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人工結晶

硫酸アンモニウムカリウムと硫酸アルミニウムクロムなどよって育成された結晶。(小林健二の結晶作品)

*「」内は小林健二談

人工結晶を作りはじめたのはいつ頃くらいですか?

「1992年くらいからですね。」

著書の『ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)』にもありましたけど、人工結晶は鉱石ラジオのクリスタル・イヤフォン用に作りはじめたんですか?

「そうですね。その時は圧電結晶を作りたくて、ロッシェル塩(酒石酸ナトリウムカリウム)を買ってきて結晶を作ってみようと思ったんです。とにかく実験ができればいいなと思っていましたから、大きいものが作りたかったですね。

その後他の物質で結晶ができないかとか、自然石を母岩として結晶がくっついていたら綺麗だろうなとか思ったりして、だんだんハマって行きました。色々研究して実験しました。でも、塊を作りたいと思っても、平べったくしかならなかったり思い通りにはならない。まあ、その平べったいのは平べったいので美しいものなんですけどね(笑)。」

母岩に結晶の素となる種のようなものを付けとくんですか?

「その場合はまず種結晶を作るところからはじめて、母岩につけ、その後育成溶液の入った深い容器におくと、大きく成長していくんですね。あるいは、容器の中に石を入れておくと、ザラザラとした母岩の表面に自然と結晶ができていたりします。その時に水溶液の成分を変えると色が変わったりするけど、それぞれの相性が合わなかったり慌ててやったりすると、大抵はシャーベット状になってダメになります。それで何度悔しい思いをしたことか(笑)。

二ヶ月ほど旅行にに行っている間に、40も50も容器の中で人工結晶を作ってたんですけど、帰ってみると一つだけ変わった色の溶液のものがあって、何も結晶ができていなかった。他のはできていたのに一滴だけ違う水溶液がポトンと落ちたから、何もできなかったんですね。それは水溶液を捨てる時にたまたま混ざって一瞬にして何もできなかった容器の水溶液と同じ色に変わったから、わかったんですけど。

そんなことの積み重ねですね。他にも温度や湿度、色々気をつけなければなりませんね。」

硫酸銅と硫酸コバルトの結晶。(小林健二の結晶作品)

クロム酸リチウムナトリウムカリの結晶。(小林健二の結晶作品)

ロッシェル塩などの結晶。(小林健二の結晶作品)

ー手探りの実験結果

「何でもかんでも混ぜれば結晶になるかという訳ではないんです、、、。

関係資料なんか色々調べてみました。人工結晶っていうと、人工宝石などを作るベルヌーい法やフラックス法、人工水晶などを作る熱水合成法、その他半導体結晶を製作するための資料はあるんですけど、ちゃんとした実験設備がなければ無理なものばかりです。

しかも、水成結晶育成法については、それこそイヤフォンなどの圧電結晶をつくるための資料くらいしかなくて、いかに大きなスのない単結晶のものを作るかといった内容ばかり。個人で製作するにはあまりにも大規模なものが中心になってしまいます。例えば形が美しかったり、色々な色をしたり、群晶になったりすることは本来の目的ではないわけですから、ぼくなんかが求める資料は、基本的には見つかりませんでしたね。

だから最初は圧電結晶に使えそうなものを片っ端から選んで、あれはどうだろう?これはどうだろう?と手始めに実験していきました。そうして作れる結晶を探して行ったわけです。どこにもそんな実験については載っていないから手探りです。

一つ一つの実験にどうしても時間がかかるるし、実際結果が見えてくるまで何年もかかりますよね。

でもいずれ、もっと安定した方法で結晶を育成できるようになったら、人工結晶に興味がある人に教えてあげられるかもしれない。盆栽を作るような気持ちで、好きな人には結構楽しいかもしれない。」

硫酸アルミニウムカリウムなどの結晶。(小林健二の結晶作品)

鉄系とクロム系の物質によって結晶化させたもの。(小林健二の結晶作品)

リン酸カリと黄血塩などの結晶。(小林健二の結晶作品)

ミョウバンと赤血塩などの結晶。(小林健二の結晶作品)

コバルトを含むロッシェル塩などの結晶。(小林健二の結晶作品)

蛍光性の物質を混入している硫酸アンモニウムナトリウムの結晶。(小林健二の結晶作品)

[人工結晶]

