は275~ 2.90、硬度は25~27、少々ブラウン色に透きとおり、やはりとでもきれいです。

雲母を工作に使用する際には、むやみやたらとはがさないで、最初に半分にしてそれぞれをまた半分にするというように順にはがしてゆくと厚さをそろえやすく、好みの大きさに切る時は写真などを切断する小さな押し切りでよく切れます。厚いうちに切断しようとすると失敗することが多いので、使用する厚さになった後でカットするようにした方がよいでしょう。なお工作の際、マイカの表面に汗や油をつけないように気をつけましょう。

このほか、ガラスエポキシ、ポリカーボネイトなどがあります。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

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未知のマテリアルも古典材料もぼくらを豊かにしてくれる

新地球環境学UFO

未知のマテリアルも古典材料もぼくらを豊かにしてくれる

この地球の重い大気の中でさえ、スイスイと飛んでしまう飛行物体があるとしたら、その推進システムへの興味もさることながら、フィジカルな発熱や材料破壊に耐えるボディを作りあげている物質にも、ただならぬものを感じる。しばしば”その手の本”などを見ると、U.F.O.の墜落現場などには「アルミフォイルのような色や厚みで、とても強靭でハサミなどで切ることができず、折り目をつけてもすぐに戻り、跡は消えてしまう・・・。金属のようであるが、角度によっては全くの無色になり、電気的には低電圧では不導体であるが、特殊なダイオードのようにブレークポイントを越えると、急に超電導に変貌する・・・」というような、確かにどう見ても地球上には存在しえないだろうと思える物質が発見されている。しかし、その話だけで誰も見たことのないかもしれないエイリアン・クラフトが絶対アーシアン・クラフトにならないとは限らない。

なぜなら年々「新素材」と言われるものはどんどん開発され、また生産されているからだ(最もそのような特性の物質ができたとしても、それがその飛行物体にどのように関わっているかが分からなければ何にもならないわけだけど・・・)。

「新素材」その言葉は、新しい素材という意味ではあるが、何よりも天然には本来存在していないという意味もあるだろう。チタンやセラミックなどから言われ始め、形状記憶合金、マイスナーエフェクトの極低温システム、最近では、MA法アモルファス、レアアース(メタル)の酸化したイットリウム、ユーロピウム、セリウムやサマリウム、「イーソレックス」などの形状記憶樹脂、ポリサッカロイド可食性フィルム、やゴム・エストラマー、全く枚挙にいとまがない。これらのものが、本当に地球や人間を豊かにしてくれるものであって欲しいと思いたいが、全てがそうでないにしろ、コストダウンのため、とにかく大量に生産し、できてしまったものをその後さあ何に使おう的な背景がないわけではない。必ずしも必然性や、求めることによる発露からではなく、ただテクノロジーが先行し、経済機構に流されているようにも見える。

それはまるで、歩いても行けるところを、いつの間にか早く走ることだけが目的となってしまったリレーゲームのように息つく暇もなく、ただやみくもに苦しそうに走り続けている様を感じてしまう。このようなことは、アートの世界もけっして例外ではない。それがコンセンサスであるとすれば、大衆意識の反映であるのだから、否定することはできずとも、人それぞれの中にある求めるもの、知りたいもの、作りたいものという方向よりは、もうすでにできてしまった機構やシステム、見せ方や方法、というものに機械的に反応している傾向が少しずつでも増えてきているこの国の現状を、寂しく思う人もいるかもしれない。

古典材料を使うことが、内容まで古典的にする必要がないように、新しい材料に目を向けることが、即座に過去を否定することでもないはずだ。U.F.O.を作っているものも、ぼくらの知らないものばかりではないだろう。

UFOと直接に関係しているわけではないが、絵画材料の古典的なものを並べてみた。 ハイテク材料でも面白いものはたくさんあるが、それらはまたいずれご紹介予定。

左からサンダラック、エレミ、ダンマル、マスチック、トラガカントゴム、アラビアゴム、マニラコーパル、シェラック、マダガスカルコーパル、キリン血、コロフォニー、カナディアンバルサム、ベネチアンバルサム。

絵画材料として使用する樹脂のいろいろ。左からサンダラック、エレミ、ダンマル、マスチック、トラガカントゴム、アラビアゴム、マニラコーパル、シェラック、マダガスカルコーパル、キリン血、コロフォニー、カナディアンバルサム、ベネチアンバルサム。

左からドロマイト、アンチモン、リアルガー、オーピメント、アズライト、クリソコラ、シナバー、マイカ、ラピスラズリ、マラカイト。

鉱物顔料のいろいろ。左からドロマイト、アンチモン、リアルガー、オーピメント、アズライト、クリソコラ、シナバー、マイカ、ラピスラズリ、マラカイト。

小林健二

*1990年のメディア掲載記事より抜粋編集しております。

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