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[手の宇宙]

小林健二さんは、何をしている人なのか一言で説明するのは難しい。絵も描く、家具も作る、本も書く。最近の仕事では「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」を著した。この本を書くにあたって、もちろん鉱石ラジオも作った。

東京・小石川にある工房は、天井の高い広くて白い空間だ。壁面には茶色の試薬瓶が並び、木工機械や大工道具、角材、石などが、どれも使いやすそうに整理されて、出番を待っている。中でも大工道具は、日本のものだけでなく世界各国の古いものから新しいものまで、珍しいものがたくさんある。

1997年頃の小林健二アトリエ

1997年頃の小林健二アトリエ

1997年頃の小林健二アトリエ

1997年頃の小林健二アトリエ

小林健二の道具

イングランドのコンパスプレーン(鉋)。削るものの曲面に合わせて、ネジで反り具合を調節できる。

小林健二の道具

これもイングランドのコンパスプレーン。プレーンは日本語で鉋のこと。桶などを作る時など、曲面に合わせて反りを調節して削る。

海外の珍しい鉋など

海外の珍しい鉋など。

小林さんが道具に興味を持ち始めたのは20年くらい前からだという。

絵を描くのは子供の頃から好きだった。でももっと色々作ってみたい・・・本棚一つでも、作るとなれば鋸とか道具があれば便利だと思った。そうやって必要な道具を買い足していくと、もっと道具のことが知りたくなって、大工道具屋に足を運んだ。鉋といってもいろんな種類があることを知る。世の中にはいろんな工具があって、使い方、考え方、物へのアプローチの仕方、みんな違うことがわかる。

友達になった欧米人に工具のことなんか聞くと、意外にもみんな結構詳しい。自分の家の中のことくらいは自分で直したり、作ったりする習慣が根付いているからだ。

「日本でも昭和40年頃までは、みんなそうでしたよね。いつの間にかその感覚を忘れているような気がする。」と小林さんは言う。

東京田端新町の中古道具店にて、工具を探す小林健二。

東京田端新町の中古道具店にて、工具を探す小林健二。

骨董市などでも道具を専門に出している店がある。そこで中古の道具をみる小林健二。

骨董市などでも道具を専門に出している店がある。そこで中古の道具をみる小林健二。

20年前、小林さんが工具に興味を持ち始めた頃、それはちょうど電動工具が台頭してくる時代だ。通っていた大工道具屋が『どうせ売れないから』と、鉋なんかの手道具を安く出していたこともあったという。

「無くなってしまうものは残しておきたいんです。証を残したいというか、一つの道具が持っている背景を考えただけでも、それがあるのとないのとでは失うものが全然違うでしょう。」

小林さんはこうして集めたものが自分の持ち物という意識はあんまりないという。自分がたまたま出会って、預かっているような気がする。

「生活のことを考えたら、結構高価な道具も買っていたりした。でもなくなっちゃうかと思ったら、何とかしたくなる。」

もちろん実際に使っている。全部というわけではないけれど、用途に合わせて取り出して使う。他にも日常的に使う工具には独自の加工をして使いやすくしてある。そして仕事をしていない時でも、小林さんは常に何かしらの道具を手に持って触っているという。触れなれていると、怪我をしない。道具への接し方を、手が自然に覚えていく。

今、少年工作模型のキット作りとその本の出版を計画中だそうだ。小林さんがやっている様々なことを、何かの分野でくくろうとするのは難しい。けれど願いは一つ「人間の暮らしが、自分なりに手作りできる範囲の中に戻ってきてほしい。」ということだ。

*1997年のメディア掲載記事を抜粋編集し、画像を新たに付加しています。

Kenji-Kobayashi-Tools from Kenji Channel on Vimeo.