例えば水晶は、573度よりも低温で安定な低湿型と、537度から870度の間で安定な高湿型があるが、結晶が生まれるには、高圧、高温が必要とされることが多い。人工水晶には地球内部の環境を半ばシュミレートした高温・高圧によって作られたものもあるが、ここで取り上げている人工結晶は、常温で水成培養できるものである。

小林健二氏によって様々な薬品を使って、常温で人工結晶を作る実験が行われており、今回その成果もいくつかが紹介されている。

中には全長30cmほどの単結晶、直径20cm以上の結晶など、かなり大きなものも作られているし、色味としても様々な美しいが生まれ落ちている。

*2002年のメディア掲載記事より編集抜粋しております。

KENJI KOBAYASHI

[銀河通信事業]という幻

銀河通信社製の鉱石ラジオなどを作るための部分品

銀河通信社製の鉱石ラジオなどを作るための部分品

[キット開発者から見た側面]

ぼくが子供時代を過ごした昭和三十年代は、今と比べるとそれほど慌ただしくなく、一般的に貧しくありながらも子供にとってはワクワクしたりできる事がたくさんあったように思います。

ビー玉やメンコ、カンケリ、駄菓子屋通いといった遊びはもちろんでしたが、ぼくにとっては科学博物館や模型店に行くことは特別でありました。ただ今と比べれば当時は多かれ少なかれ誰しもが、模型や工作に接する機会が割合あったのです。それは文房具店や本を扱う店でも模型材料を置いているところが多く、また大人用の専門的な模型店もかなりありました。

それ以外にも少年雑誌などには、切手コレクション、天体望遠鏡や顕微鏡、自転車等の広告と共に、必ず模型や科学キットの関係も載っていたものです。ぼくが高校へ通う頃の昭和四十年代も後半になると、理由はいろいろと考えられますが、急激にそれらの店は少なくなって行きました。その頃時々訪れる「友人の誕生日」などのプレゼントを贈る時に、ちょっとしたキットを作ったりすると思いのほかウケがよく、一種の通信販売をする会社のようなスタンプを消しゴムで作ったりしていました。キットと言っても紙ヒコーキであったり、簡単なモーター、あるいは厚紙で作る筆入れや箱といったたわいの無いものばかりでしたし、説明書は手書きやガリ版刷りといった具合です。

屋号は「コバケンコメット社」というように、やはり子供の頃より好きで作っていたプラスチックモデルの日本の飛行機名である、「彗星」「流星」「銀河」といったものをその都度使っていたと言うわけです。

これら美しい名前の飛行機が実は悲しい時代に造られ、そしてたいそうつらい任務に付いていた事も知っていたことが、ぼくにとってそれらの呼称に対して一種の感慨を込めさせていた次第なのです。

鉱石ラジオキット「銀河1型」

鉱石ラジオキット「銀河1型」

やがていつのまにか二十代も後半になった頃より鉱石ラジオに興味を持つようになり、いろいろとオモチャのようなものを作ったり、友人へのプレゼントに「銀河通信社謹製」といった立派な社名?を使ったりするようになったのです。

この半ば冗談のようなママゴトのようなホビーは、十年程前鉱石ラジオの本を書く頃にはすでに結構友だちの中では人づてに伝わっていて、いっそのこと本当にキットを作ってみようと、無謀な考えがよぎることが多くなって行きました。

気持の中では遥かな無いはずの世界に引きずり回されていたわけですから、どうしても空想のお店でありはしてもいろいろと想像してしまう事もあったわけです。

それはまるで子供の頃の模型店のようなあの一見雑然としながらも、木製の引き出しや ガラスケースの中に事細かに木や金属、プラスチック等の材料、モーター、トランス、プラモデルや組み立て工作の数々が整然と並んでいて、そんな中で日永一日店主としていろいろな子供たちや専門的な工作好きと話をしたり、時間の空いた時には自分も工作に熱中する、店自身は古くて小さな木造の小屋のようでも、売り場と住居は別れていて清潔で好きなものばかりに囲まれている、そんな日常を想像して勝手に悦に入っていたのです。

時より届く遠方からの少年たちの注文や質問に手紙を添えて通信販売をする、もしそんな暮しができるのだったらいったいどんなだろうと、まるで余生の生き方を考えるように思い巡らしていたのです。しかしながら何せ合間を縫ってのホビーの延長で今に至り、中々アイテムを増やすことができません。日々の時間の中から最も優先的に注文に答えてゆくのは、想像していた昔の模型製作会社のイメージとは随分異なりますが、時々中学生から励ましの便りをもらったりすると、やはりうれしくなるものです。

