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鉱石と光

鉱石と光

鉱石検波器には検波できること以外にも、いくつかの面白い性質があります。そのひとつは光による起電効果です。これは簡単に言えば、鉱石検波器に光を当てるだけで、電池のように電圧が発生するというものです。

このことは実験によって容易に確かめられます。鉱石検波器の鉱石につながる端子と金属の線につながる端子にテスターのリードポイントを当てて、直流電圧(D.C.V.)の一番低いレンジに合わせます。そして鉱石検波器に光を当てたり遮ったりしてみるとメーターが触れるのが確認できます。

ゲルマニュームダオードで実験

ゲルマニュームダオードで実験

ゲルマニュームダイオードで実験の様子。テスターのデジタル数字の変化。

ゲルマニュームダイオードで実験の様子。テスターのデジタル数字の変化。

もうひとつの方法は、検波器のさっきと同じところにクリスタルイヤフォンかハイインピーダンスのヘッドフォンを当てておいて、鉱石の真上あたりで影をせわしなく動かしてみます。カリッと音がするでしょう。この方法であまりうまく聞こえない場合、もう少し手間はかかりますが電圧の発生をもっとはっきりした音として確認する方法があります。たとえばプロペラをつけた小さなモーターやちょっと太めの輸ゴムなどを用意します。そしてプロペラを回したり、ピンと張ったゴムを弦のように指ではじいたりして、規則的に早く動く影を作り鉱石の上のところに落ちるようにします。するとブーンとかポンポンとか音が聞こえると思います。影の動くスピードが周波数を決めるようにして交番電流を作り、それが受話器で音に変わって聞こえるのです。

これはまた、ゲルマニウムダイオードでも確かめることができます。昔風のガラスの部分の大きなダイオードほど効果は大きいですが、テスターの感度が高く、光が強ければ現在のものでも反応が出ると思います。ただなるべく熱は伝えないように朝の日光などで実験するとよいでしょう。

また鉱石によってトランジスターのような鉱石増幅器を作ることも、実験上なら不可能ではないと思います。これは鉱石に2本の針を紙1枚のスペースをあけて立てて実験します。詳細は長くなるので省きますが、これによって安定した作動をする鉱石増幅器ができたとしたら、オールクリスタルスーパーラジオでスピーカーが鳴るような受信機ができるかもしれません。

電子工作であると便利なテスターなど。

L・Cメーター

実際工作をしていく上で、部分品まで自作する場合、コンデンサーの容量やコイルのインダクタンスを計算式によって割り出してゆくのはかなりめんどうなことですし、またあまり高い精度は望めません。そんな時にL・Cメーターといわれる一種のテスターがあると面倒な計算から解放されますし、部分品をつくっている途中でも容量やインダクタンスを実測したりできるので、安心して工作に熱中できます。一見できそこないに見えるコンデンサーでも、テスターにデジタルで数字が表示されると妙にりっぱに見えるものです。それに工作者の不安を取り除き、カット&トライ(切ったり貼ったりして調整しながら作ること)を助けてくれます。ですから計算式によってコンデンサーやコイルのだいたいの大きさや作り方をイメージしておき、実作に入ってからはL・Cメーターによってそれぞれの定数まで追い込んでいけるようにすれば、 一段と工作も深まっていくと思います。

L・Cメーターはあまり使わない場合には高価なものと感じられることもあるかもしれませんが、電子工作をする上では、通常のテスターとともにとでも役に立つものです。

左はL・C・Rメーターで、コイルのインダクタンス、コンデンサーのキャパスタンスを直読で計れ、またRのレンジではインピーダンスを計れます。右はDMTデジタルマルチテスターと呼ばれ、直流抵抗、直流の電流と電圧、交流の電流と電圧などが計れるのでこれもまた便利です。

左はL・C・Rメーターで、コイルのインダクタンス、コンデンサーのキャパスタンスを直読で計れ、またRのレンジではインピーダンスを計れます。右はDMTデジタルマルチテスターと呼ばれ、直流抵抗、直流の電流と電圧、交流の電流と電圧などが計れるのでこれもまた便利です。

*この記事は、小林健二著「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」より抜粋編集しております。

[鉱石式送信機]と[1930年当時の鉱石検波理論](関連記事)

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