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KENJI KOBAYASHI

創り手を勇気づけてくれる、昔の科学本

創り手を勇気づけてくれる、昔の科学本

ぼくにとって深い思い出があるとすれば、子供の時に自分で買ってた本の中にあるんだろうね。それはきっと「少年ガマジン」や「子供の科学」といった少年雑誌で、今読みかえしても実によく出来ていて、単なる漫画雑誌や少年科学雑誌ではなかったと思う。

単行本ということになると、やっぱり「空気の発見(三宅泰雄著、角川文庫)」だと思う。この本は文庫本にもなっていて今でも手に入る。いろんな意味でぼくはとっても勇気づけられるのさ。独断で言えばね、ぼくはみんなが読んだらすごく喜んぶんじゃないかなって本、まだまだたくさんあるよ。

例えば「理化実験の遊戯」や、それにつながる少年向けの科学や工作の本のことだけど、こういう本には本当にワクワクするんだ。昔はあんなにあったのに、最近はめっきり出版されなくなった気がする。毎日曜日に一話づつ52週にわたって子供に読んで聞かせると、ちょうど一年で読み終える科学の本とか、おもちゃ、怪獣、望遠鏡、カメラ、家具、そしてラジオなんかの工作の本。「透明石鹸の作り方」や「何にでもメッキができる魔法の液体の作り方」というように、不思議な出来事を工作によって体験できたりして、興味と実際がすごく近いところにあると思う。とにかくぼくにとってはこーゆう本、読んでるのって楽しいんだ。

「最も新しい理化実験の遊戯」田村明一著、慶文堂書店プレゼント業書、1円20銭(昭和2年当時)

「最も新しい理化実験の遊戯」田村明一著、慶文堂書店プレゼント業書、1円20銭(昭和2年当時)

そして「原理応用 降神術」。この本はどちらかというと奇妙な本やあぶない本に入るかもしれないけれど、その前書きには、今の言葉で言うと「降神術とは、或る手段を用いて神の霊を招き迎え、死霊を呼び起こし、時において人類以上の優等なる生物(ビーイング)たちと過去や未来について語り合う交通をすることであり、これらは他の学術の及ばない所にある」なんて具合でしょ。そして内容はその或る手段の説明なわけ。ぼくの好きな大部分の本は、随分と古いものが多いんだ。誰かが残そうとしなかったら、震災や戦争の大火をくぐってはこれなかったこんな本に囲まれているとね、何かとっても優しく励まされてる気がするんだよね。(談)

「原理応用 降神術-スピリチュアリズム-」 渋江易軒著、大学館、35銭(大正5年当時)

「原理応用 降神術-スピリチュアリズム-」 渋江易軒著、大学館、35銭(大正5年当時)

「原理応用 降神術-スピリチュアリズム-」の内容

「原理応用 降神術-スピリチュアリズム-」の内容

*1994年のメディア掲載記事より編集して紹介しております。

 

KENJI KOBAYASHI

懐かしのプラスチックモデル(1/72 スケール)

小林健二のコレクション

[彩雲]アオシマ

若き日のプラモデル

「プラモデル」はぼくにとって工作世界に触れた最初のできごとでした。家の近くにあった「ステーションホビー」という模型店で、ハセガワの零観機を百円ほどで買ったのがきっかけでした。プラモデルという呼称は、確かマルサンが付けたものだと記憶していますが、まさにPlastic Scale Modelより日本人にとってはぴったりする気がします。プラモデルは趣味工作の中でももっともポピュラーなものと勝手に思っていますが、とりわけても飛行機のプラモは今でさえとても魅力的です。

子供のころから車や戦車、船、飛行機などと、少なからずそれぞれの好きな世界が現れてくるもので、ぼくは飛行機専門でした。今回、いくつかのプラモん箱絵を紹介したく思いますが、趣味としてはまさに一人一人、偏って当然と寛容な心で眺めていただければ幸いです。

そんなわけで、ここに揚げるものは何千、いや何万とあるやも知れぬ一滴で、しかもぼく自身、特別コレクションしているわけでもないので、昭和30年代から50年代ころの手近にあるプラモの箱絵を楽しんでください。

さて、一方的にぼくの趣味について言わせていただくと、「レシプロの大戦機でスケールは1/72」ということになります。ただ昭和30年代にあってはある意味で、同じような趣向の方も何人かはおられるでしょう。