既にキットらしきものを作りはじめて三十年余りが経過してきましたが、もしぼくのようなものを「キット開発者」と呼んでもらえるとしたら、この方向の製品を実際的に作ってゆくという事は、なかなか難しいところもあるのは事実です。たとえばキットを木やベークライトの材質で作りたいと思ったことによるパーツの入手不足、あるいは自作しなければならないものも随分とあって、ワークショップなどから急に数百もの注文が入ったりすると、それはもう昔の家内工業のような状態に落ち入る事もあるでしょう。それと発足時より採算をあまり考慮していなかったのが、開発困難さを決定的にする事もあるのです。

只、出来る限り合理性や科学原理の説明的なキットではなく、また一時代に対する懐古的なだけでもないようなものを目指しながら新しいキットを作り足して行きたいと願っています。

インターネットウェブに銀河通信を立ち上げて今年でおよそ七年になります。隠れているようなサイトなのにどこかから訪れる人々たちがいて、そのためこれからもキット開発?の継続を考えています。

本当は「風のフジ丸」から「分け身の術」を教えてもらえればとも思うのですが(笑)、今まで通りゆっくりとやっていこうとも思っています。しかし、いつかは何処かの町の片隅にて駄菓子屋とも模型屋とも見える風な木の造りで、小さなショーウインドウと硝子の入った引き戸の建具のある幻のお店を作ってみたいと夢みています。水色のトタンの看板には青色のペンキで「少年少女向模型各種 不思議製品多数」等と書かれてあり、その横には小さく「銀河通信社」と書いてあるような・・・。

2006年春

(一部当初の原稿を編集しています)

当初の頃などはガリ版刷りの説明書が多かったので、今でも多少その感じを残した手書きのものにしている。しかしぼく自身、字が下手なので、読みづらそうなものにはタイプ文字に変えてある。

当初の頃などはガリ版刷りの説明書が多かったので、今でも多少その感じを残した手書きのものにしている。しかしぼく自身、字が下手なので、読みづらそうなものにはタイプ文字に変えてある。

 ゲルマニウムダイオードとバリコンのセットにはエナメル線が付いていて、トイレットペーパーの芯などに巻いてコイルにしたり、それぞれ工夫して作るようになっている。右下は作例の一つ。

ゲルマニウムダイオードとバリコンのセットにはエナメル線が付いていて、トイレットペーパーの芯などに巻いてコイルにしたり、それぞれ工夫して作るようになっている。右下は作例の一つ。

キットのパーツ類などを整理したりダミー作りのための場所。自分が[キット開発者]という幻想に入り込むためにあるような一角かもしれない。

キットのパーツ類などを整理したりダミー作りのための場所。自分が[キット開発者]という幻想に入り込むためにあるような一角かもしれない。

実際にキットを製作する上でいろいろな自作した道具が必要と成る。例えばエナメル線を一定の長さに巻き取るための治具の一例。

実際にキットを製作する上でいろいろな自作した道具が必要と成る。例えばエナメル線を一定の長さに巻き取るための治具の一例。

パネルに多数の違った径の穴をあける時にも治具は必要となる。

パネルに多数の違った径の穴をあける時にも治具は必要となる。

[銀河1型]と名付けた製品のプロトタイプ。厚紙や色紙、あるいは手で描いたりして様子をみる。

[銀河1型]と名付けた製品のプロトタイプ。厚紙や色紙、あるいは手で描いたりして様子をみる。

最終的に細かな部分まで決定したら、印刷所に出す原稿や製函屋への金型の発注、そして部品の調達を確認してキットを製品化してゆく。

最終的に細かな部分まで決定したら、印刷所に出す原稿や製函屋への金型の発注、そして部品の調達を確認してキットを製品化してゆく。

[銀河1型]の内部。スパイダー式コイルの巻き枠に色の違ったエナメル線で巻の異なる部分を平易にと考えたが、段々と色エナメル線の入手が難しくなってきた。

[銀河1型]の内部。スパイダー式コイルの巻き枠に色の違ったエナメル線で巻の異なる部分を平易にと考えたが、段々と色エナメル線の入手が難しくなってきた。

[彗星1型]のキットは鉱石ラジオが生まれた当時のように黒ベークライト製のパネルやツマミなどを使用し、筐体は木製にしている。

[彗星1型]のキットは鉱石ラジオが生まれた当時のように黒ベークライト製のパネルやツマミなどを使用し、筐体は木製にしている。

彗星1型の検波器は真鍮とタングステンのスプリングでできている。

彗星1型の検波器は真鍮とタングステンのスプリングでできている。

鉱石ラジオキット[彗星1型]

