日別アーカイブ: 2016-12-15

アーティストのアトリエと道具

小林健二に道具や材料、技法のことを語らせると、そのまま本が何冊かできてしまうほど。古道具屋や工具店をのぞくのが気分転換にもなるという。

”道具マニア”だが、ただ集めているのとは違い、実践が伴っている。使い込まれた彫刻刀、ノミ、かんな・・・懇意の職人さんから譲り受けたものもあれば、道具屋で発見した江戸のもの、自分で作ったものもある。「『藤白』と書いて”とうしろ”銘を持つ刃物もある。その洒落気が心憎い」と話す。

入り口から奥を臨む。この場所は小林健二が20代に文京区に構えた最初のアトリエとなります。

小林健二最初のアトリエ

旋盤などの機械や、金属加工用の様々な工具が置かれたアトリエにて。小林健二

金属をけずったり磨いたりするグラインダー類。「ぜひ、田端新町へ行って欲しい」と語る小林健二。明治通り沿いに、中古の電動工具を扱う店が並んでいて、いいものが格安で手に入る。新品1台の値段で写真のグラインダーが全部買えるくらいだ。「特にモーターを使った工具はいい。淘汰されている。モーターの周波数とベアリングがなじんできて、新品より音がうるさくない。」という。何台も揃えておくと、いちいち砥石を付け替えなくても済むので便利。

まるで作品のように美しい金工用のゲージ。やはり中古を購入。

絵の道具一式。絵の具を意味なく無駄にしたくないので、パレットはいつも綺麗にしておく主義。描くというより塗るに近い状態になると筆より指が活躍する。先端に曲玉のような石のついたスティックはバニッシャー(テーブルの上)。本来は金箔を磨くものでメノー棒と言われるが、小林健二は主として鉛の艶出しに使用。細いピンはブロックス社製アンバーニス(テーブルの上)。フランドル絵画の堅牢な絵肌を作ったと言われるもの。「真偽はわからないが夢があるから」と手に入れた。

小林健二の道具の引き出しの一部。かんなやノミ

小林健二の道具。彫刻刀の引き出し。

*1991年のメディア掲載記事より抜粋編集し、アトリエ全体の画像以外は記事より複写しております。現在、小林健二のアトリエにある道具の数もかなり増え、美しく手いれされた古今東西の道具たちは、今でも大切に扱われています。

記述にある田端新町に関する記事も下記にリンクしておきます。

ぼくの遊び場

現時点ではかなりお店の数も減っているようですが、興味があれば自転車などでまわってみるのも面白いかもしれません。というのは明治通り沿いに点在しているため、歩くには少々道のりがあるようです。この取材当時は、中古の機械を扱うお店が並んであったそうです。

KENJI KOBAYASHI