当時の飛行機のプラモについて言えば、国産ではハセガワ、マニヤ、エルエス、ニチモ、アオシマなどが記憶に残っており、次いでタミヤ、オータキ、フジミという感じです。外国製では、レベル、エアフィックス、モノグラム、フロッグなどがポピュラーで、ウイリアム、エレール、イタレリ、デルタ、そしてリンドバーグという感じでした。

ほかにもレンウォールやオーロラなど数社はあっても、好みのタイプが出ていないとどうしても目に入りません。

最初のころは零戦をセメダインでベタベタに組み立て(?)た後、当時小さなガラスのビンに入っていた、おそらくマルサンあたりのプラカラーで(8色入りくらいの)色を塗り、さらにめちゃくちゃにしてしまい、筆がすぐに固まって、とても工作をしていたというものではありませんでした。でもそんな思い出がある方は結構多いのでは?

やがて小学校も高学年になるころには、大物にも挑戦したくなりましたが、なかなか高額で手が出ません。そんな折、13歳違いの兄がハセガワの「連山」を誕生日にプレゼントしてくれたのがダメ押しとなって、恐ろしい「プラモヶ沼」に足を沈めていくこととなりました。

その上に『モデルアート』と出会い、ああ、もはや飛行機モデルの中に埋まる暮らしがいまだに続いているわけです。もちろん和紙を貼って作るゴム動力の角胴の模型飛行機やソリッドモデルにも手を出し、神保町まで行っては『モデルアート』のほか『丸』、『航空情報』、『航空ファン』や海外のプラモ雑誌を読み漁りました。

内外のプラモデルメーカー

当時すでに二式大挺がラインアップしており、さらに一式陸攻や九七式大挺(いかにもリスクが高そうな大物)などを発表していくハセガワには、子供ながら、誰でも知っている人気のファイターばかり作っているところと比べ、並々ならない敬意を持っておりました。今はなくなってしまったマニヤやエルエス二至っては「すばらしいキットですね、説明書をください」と勝手な手紙を書いたりしました。それは風邪などをひいた時に『モデルアート』やプラモの説明書を見ていたりするのが好きだったからです。記憶ではエルエスからは有料でお分けできるとい連絡をいただき、マニヤの方はそのころ会社がなくなったようでした。

そのほかレベルやエアフィックスはずいぶん作り、フロッグやエレールも手がけました。しかしどういう因果か不明ですが、当時のアオシマやリンドバーグについつい手が伸びてしまうのです。この二社には、そのころある意味で似かよった魅力があって、ある種の人をグイグイと惹きつけてしまうのです。

それはこれらの会社しか出していないような珍しいキットが多くあり、いや、もっと言うと他社が作らないようなものばかりと言っていいくらいでした。ところがそのキットの仕上がりはというと、あるモデル雑誌によれば「せめて左右胴体のハマリの位置だけでも合わせた方がよい」とか「またしてもキャノピーは氷砂糖!」とか評されているのです。けれども箱絵がいい、まったく個人的に!思わずそのほとんどを当時作ることと相成りました。

そこへ行くと、現在のインジェクションの技術はすばらしく、そのはめ合わせ制度がたかいので、接着剤がいらないのでは?と思わせるほどで、表面のスジ、シボリ、リベットの表現、材質感にいたるまでほとんど限界に近づいていると感じます。しかしながら、その高精度なモデルを見ると、胃が痛むような、かえって作ることへのプレッシャーを感じてしまうこともあるのです。

ここに揚げるプラモの箱絵たちはとても大らかに、かつてぼくを受け入れてくれたものたちです(できるなら当時850円の緑色の「連山」なども見てもらいたかった)。趣味とはどうしても個人的な思い出の宝庫となってしまいます。そんな気持ちのまま、これらのすばらしい、ときにへんてこで魅力的なキットを作ってくださった会社の人々のことを想うと、彼らは当時、ぼくも含め多くのそれほど豊かではなかった子供たちに思いっきり夢と楽しみを与えてくれたと思うのです。

かつてあるプラモ雑誌に「工場訪問」というような記事があって、それを何度も何度も読み返しながら、そんな夢を作れる仕事を招来してみたいと願ったとこがありました。そんな工場で夢を生産していた方々にこころから感謝と敬意を込めて「ありがとう」と今ここで伝えたく思います。