鉱石ラジオキット[彗星1型]

鉱石ラジオキット[彗星2型]

[彗星2型]は当初ある博物館でのワークショップのために作ったものなので、作る人たちにもなるべく楽しんでもらえるようにとフロントパネルはベニヤ板にし、好きに色を塗って仕上げてもらうようにと考えた。

検波器をいかにして簡単に作れないかと工夫した例

検波器をいかにして簡単に作れないかと工夫した例

鉱石ラジオキット[銀河3型]

鉱石ラジオキット[銀河3型]

銀河3型の内容

銀河3型の内容

[銀河3型]の出来上がり

[銀河3型]の出来上がり

銀河3型のプロトタイプの裏側、穴の位置決めのケガキ線などが見える。

銀河3型のプロトタイプの裏側、穴の位置決めのケガキ線などが見える。

[銀河2型]のキット内容

[銀河2型]のキット内容

[銀河2型]を作ってみる。まずはサンドペーパーでコイルを巻くための紙筒のフチや板の表面や角をなめらかにすることから始める。

[銀河2型]を作ってみる。まずはサンドペーパーでコイルを巻くための紙筒のフチや板の表面や角をなめらかにすることから始める。

コイルの巻き始めや巻き終わりの固定のため、穴を開けているところ。すでに位置は鉛筆で印しがしてある。写真では見やすくするために大きめの穴があいている。

コイルの巻き始めや巻き終わりの固定のため、穴を開けているところ。すでに位置は鉛筆で印しがしてある。写真では見やすくするために大きめの穴があいている。

ニスを巻き筒に塗っているところ。このようにすることでベークライト製の筒のような感じにもなり、強度が出る。薄く何回もウラオモテを乾かしては塗るようにする。 キットに筆は付属していない。乾かす間、筆はラップで包んでおき、洗浄には燃料用アルコールを使う。

ニスを巻き筒に塗っているところ。このようにすることでベークライト製の筒のような感じにもなり、強度が出る。薄く何回もウラオモテを乾かしては塗るようにする。
キットに筆は付属していない。乾かす間、筆はラップで包んでおき、洗浄には燃料用アルコールを使う。

木の板にもそれぞれ3回塗ってもまだ少しニスが残っている。とにかく時間をかけてニスを塗り終えてから、最低1日以上置いてから次の作業に入る。じっくり仕上げていきたいキットである。

木の板にもそれぞれ3回塗ってもまだ少しニスが残っている。とにかく時間をかけてニスを塗り終えてから、最低1日以上置いてから次の作業に入る。じっくり仕上げていきたいキットである。

エナメル線を巻き始める。方向はどちらでも構わないが、ゆっくり丁寧に巻くのがコツ。このコイルはソレノイドコイルと呼ばれるタイプで一見スパイダーまきのものよりありふれて見えるが、特性はよく、ただ巻くことも思いのほか難しい。ほぐしたエナメル線は写真のように手に通したりして絡まないように注意する。

エナメル線を巻き始める。方向はどちらでも構わないが、ゆっくり丁寧に巻くのがコツ。このコイルはソレノイドコイルと呼ばれるタイプで一見スパイダーまきのものよりありふれて見えるが、特性はよく、ただ巻くことも思いのほか難しい。ほぐしたエナメル線は写真のように手に通したりして絡まないように注意する。

