固定式鉱石検波器は鉱石ラジオが最盛期を迎えた時代にもっとも普及しました。
フォックストン型鉱石検波器を作る前に、手慣らしとしてダイオードを使用したタイプを作ってみます。
ダイオードによる固定式検波器の製作
材料:プラスチックパイプ1本(太さ10mm長さ3-4cm)・ホック(スナップボタン)用オス金具2個・ゲルマニュームダイオード1本・金具用真鍮板1.5mm厚3cmくらい1枚と1mm厚8mmX7cmくらい1枚
次にこのフォックストンをパネルにつける金具を作ってみましょう。
見るからに簡単な金具なのですが、今はもちろん市販されていません。この金具はバネのように弾力をもたせ、フォクストンの着脱をするために0.5mmの薄い真鍮板で作ります。そしてホックの出っ張りを入れて固定するため4mmの穴をあけるのですが、工作にはこんな簡単そうなところに思わぬ危険が隠れています。
ここに5mm厚と0.5mm厚の金属板があったとします。この板に直径4皿mの穴をあけようとしたとき、どちらのほうがあけやすいでしょう。ちょっと考えると薄いほうと思いがちですが、実はそうではありません。厚いほうは時間をかければハンドドリルでもいつかはあきます。しかし薄い金属板だと、ドリルが貫通しようとした瞬間、ドリルが材料に食い込み上部のほうへ急に持ちあげられたりして材料が変形したり、ひどい場合はドリルにからまって回転してしまい、材料を押さえていた手に思わぬケガをする危険があります。電動工具を用いて起こる事故の大半は、その危険な状態をイメージできないところから起きるのです。ですからここでは事故の少ない安全な方法を例として示してみたいと思います。
固定式鉱石検波器の製作
鉱石ラジオの要とも言うべき鉱石検波器を製作します。ここでは固定式のものを作ります。上記でダイオード使用の検波器を作ったのとほぼ同じ方法です。
材料:方鉛鉱の小さく割ったかたまり3~5 mmくらいのもの 1個・ホックのオス型のもの 2個・プラスチックの筒 外径10mm×35mmくらいのもの 1本・スプリング 筒の内径より少し細めのあまり強くないもの 1本(ここでは作ってみます)・取り付け金具 アルミのL字形押出材の15mmX15 mm 厚さ3mm長さ12mm
ハンダが冷えて固まれば作業は終了です。しかし、すぐに鉱石がはずれてしまうようなら、もう一度作業を繰り返してください。ただ、あまり鉱石を熱しすぎてしまうと、感度が落ちることがありますから注意してください。
次にスプリングですが、内径より少し細めの市販のものを使います。材質はステンレスの線の細いものがいいでしょう。内径にくらべてあまり細いスプリングを使うと、スプリングの先が鉱石にうまく当たってくれないばかりか、中で曲がってしまって安定しません。作例では筒の内径が8mmで、市販のスプリングでぴったりのものがなかったので、作ることにしました。スプリングの材料は作例のようにタングステン線の0.2 mmくらいが理想ですが、入手がむずかしいのでステンレス線、あるいはニクロム線の細いもの(0.5 mmくらいまで)を使います。
内径より2まわりくらい小さいネジをゲージにします。手をはなすと少し広がりますので、あとは引っ張ったり押したりねじったりして大きさを合わせます。鉱石に当たるほうの端は、中心に尖った線の先がくるようにします。
このようにして作った固定式鉱石検波器は、強く落としたりするとスプリングの位置が変わって感度を失うこともあります。そのようなことも考えて、昔は筒の中ほどに前もって2mmくらいの穴をあけておき、そこから針によって中のスプリングを動かして、感度のよい点に再び安定させたようです。
またいくつか作っておいて、いろいろ付け替えをして感度の違いを楽しんでみてください。
*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。