小林健二

小林健二コレクション

プラモデルに付随していた説明書−1

小林健二のコレクション

プラモデルに付随していた説明書−2

小林健二のコレクション

プラモデルに付随していた説明書-3

小林健二のコレクション

[飛竜キ-67]エルエス

小林健二のコレクション

[雷電21型]ニチモ

小林健二のコレクション

[零式水上観測機]ハセガワ

小林健二のコレクション

[キ-109]エルエス

小林健二のコレクション

[震雷]タミヤ

小林健二のコレクション

[はやぶさ1型]エルエス

小林健二のコレクション

[月光]レベル(アメリカ)

小林健二のコレクション

[97式重爆]レベル(アメリカ)

小林健二のコレクション

[零式52型]エルエス

小林健二のコレクション

[銀河]レベル(アメリカ)

小林健二のコレクション

[100式重爆]レベル(アメリカ)

小林健二のコレクション

[九九式双発軽爆撃機]マニヤ

小林健二のコレクション

[一式陸攻24型]リンドバーグ(アメリカ)

小林健二のコレクション

[雁型通信連絡機-神風]マニヤ

小林健二のコレクション

[アブロランカスター]エアフィックス(イギリス)

小林健二のコレクション

[フェアリーバラクーダ]ハセガワ/フロッグ

小林健二のコレクション

[アブロアンソン1]エアフィックス(イギリス)

小林健二のコレクション

[サボイアマルケッティS.M.79MK2] エアフィックス(イギリス)

小林健二のコレクション

[フォッケウルス189]エアフィックス(イギリス)

小林健二のコレクション

[アブロランカスターB.1]エアフィックス(イギリス)

小林健二のコレクション

[ハンブデン]エアフィックス(イギリス)

小林健二のコレクション

[ドルニエDo335A-6]レベル(アメリカ)

小林健二のコレクション

[ウエリントン]エアフィックス(イギリス)

小林健二のコレクション

[ハインケルHe177]エアフィックス(イギリス)

小林健二のコレクション

[ブルームントフォスB.V.141]
エアフィックス(イギリス)

小林健二のコレクション

[ショートサンダーランド3]エアフィックス(イギリス)

小林健二のコレクション

[アブルランカスターB.3]
エアフィックス(イギリス)

小林健二のコレクション

[ドルニエDo17Z-2]
レベル(アメリカ)

小林健二のコレクション

[キティーホーク]モノグラム(アメリカ)

小林健二のコレクション

[ショートスターリングB.I/3]エアフィックス(イギリス)

小林健二のコレクション

[ポテーズ631]エレール(フランス)

小林健二のコレクション

[ポテーズ63-11]エレール(フランス)

小林健二のコレクション

[メッサーシュミット410]フロッグ(イギリス)

小林健二のコレクション

[ブロッシュ152]エレール(フランス)

小林健二のコレクション

[アミオ143]エレール(フランス)

小林健二のコレクション

[ペトリアコフPe-2]エアフィックス(イギリス)

小林健二のコレクション

[ハインケルHe-111]フロッグ(イギリス)

小林健二のコレクション

[リオレオリビエLeo451]エレール(フランス)

小林健二のコレクション

[マーチンB-10B]ウイリアムズ(アメリカ)

小林健二のコレクション

[ドルニエDo-335]リンドバーグ(アメリカ)

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[ユンカースJU86D1]イタレリ(イタリア)

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[カプロニCA313/317]イタレリ(イタリア)

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[ドルニエDo17Z]リンドバーグ(アメリカ)

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[ハインケルHe219]リンドバーグ(アメリカ)

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[ツヴァイリングHe111Z-1]イタレリ(イタリア)

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[ドルニエDo217K1]イタレリ(イタリア)

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[ユンカースJU-88]リンドバーグ(アメリカ)

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[ギガントMe323D-1]イタレリ(イタリア)

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[PZL-37]マイクロ(ポーランド)

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[アエロC-3A] KP( チェコ)

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[アラッドAR-234B]リンドバーグ(アメリカ)

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