図のようにタップを作る。その後もう一度タップを作り巻き上げてゆく。

図のようにタップを作る。その後もう一度タップを作り巻き上げてゆく。

残してあるニスを塗って巻きを固定する。そして1日以上乾燥させる。

残してあるニスを塗って巻きを固定する。そして1日以上乾燥させる。

コイルの出来上がり

コイルの出来上がり

コイルを板に取り付ける位置に付属の接着剤でスペーサーの厚紙を貼る。

コイルを板に取り付ける位置に付属の接着剤でスペーサーの厚紙を貼る。

バリコンボックスの底板を外して画鋲で固定し(この時にボンドの残りを併用しても可)、検波器となる部分も穴にはめ込む。

バリコンボックスの底板を外して画鋲で固定し(この時にボンドの残りを併用しても可)、検波器となる部分も穴にはめ込む。

ターミナル部分へのためにリング状にエナメル線を加工したり、ハンダ付けして余分な線をカットしておく。

ターミナル部分へのためにリング状にエナメル線を加工したり、ハンダ付けして余分な線をカットしておく。

検波器の針となる部分はすでに出来上がっているので、説明図にしたがってあらかじめ曲げておく。

検波器の針となる部分はすでに出来上がっているので、説明図にしたがってあらかじめ曲げておく。

検波器はアンテナやアースを指定通りにした後、クリスタルイヤフォンで聞きながら細かな調整をする。

検波器はアンテナやアースを指定通りにした後、クリスタルイヤフォンで聞きながら細かな調整をする。

[銀河2型]の完成の一例(左)とおよそ10年前に作ったプロトタイプ

[銀河2型]の完成の一例(左)とおよそ10年前に作ったプロトタイプ

これからはもっと本格的なキットも開発してみたいと考えている。例えば金属製の鍛連エアバリコンや鉱石ラジオの初期に付いていたダイヤルを使ったものなど。

これからはもっと本格的なキットも開発してみたいと考えている。例えば金属製の鍛連エアバリコンや鉱石ラジオの初期に付いていたダイヤルを使ったものなど。

二重絹巻線などといった材料を用いたキットも考案してみたい

二重絹巻線などといった材料を用いたキットも考案してみたい

二重絹巻線は裸銅線の上に二重に絹糸を巻いて絶縁しているものだが、もはや国内ではバリコンやダイヤルと同様、まとまった量を確保するのは難しい。

二重絹巻線は裸銅線の上に二重に絹糸を巻いて絶縁しているものだが、もはや国内ではバリコンやダイヤルと同様、まとまった量を確保するのは難しい。

検波器用にと考えている透質な鉱石は、品質や大きさを一定に保つのは難しい。しかし、それほどの数は製作できないが求める方の声が多く、限定でいずれ発表したいと考えている。

検波器用にと考えている透質な鉱石は、品質や大きさを一定に保つのは難しい。しかし、それほどの数は製作できないが求める方の声が多く、限定でいずれ発表したいと考えている。

結晶のキットなどを計画する時には、なるべく安全で美しく誰にでも作れるようにと考えるため、たくさんの薬品を試すことになる。新品の試薬は保持性の高いポリ容器に入って売られているが、自分の趣味でわざわざガラス製の壜に入れ替えて使用している。 (もちろん薬品お特性に応じて密閉性を考慮している)

結晶のキットなどを計画する時には、なるべく安全で美しく誰にでも作れるようにと考えるため、たくさんの薬品を試すことになる。新品の試薬は保持性の高いポリ容器に入って売られているが、自分の趣味でわざわざガラス製の壜に入れ替えて使用している。
(もちろん薬品の特性に応じて密閉性を考慮している)

[赤色結晶育成キット] (ルビーのように光に透かすと赤色に輝く結晶が育成できる)

[赤色結晶育成キット]
(ルビーのように光に透かすと赤色に輝く結晶が育成できる)

[硝子結晶育成キット]の内容

[硝子結晶育成キット]の内容(現在で攪拌棒はプラスチック製のスプーンに変わっている)

説明書にしたがって湯と白色の粉を容器で溶かす

説明書にしたがって湯と白色の粉を容器で溶かす

小瓶に入った「色の素」と呼ばれる薬品を入れる。多ければ針状に、少なければ塊状に結晶する。

小瓶に入った「色の素」と呼ばれる薬品を入れる。多ければ針状に、少なければ塊状に結晶する。

急冷しないようにタオルなどをかけ、温度変化の少ない場所に静かに置いておく。

急冷しないようにタオルなどをかけ、温度変化の少ない場所に静かに置いておく。

1日以上放置する途中で、あまり容器を動かしてはいけなが、母岩に結晶が出来始めたところを撮影してみた。

1日以上放置する途中で、あまり容器を動かしてはいけなが、母岩に結晶が出来始めたところを撮影してみた。

ペットボトルの底で結晶した硝子結晶の一例

ペットボトルの底で結晶した硝子結晶の一例

硝子結晶と言っても硝子そのものではないが、ガラスの容器の中で育成を続けてもおもしろい。

硝子結晶と言っても硝子そのものではないが、ガラスの容器の中で育成を続けてもおもしろい。

*2006年のメディア掲載記事より抜粋し一部編集しております。

reblog:銀河通信より転載「幻的銀河通信事業」

KENJI CHANNEL

 

 

[手の宇宙]

小林健二さんは、何をしている人なのか一言で説明するのは難しい。絵も描く、家具も作る、本も書く。最近の仕事では「ぼくらの鉱石ラジオ(筑摩書房)」を著した。この本を書くにあたって、もちろん鉱石ラジオも作った。

東京・小石川にある工房は、天井の高い広くて白い空間だ。壁面には茶色の試薬瓶が並び、木工機械や大工道具、角材、石などが、どれも使いやすそうに整理されて、出番を待っている。中でも大工道具は、日本のものだけでなく世界各国の古いものから新しいものまで、珍しいものがたくさんある。

1997年頃の小林健二アトリエ

1997年頃の小林健二アトリエ

1997年頃の小林健二アトリエ

1997年頃の小林健二アトリエ

小林健二の道具

イングランドのコンパスプレーン(鉋)。削るものの曲面に合わせて、ネジで反り具合を調節できる。

小林健二の道具

これもイングランドのコンパスプレーン。プレーンは日本語で鉋のこと。桶などを作る時など、曲面に合わせて反りを調節して削る。

海外の珍しい鉋など

海外の珍しい鉋など。

小林さんが道具に興味を持ち始めたのは20年くらい前からだという。

絵を描くのは子供の頃から好きだった。でももっと色々作ってみたい・・・本棚一つでも、作るとなれば鋸とか道具があれば便利だと思った。そうやって必要な道具を買い足していくと、もっと道具のことが知りたくなって、大工道具屋に足を運んだ。鉋といってもいろんな種類があることを知る。世の中にはいろんな工具があって、使い方、考え方、物へのアプローチの仕方、みんな違うことがわかる。

友達になった欧米人に工具のことなんか聞くと、意外にもみんな結構詳しい。自分の家の中のことくらいは自分で直したり、作ったりする習慣が根付いているからだ。

「日本でも昭和40年頃までは、みんなそうでしたよね。いつの間にかその感覚を忘れているような気がする。」と小林さんは言う。

東京田端新町の中古道具店にて、工具を探す小林健二。

東京田端新町の中古道具店にて、工具を探す小林健二。

骨董市などでも道具を専門に出している店がある。そこで中古の道具をみる小林健二。

骨董市などでも道具を専門に出している店がある。そこで中古の道具をみる小林健二。

20年前、小林さんが工具に興味を持ち始めた頃、それはちょうど電動工具が台頭してくる時代だ。通っていた大工道具屋が『どうせ売れないから』と、鉋なんかの手道具を安く出していたこともあったという。

「無くなってしまうものは残しておきたいんです。証を残したいというか、一つの道具が持っている背景を考えただけでも、それがあるのとないのとでは失うものが全然違うでしょう。」

小林さんはこうして集めたものが自分の持ち物という意識はあんまりないという。自分がたまたま出会って、預かっているような気がする。

「生活のことを考えたら、結構高価な道具も買っていたりした。でもなくなっちゃうかと思ったら、何とかしたくなる。」

もちろん実際に使っている。全部というわけではないけれど、用途に合わせて取り出して使う。他にも日常的に使う工具には独自の加工をして使いやすくしてある。そして仕事をしていない時でも、小林さんは常に何かしらの道具を手に持って触っているという。触れなれていると、怪我をしない。道具への接し方を、手が自然に覚えていく。

今、少年工作模型のキット作りとその本の出版を計画中だそうだ。小林さんがやっている様々なことを、何かの分野でくくろうとするのは難しい。けれど願いは一つ「人間の暮らしが、自分なりに手作りできる範囲の中に戻ってきてほしい。」ということだ。

*1997年のメディア掲載記事を抜粋編集し、画像を新たに付加しています。

Kenji-Kobayashi-Tools from Kenji Channel on Vimeo.

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KENJI KOBAYASHI

[すすめ!永遠の科学少年]

[サイラジオ:透質結晶受信機(PSYRADIOX:ICE CRYSTAL RECEIVER)] 木、合成樹脂、電子部品、他 (透質結晶が青く光りながら回転し、同時にラジオも受信する)

[サイラジオ:透質結晶受信機(PSYRADIOX:ICE CRYSTAL RECEIVER)]
木、合成樹脂、電子部品、他
(透質結晶が青く光りながら回転し、同時にラジオも受信する)

ー実験や工作は自分自身を見つめることでもあるんだ

小林さんはオブジェ的な魅力をもった作品の製作や、『ぼくらの鉱石ラジオ』をはじめとした著作を通して、実験、工作に対するこだわりの姿勢を貫いてきた。

小林健二「僕らの鉱石ラジオ」出版:筑摩書房

小林健二「ぼくらの鉱石ラジオ」出版:筑摩書房

小林健二「ぼくらの鉱石ラジオ」出版:筑摩書房

小林健二「ぼくらの鉱石ラジオ」出版:筑摩書房

「通常、日本語で”実験”といった場合、普通の人には、化学的な薬品の反応をみるといったような意味合いが強いかもしれない。だけどぼくは、”実験する”ということは、何かに向かい合って行こうとする姿勢みたいなものだと思う。つまり、人間が森羅万象を理解して行こうとする時に関わり合う”通路”、または”手続き”と言えばいいのかな。」

ー顕微鏡ひとつで、身の回りも世界が変わる

枯れた草に火をつけるということも、古代人にとっては、生きていく上での重要な”実験(試み)だった。だからみんなもあまり難しく考えないで、身近なところから始めてみてほしい、と小林さん。例えば、忙しい日々のさなか、ぽっかりと自分の時間がとれた時などに、机の上のものを顕微鏡で覗いて見るだけでもいい。

「新品の精密な顕微鏡を買おうものなら、下手な中古車ぐらいはかかるから、学童用の顕微鏡。または虫めがねでも十分。紙が細かい繊維でできていることを頭では知っていても、現実に目の当りにすると、多分驚くと思う。そういう新たな視点、見方から触発されたり、人生観が深まることだってあるからね。」

小林健二の自作プレパラートと顕微鏡

小林健二の自作プレパラートと顕微鏡

ー工作道具をいじっているだけで、心が安らぐ効果がある

「実験や工作に、あえて目標を定める必要はないんだ。ある意味では、自分自身と向き合うことでもあるんだから。例えば、サビた刃物を無心に研ぐだけで、気持ちが次第に楽になっていく。これは実際想像するよりはるかに効果的で、一度ためしてみる価値はあるよ。心が安らげるっていう受動的な立場でありながら、刃が研げるという能動的な結果も出る(笑)。」

小林さんはこうした実験、工作の醍醐味が味わえるようなキットを世に送り出している。中の材料からパッケージまで、オリジナル部品ばかりだ。品切れのものもあるが、今後のラインナップに期待したい。

鉱石ラジオキット[銀河1型] 6,000円(税抜き価格) 仕上がり寸法:H75XW190XD120mm 部品表 ケース/エナメル線/ツマミ(黒ベーク)/スパイダーコイル巻枠/鉱石ターミナル(赤2、黄1、緑1、青1)/ナット7個/ワッシャー(小)9枚/ワッシャー(大)4枚/バリコン/透明リング/ネジ(3×10/1個/バリコン用2個)/ドライバー/銅線 S字/鉱石検波器(本体+針)/説明書/クリスタルイヤフォン/シャフト/ベークカラー/ハンダ/サンドペーパー/ゲルマニウムダイオード キットの組み立てには、ハンダゴテやペンチなどの工具が必要の場合があります。 バリコン以外は鉱石ラジオ発足当時の原形をとどめるとも言えるキットです。黒色紙製スパイダーコイルにさぐり式検波器を装置しています。このさぐり式の鉱石ラジオは、最も象徴的な形式です。 この銀河通信社製鉱石ラジオは東洋に於いては始めて作られたさぐり式の鉱石ラジオキットです。当社では数種のさぐり式鉱石ラジオキットを製作しておりますが、安定性と感度を期待できる組立キットの1つと言えるでしょう。みなさんも、この結晶式受信機によってあなたの透明な通信を受け取ってください。(説明書より抜粋)

鉱石ラジオキット[銀河1型]
6,000円(税抜き価格)
仕上がり寸法:H75XW190XD120mm
部品表
ケース/エナメル線/ツマミ(黒ベーク)/スパイダーコイル巻枠/鉱石ターミナル(赤2、黄1、緑1、青1)/ナット7個/ワッシャー(小)9枚/ワッシャー(大)4枚/バリコン/透明リング/ネジ(3×10/1個/バリコン用2個)/ドライバー/銅線 S字/鉱石検波器(本体+針)/説明書/クリスタルイヤフォン/シャフト/ベークカラー/ハンダ/サンドペーパー/ゲルマニウムダイオード
キットの組み立てには、ハンダゴテやペンチなどの工具が必要の場合があります。
バリコン以外は鉱石ラジオ発足当時の原形をとどめるとも言えるキットです。黒色紙製スパイダーコイルにさぐり式検波器を装置しています。このさぐり式の鉱石ラジオは、最も象徴的な形式です。
「この銀河通信社製鉱石ラジオは東洋に於いては始めて作られたさぐり式の鉱石ラジオキットです。当社では数種のさぐり式鉱石ラジオキットを製作しておりますが、安定性と感度を期待できる組立キットの1つと言えるでしょう。みなさんも、この結晶式受信機によってあなたの透明な通信を受け取ってください。(説明書より抜粋)」

鉱石ラジオキット[銀河2型] 5,000円(税抜き価格) 仕上がり寸法:W11XD16XH9cm 部品表 ソレノイドコイル用紙筒 /エナメル線 /木の板 /バリコンセット(ポリバリコン+ツマミ)/鉱石検波器(本体+針)/クリスタルイヤフォン/鉱石ターミナル(黒2)/ハンダ/サンドペーパー /ゲルマニウムダイオード/画鋲 2個/銅線 S字/説明書/木工接着剤/鉱石ラジオ用ニス 尚、キットの組み立てには、ハンダゴテやペンチなどの工具が必要の場合があります。 バリコン以外は鉱石ラジオ発足当時の原形をとどめるとも言えるキットです。2型は紙筒ソレノイドコイルを使用し、さぐり式検波器を装置しています。このさぐり式の鉱石ラジオは、最も象徴的な形式ですが、今まで我国でキットとして発売されたことはありませんでした。当社でも初期に設計、デザインが仕上がった組立キットの1つです。 鉱石ラジオの構造が分かりやすく配置されており、子供から大人まで手作り感覚が楽しめるキットです。

鉱石ラジオキット[銀河2型]
5,000円(税抜き価格)
仕上がり寸法:W11XD16XH9cm
部品表
ソレノイドコイル用紙筒 /エナメル線 /木の板 /バリコンセット(ポリバリコン+ツマミ)/鉱石検波器(本体+針)/クリスタルイヤフォン/鉱石ターミナル(黒2)/ハンダ/サンドペーパー /ゲルマニウムダイオード/画鋲 2個/銅線 S字/説明書/木工接着剤/鉱石ラジオ用ニス
尚、キットの組み立てには、ハンダゴテやペンチなどの工具が必要の場合があります。
バリコン以外は鉱石ラジオ発足当時の原形をとどめるとも言えるキットです。2型は紙筒ソレノイドコイルを使用し、さぐり式検波器を装置しています。このさぐり式の鉱石ラジオは、最も象徴的な形式ですが、今まで我国でキットとして発売されたことはありませんでした。当社でも初期に設計、デザインが仕上がった組立キットの1つです。 鉱石ラジオの構造が分かりやすく配置されており、子供から大人まで手作り感覚が楽しめるキットです。

 

硝子結晶育成キット 2,500円(税抜き価格) パッケージサイズ:W14XH12XD18cm 約1週間から10日で母岩の上に高さ6cm前後の淡い緑色を帯びた結晶が群晶となって成長します。

硝子結晶育成キット
2,500円(税抜き価格)
パッケージサイズ:W14XH12XD18cm
約1週間から10日で母岩の上に高さ6cm前後の淡い緑色を帯びた結晶が群晶となって成長します。

6/4,11,19の小林健二トークの時に3回にわたって育成した「硝子結晶」

6/4,11,19の小林健二トークの時に3回にわたって育成した「硝子結晶」

「今は情報が溢れすぎているから、感覚が緩慢になっているところがある。エレガントなものや、繊細なものの現象があっても、それに気づかなかったりする。だからこそ、実験や工作をやることで、自分自身を見つめる機会があってもいい。鉋をかけた経験が一つあれば、神社や寺なんかの建築の細工に驚くこともあるかもしれない。そういうことに気づけたり、感動できる受け口は、いくらあってもいいんじゃないかな。」

*2001年のメディア記事を抜粋編集し、画像は新たに付加しております。また、キットのキャプションは銀河通信社サイトから転用しております。

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KENJI KOBAYASHI